2018-06-28

初ギリシャ・アテネへ。(後編)

 この「ウーゾ」というお酒、かなり強く、独特の香りがします。 透明の水みたいに見えるのですが、これに氷を入れたり、水で割ったりして飲むのだとか。 味はヨーロッパ人が好む「リコリッシュ」の味そのもの。 ミントのような味といったらいいのでしょうか・・・。 日本食には存在しない味です。 言葉で表現すらできない味です・・・。 小さいグラス一杯分飲みましたが、それで満足。 店員のお兄さんは「どう、2杯目いっとく〜?!」って聞いてきましたが、丁重にお断りしました(苦笑)。

 夕食後はホテルに戻り、午後10時過ぎには就寝。 そもそもこの日は数時間の仮眠しか取っていなかったのと、午後はずっと外を出歩いていたので結構疲れていたのですぐに寝付けました。 

 翌朝、朝5時過ぎにはお目覚め(笑)。 僕はだいたいいつもこんな感じです。 特に今まで来たことがない新しい土地の場合はなんだかワクワクしてしまって朝は早く目覚めます。 5時はさすがに早いのでベッドでゴロゴロしてまた寝付けるかなと思いましたが、結局6時過ぎには完全に目が冴えてしまいました。 そこで、ホテル内のレストランで朝食ビュッフェを食べに行きました。 クルー割引があるので破格の値段で朝からたっぷりご飯が食べれます。 これがまた美味いのなんのって・・・。 ギリシャ人、グルメを知り尽くしていると思われます(笑)。

 朝ごはんをしっかり食べたあと、ホテルチェックアウトまではまだまだ時間があるので街へ散策に出かけました。 昨日行けなかった、ゼウス神殿オリンピックスタジアムに向かいます。 徒歩20分ほどの距離でした。 朝の街はしずかで、少しだけ空気がひんやり。 昨日と違って空は青空です。 路地には猫が寝そべっていて、なんとも平穏です。 中心街に近づくと通勤ラッシュのように車やバイク、バスなどが往来していて騒々しいです。 

 ゼウス神殿には7時半頃についてしまったのですが、閉門は午前8時となっています。 仕方ないので近くにあったギャラリーのような建物と公園をふらふらしました。 そしてオリンピックスタジアムへ。


 ここは外から見るだけにしておきました。 ここが近代オリンピックの中心地なんだとか。 スタジアムの観覧席はすべて石でできているようです。 なんとも立派なスタジアム。 中央には表彰台が見えます(↓)。


 ここに来る頃には日差しが強くなってきました。 帽子を被って来て正解でした。 日差しがとても強く、肌が焼けるのがわかるかのようです。

 この次に来た道を戻り、ゼウス神殿に向かいました。 入り口には先客がいましたが、2番目に入ることができました。

 

 ゲートをくぐって入園すると、このような光景が広がります(やや逆光だったため、色合いが少しおかしいですが・・・)。 だだっ広い広場にゼウス神殿(Temple of Olympian Zeus)の跡地があります。 誰もいないので写真を撮るのには最高でした。 さらに近づくとこんな感じです(↓)。

 ここに巨大な神殿が建っていたんですね。 残っている柱にはアクロポリス同様、複雑な彫刻が施されています。

 しばらくすると、またもや野良猫がやってきてゴロン。 

 いつもこんなところで日向ぼっこしているんですね、この猫は。 なんとまあ贅沢な・・・。 

 ゼウス神殿の背後の丘には前日にいったアクロポリス・パルテノン神殿が見えます。 なんとも言えないダイナミックな風景です。 奈良の大仏さんもそうですが、昔の人がこれほど大きな建築物を当時の限られた技術や道具で作り上げることができて、しかもそれが今日にも存在しているということがとても信じられません。 なんでも、これらの神殿の柱はまっすぐではなく、やや内側に傾いて作られているんだそうです。 その意図的な歪みが地震などの揺れから建築物が倒壊するのを防いだんだそうです。 すごすぎ〜!

