2023-11-10

17年が経ちました。

  少し時間が空いてしまいましたが、カナダに来て先月で17年が経ちました。毎年このブログでこの移住記念日のことは書いてあるので繰り返しになるかもしれませんが、時間が経つのは早いものです。日本を出たときは登山用バックパック一つとダンボール箱に梱包したマウンテンバイクだけが所持品でした。西海岸からスタートしたカナダ生活も紆余曲折を経ていつの間にかかなり東の方までやってきました。なかなかの冒険だったと自分でも思いますが、特に大きな病気もせずここまでやってこれてよかったです。以前はこのブログは毎日更新を心がけていました。当時は人生そのものがとてもシンプルで、異国の地で友達も特に多くはなかった僕にはブログを更新することが日記を付ける感覚で、良い時間潰しだったのだと思います。17年前であればまだ日本との繋がり、日本にいる友人達との繋がりも強く、そういう人たちに向けたメッセージを書く場でもありました。時間が経つにつれ、そういったつながりも残念ながら希薄になり、こちらでの生活が人生の中心になり、そうしていつの間にかバタバタといろんな人生ドラマが起き、毎日に追われてここまできたという感じもします。20代後半で日本を出たのがつい先日のように感じられますが、僕もあっという間に四捨五入で50歳になる歳になりました。これからあと何年カナダにいるのか、最近そういうことも思うようになってきました。


 仕事は順調にやっています。ここ最近は我が社のリージョナル路線を担当する会社のパイロット確保がうまく行っていないとやらの理由で、僕が属する部署がそういったリージョナル路線を飛ぶことが多いです。僕自身がそのリージョナル会社にいた頃には1日4〜5レグ飛ぶことも多くありましたが、プロペラ機乗務からジェット機乗務に異動してからは1日2レグほどになり、今の会社で767を飛ばしていた頃には1日多くて2レグ、ほとんどは1レグというかんじになりました。今のエアバス乗務ではセニオリティが高くなってきたおかげで1日2レグ以上飛んだことはここ数年間ありません。毎月のスケジュールビッドの時期になると翌月のペアリングが発表になるのですが、ここ最近は毎月1日2レグ以上のペアリングが占める割合が多くなってきているように感じます。つまり、リージョナル部門のパイロット確保が相変わらずうまく行っていないという証拠でしょう。様々な理由があるようですが、リージョナル部門のパイロット不足は今後しばらくは解消されないように思います。


 先月は1デイペアリングが多くありました。朝仕事に行って夜帰ってきてペアリングが完結する、「1日だけ働くペアリング」です。これの利点は毎日自分のベッドで眠れること。食事を家でとれるので食生活や健康面で有利であることなどがあります。逆に不利な点は1日2回車で空港と自宅の間を運転しなければならないこと(モントリオールのラッシュアワー時の交通渋滞はなかなか酷いです)。最長で4デイペアリング(3泊4連勤)というのもあるのですが、最近の4デイは前述の通りリージョナル路線を飛ぶことが多く、1日4レグ飛ばされるなんてこともあるので避けています。飛行時間が少ない頃であれば4レグも飛べればご機嫌だったでしょうが、今ではそういうハングリー精神は一切ありません(笑)。リージョナルのころはよく4デイをやっていましたが、今はライフスタイルが変わったので1デイか2デイをやることがほとんど。先月の行き先で多かったのはフロリダにある空港とメキシコのカンクンです。アリゾナ州フェニックスにも3回行きました。飛行時間は短いもので片道3時間程度。長いものでは5時間を超えます。エアバス320(CEO)シリーズで飛行するには長過ぎる飛行時間です。エアバス320型機はヨーロッパなどで片道1-3時間の距離を飛ぶのに性能を発揮する機体のようですから、5時間のフライトでジェット気流に抗って飛ぶ時などには燃料の問題などが頻繁に発生します(=飛行時間が長すぎて燃料が足りなくなる可能性が上がる)。離陸重量や離陸の際のエンジン能力の計算なども普段よりシビアにならざるを得ない場合もあります。我が社には燃料効率の良い737MAXやエアバス220などもあるので、そっちを使えばいいじゃんとよく思いますが、コスト面などの諸事情で僕の所属する部門が現状カバーしている状態です。早く改善してくれればいいのですが。


