2020-06-21

トレーニングはまだ未定。

 先日、日本人パイロットのみなさんとのビデオチャットで教えてもらったのですが、うちの会社は毎週金曜日の夕方に「トレーニングレポート」という書類が社員向けウェブサイト内で公開されます。 これに、機種ごとのトレーニングプランが書かれていて、これを見れば自分の訓練がいつからいつまでなのか、どこで訓練をするのか、トレーニングパートナーは誰なのか、などなどの情報を入手できるものです。 そう言われて見れば僕もうちの会社に入社した直後は自分の訓練日程を見るためにこの書類に頻繁に目を通したことがあったのですが、なにせ3年間は機種変更がなかったため、トレーニングレポートを見ることがそもそもなく、そのためこの書類の存在をすっかり忘れていました。 

 昨日の金曜日にまた新たなトレーニングレポートが発行されていましたが、それには僕の名前はないわけで・・・。 ということで、未だに訓練日程は未定です。 この業界らしいといえばらしいです(苦笑)。 このままいくと、8月にはまたequipment bidがあるため、もしかしたらまたそのビッドで書類上の機種変更(実際には訓練が始まる前に機種が変更になること)になる可能性もありますし、もしくはレイオフの可能性も捨て切れません。 困ったものです。 せっかくこれまで楽しくエアバスの操縦手順などの勉強をしてきましたが、正直言ってモチベーションはだだ下がりです(笑)。 いざ訓練日程がわかればそこからフルスピードで勉強し直すようなことは過去にもあったのでなんとかなるとはわかっていますが、モチベーションが下がると罪悪感を感じざるを得ません。

 今回のコロナ禍で仕事を失った方や、目標が失われた方は多くいると思います。 僕もその一歩手前であることは間違いありません。 これからどちらに転ぶかは今後の国境封鎖解除、旅客数の回復などにかかっています。 第二波、第三波がやってきて、ワクチンの開発に遅れが出て来ると厳しいことになるでしょう。 そういう時のことも考えて、パイロット以外になにができるかをいろいろ考えてきました。 自分探しの旅(あくまで頭の中だけで)をしている感じです。 YouTuberデビューするか?なんていうのは冗談ですが、世の中のプロ・元プロがYouTubeデビューしているところを見ると、みなさん必死ですよね。 僕も、もしレイオフされればいずれは必死にならざるを得ないわけで、人ごとではないなと思いながら状況を見つめています。 ポジティブに考えれば、今まで自分のことを客観的に分析することはあまりしてこなかったため、良い機会ではあるかなと思います。

 それにしても、日本では自粛緩和が進んで多くのショッピング施設やレストランなどが再開されているそうです。 個人的には良い動きだと思っています。 日本はどこかの政治家が言っていたように「民度が高い」ので、ほとんどの方がマスク着用やソーシャルディスタンスなどをしっかり守りますね。 逆に守らないと周りから袋叩きにあう恐怖心があるでしょうから、ある程度第二波を抑えて営業再開できるのではないかと思っています。 一方、こちらカナダ。 日本の基準から見ると誤解を恐れずに言えば民度は日本ほど高くありません。 マスクはしない、距離も保たない。 なのに集まって騒ぐ。 それでも政府は経済を回していかないといけないから営業再開を許可し始めています。 やや怖いですが、こちらはこういう方針ですから、そこに外国人である僕がとやかく言ってもしかたないと思います。 自衛の精神でやっていくしかありません。

 そんな状況にあっても、モントリオールは夏が本格化してきてとても綺麗です(笑)。 写真をどうぞ。

 
前回の投稿に書いたF1サーキット。 このカーブを歴代有名ドライバーが通過したと思うとちょっと感動します。

平日は流石にサイクリストの数は多くないですが、週末などはめちゃくちゃ人が多いです。 しかも結構マジなサイクリストが多いです。

ダウンタウンの観光名所であるVieux Port (オールドポート)。 ここの観覧車の周りには池があり、これからの季節は足こぎボートのレンタルができるようです。 ちなみに、冬季は観覧車の後ろの池がアイスリンクになり、スケートができます。

観覧車がある小島では日光浴を楽しむ人々や家族連れが多く集まります。 とりあえずは三密は避けられている模様(笑)。

F1サーキットがあるジョン・ドラポー公園に行くにはジャック・カルティエ橋を渡ります。この橋は側道があり、徒歩・自転車でも渡れます。 

橋からの眺めはとてもよく、僕が好きなスポットの一つです。 橋からダウンタウン方面を眺めると近代的なビル群、古い協会、多くの緑など、いろいろなものが混在しているのがわかります。