 神殿公園の外にはこのような門の名残も残っています。 この石に見える汚れ、街を走る車の排気ガスによってこのような色になってしまったんだそうです。 確かにこちらの車の排気ガスは汚れている印象を受けました。 ちなみにこの門は公園の外にあるので、誰でも無料で至近距離で見ることができます。

 出発前の観光も終わり、いよいよホテルに戻って出発の準備です。 途中でカフェに立ち寄り、アイスカプチーノとハム&チーズサンドイッチを購入。 コーヒーはアテネの暑い気候にぴったりで最高でしたが、サンドイッチはハズレでした(笑)。 まあ、今までのレイオーバーでは食べ物でハズレはほとんどなかったので、一回くらいは大目に見てあげることにします。

 この日は僕がトロントまでの操縦担当(Pilot Flying)です。 あいにく空港近辺には雷雲がわんさか。 出発前のブリーフィングでは、iPadでお天気レーダーの画像を確認し、離陸後に雲を避けるために進路を変更する必要があることを他のクルーと確認しました。 初めて来た空港からの出発はいつも少し緊張するものです。 どの空港にもいろんな手順があったりしますので、それらを知らないとあたふたします。 アテネ空港は思ったよりもシンプルでよかったです。

 いよいよ東に向かってテイクオフ。 離陸時の重量は180トンを超え、ボーイング767の最大離陸重量(MTOW)ぎりぎりです。 トロントまでの燃料をたっぷりと積載していますし、客室は満員御礼です。 LCC部門に移って来てからは多くのフライトが最大離陸重量に近い重さです。 こうなると、離陸時のローテーション(機首上げ)やフラップの格納時の対空スピードなどにも気を使います。 短距離を飛んでいるときとは違い、これだけ重いといつもはパワフルなボーイング767であってもなかなか上昇率が上がりません。 いつもであれば1分間に4000~5000ftくらいの上昇率が普通に出るのですが、この日は2000ft/minが精一杯という感じ(つまり、普段よりも上昇するのに時間が倍近くかかる感覚です)。 気温が高いこともあり、エンジン効率はかなり悪く、よっこらしょ、よっこらしょ、という感じで上昇を続けます。 雲を避けるため、いつもよりも機首角度を上げ、スピードを抑えながら上昇率を最大にして高度を稼いで行きます。 スピード計を見ると最大速度と失速速度の間がめちゃくちゃ狭くなっています。 いつもよりも慎重に手動操縦で北西に旋回し、ギリシャを後にしました。 ATCのおばちゃんも陽気にさようなら〜ってギリシャ語で言っていました(たぶん・・笑)。 ちなみにギリシャ語では「こんにちは」が「カリメラ」または、「ヤ・サス」「ヤ・ス」というそうです。 「カリメラ」と言われるたびにアニメ・カリメロが脳裏に浮かび、「ヤ・ス」や「ヤ・サス」と言われるたびにちょっとビクッとしました(僕の名前に似ているからです)。 思い出深い場所になりました(笑)。

 

 ギリシャから北上を続け、イタリアのベネチアの東側を通過。 それからアルプス山脈上空を通過します。 途中では有名な山・モンブラン(イタリア風にいえば、モンテ・ビアンコ)が見えました。 その後、フランス・パリ上空を通過してイギリス方面に向かいます。 イギリスではロンドン・ヒースロー空港の真南を通過。 ここまで来ると見覚えのある景色が広がります。 ロンドンの中心部やハイドパーク、ロンドン・アイなどのアトラクションもはっきりと見ることができ、ちょっとした観光気分を楽しみました。 その頃になると北大西洋を横断するための最終準備に取り掛かります。

 あとは今までなんども飛んだロンドンからの帰り道と同じ工程でした。 イギリス側のShanwickからOceanic Clearanceと呼ばれる大西洋横断許可をもらい、それによって決められたルート、高度、速度で大西洋を横断します。 途中でHFラジオの周波数を教えてもらうので、それでSELCAL(セルコール)と呼ばれる無線装置がちゃんと動いているかを確認します。 問題がないと、そこからはしばらくは誰とも交信しない時間が数時間続きます。 途中、西経30度(30W)でカナダ側のATCにコンタクトし、あとはカナダの国内へと飛び続けて行きます。 トロント空港に到着するころはあいにく嵐の予報でした。 そのため、代替空港の天気を細かく精査し、万が一のダイバートに備えた準備とブリーフィングをしました。 ところが、トロントは意外にも普通のお天気。 どうやら嵐雲は進路を南に変え、トロント周辺を逸れていったようでした。 風は強かったですが、無事に着陸。 タッチダウンも満足なものとなり、よいフライトになりました。 

