2020-08-07

過去ログ:2006年11月6日〜2006年11月7日

ビクトリア23日目:天気予報の読み方の復習
2006年11月6日月曜日

 
 言うまでもなく、今日も天気がいまいちでした。 雨が降ったりやんだりで、雲は相変わらず低かったです。 明日はようやくお昼から晴れ間が出る予定です。 明日は午前中にスクールに行き、インストラクターをあてがってもらおうと思っています。 日本人インストラクターの方もいますが、忙しそうですし、もともと現地のインストラクターと飛ぶつもりでいたので、明日はマネージャーのジェリーとこの件について話をして決めたいと思っています。 今回の事業用パイロット免許の訓練では、教官と飛ぶ時間は35時間で、後はすべてソロで飛ぶことになると思います。 ですので、一旦ソロに出れるようになれば、あとはインストラクターなしで自分1人で飛ぶことになります。 そうなれば飛行機の予約だけで済むのでますます手続きが楽になると思います。 

 さて、今日は天気予報の読み方の復習をしました。 天気図には大きく分けて2種類あります。 1つは文字で表示される天気情報、もう一つはグラフや図を用いて表示される天気情報です。 

 一番頻繁に確認するのはMETAR(メター)と呼ばれる空港で観測された実際の気象情報の報告です。 Nav Canadaのウェブサイトのこのページ(リンク)で、Aerodrome IDのところに「CYYJ」といれて「Get the Bulletins」をクリックしてみてください。 情報は常にアップデートされていますが、今現在の情報は次の通りになっています:
 
METAR CYYJ 070600Z 16004KT 30SM FEW030 BKN048 BKN160 OVC240 16/10
A2968 RMK CF2SC2AC2CI1 SLP051=
 
どうですか、文字ばっかりでしょ?(笑)。 これを解読すれば、CYYJ(ビクトリア国際空港)での天候が分かります。
 
まず、最初のMETARは「これはMETAR情報です」ということですので、特に意味はありません。 
 
次のCYYJは「ビクトリア国際空港での天候」ということです。 
 
その次の070600Zですが、最初の二桁が日付、その後の四桁が時間、ZはZulu Time(=世界標準時間)ということを表しています。 つまり、「(今月の)7日目の6:00世界標準時現在」ということです。 ビクトリアは世界標準時よりも8時間遅いので、世界標準時の午前6時はビクトリアの午後10時ということになります。
 
16004KTは、「風向160度、風力4ノット」、
 
30SMは「視界30マイル」、
 
FEW030は「1/8-2/8の雲が300ftにある」、BKN048は「5/8-7/8の雲が480ftにある」、BKN160は「5/8-7/8の雲が1600ftにある」、OVC240は「8/8の雲が2400ftにある」ということを表しています。 この、「8分のなんとか」、というのは、空をどの程度の雲が覆っているかということを数字で表しています。 つまり、0/8は雲はまったくない状態で、8/8のovercastは完全に雲で空が覆われている状況を表します。 
 
16/10は「気温摂氏16度、露点摂氏10度」、
 
A2968は「気圧2968hpa」、
 
RMK以降はRemarks(備考)で、雲の組成状況を表しています。 ここでは割愛します。
 
ということで、雲が300フィートということは約90mのところに雲があるということで、これでは離陸したらすぐに雲があることになってしまうので、フライトできません。 
 
 今回はかなり専門的な内容を書いてしまいました。 あんまり面白くないかもしれませんね。 パイロットを目指す方は毎日METARを読んで、解読方法を完全に身につけておく必要があります。 なれればたいしたことはありません。 また、上記のリンクでCYYJを入れる箇所の上で、「Plain Language」を選択すると、すべて砕けた英語に解読して表示してくれますので、METARの読み方なんか覚えなくてもいいといえばいいことになります(笑)。
 