 ここ最近、いろんな書類等の更新手続きをやる必要がありました。一つはPRカード。カナダ永住者に交付される永住者カードで、5年に1回更新する必要があります。前回更新時は書類を郵送する形で更新しましたが、今回はポータルサイトを使って全てオンラインでの申請でした。予想以上に迅速に処理され、申請をしてから1ヶ月ほどで新しいカードが郵送されてきました。過去2回分のカードを記念に保管しているのですが、確実に自分が歳を重ねているのが写真を見れば一目瞭然です(笑)。 あと一つ、仕事で使う制限区域進入許可証も更新する必要がありました。これも5年に1度の更新です。こちらもスムーズに更新でき、申請してから3ヶ月ほどで発行されました。申請時に書類を受理してくださった女性係員の方が僕の日本のパスポートのページにある透かしにいたく感動されていたのですが、今回新しいカードを受け取りに行った際にも同じ女性で、「あなた、確か日本のパスポートの?」といった具合に覚えていてくださいました。日本国パスポートの影響力は凄まじいです。


 先月末から今月頭までフランスとスイスに滞在していました。家族の小旅行でスイスの首都ベルンとフリブーグに行ってきました。この時期のスイス方面はあまり天気がよくないので、1日目はやや雨に降られましたが、2日目は天候にも恵まれ、楽しい時間を過ごすことができました。スイスは面白いところです。高速道路では多くのスイス人は法定速度をしっかり守ります。というのも、高速道路には多くのスピードカメラが設置されていてすぐに罰金切符を切られてしまうというのが理由のようです。それ以外にもスイス人は日本人の気質に似ているのか、ルールを守ることを善としているような感があります。あまりフレンドリーではない国民性という噂も聞きますが、親切な人が多い印象を受けます(少なくとも形式的には)。


 あ、そして、今日モントリオールは積雪がありました。確か僕がヨーロッパに行っている間にも一度降ったと思うのですが僕は見ていなかったので、今日が僕にとっての初雪です。嫌な季節がやってきました。毎年どんどん冬が嫌いになって行きます。昔はそんなに気にならなかったのですが、最近は寒さよりも暑さ、冬よりも夏が好きになってきました。


シャモニーから見るモンブラン

ベルン

ベルン旧市街

紅葉が進んでいました。

帰りに立ち寄ったグリュイエール

こちらも紅葉が綺麗

(続く)


2023-08-25

訓練終了とフランス語検定。

  ここ数日、急に風が涼しく感じられるようになってきたモントリオールです。今朝ベランダに出てみたら、朝のそよ風の温度は明らかに秋風のそれ。短い夏の終わりがすぐそこまでやってきている感じがします。


 先月末にトロントで半年に一度のシミュレーター訓練を受けてきました。今回も前回に続き副操縦士とペアになっての訓練でした。今回のトレーニングパートナーは以前FedExの飛行機を飛ばしていたという人。今回がエアバス320型機に乗り始めて初めてのリカレント訓練ということでした。このブログを読んでくださっている方で記憶が良い方ならすぐに思い出されるかもしれませんが、機種変更をして最初のリカレント訓練というのが実はなかなか大変なのです。長い初期訓練から解放され、やっと野に放たれたパイロットの中には緊張感が一気になくなり、勉強をやめたりする人もいます。そんなこんなで半年ほどなぁなぁな感じで飛んでいて、さ〜訓練ですよとなるとそこから緊張感を以前のレベルまで持ってくるのにはなかなかの努力や時間が必要になることもあります。そういう状態にならないように、真面目なパイロットは日々精進を続けているわけですが、パイロットも人間ですから、ちょっとくらいリラックスしたくなることもあるわけです。


 今回の訓練パートナーはエアバス経験は浅いものの、以前のエアラインで機長もされていたようなので、ほとんどの面では問題なくお互い上手にできました。ただ、エアバス独自の緊急時の手順などのSOP面がやや弱くなっていたため、訓練初日では色々と教官から指摘を受けたりもしましたが、そこはさすがプロ、2日目のフライトテストでは圧倒的に上手にできるようになっていました。問題なく合格し、お褒めの言葉をもらって無事終了。今回も学びの多い訓練でした。