 フライト後にはお客さんにお礼・お別れをいいます。 みなさんうれしそうに飛行機を後にして行きます。 「いいフライトだったよ」と握手フィストバンプ(日本語風にいうとグーパンチ?)を求めて来るお客さんもいます。 これもLCC部門ならではのように思います。 メインラインのお客さんはどちらかというと俯いて、「あ〜、やっと着いた、めっちゃしんど〜」っていう感じで去っていく方々が多かったように思います。 長いフライトで狭い機内に缶詰にされていたのですからそれも仕方ありません。

 というわけで、今回は楽しい初ギリシャとなりました。 来月末にもまたアテネに行きますので、次回はなにをしようかと今のうちからワクワクしています。 

 このアテネの旅から戻って来て、翌日にはアイルランドのダブリンに行きました。 それはまた次回。


(つづく)


2018-06-24

初ギリシャ・アテネへ。(前編)

 以前にも何度も書いたかと思いますが、多くの航空会社では病欠が出たり、悪天候や機材故障の影響で人員不足になる場合に備え、リザーブまたはスタンバイといったパイロットがどのベースにも常に数名待機しているものです。 そういうパイロットは仕事に呼ばれることもあれば、呼ばれないこともあります。 「呼ばれなければ働かなくていいんでしょ?」と思われるかもしれませんが、自宅待機中には遠くには行けず、常に携帯電話とにらめっこしているような感じになります。 当然お酒も口にすることはできません。 リザーブやスタンバイが気にならない人もいますが、大抵のパイロットはリザーブを毛嫌いしている印象です。 っと、今まで1年以上リザーブだった僕が言うのだから間違いありません(笑)

 幸いなことに、現在僕が務める会社にはリザーブという制度がありません。 その代わり、万が一欠員が出て人が足りなくなった場合には「ドラフト」という制度を使って人員を補充します。 この「ドラフト」というのは、仕事が休みのパイロットにクルースケジューラーが電話をかけ、「いつもよりも多くお給料を支払いますから、飛んでくれませんか?」と持ちかける制度のことです。 パイロットの中には休日を返上してでもお金を稼ぎたいという人が必ずいます。 また、予定がキャンセルになってなにもすることがないから、せっかくだからお小遣い稼ぎをしようかというような感じでドラフトを受け入れる人もいるようです。 この制度があるおかげで、働き次第では結構なお給料を稼ぐことができるため、メインラインからこちらのLCC部門に移動して来る人もいます。

 先日、1日にクルースケジューラーから3回もドラフト要求の電話がかかってきました。 どうやら誰かが病欠扱いでおやすみしたようです。 最初の電話はスペイン・バルセロナ行きのペアリング。 これはレイオーバーが短かったので断りました。 数時間後、今度は留守電にイギリス・マンチェスター行きのペアリングのドラフトに関するメッセージが入っていました。 電話を掛け直すと、これはレイオーバーが48時間もあるとのこと。 マンチェスターには行ったことがなかったので、観光がてらいってくるか〜と思ってクルースケジューラーに電話をかけたところ、「ごめ〜ん、そのペアリング、もう他のパイロットにあげちゃった」とのこと。 な〜んだ、と思って電話を切ろうと思ったら、「ドラフトリストに名前載っけとく?」と言われたので、「んじゃあ、お願いします」と言うと、すぐその場で「ちょっと待ってね」と保留にされました。 なんだろうと思って待っていると、「じゃあ、ギリシャ・アテネのペアリングがあるけど、どう?」と提案されました。 このペアリング、働く時間数(クレジット)が3日で20.5時間となかなか効率のよいペアリングです。 しかも、ドラフトなので、この倍以上のお給料がもらえるとのこと・・・。 クルースケジューラーのお姉さんは一気に商売根性を見せはじめ、「これだけのお小遣いがあれば結構いろいろ買えちゃったりするでしょ〜? ほら、父の日も近いし、なにかと出費もかさむでしょ? これはやったほうが得でしょ〜?」とセールストークが炸裂。 「んじゃあ・・・やります」と答える結果に(笑)。

