2015-12-20

ジェット機訓練 - Phase 2-

 Phase 1が終わった後、10日間のお休みがもらえたのでビクトリアの自宅まで帰ってきました。 2週間ちょっと自宅を開けていたので、いろいろとやらなければいけないことがあって、最初は毎日バタバタとしていました。 僕はなるべくONとOFFをはっきりさせたほうが学習能力が上がると思っているので、ビクトリアに戻ってきてからしばらくは訓練のことはあえてなにも考えず、マニュアル等もまったく開きませんでした。 そして、訓練に戻らなければならない数日前からまた復習を始めました。 

 




 うちの猫・パンダも僕の勉強のお手伝いをしてくれました(笑)。 主にIPTで学んだことを復習し、緊急時の対応手順の暗記をしたりしました。 

 緊急時、例えばエンジン火災が起きたりした場合の初期対応(drill)はすべて暗記項目(memory item)になっています。 項目の数は6つほどですが、内容、手順、付随するコールなどを暗記しなければいけません。 Dash8に比べると内容は簡略化されているように感じましたが、理屈は同じような感じです。 ジェット機であれプロペラ機であれ、対応はよく似ていますので、覚えるのはさほど難しくはありませんでした。 ジェット機とターボプロップ機の違いについてはまた後日別に書こうと思います。

 10日間の休みの後、またトロントに戻りました。 今回もまた3週間ほどの滞在でした。 Phase 2はフルモーションシミュレーターでの訓練でした。 いよいよ実機と同じコクピットでの訓練なので否応なしに気分が盛り上がります。 ただ問題が一つ。 それは訓練の時間帯です。 僕と僕のトレーニングパートナーの訓練時間枠がなんと午後9時から午前3時でした(涙)。 これがず〜っと続きました。 最初の数日はしんどかったです。 ですが、それからはだいぶ体も慣れました。 だいたい毎日、

  •  起床は午後1時か2時(笑)
  •  朝食後、他所のホテルにあるスタバまで散歩し、そこでコーヒーを飲みながら勉強
  •  午後6時頃にランチ(夕食?)
  •  午後8時半に訓練へ
  •  翌日午前3時頃訓練終了、夜食(夕食?)
  •  午前4時頃にホテルのフィットネスルームにて運動
  •  午前5時から6時頃就寝

 っていうスケジュールでした。 無茶苦茶ですよね(苦笑)。 でも、シミュレーターは使える枠が限られているし、シミュレーターを使うのは僕らだけではなく、新入社員パイロットの訓練や、既にラインで飛んでいるパイロットの資格延長のためにも使われるので、1日20時間近くフル稼働しているんです。 それなので我々の訓練は夜のスロットに充てがわれたみたいです。 こればっかりは仕方ありません。 朝4時頃にウェイトを上げたり、トレッドミルで走っているのはなんとも不思議な感じがしました。 世界は眠っているのに僕だけ起きているような感じがして、それはそれで奇妙で面白かったです。



 (写真:シミュレーター施設の受付に会ったレゴ人形とシミュレーターの模型)



(つづく)

 


2015-12-12

ジェット機訓練 - Phase 1-


 今回の訓練は大きく分けて3つのフェーズに分かれていました。 内容はだいたいこんな感じです:


フェーズ1: IPTを使った訓練
フェーズ2:フルモーションシミュレーターを使った訓練とPPC
フェーズ3:フルモーションシミュレーターを使ったCRJ-705のdifference course

フェーズ1の「IPT」というのは「Instrument Procedure Trainer」と呼ばれるもので、下の写真のような装置です。





 以前のDash-8の訓練でも同様の装置を使って訓練をしました。 これはいわば「シミュレーターのシミュレーター」というもので、フルモーションシミュレーターに行く前に基本動作などを学ぶための装置です。 後ろには教官が操作するPCがあり、そこでいろいろな状況を創りだしたり、飛行条件を変えたり、故障を(意図的に)引き起こしたりします。 

 画面はタッチスクリーンで、それ以外にはFMS (Flight Management System)やスラストレバーやオートフライトコントロールのスイッチ類などがあり、それらは実機と同じ物です。 