 そして一昨日は路線監査フライトをやってきました。日帰りのフォートマクマレーまでのフライトでした。片道4時間ほど、合計8時間ほどのフライトでした。フライト中は色々な質問をされ、うまく答えられないとそこで指導が入るという感じです。既に知っていることの確認、新しい情報のシェア、よくある誤解や間違いの指摘などが主で、これまた学びの多いフライトになりました。こちらも無事に合格し,これでまた半年飛べることになりました。


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 今月の初旬,フランス滞在中に管轄県庁所在地の役所にてフランス語能力試験を受けてきました。フランス国籍保持者の子を持つ親は自動的にフランス滞在許可証を申請・受理することができます。もし,そのままフランス国籍まで取ろうと考える場合には色々な試練が待ち構えています。そのうちの一つはフランス語能力の試験を受けること。そしてフランスの文化,政治,その他もろもろを勉強するための講座に出席することです。僕の場合はフランス国籍を取る予定はありませんし,滞在許可も特別必要ではありません。ただ、万が一(パンデミックなど)の場合も想定し、滞在許可証だけは更新していこうと妻と決めました。そのための第一ステップが今回のフランス語能力試験でした。これらのステップを踏んでおくと、次回の滞在許可証更新の際に有利になるそうです(1年更新が2年更新、5年更新、10年更新となるそうです)。


 試験は県庁所在地のアヌシーで行われました。試験会場に入るとまずは20分ほどの筆記試験を受けました。試験は4つのセクションに分かれていて、自分の情報を書き込むセクション、新聞記事を読んで答える問題、簡単な会話例文の空欄を埋める問題、作文問題といった感じでした。それが終わると試験官とのマンツーマンの面接でした。それが終わったら一旦待合室に戻され、最終的にフランスに同化するための努力をしますよ〜といった書類にサインをさせられ、そこで4回にわたって行われる文化講座の日程やフランス語向上のためのレッスンについての説明がありました。


 っと、ここまで全てフランス語で行われるんです!! フランス語ができるのが当たり前、できないやつは来んな的な感じがバンバン伝わってきます。僕のフランス語は大学で1年間勉強しただけ。あとは独学や妻との会話などで学んだ語彙くらいしかありません。英語ができない頃に初めてアメリカに行った時の感覚が戻ってきてしんどかったです!結局僕のフランス語はレベルA1というふうに判断され、まあ何とか簡単な会話ができるというレベルということでした。まあそんなもんでしょう。A2にあげるために100時間のフランス語レッスン(無料)を受けなさいと言われましたが、強制ではないそうです。「これって強制ですか?」と聞いたら、担当官のおばちゃんに「強制ではないけど、フランスで暮らしたいんでしょ?だったら当然レッスン受けるわよね〜?」と言われて苦笑い。まあ僕はフランスで暮らす予定はないんですけども。時間があれば喜んで受けますけどね。


 っという感じで、次回の渡仏時は1回目の講座に参加してきます。何でも朝9:30分スタートで丸一日という感じのスケジュールのようで、それを4回に渡って受講します。まさかここに来てまた教室に行くことになるとは思いもしませんでしたが、なかなか面白そうなのでちょっとだけ楽しみです。


 今日の写真はラスベガスのホテルにあるスタバで売ってたチョコレートクロワッサンです。日本円で870円(税込)ほどです。今の円安の時期に海外旅行に出るのは勇気とお金が入りますね!



(つづく)


2023-07-06

久しぶりのビクトリアとバンクでの旅行。

  あら、また時間が経ってしまいました。気がつけば夏ですが、皆様お元気ですか。こちらモントリオールは暑くて蒸し暑い日が多くなりました。嵐が来てゲリラ雷雨的な雨が降ることもあります。とはいえ、日本の夏ほど過ごしづらいことはないように思います。日本の夏を最後に経験したのはもうかれこれ7、8年前になりますでしょうか。毎年酷暑のニュースを観ているので、日本に夏に帰国する勇気はありません。