 というわけで、初めて行ってきました、ギリシャのアテネ! トロントから大西洋を東へ横断してイギリス上空を飛び、そこから緩やかに南東に向かって降りて行くルートです。 飛行時間は9時間ちょっと。 出発が午後4時頃というなんともありがたいペアリング。 ギリシャ到着時刻はトロント時間の午前1時。 これなら僕の時差や夜勤に弱いひ弱な体も耐えられます(笑)。

 
ルートは上のような感じです。

 ヨーロッパを横断したのは今回が初めてでした。 これまたちょっと感動的なフライトになりました。 今まで行ったことがある都市の側や上空を、ヨーロッパのパイロット達が飛び回っている同じ空域を飛んでアテネに向かう。 なんだかドラマチックに思えてしまいます。 と、同時に、「ヨーロッパを飛ぶのって、北米を飛ぶのとそんなに変わらないもんだな〜」とも実感。 不思議な感覚です。


 ヨーロッパの航空管制は英語のアクセントが強く、なかなかわかりにくいエリアもありました。 やはり英国周辺が一番わかりやすく、そこからフランスやドイツ、旧ユーゴスラビアあたりまで来るとなに言ってるかほとんどわからないところもちらほら(笑)。 ギリシャの航空管制は比較的はっきりと話してくれたおかげでよく理解できたのでよかったです。 こちらも前回のリマ同様、決まったパターンの英語以外のことはなかなか理解してくれません。 日本の航空ファンや、元海外組のパイロットが日本の航空管制官の英語力不足を批判するようなことをよく聞きますが、実は他の国もおんなじようなレベルだったりすることもあります。 これは仕方ありません。 航空産業に従事するすべての人間にネイティブレベルの英語を求めること自体、無理があるように思います。 当然努力はするべきとは思いますが、語学というのは得手不得手があるものですし・・・。


 ギリシャ・アテネ空港は滑走路が並行に二本あり、今回は西から東へのアプローチで南側の滑走路に着陸しました。 空港周辺には大きな積乱雲が発生していましたが、幸いアプローチには問題なく、いつものカナダやアメリカでのアプローチと全く同じことをして、普通に着陸。 世界中どこに行ってもやることはあまり変わりません

 空港からホテルがある市街地までは車で40分ほど。 さすがギリシャという感じで結構乾いた感じの地形が続きます。 岩がゴツゴツとした山肌が見えたり。 そういうところから採掘した石で有名な建物が建てられたのだろうと想像しながらホテルに向かいました。 さすがに9時間強のフライトでの疲れが出てうとうとしているうちにホテルに到着しました。 

 ホテルにチェックイン後、数時間の仮眠をします。 これもいつもの海外フライトのときと同じルーティーン。 もう儀式のようなもんです(笑)。 数時間眠った後、ここはどこ、私はだ〜れ?状態のところを、たとえもっと眠っていたいと身体が欲していても、無理やりベッドから出てシャワーをあびて眠気覚ましをします。 そして外に繰り出します。 ヨーロッパ方面へのフライトの場合はいつもこんな感じです。 こんなことを繰り返しているんだから、健康には決して良くないと思います。 でも、不思議なものでこういうリズムにも体が少しずつ慣れて来ている実感がここ最近はあります。

 まず向かったのはアクロポリス神殿。 世界史の授業で習ったやつです(笑)。 詳しいことは覚えていませんが、ミーハーな僕は心ウキウキ。 ホテルから歩いて15分くらいの距離なので、途中で街並みを見ながら神殿に向かいました。 

 


 ここであいにくの雷雨。 仕方なく、軽食もかねて角にあった喫茶店に入りました。 

 
 喫茶店ではお水とサンドイッチを購入。 店員のお姉ちゃんに「どこから来たの?」と聞かれ、カナダから来ましたというとなぜか好反応(笑)。 「あなたが僕が今回初めて会話したギリシャ人ですよ」というと、なぜかとても嬉しそうな表情をしてくれました。 ギリシャ人はやさしい印象を受けました。 