ダウンタウンから少し北に行くとモン・ロワイヤルという小高い丘があります。 この丘があるおかげで特有の風景になるように思います。 ケベック州はブリティッシュコロンビア州やアルバータ州西部と比べると圧倒的に平らな土地ですが、モントリオール市内には少しだけこういった起伏がある場所もあって目に優しい風景になっています。

ジャック・カルティエ橋をさらに進むとセントローレンス川を渡ります。 ここからの眺めも素敵です。 時計塔がある港部分はガイドブックにもよく出て来るエリアです。 水の色と時計塔の白が良いコントラストになっています。 ここには先日初めてクジラが出現しました。 あいにくそのクジラは1週間後には死んでしまったようです。


モントリオールの朝焼けは美しいので、早起きをして写真を撮りたくなります。 遠くにはアメリカのバーモント州などにある山々がうっすら見えます。 日本の都市とは違い、比較的規模の大きい都市であっても緑や川がすぐ側にあります。 そういうところが住みやすさに繋がっているように思います。 日本でも郊外に出ればこういうところはありますよね。 なのに仕事や勉強のために東京や大阪の都心に住まざるを得ない方々が多いのではないでしょうか。 当然川や緑はあっても、人工的なものか、またはほんのちょっとだけという場合も多いのでは? 今、もし自分が日本で生活することになったら、都心にアクセスの良い郊外か田舎のほうを選ぶと思います。 昔はそんなことは考えもしませんでした。 大人になったんでしょうね(笑)。



(つづく)

2020-06-13

エアバスとボーイングとマーモット。

 ここ最近はほぼ毎日、同じようなスケジュールで生活しています。 朝起きて朝ごはん。 その後、エアバス320の運航手順の勉強。 お昼ご飯を食べてドラマや映画を観る。 その後散歩に出て写真を撮るか、サイクリングかジョギングに出かける。 夕ご飯のあとは適当にだらだら。 こんなに同じ生活パターンを繰り返すのは日本に住んでいた頃ぶりです。 これはこれで悪くないですね〜(笑)。 また早く飛びたい!と思う気持ちももちろんありますが、のんびりと規則正しい生活をするのも悪くはありません。 そのちょうど真ん中くらいの生活が理想的です。

 今後乗務する予定のエアバス320型機。 なかなか面白い飛行機です。 まだ操縦したことはありませんので実際の操縦感覚はどうなのかは一切わかりませんが、AOM(Aircraft Operating Manual)を読んでいるとなかなか興味深いことが多くあり、なかなか飽きません。

 エアバスはボーイングに比べるとオートメーション(自動化)がかなり多用されています。 ボーイング767では手動で操作していたことの多くがエアバスではオートで行われますので、AOMにも「◯◯◯◯ changes to △△△△ automatically」というような表現がよく出てきます。 一方、自動化が進んでいるせいで、システムの中には多くのコンピュータ装置が使われているようです。 それぞれに名前がつけられていて、当然のように略名で呼ばれます。 そのため、聞いたことがない言葉がいっぱい出てきて、その度に略語一覧を参照します。 わかりやすいものは簡単に暗記できますが、今まで見たことのないものや、エアバス独特の呼称などはなかなか頭に残りません。 略語リストには800近くあるようです(すでに知っているものや、一般的なものも含んでの数)。 

 ご存知の方も多いかもしれませんが、エアバスとボーイングは2大航空機製造メーカーで、競合相手です。 そのせいもあってか、エアバスとボーイングでは同じシステムであっても呼び方が違う場合が多々あります。 例えば、油圧系統システムをボーイングの場合はLeft, Center, Rightと呼びますが、エアバスの場合は色でGreen, Yellow, Blueと分けています。 航行などを司るコンピュータもボーイングではFMC(Flight Management Computer)と呼びますが、エアバスではFMGC(Flight Management and Guidance Computer)と呼び、ほんのちょっと違います。 スイッチ類もボーイングでは前(進行方向)に押し込むとONなのが、エアバスではこの動作ではOFFになります。 ボーイングが数字で1と呼ぶものはエアバスの場合はローマ字でAだったり、ほんとなにからなにまでちょっと違う(笑)。 なかなか面白いですね。

 訓練日程がまだ出ていないのでなかなかやる気が続きませんが、訓練が始まる前に勉強できることはなるべくやっておくつもりです。

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 僕の住んでいるエリアから橋を渡ってすぐにあるジョン・ドラポー公園。 モントリオールF1グランプリで使われるジル・ヴィルヌーヴサーキットがあるところです。 そこをサイクリングしていると、よく茶色の物体がごそごそ動くのを目にします。 ビーバーかな?と思っていたのですが、先日写真を撮ってネットで調べて見たらマーモットであることが判明しました。 なかなか可愛いやつらです。 ビーバーも見たことがあるのですが、今回は目撃しませんでした。 カナダは都市部であっても野生動物がすぐそこに共存しているのが面白いです。 僕のマンションのバルコニーから今までにリス、たぬき、フクロウ、鷹、などを見たことがあります。 