 これを使ってやる訓練はまずは「Flow」を学ぶことから始まります。 「Flow」というのはチェックリストの暗記項目のことで、離陸前のチェックリストや離陸後のチェックリストなど、チェックリストの項目のほとんどは丸暗記しなければいけません。 数が結構あるので暗記するのには時間がかかりますが、名前が暗示するとおり、チェックする項目はある程度の流れ(flow)が決まっています。 例えば、
(写真はhttp://www.proprofs.com/より拝借)

 この写真はCRJではありませんが、この写真に示してあるように、まずは①、そして②,そして③,そして④,というふうに流れがあって、その流れに沿って必要項目をチェックしていくわけです。 ですから、右から左に飛んで、さらに右に戻って、また左に戻ってというような効率の悪いフローはないと思います。 だいたいは「一筆書き」のように一つの線でつなぐことができるような流れが決まっていて、それを覚えるわけです。 説明が下手で申し訳ないですが、だいたいの雰囲気はわかってもらえたかと思います。 フローは頭で覚えても実際には出来ないことが多いので、こういう装置を使い、実際にフローを体でやってみて、体の筋肉に動きを覚えこませることが重要になってきます。 (マッスルメモリーってやつですね)

 フローを覚えるために、僕は訓練の1ヶ月くらい前からマニュアルに書いてあるフロー項目を暗記カードに書き出して少しずつ覚え始めました。 先輩パイロットから、「フローを暗記してから訓練に挑めばだいぶ楽だよ」っていうのをよく聞いていたので、そのとおりフローの大半は暗記してから訓練を始めました。 確かにフローを覚えてさえおけば他の訓練項目に集中できるので、効率のよい訓練が出来たと思います。 それにしても、IPT訓練中にフローをど忘れしたときに出る冷や汗はとても気持ちが悪いものです(笑)。 

 このIPT訓練を9セッションやりました。 途中で数日間の休みが入ったり、他にも座学の日があったりしたので、フェーズ1は期間にして2週間強でした。 フェーズ1が終わってからしばらく休暇がもらえましたので、自宅があるビクトリアに戻りました。


(つづく)

2015-12-09

ジェット機パイロットになりました。

 どうもお久しぶりです。 ちゃんと生きています(笑)。 

 前回の投稿からかなり時間が空いたのには理由がありまして、実は最近になって今まで乗っていたターボプロップ機「Dash-8」乗務から、ジェット機「CRJ」乗務に異動になりまして、そのための訓練を受けていました(今もまだ訓練中ですが)。 この訓練が長くて、10月末に始まり、11月中は10日ほどの休みを除いてあとはずっと訓練、そして12月も中旬まで訓練というスケジュールでした。 昨日、CRJのPilot Proficiency Check (PPC)に合格しまして、僕にとっては初めてとなるジェット機の操縦資格を取得しました。 訓練内容などについてはまた後日別の投稿で書こうかと思います。

 CRJという飛行機は「Canadair Regional Jet」という名前の頭文字を取ってつけられた名前で、「シーアールジェー」と一般的に呼ばれます。 略して「RJ」と呼ぶ人もいます。 この飛行機、カナダ・ボンバルディア社が製造している小型ジェット機で、日本でもJ-AIRとIBEXなどが飛ばしています。 僕が働く会社ではCRJ200という型と、CRJ705という型の2種類を運航していて、僕はそのどちらにも乗務することになります。

 (写真上:J-AIRのCRJ-200 ウィキペディアより引用)

 CRJ-200は50人乗りの小型リージョナルジェット機です。 もともとはボンバルディアが製造している「Challenger」という飛行機をベースに胴体を引き伸ばして作られた飛行機なんだそうです。 この「チャレンジャー」は世界各国の裕福なセレブ達のプライベートジェット機として人気の小型ジェット機です。 

(写真上:一般的なCRJ-200のコクピット内 同じくウィキペディアより)