 雨が上がったので再びアクロポリスに向かって歩き出します。 ものの5分ほどで到着。 チケットブースで20ユーロのチケットを購入し、いよいよ神殿のある高台へ。

 

 丘を登り始めると右手に劇場の跡が見えて来ます。 ここは今でも劇や芝居をするのに使われているんだそうです。

 
 
 さらに進むといよいよ教科書で習ったような建築物が見えて来ます。

ご覧の通り、周りには雷雲がわんさか。

思ったより混雑していませんでした。


 これがパルテノン神殿です。 あいにく修繕中のようで、足場が組まれていたりしました。 それでもその大きさには圧倒されます。 柱の太さが上下と真ん中では違うとか、そういうのを世界史で習った気がします。 周りには他にもニケ(ナイキ)の神殿やら、いろんな建物があります。


動画で雰囲気をお楽しみください。


ギリシャの旗の色が周りの景色に映えます。

散策中も何度か雷雨が発生し、雨宿りを余儀なくされました。 

 アクロポリスの後にもいくつか行きたいところがあったのですが、あいにくの天候だったのでホテルに引き上げました。 その後、一緒に飛んでいたクルーと近くのバーレストランに行き晩御飯を食べました。 本場のグリークサラダや、ギリシャのお酒「ウーゾ」を楽しみました。 


 
 (後半へ続く)

2018-06-15

初・南米ペルー。

 1週間強の休暇が終わり、また仕事に復帰しました。 今回の一時帰国でもバッチリ時差ボケになりましたが、とりあえずある程度機能できるレベルに戻るまでの時間は明らかに以前よりも早くなりました。 通常、僕は外国への旅行のあとは最低3日は自宅のある場所の時間帯で過ごし、時差ボケが治ってから仕事に戻るようにしています。 体調不良は許されない仕事なので、その辺りは結構シビアに考えるようにしています。 今回は2日目には仕事に戻れるくらいまで回復していました。 いつも幾つものタイムゾーンを飛び越える仕事をしているせいか、少しずつ身体が時差にもある程度耐えられる身体になってきているように感じます。 一方で、睡眠の質や時間が低下しているのもまた事実。 果たして今の仕事が健康に及ぼす害というのはどのくらいあるのか。 こればっかりは今はわかりません。 

 復帰最初の仕事で南米ペルーの都市リマに行ってきました。 南米は今回が初めてです。 赤道を超えて南半球に飛ぶ日が来るとは思いもしませんでしたが、意外と早くやってきました。

 ちなみに、航空英語ではL(エル)はLIMA(リマ)と発音します。 僕がパイロット訓練を始めた頃に必死に航空英語アルファベットを暗記したわけですが、その時は「リマってなんなんだろう?」と思いながら丸暗記したことを今でも覚えています。 リマは都市名だったんですね(笑)。

 今回の飛行経路はこんな感じです↓


 トロントを出発したあと、ひたすら南下します。 途中でアメリカのフロリダ半島を通過し、キューバ上空を飛び、ケイマン諸島、パナマ周辺を通過します。 南米に入るとコロンビアやエクアドルの西側を飛び、いずれペルーの空域に入ります。 飛行時間は往路が8時間弱、復路はトロントではなくモントリオールまで行くので8時間を超えます。 そのため、行きの便には帰りの便で乗務する3人目のパイロットがデッドヘッドで同行しています。 FOで十分なフライト(機長+副操縦士2名)ですが、どうやら今月は機長の数が余っているようで、デッドヘッドのパイロットも機長。 したがって、復路は僕以外に二人の機長が乗務しました。

 フロリダ南部からパナマまでの空域は気流が悪いことが多いそうで、この日も比較的揺れました。 また、洋上で気温も高いエリアなので、積乱雲が多く発生します。 この日も幾度となく右へ左へ雲を避けながらのフライトになりました。 飛行機に備わっている天気レーダーを駆使してのフライトになりますが、このエリアには水分をあまり含まない積乱雲も多いらしく、そういった雲はレーダーにはうまく映りません。 夜のフライトでは月明かりを利用して雲を目視確認したり、あとは雷の位置を見ながらフライトすることもあります。 この日同乗した機長の話では、パイロットの中にはこのルートを飛ぶ日は満月の日のペアリングしか選ばないシニアパイロットもいるんだとか。 このエリアの積乱雲は最高高度が高度5万フィートを超えるものもあり、こういう雲は横に避けるしかありません。 僕が乗務する767では上を超えることは不可能な高度です。