 
(つづく)

2020-06-07

進路を悩む若者への新たなアドバイス。

  モントリオールを流れるセントローレンス川。 大西洋からは何百キロも離れたここまでクジラが上って来て話題になっています。


 以前からクジラがセントローレンス川を遡上することは知られていましたが、多くの場合はケベックシティー(モントリオールよりも200kmほど下流)のあたりで目撃されることがほとんどなんだそう。 ザトウクジラらしいのですが、クジラがモントリオールで見られたのは歴史上初めてのことだそうです。 インスタグラムなどで検索しても多くの写真やビデオが出て来ます。 上の写真は僕が撮ったものですが、このようにときおり水面近くでジャンプする姿も観れました。 よく考えれば僕自身もクジラをこんなに近くで観たのは初めてです。 ここまで上がって来た理由ははっきりとはしていませんが、研究者たちは「コロナ禍で船の往来が減ったため」だったり、「海洋環境が変化して餌や住みやすい場所を求めて移動してきた」などと推測しているようです。 ここまで上がってくると海水ではなく淡水なのですが、クジラは淡水でもしばらくの間は問題なく生活できるそうです。 

 コロナの影響は相変わらずで、モントリオールでは商店などは再開しはじめましたが、特に僕の仕事に影響を与えるような大きな動きはまだ出て来ていません。 アメリカ・カナダの国境封鎖は今月中旬まで延長されましたので、これがどうなるかがこれからの動きに大きな影響を与えると思いますので注視する必要があります。 黒人差別に対するデモや暴動で揺れるアメリカですし、カナダでも都市によっては緊急事態宣言がまだ解除されていないところもあるため、先行きは不透明です。

 ここ最近、コロナの影響が将来に与える影響を危惧する若者が増えて来たのが顕著に観て取れます。 仕事がないのにパイロットを目指す意味はあるのか。 なかなか難しい決断だと思います。 この質問には正解がありません。 目指したければ目指せばよいし、いやならやめておけば良い。 こういうと簡単ですが、これではアドバイスにはなりませんね。 FBグループメンバーのお一人がかかれていた返答が印象的だったのでシェアさせてもらいます。

 内容はだいたいこんな感じ↓↓

 とりあえず自費訓練の道ではなく、自社養成や自衛隊など、訓練を受けさせてくれるところすべてにトライする。 それがダメだったらパイロットの道は諦める。 または、それでも飛びたいというなら自費で。

 僕はそもそも海外で自費訓練を受けてパイロットになった人間なので、「だめだったら諦めれば?」と言うことにはやや抵抗があります。 そこには、「やればできる」という精神論があるからだと思います。 でも、それは今の若者世代には押し付けることができませんし、理解もしてもらえないかもしれません。 

 まだ大学生くらいの方でしたら、とりあえずこの方法でも良いと思います。 お金を払って海外に出て、それで仕事の保証がないって、かなりMな方か、超楽観主義の方でないと楽しめないかもしれませんね(笑)。 運良く自社養成や自衛隊に合格したら一生懸命やってパイロットになれば良いでしょう。 あいにく不合格になった場合には他の職種に進んで他の目標を作るのもまた人生です。 それも悪くはありません、きっと。 どうしても空を飛びたかったらそれこそ海外で自家用操縦士資格を取り、日本のそれに書き換えをし、国内で月一ででも飛べればいいのではないでしょうか。 

 僕の場合は「パイロットになる」のが夢だったので、もしカナダに来てエアラインパイロットになれていなかったとしても、ライセンスが取れたということでそれはそれである程度満足して日本に帰国して次の人生を歩んでいたのではないかと思います。 日本でグライダーを飛ばすなり、セスナを飛ばすなりしても、それはそれで十分楽しそうです。 実際、カナダで訓練をされたあと、日本に帰国して飛んでいる方も知っています。 FBやブログで飛んでいる景色などを拝見すると、そういうスタイルも素敵だと思います。

 逆に、プロになれなければ意味がないという人もなかにはいます。 そういう方で、パイロットになれる保証がない、昨今の情勢がパイロット採用に与える影響に不安を感じる、という方々は、やはり僕には言いにくいのですが、やめておいたほうが良いかもしれません。 国内・海外を問わず自費訓練をすることはそもそも仕事の保証などどこにもない難しい道なのですから。 


(つづく)