2015-07-15

+TSRA。


 昨日まで6連勤でした。 最初の5日間はスケジュール通りの勤務で、最後の1日はovertime、つまり「残業」でした。 僕が勤めている会社では、スケジュールが許す限り残業をすることができます。 パイロットの中には結構必死に残業をして残業代を稼ぐ人もいるようです。

 この残業にもいくつか種類があって、会社からお願いされて働く場合と、自主的に働く場合があります。 僕は通勤族なので、会社のクルースケジューラーから電話がかかってきて「ちょっと残業してくれない?」って聞かれるときはだいたいの場合はビクトリアに戻ってきているので、カルガリーから出発するフライトの残業はできない場合が多いです。 今回の残業は、ちょうど時間的に余裕があったのでココぞとばかりに自主的に残業を願い出て、たまたまスケジュールに合うペアリングが空いていたので、それをピックアップした形です。 

 残業とはいってもとても簡単なフライトで、カルガリーからエドモントンに行き、すぐさま引き返してきて終わりというペアリングでした。 楽チンで、残業代ももらえて最高〜♪って思っていたら、やっぱり現実はそんなにあまくはありませんでした。

 乗務開始1時間前に空港に向かっているとき、カルガリー上空に大きな雷雲が発生し、雹(ひょう)が降っていました。 航空天気予報には「+TSRA」の文字。 +はheavy、TSはThunderstorm、RAはrainの略で、「雷・豪雨」的なニュアンスの意味になります。 外に止めている車まで歩いて行くと、道路が水浸しで川みたいになっていました。 それも20分ほどで止み、雷雲が通り過ぎるとまた明るくなってきました。 

 カルガリーからエドモントンまでのフライトはなにも問題ありませんでした。 エドモントンでお客さんを降ろし、さ〜カルガリーまで戻るぞ〜って思って準備をしていました。 Clearance Deliveryにフライトの許可をもらい、お客さんも搭乗開始し、さ〜、ドアをしめて出発〜!って思っていた矢先、管制官から無線が入り、

 「カルガリーへのflow controlが始まって、あなた達の離陸許可時間は00:50zです」
  
 っていうではありませんか。 

 「Flow control」っていうのは、管制官がさばくことができる飛行機の数を超えた場合などに離着陸する飛行機の流れを調整する目的で離陸時刻を指定されたりすることを指します。 予定の出発時刻は23:40分だったので、定刻よりもなんと1時間も後にしか出発してはいけないということです。 ちなみに「z」はzuluで、イギリスのグリニッジ標準時のことです。 

 僕:「確認ですけど、今、0050zっていいました?」
 女性管制官:「そ〜なのよ〜、びっくりよね〜?(笑)天気のせいみたい。」

 僕はカルガリーに到着45分後に出発する便でビクトリアに戻ってくる予定だったのに、 これで予定が狂うと思い、がっかり。 でも、仕事は仕事なので仕方ありません。 プロなので、そういうことで心が乱されてはいけません。 でも、やっぱりがっかり(苦笑)。

 出発が遅れた理由は、先述の雷雨などのせいで空港周辺に雷のおそれがあったためでした。 空港周辺に深刻な雷の可能性があると、地上で働く人達や給油車などに危険が及ぶこともあるので、そういう場合は一旦全員建物内に避難するということになっています。 そのため、空港の機能が一時的に麻痺し、飛行機の出発・到着に大きな遅延が発生するということです。 

 結局、出発時刻は00:50zから00:33zに少しだけ早まり、その時間が来たらすぐさま離陸。 カルガリー空港には予定よりも30分遅れで到着しました。  その後、すぐさま荷物をまとめ、ビクトリア便が出るゲートまで早足で向かいましたが、残念ながら僕がゲートに到着したときにはその便はゲートを離れ、プッシュバックを始めていました。 幸い、バンクーバー経由ビクトリア行きの便に振り当ててもらい、なんとかビクトリアに帰ってこれました。 

 ここ最近は雷雲を避けながらのフライトが続いていて、結構精神的に疲れます。 冬は雪・気温、夏は雷雲。 カナダで飛ぶパイロットはなかなか大変です。


(つづく)