ここ数ヶ月のフライトでは相変わらずアメリカのフロリダに行くことが多いです。3回に1回は嵐だらけ、雷雲だらけの中を飛ぶことになる感じで、そういう日は仕事に行くのがとても憂鬱です。アメリカの管制官はかなり前もって悪天候を避けるルートを提供してくれ、我々がレーダーを見ながら雷雲を避けるということはそれほど多くありません。ただ、彼らがあまりにも積極的にルート変更を指示してくるので、フロリダまでの3時間程のフライトの間に到着ルートを5回も変えられて、そのたびにフライトマネジメントコンピューターにルートを打ち込み直すという手前のが発生することもあります。面倒なのは当然ですが、コンピューターにルートを打ち込む度に確認作業が発生しますし、そのたびに当然ながらヒューマンエラーが発生する可能性も増えるわけです。ということで、できれば変更は1回にしてほしい。うぅぅ。


先日は古巣ビクトリアへのフライトが3連続でありました。レイオーバーは11時間と寝るだけに行くようなペアリングでしたが、それでも以前住んでいた街に行けることはワクワクしました。しかもショートレイオーバーだったのでホテルはカナダ移住当時住んでいた空港近郊の町シドニーのホテルです。ということで朝は早起きして海辺を散歩したりして楽しみました。静かな水面、鳥たちの声、僕以外誰もいない静けさ。またビクトリアに住みたくなりました。











プライベートでは家族のいるフランスに毎月行っています。先月末からモントリオール発ジュネーブ行きがエアバス330型機からボーイング777型機に機材変更になりました。これは嬉しい・・・。777の方が優れている理由ベスト3はこちら↓


⒈座席数が多い(スタンバイで旅行する際には助かります)

⒉巡航速度が若干速い(飛行機の中で過ごす時間がやや短くなります)

⒊クルーが休憩するためのオーバーヘッド・クルーレスト空間がある(通称バンク bunk)


3が実はものすごく魅力的で、我々パイロットは個人旅行の際にバンクを使うことが許可されているので、万が一客室が満席の場合でもバンクをリクエスト申請しておけばそこを利用して旅行することができます(運航クルーがバンクを利用しない場合のみ)。写真などを載せるとちょっとまずいと思いますので、興味がある方はググって見てください。先月末にジュネーブに行った時もこのバンクを利用させてもらいました。バンク内には客室にあるような座席が2席あり、その後ろに寝転がることができる簡易ベッドスペースが2つあります。カナダから中国やインドに行くような長距離路線を運航する際にはパイロットが3〜4名になり、フライト途中で交代交代で休息を取ることができます。その際に使われるのがこのバンク。そのため、客室からは隔離されたスペース(イメージとしてはビジネスクラスの座席があるエリアの上に存在するスペース)です。とても快適なのですが、唯一残念なのは窓がないこと。そしてやはり狭く圧迫感があるので、閉所恐怖症の人は耐えられないと思います。僕はとても快適にジュネーブまでのフライトを楽しませていただきました。


今日モントリオールに戻ってきて、また数日後から3週間ほど仕事を詰めています。今月は6ヶ月に一度の訓練が入っているので、明日からまた気分を入れ替えて仕事モードに入って行きます。訓練でトロントに行かなければいけないのが面倒臭いですが、頑張っていこうと思います。



(つづく)



















2023-03-20

波乱万丈のフライトがつづく

 3月も半ばを過ぎ、日本は桜が咲いたりして春めいた話題が多くなってきていますが、こちらモントリオールは今朝も雪がちらついています。みなさまお元気でしょうか。

 前回の書き込みでラスベガスでのことを書きました。それからここ最近忙しく飛んでいるのですが、ほぼ毎回なにか色々なことが起きるフライトが続きました。なので今日はそのことを記録しておこうと思います。

 先週ラスベガスに行った時のこと。普段ならホテルを出発する時間になっても迎えの車がやってきません。そろそろ会社に電話して催促しようかと思っている頃に車が滑り込んできました。「いや〜、ごめんごめん、道がめちゃくちゃ混んでてさ〜」とドライバーの男性がいいます。その日はラスベガスで建設関係機材の発表会イベントが行われていてそもそも市内は首から名札をぶら下げた中年おっさん連中のグループがそこらかしこにいてめちゃ混みだったのですが、それに加えてどうやらバイデン大統領がラスベガスに来ているとのこと。早速ウェブで大統領の公式スケジュールを見てみると確かにそうなっています。この段階ですでに嫌な予感。空港に到着するとはるかかなたにエアフォースワンが駐機されているのが見えます。セキュリティチェックなどを通過してゲートに到着、そして出発の準備をしていると無線から「グランドストップ」やら「ホールドプッシュ」などの言葉が聞こえます。どうやら我々の出発時刻とバイデン大統領の出発時刻が被ったようでした。その結果我々の出発時刻も否応なく遅らされ、スケジュール通りの出発とはなりませんでした。幸いにもそれほど大きな遅延にはなりませんでしたけど。エアフォースワンのパイロットはどこに行くにも優先されるでしょうから、ある意味ストレスの低い仕事なんじゃないかと勝手に想像してしまいました(別の類のストレスはすごいでしょうけど)。