 南米コロンビア、エクアドル、ペルーのあたりには高度2万フィート(6000メートル)以上のアンデス山脈が連なります。 そのため、この付近を飛ぶ時には万が一の急減圧やエンジン停止に備え、エスケープルートというルートが設けられています。 フライト中はそのルートを確認しながら飛びます。 南米に到達する頃には外は真っ暗なので、あいにくアンデス山脈が見えることはありませんでした。 残念!!!

 リマ空港はアメリカや他の南米の国々からのフライトで比較的忙しい空港です。 この日は北からのアプローチ。 ストレートインILSでの着陸となりました。 着陸後に問題発生(汗)。 予定よりも20分も早く到着したため、到着ゲートが空いていませんでした。 仕方なく無線でカンパニーに連絡をしますが、英語がなかなか通じない・・・。 10回ほど呼びかけてやっと返事をしてくれたと思ったら、英語が通じず、こちらからの呼びかけが無視されるような状態になってしまいました。 仕方なくディスパッチャーにACARSでメッセージを送り、ディスパッチャーが直接電話をかけてくれたようですが、それでもメッセージがなかなか通じなかったようで。 結局スケジュールの到着時間よりも10分以上遅れてのゲートインとなりました。 南米ではこういうことがよくあるそうです。 英語が通じないことも多くあるそうです。 特に、航空無線英語以外の英語は通じないことがよくあるそうです。 なるほどなるほど・・。

 実はリマには先週と今週の2回行ってきました。 2回ともレイオーバーは24時間ほど。 初めての南米の街だったのでちょっとだけ不安でしたが、想像を大きく裏切られる結果となりました。 

ペルー、リマ。 大好きです。 

 2回ともかなり楽しいレイオーバーとなりました。 食べ物は美味しいし、人はみんなやさしい。 スペイン語は話せないけど、英語をなんとか理解しようとしてくれます。 街は味がある。 カラフルな建物も多くて見ているだけでも楽しい。 北米では見ないような動物もいる。 なにより良いのはトロントとの時差はたった1時間! ヨーロッパに行くと時差に苦しむこともありますが、ここはそういったことがない。 今後もリマに行きたいと思わせてくれるようなレイオーバーになりました。

 では写真をどうぞ!

赤道(緯度0度)を通過!

街はバスがいっぱい。

 
バス。


またバス。 どれも結構満員。 ドアを開けっ放しで走っているバスもちらほら。

街はあざやか。

カフェで一服。 このエスプレッソマシーン、ペルーに2台しかないそうです。
 
公園は賑わってます。 靴磨きやらサッカーのトレカ売買やら。

そして公園にはなぜか猫がいっぱい。

すやすや寝てます。

3匹まとまって寝てました。

マスコット猫。

 
チュロスやらパンやらフルーツやら。 いろんな露店がありました。

どことなく生活のリズムがスローな感じ。

 
恋人の公園。

リアルな壁画。

街の標識や道路標示も当然ながらスペイン語。 PAREはSTOP。

 
新聞スタンド。

こういう古びたカラフルな建物も多くあります。

街のお店からはパワーを感じます。


車の多くは古い日本車や韓国車。

なかにはこんなフランス車も。

太平洋。

サーフィンをする人も多く見かけました。 安くサーフィンギアをレンタルできるそう。

この日は霧っぽい感じ。 この時期(南米は秋)は常にこんな感じだとか。

 
灯台のある公園。

立派な灯台です。


鳩のような鳥。 目が青いです。

ペルーでコーラといえばインカコーラ。 味はクリームソーダみたいで美味しいです。

 
これはロモ・サルタード。 ペルーを代表する国民食だそう。 超美味。

モントリオール空港に到着し、飛行機を後にします。 長いフライトお疲れ様。

 

 次回のフライトではアイルランドに行く予定でしたが、今日からしばらく休みが続き、特に予定もないので仕事をいれました。 明後日からギリシャのアテネに行ってきます!


(つづく)