 今日はMETARのほかにもGFAやANAL、PRGやFDといったすべて専門的な天候に関するデータの解読方法を復習しました。 そのほかにはフライトの手順を説明しているDVDを見たり、散歩をしたり、郵便局に行ったりしました。 ヘッドセットも今日ネットで注文しました。 David Clarkというアメリカの超有名なブランドのヘッドセットです。 約3万円の品です。 カナダで買うと4万円以上しますが、アメリカのショップでオーダーしたので3万円ほどで済みました。 アメリカの友人宅に届くようにしましたので、今月中旬に感謝祭の休暇でアメリカを訪れるときにピックアップできると思います。 
 
 もうビクトリアに着て23日です。 いい加減明日以降になるべく早くフライトしたいと思っています。 
 
 明日はフライトの報告ができるか?! お楽しみに!
  
(つづく) 

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ビクトリア24日目:祝!初フライト
2006年11月7日火曜日


 今日でビクトリア到着後24日が経ちました。 そしてようやく・・・フライトに出ることができました! 朝起きると外は曇り気味ではあったもののなんとかもっている感じでした。 昨日の書き込みで説明したMETARを見てみると、とりあえず大丈夫のようです。 雲も2500フィート以上と、有視界飛行に必要な視界と雲の高度が保たれています。 インストラクターに電話をして、12時から飛びたい旨を説明しました。 

 朝はいつものようにビーチへ散歩に行きました。 そこでも天気はなんとかもっている感じであることが確認できました。 部屋に戻ると大家の奥さんのスーザンが「机欲しい?」と聞いてくれ、無事僕の部屋に勉強できる環境が整いました。 部屋が狭いので、机を入れる代わりにナイトデスクを外に出しました。 その後も、「コーラいる?」とか、「ハンガーは必要?」とか、スーザンがいろいろ聞いてくれました。 見た目は冷たい神経質な女の人かと思いきや、結構親切です(笑)。 机は小さいですが、とりあえずはコンピュータを置いたりできるので満足しています。 ありがとう、スーザン!

 さて、10時半頃に家を出発して空港まで歩きました。 自転車でもいいのですが、こちらに来て結構歩くのが楽しいので、空港まで歩いていくことにしました。 片道40分の道のりです。 歩きながらも無線機で無線を聞きながら耳を慣らします。 とはいえ、なかなか慣れませんけど(笑)。 地名やビクトリア空港独特の言い回しなどがあるようで、なかなか聞き取れません。 これから訓練を重ねて行く途中でインストラクターに聞きながら学んで行こうと思います。 なんでもそんなに簡単に身に付く物ではないです。 じっくり取り組む必要があると思います。

 空港に着き、少しマニュアルでも読もうかと思いましたが、興奮しているのでなかなかリラックスできません。 そうこうしているうちに12時になり、インストラクターと落ち合いました。 今日が初めてなので、フライト前にすること(例えばログブックにサインをしたり、トランスポンダーコード(後日説明します)の取得方法など)を教えてもらいました。 その後、ブリーフィングルームに入り、「まずはウェイト&バランスをやりましょうか」と言われました。 「ウェイト&バランス・・・」 最初は戸惑いました。 ウェイト&バランスとは、飛行機の重さがフライトするための制限重量内に収まっているかどうか、バランスがちゃんと取れているかを確認するものです。 独特の方法で計算するのですが、4年前はクロスカントリーに出る前などにやりました。 頭ではわかっていても、実際にやろうとするとなにから始めたらいいやらわかりません(涙)。 少しずつ教えてもらいながらなんとかウェイト&バランスの計算をし、すべて制限内に収まっていることを確認しました。 その後は外に出て、フライト前の「Walk-around」とよばれる機体検査をします。 その名のとおり、機体の周り(around)を歩いて(walk)検査します。 燃料がちゃんと入っているかを目視確認したり、すべての稼動箇所がちゃんと動くか、ねじが外れていないか、オイルの量は適正かなどを一つずつ確認します。 確認が終わるといよいよコックピットに乗り込みます。