 そのフライトでモントリオールに帰ってきたのですが、先日からモントリオール空港は3本ある滑走路のうち2本が閉鎖になっていました。そもそも1本は常に閉鎖されていて、我々パイロットのなかでは滑走路というよりむしろ誘導路として認識されているのですが(笑)。そのため、使える滑走路は1本のみ。何か嫌な予感。

 着陸態勢に入り、前に一機着陸機がいて、それに続いて着陸の許可が下りたのも束の間、「先行機がバードストライクを起こしたから、ゴーアラウンドしてください」と管制官からの指示が。ゴーアラウンド、そのまままっすぐ3000フィートまで上がってくださいとの指示通り飛んでいるとさらに追加情報が管制塔から入りました。「結構な数の鳥に当たったから、機械で滑走路を清掃しないといけないので最低でも20分ほどかかりますので、ホールドする準備をしてください」とのこと。またホールド(笑)。

 この段階で代替空港に向かわなければならない最低残燃料に近く、あまりホールドできる余力がありませんでした。急いでディスパッチャーに連絡し、代替空港を近くの空港に変更することでリザーブ燃料を減らすことに成功。そしてしばらくはホールドできる燃料を稼ぐことができました。それでもせいぜい25分ほどしか空中待機はできません。エアバスでも空中給油ができたらな!なんてことを妄想したりもしました。結局地上の方々が頑張ってくれたおかげで代替空港に向かうことには至らず、20分ほどで着陸が再開されました。無事に着陸し、この日の仕事は終了となりました。

(写真上:緑の線が飛んだルート。写真左下からモントリオールエリアに到着し、その後ぐるぐる回ってから着陸。)



 このフライトのあと、フロリダ・フォートローダーデール空港までの往復フライトがあったのですが、この日はどうやらイーロンマスクの会社がロケットを打ち上げる日だったようで、ちょうどフライトの途中で打ち上げが予定されていました。「空からロケット見えるかな〜♪」なんて呑気なことを考えていたのですが、ロケット打ち上げの影響で空域が大幅に閉鎖されていて、普段よりもかなり遠回りして目的地に到着しました。しかも強風の影響でロケット打ち上げは数時間後に延期されたとのこと。残念だと思っていたこのタイミングではまだロケット打ち上げには好意的な印象しかなかったのでした。ゲートインしてお客さんをおろし、モントリオールまでの復路フライトの準備を始めます。飛行計画をみるとなぜか飛ぶルートは先ほどは飛べなかったルート。もう打ち上げはなくなったのかななんて思ってゲートからプッシュバック。タクシーを開始するためにグランドコントロールに許可を求めると、「期限なし遅延」と言い渡されました。どういうこと?と思っていると、やっぱりロケット打ち上げの予定の影響で空域が閉鎖されていて、我々の出発進路がその空域をぶち抜けるので、そのルートを飛ぶ飛行機は全員地上待機、しかもいつ空域が再開されるかは未定、さらにはその空域付近を担当するFAA航空管制官の人手不足でさらに空域の自由度が減らされているとのこと。ゲートを出てしまったので仕方なく指示されるまま誘導路に進んでエンジンをシャットダウン。様子見の時間が始まりました。

(写真上:前には我々と同じ境遇の飛行機が5、6機待機していました。)


しかもこの日のパートナーはベテラン機長で、結構短気な人。朝から色々ぶつぶつ文句をいいながら何ともいえない雰囲気で一日がスタートしたのですが、今回の遅延でこの人のムードは最悪(笑)。いつも思いますが、この仕事で一番大変なのは悪い天気の日に飛ぶことでも、過酷な時間帯のフライトでもなく、気難しい人や面倒臭い人と一緒に飛ぶことです(笑)。この点はどの仕事でもきっと同じですよね。

