2013-03-22

エドモントン国際空港。


 今月15日から我々Alberta Health ServicesのMedevac機は、今まで行っていたエドモントン市中央空港(CYXD)ではなく、エドモントン国際空港(CYEG)に患者さんを運搬することになりました。 これにはいろいろな政治的な問題が絡んでいるらしいです。 こういうことに興味がおありの方はこのウェブサイト(リンク)を御覧ください。
 
 エドモントン市中央空港は名前のとおりエドモントン市のダウンタウンに結構近い位置にある空港で、いろんな施設へのアクセスが抜群の空港です(関西にお住まいの方であれば「伊丹空港」がこの空港のイメージに近いかと思います)。 特に病院へのアクセスがよく、着陸後はすぐに患者さんを救急救命士達が救急車に載せ替え、そのまま病院に搬送します。 Medevacはスピードが命なので、特に急患の場合にはこのアクセスの良さは重宝されました。 また、我々パイロットにとっても便利な場所で、スーパーマーケットは近いし、Tim Hortonsもあるし、何時間も待機しなければいけないときの時間つぶしには事欠かない場所でした(笑)。 残念ながら、この空港にmedevac機が離着陸するのを禁止するルールが出来てしまい、今月の15日から施行されたわけです。 ちなみに空港自体は今まで通り運用されています。 Medevac機が下りれないこと以外はなにも変わっていません。 おかしな話です。

 エドモントン国際空港は、どこの空港でも同じように、エドモントン市からは結構離れた場所にある空港です(関西で言えば関空のような感じ)。 ここにAlberta Health Services(AHS)は大きな患者運搬・ケア施設を建てました。 今日の写真はその建物の外観(上)と、ハンガーの中の様子(下、パノラマ写真)です。 大変立派なハンガーです。 


 エドモントン国際空港は大きな空港で、ILSもあるし、天気が悪くても下りられる確率が高い空港なので、その点はいいと思います。 でも、たくさん問題があります。 一番の問題は病院まで遠いこと。 大問題です。 空港から病院までの距離は、今のような時期だと下手をすると1時間ほどかかってしまうこともあるとか。 この間に急患の患者さんの場合は最悪の場合命を落とします。

 そこでAHSは考えました。 「それなら、急患の場合には空港からヘリで患者を運搬しよう!」 なるほど、聞こえはいいです。 救急車よりも速そうですし。 でも、残念ながらヘリコプターってあまり役に立たないんです。 救急車よりは早くても、我々が市中央空港に着陸して救急車で運搬するよりは時間がかかる。 悪天候の時は飛べない。 巡航速度が遅い。 着氷するときには飛べないなど。 全然だめです。 しかも、ものすごい莫大な費用がかかる。 政治家さん達はなにを考えているんでしょう。 

 こんなことが今、アルバータ州の医療現場で起きています。 しかも噂では今回の予算編成で医療予算がだいぶ削られたらしく、目に見て明らかに分かるほどmedevacのフライト数が減っています。 逆に言えばいままでかなりmedevacフライトを乱用してきたのかも知れません。 飛行時間が欲しくて働いている僕にとってはちょっとがっかりです。 これからどうなるんだろ〜なんて思うこともあったり。 

 なにはともあれ、国際空港へのフライトは楽しいです。 レーダーベクターされるし、ジェット機とかも見れるし。 僕が訓練したビクトリア国際空港に似た感じです。 ただ、旅客ターミナルは遠いし、そもそもそこまで行く足がない! さらに、ほとんどの場合はそんなに待つこともなくさっさとフォートマクマレーに帰るよう指示されたり、他の空港に患者さんをピックアップしに行かされたりします。 少しだけmedevacパイロットの楽しみ(買い物やショッピングモールでの時間つぶしなど)が減ったような気がしてなりません(苦笑)。


(つづく)


2013-03-15

楽より苦。

 皆さんも一度は聞いたことがあるであろう「オートパイロット」。 僕が飛ばしている飛行機Beech King Air 200にもこのオートパイロットが装備されています。 こいつは本当に優秀で、上昇、下降、高度維持、スピード維持、方角維持など、本当にいろんなことをかなり正確にやってくれます。 ただ、時々ですが、予想もしないことをやってくれたりもします。 例えば、高度を維持してほしいときに高度が少しずれたままになったり、押したはずのボタンがうまく作動していなかったり、突然オートパイロットが解除されたり。 多くはパイロットエラーなのかもしれませんが、それでもしっかりとモニターする必要があります。