 CRJのコクピットは通称「グラスコクピット」と呼ばれるもので、従来の計器類をほぼすべてCRTスクリーンなどで置き換えたデザインになっています。 真ん中の2画面がEICAS(アイキャス)Displayという画面で、そこに主にはエンジン計器類や着陸装置、フラップの位置情報、または乗務員への警告メッセージなどが表示されます。 各操縦席の前にはPFD, MFDと呼ばれる画面が計2つあり、それらで飛行機の位置や姿勢の情報などを表示できるようになっています。 今まで乗っていたDash-8は古風な飛行機(笑)だったので針で表示されるタイプの計器がたくさんありましたが、今回のCRJはだいぶモダンな感じがします。
 
 
(写真上:CRJ-900 またまたウィキペディアより)

 CRJ-705は、CRJ-900という飛行機の座席数を75席に減らし(契約上の理由によるもの)、Jクラス(ビジネスクラス)を設定した配列になっている飛行機です。 CRJ-200に比べると胴体が長く、とても凛々しい「飛行機らしい」見た目になっています(個人的な見解ですが)。

 日本ではあまりCRJに乗る機会はないと思いますが、北米ではとてもポピュラーな飛行機です。 ヨーロッパでもCRJを運航している会社(リージョナルエアライン系)が多いそうです。 
 
 だいたいのお客さんはCRJ(またはDash-8もそうでしたが)を初めて見ると「んやだ〜、ちいさ〜い(苦笑)」という声を上げます。 確かに日本でよく見るボーイング737やエアバス320などと比べたら小さいです。 ですが、CRJは実際はスポーツカーみたいな高性能をもった飛行機なのです。

 巡航高度、巡航速度などを見ると他の中型〜大型旅客機に匹敵する、もしくは上回る性能を発揮します。 実際、以前にエアバスのコクピットのジャンプシートに乗っけてもらった時、その上2000フィートを僕の会社のCRJ-705がすいすい〜っと追い抜いていったことがあります。 その最高速度、約マッハ0.82~0.85となっていますから、限りなく音速に近い速度で巡航することができます。 こりゃすごい!(笑) 
 
 ジェット機の飛行経験があると将来に役に立つということで今回ジェット機乗務への異動をリクエストしました。 今まで飛ばしていたDash-8にもようやく慣れ、毎日のフライトが普通にこなせるようになって楽しくなっていたところで今回の異動。 またゼロからのやり直しです。 さすがにこの会社で2年弱働いてきたので運航の基礎はわかっています。 ですから、今回の訓練は初めてDash-8の訓練を受けた時よりはスムーズにいったという感じがしましたが、やはり新しいことを学ぶにはかなりのエネルギーが必要になるということを再確認しました。 脳がとても疲れました(笑)。 しばらくは訓練は遠慮したい気持ちです。
 
 あと数日で訓練プログラムもすべて修了します。 そしたらようやく自宅に帰れます。 自宅で4日ほどゆっくりしたあと、line-indoc(実際のフライトを通して行うOJTのようなもの)が始まります。 これをクリアして、最終的にline checkをパスすると晴れて一人前の副操縦士として認められることになります。 CRJだと飛ぶルートも、速度も、目的地も違うので、これも学び直さなければいけません。 しかも、JFKやWashington DCといったアメリカの忙しい空港にも行くこともあります。 そう考えると結構緊張します。 Line indocでは最初はカナダ国内、それからアメリカのヒューストン(テキサス州)まで飛んでいきます。 ヒューストンは片道4時間近くのフライトです。 今までは最高でも2時間くらいしか飛ばなかったので、そういうところも慣れていかなければいけません。 
 
 なにはともあれ、ジェット機のパイロットになれたというのはとてもうれしいです。 今までDash-8を飛ばせたことにも感謝しています。 飛ばしていて楽しい飛行機でしたし、一緒に飛んだ機長達もいい人が多くて良い経験をいっぱいできました。 これからはジェットなのでだいぶ環境が変わりますが、きっと楽しいことが待ち受けていると信じて、頑張っていこうと思います。
 
 以上、ご報告でした。
 
 
(つづく)