 結局この日は誘導路で1時間ほど待機し、その後違うルートの飛行計画を再ファイルしてもらってようやく離陸となりました。ロケット打ち上げは夢がありますが、そのせいで迷惑を被る我々パイロットのことも少しは考慮してもらいたいもんです、全くもぅ。


 ってな感じで忙しく飛んでます。


(つづく)

















































2023-02-28

エキサイティング!ラスベガス。

  二月もそろそろ終わりですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。モントリオールはまだ雪が降る日があり、気温もマイナス10度以下に下がることもあります。春の訪れはもうちょっと先のように感じます。


 ここ最近の仕事はラスベガスに行くことがほとんどです。これまでもラスベガスに行くことが多かったのですが、今月は主に自分でリクエストしてラスベガスに行っています。今月のペアリングの多くはあまり効率の良いものがなく、特に3日または4日間のペアリングはかなり非効率です。主な理由はリージョナル航空会社がパイロット不足でルートをカバーできないようで、そのルートを我々が飛ぶと言うヘンテコな構図になっています。僕は幸いセニオリティが高いおかげでそういうルートを飛ばずに済んでいます。1日に3レグとか4レグというスケジュールはリージョナル時代にはよくやりましたが、今はもうやりたくはありません(笑)。


 さて、そのラスベガス。今月は波乱万丈なフライトになることが多いです。ラスベガス空港は四方を山に囲まれているため、一度風が強まると乱気流が発生します。また、前線が通過するにともなって風向きが頻繁に変わります。そのため、巡航中にアプローチの準備をしても降下を始めると着陸する滑走路が変更になるということが頻繁に起こります。また、ジェット気流が強い日だとモントリオールから西向きに飛んでいく際に時速200キロ近い向かい風の中を飛ぶことになることもあったり、ロッキー山脈の上ではマウンテンウェーブやタービュランスが起きることも多々あり、なかなかチャレンジングなフライトになることもあります。


 先週のフライトでは到着予定時刻にラスベガス周辺に強風警報が出ていました。風は30ノット以上、ガスト50ノット以上という状態で、多くのフライトが着陸できず、風が収まるタイミングが来るまでホールド(上空待機)させられていました。我々もホールドを指示されました。あいにくその段階で残燃料には限りがあり、天候が回復するような感じでもなかったため、これ以上ホールドすることはできなくなる残燃料になってしまう前にアリゾナのフェニックスへ目的地変更を決定しました。フェニックスに着陸後、燃料を補給し、必要な書類等の準備が整ってから再度ラスベガスに向けて離陸。予定よりも約3時間強遅れてラスベガスに着陸しました。幸いその頃には安全な着陸ができる風速まで下がっていました。

(写真上:モントリオールからラスベガスまでの一般的なルート。北米をほぼ横断します。)


(写真上:ホールドしていた時の軌跡。このときは15マイルレグでのホールドでした。)

(写真上:ホールディングパターンを数回回ったあと、フェニックスまで目的地変更となりました。比較的ラスベガスに近いフェニックスですが、風は全く問題ありませんでした。)


 昨日のフライトでは同じく風向きがコロコロ変わる天候だったため、アプローチ中に着陸する滑走路を計5回変更しました。滑走路を変更するくらい大したことないと思われるかもしれませんが、変更するたびにコクピット内で色々準備をしなければなりません。フライトマネジメントコンピューターに打ち込むルートの確認や着陸距離の計算、ブリーフィングなど、やることは山のようにあります。さすがに5回目の変更となるとこちらも嫌気がさしてきますし、それがひいてはフライトへの集中力の欠乏にも影響しかねません。気持ちを冷静に保ってフライトし続けるのは案外大変なものです。この日は8Rとという東向きの滑走路に初めて着陸しました。この日はモントリオールを離陸する段階で燃料をタンク満載に入れての離陸でしたが、向かい風が時速150キロほど吹き続けていましたので、フライトプラン通り飛んでも燃料はギリギリという感じのフライトでした。フライト中は常に燃料の確認をし、万が一の場合に備えてプランB、プランCまで色々考えながらのフライトとなりました。 通常は5時間程のフライトですが、この日は6時間以上かかりました。ナローボディー機で6時間以上飛ぶと言うのは結構燃料的にギリギリです。6時間も飛べばカナダからロンドンくらいまで行けてしまうくらいの時間です。