 とはいえ、オートパイロットがあると楽であることには変わりありません。 楽です(笑)。 巡航高度に達した後はたいていオートパイロットに操縦してもらいます。 飛行機の操縦をしたことがない人にとってみると、「パイロットが楽してる」とか、「怠惰だ」といわれるかもしれません。 楽してるのは確かにそうですが、オートパイロットのおかげでかなり仕事の量が減り、他の仕事に集中することができます。 例えば、計器飛行でアプローチをするときには必ず機長と副操縦士がブリーフィングをするんですが、そのブリーフィングにしっかり意識を注ぐことができます。 特に天気が悪い日なんかは万が一空港に下りれない場合のmissed approachの手順の確認や、無線周波数のセットなど、本当に忙しいこともあり、そういうときにはオートパイロットが操縦を手伝ってくれると仕事の量が減り、その結果フライトが安全に行えます。 

 北米ではDiscovery Channelで「Mayday」というテレビ番組があります。 飛行機好きなら必ず観たことがある番組です。 これを見ると、航空事故の多くはヒューマンエラー(人為的過誤や失敗)によるものが多いことがわかります。 そういうのを避けるためにパイロットは一人よりは二人、エンジンはひとつより2つ、飛行機はなるべく高性能なもの、そしてオートパイロットがあればワークロードが多くても意識を安全運航にむけることができるので尚良いということになるわけです。

 っと、こう書くとオートパイロットさまさまなわけですが、そうでもないこともあります。 それは感が鈍ること。 オートパイロットを使ってのフライトでは、離陸のときに数分間と、着陸のときの数分間、地上にいるときのタクシーの間くらいだけをマニュアルで操縦すればあとはオートパイロットがやってくれます。 これではいわゆる「スティック&ラダー(操縦桿と方向舵)」のスキルが鈍ります。 現に、僕のスキルは鈍っています(苦笑)。 そりゃそうですよね。 車の運転でもスポーツでも、しばらくしない期間があるとちょっと感覚が鈍ったり、間違いをしちゃったりするじゃないですか。 なので、最近はなるべく手で操縦(hand-fly)することにしています。 

 昨晩は午後10時過ぎに出動命令があり、エドモントンまで行きました。 患者さんを下ろし、午前3時過ぎに帰ってきました。 帰りのレッグが僕が操縦するレッグで、昨日は離陸から巡航、着陸まですべてマニュアル操縦し、オートパイロットはONにしませんでした。 いやいや、キングエア、オートパイロットだと簡単に操縦できますが、手動だとちょっと大変です。 安定している機体なのでふらふらになることはないですが、なにせ時速500キロ近い速度で飛んでいるのでちょっとした機体の姿勢の変化で大きな変化が生じてしまいます。 機首をほんのちょ〜〜〜っと上げるだけでも一気に上昇率があがったり。 なかなか大変ですが、それが楽しかったりもしますし、やっぱり操縦の基本なのでしっかりとした技術を保持したいと思っています。 これからもっと手で飛ばす時間を増やそうと思います。 横に座っている機長にとってはきっとハラハラものでしょうけど(笑)。

 最後に残念なお知らせ。 先月、とある某航空会社の面接に呼ばれてトロントまでいきましたが、昨日、お断りの連絡がありました。 こちらではPFO(Please f*ck Offの略)レターと呼ばれるものがメールで届きました。 がっかりですが、今回の経験を通していろんなことを学ぶことができましたし、なにしろ国内最大手の航空会社の面接にいけたということが少し自信にもつながったような気がします。 何事もスムーズにいけばいいですが、そうは行かないのが人生ですね(特に僕の場合は・・・苦笑)。 遠回りしてでも最終的にゴールにたどり着けば、その過程はきっと意味があるものだと思います。 そのゴールにたどり着くまで挑戦は続きます。 


写真上:Fort Chipewyan空港で患者さんを待っているところ。
写真下:ビクトリアからカルガリーまでのフライトで見えるカナディアンロッキー。



(つづく)