 そして昨日はラスベガスからモントリオールに戻ってきたのですが、モントリオールで着陸をする際に我々の前に着陸した飛行機が滑走路を出るのに時間がかかって我々との距離が近づきすぎたため、管制塔からゴーアラウンド(着陸復行)を言い渡されました。シミュレーター訓練では毎回やるゴーアラウンドですが、エアバスの実機でやったのはこれが初めてでした。訓練通りの手順で訓練通りに綺麗なゴーアラウンドとなりました。やっぱり訓練は大事だなと再確認したのと同時に、身体がちゃんと手順を覚えていて、何も考えなくても自然と手順が出てきたことに我ながら感心しました。2回目のアプローチでは先行機がいなかったこともあり余裕をもって着陸できました。雪が積もっていたため滑走路は結構ツルツルな感じでしたが、安全に着陸できてフライト終了となりました。

(写真上:着陸をやり直し、左旋回して再度着陸となりました。)


 これまでラスベガスに行く時は「着陸の際にちょっと乱気流があったり追い風で降りるから着陸準備を早めにやろう」と気にかけるくらいだったのですが、ここ数回のフライトで毎回いろんなことが起きるので色々考え直す機会となりました。まさに訓練でやっているようなことが毎回起こるので、訓練の大切さを再確認する良い機会となっていますし、毎回色々な経験ができているのでとても充実しています。

 果たして次のフライトではどんなことが待ち構えているのか・・・。楽しみなような、そうでもないような(笑)。

 明日、またラスベガスに行って今月の仕事は終了です。


(つづく)

















2022-12-30

2022年 総まとめ

 今年も残すところあと数日となりました。2022年は皆さんにとってどんな年だったでしょうか。


思い返すと今年はコロナの影響はまだあったとはいえ、仕事もパンデミック以前と同じレベルに戻りましたので忙しく飛んでいました。プライベートでは長女が生まれてきてくれたので毎日の生活にハリがでました。体調を大きく崩すことも今年はなく、幸せな一年になったように感じます。


日本でも報道されているとおり、北米東海岸で発生した爆弾低気圧の影響もあって仕事で遅延が発生することが多いです。大雪警報が出た日もあり、しかもその日に乗務予定だったので少し心配したりもしましたが、予想していたほどの影響が出なかったのが不幸中の幸いでした。


最近乗務する際、APUが動かない機体に当たることが多いです。APUというのは機体の尻尾部分にある小さい発電機です。飛行機は駐機中には地上装置を接続して機内に電力を供給したり、冷暖房で温度調節された空気を送ります。出発の際にはそれらを取り外すため、その前にAPUを始動させて自前で電力とエアコンをかけれるようにします。また、2基のエンジンを始動させるにはタービンを回すための高圧空気が必要になるので、それもAPUでまかなうことになります。つまり、APUはかなり大事な飛行機の部品なわけです。


そんなAPUが何らかの理由で動かない状態になっても安全な運航には影響はまずありません。ただ、エンジンをかけたりする際には通常とは違う手順を踏むことになり、ちょっとだけ面倒です。なぜAPUが故障している機体が多いのかは謎ですが、風の噂では「低気温が影響している」とか、「普段よりもAPU利用サイクルが多いからAPUに負担がかかり過ぎている」とか、「単純に人手不足でメンテナンスの人たちが修理する時間がない」とか、「直せる人手はあるけど旅客需要が急速に戻ってきたため飛行機を整備する時間がなかなか取れない」とかがあるようです(安全運航に必須の整備はしっかりされていますので、手抜きをしているというわけではありません)


12月のクリスマス前後はいつも人手不足ですし、パンデミックの影響もあってかここ最近はどこの部署も慢性的な人手不足になっているようです。一時解雇されたスタッフの呼び戻しがうまくいっていなかったり、再訓練のスケジュールがそもそもいっぱいいっぱいだったりと、いろんな悪条件が重なっているようです。パンデミックの影響から完全に復活できるにはもうしばらく時間がかかりそうです。


今年も日本に帰ることができなかったことがとても残念です。本来は今月の休暇を利用して帰る予定でしたが、諸事情によりキャンセルしました。来年の春先には家族全員で帰国できればいいなと思っています。


さて、年末は今日から4連勤です。今日の午後からフロリダに行き、大晦日と元旦はラスベガスに行きます。年末年始もしっかりと働きます。今日は仕事に行く前に早めの年越し蕎麦を作る予定です。


今日の写真は娘とそり遊びをしていたときのものです。





今年も本ブログをご覧いただきありがとうございました。このブログを通していろんな方々と交流できる機会を得ていることに感謝しています。皆様、良いお年をお迎えください。来年もどうぞ宜しくお願いします。




(2023年もつづく)

2022-11-27

娘の初旅行。

  しばらく更新していませんでしたが、それなりに忙しくしています。ここ最近の仕事ではラスベガスとフロリダに行くことがほとんどで、身体にとっては楽なスケジュールをもらっています。スケジュールは毎月希望を出してセニオリティ順にコンピューターが決めていくというものですが、なかなか希望通りのスケジュールをもらえないこともあります。今月は1日間か2日間のペアリングを希望し、できれば1日間ペアリングが良かったのですが、結局はほとんどが2日間ペアリングでした。ただ、3・4日間ペアリングは避けたいという希望はちゃんと通ったのである程度満足はしています。


 ラスベガスまでのフライトはこの時期は偏西風が強いことがあり、普段なら5時間ほどで到着するところ6時間以上かかってしまうこともあります。向かい風が時速にして200キロほどの日もありますので、それだけ我々の巡行速度が落ちるということになります。こればっかりは仕方ありません。一方で、ラスベガスからの帰りのフライトは普段よりも早くモントリオールに到着できます。先日は追い風が強く、時速1000キロ以上の対地速度が出ました。


 最近一緒に仕事をする機長の中には僕よりもセニオリティが低いジュニアキャプテンがたまにいます。何だか自分が歳を取ったような気になります(笑)。自分も近い将来キャプテン昇格に挑戦するつもりなので情報収集のために色々話を聞いています。新米機長と飛ぶとなかなか面白いことも多いです。機長訓練が終わったから一気にリラックスしてダラける人もいれば、まだ機長になって一週間も経っていないのにベテラン風の発言や行動をする人何かもいます(笑)。人間ウォッチングは本当に面白いです。一緒に飛ぶ人のことをまとめて本にして出版しようかと思うほどです。


 僕の場合は機長昇格に挑戦することもできる一方、ワイドボディ機の副操縦士に戻ってまたヨーロッパ方面に飛ぶことも選べます。どちらにしてもお給料は上がりますからいいのですが、機長になれば当然責任が増しますし、副操縦士の時よりも相対的なセニオリティが下がりますので生活の質が下がる可能性が高いです。子供が小さい間にジュニア機長になることは避けたいです。ワイドボディの副操縦士に戻るとまた海外に行けて面白いことがある反面、時差ボケや睡眠不足と格闘し続けることにもなります。さらにまた機種変更訓練で2ヶ月ほど時間が取られます。こんな理由で今後の身の振り方を色々考えている日々です。選択肢があると言うのはいいことですけど。


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 10月末から今月中旬まで3週間ほど妻と娘がカナダに遊びに来ていました。まずは僕が先月末にフランスまで家族を迎えに行って、3人でカナダに戻ってきました。娘にとっては生後6ヶ月にしてこれが初めての飛行機、初めての海外旅行、そして初カナダと色々初めてが続きましたが特に問題もなく元気にいてくれ、とても楽しい時間を家族3人で過ごすことができました。きっと娘は今回の滞在のことは大きくなっても覚えていないでしょうが、僕や妻にとっては思い出深い時間となりました。帰りは妻1人で娘とフランスに戻って行きました。荷物も多いし少し不安でしたがしっかりとやってくれたので良かったです。行きも帰りも良い席を提供してもらったので彼女にとっても比較的楽な空の旅になったようです。


 明日はアメリカのタンパまでの日帰りフライトです。それが終わると来月下旬まで休暇が入っているのでお休みです。またフランス、そして今回は日本にも12月中旬に超短期間帰国する予定でいます。



 今日の写真は先日のラスベガスからの帰りの夕暮れです。この時期の夕暮れと地上の雪のコントラストはとても綺麗です。



(つづく)