 コックピットには4年ぶりに入りました。 サスカトゥーンで飛ばした飛行機とほぼ同じ型式なので戸惑うことはあまりありませんでしたが、どこにどの計器があるかをすっかり忘れていました(笑)。 「スピードはどこだったっけなぁ・・・」とか、「どこにタコメーターがあったっけ?」ってな具合です。 エンジンをかける前にもかかった後もチェック項目がいくつかあります。 その後Clearance Deliveryという、出発便の流れをコントロールする管制官に無線でコールします。
 
「Clearance Delivery, Cessna 152 Foxtrot Delta Lima Bravo at the Club with information Mike, local flight at 2500」
 
と言いました。 飛行機のコールサインは「FDLB」で、フォックストロットーデルターリマーブラボーと読みます。 at the Clubは「フライングクラブのところにいます」という意味です。 with information Mikeは「ATIS(天気情報)の”M”を聞きました」という意味です。 訓練のフライトはすべてローカルフライトと呼ぶそうで、at 2500は「2500フィートでのフライトを希望します」という意味です。 すると、Clearance Deliveryが許可を出し、「Contact Ground when you are ready to taxi.」と言われました。 つまり、滑走路に向けて移動を開始する準備ができたらグランドコントロールに無線でコールしてくださいという意味です。 すぐにグランドにコールすると、誘導路SとWを通って滑走路27に行くように指示されました。 27は一番長い、西に向かって走っている滑走路です。 滑走路に行く前にrun-up areaでランナップをします。 ランナップとは、出発前にエンジンを暖める目的と、エンジンやその他の機関がすべて正常に動いていることを確認する作業です。 ランナップが終わったら滑走路27の手前まで移動し、Towerにコールします。
 
「Tower, Delta Lima Bravo, holding short of 27, ready for take off.」(タワー、DLB、滑走路27の脇で待機中、離陸準備OKです)
 
と言いました。 すると、風の情報をくれ、「DLB, to the position and hold」と言われました。 これは、「滑走路に進入し、離陸の準備をして離陸許可を待ちなさい」という指示です。 「To the position and hold, DLB」と言って指示を受け入れます。 しばらくすると、「DLB、wind is 220 at XX、 cleared for take off、runway 27」(風は220度からXXノット<何ノットだったかは覚えてません・・・>、滑走路27からの離陸を許可します)という声が聞こえます。 その他にも細かい内容を言っていたと思いますが覚えていません。 「DLB」といって許可を受け入れていよいよ離陸です。

 風は真っ正面ではなく、左の方から強く吹いています。 フルスロットにすると、エンジンは轟音を上げて機体は加速を始めます。 速度が50ノット(時速80キロほど)になったあたりで操縦桿をそ〜っと後ろに引くと、ノーズギア(前輪)からふわっと空に浮き上がります。 風に流されないようにcrab(カニのように横に少し向くこと)しながら上昇を続けます。 そのまま西の方に向かって高度2500まで上昇します。 その後、しばらくするとカウチンというエリアに近づきます。 カウチンはカウチンセーターのカウチンだと思います。 ネイティブカナディアンの地名だと思います。 その当たりからいよいよエアワーク(訓練)が始まります。

 まずはターン。 ヘディング(方向)をいわれ、その方向に舵をとります。 高度は2500ftのままで保持します。 それを何度かやり、風の様子を見ながらトレーニングエリア内を移動します。 その後、スローフライトというテクニックに。 本当であれば高度が下がり始めるはずの姿勢でフライトをしているのに、上昇気流が強すぎるのか、どんどん上昇します。 仕方なくエンジンパワーをしぼり、強制的に降下して高度を維持します。 それをなんどかやったあと、ストール(失速)をやりました。 エンジンをしぼり、わざと飛行機を失速させます。 失速寸前にはストールホーンと呼ばれるブザーがコックピット内に鳴り響きます。 とても気味の悪い音です(笑)。 ストールからの回復の練習を数回やったあと、スティープターン(角度のきつい180度方向転換)を数回しました。 ターンをするときにはパワーを足さないと飛行機は高度が落ちてしまいます。 高度を維持しながらのターンは結構難しいものです。 すべてのエアワークを終え、ビクトリアに戻りました。 途中でインストラクターがタワーとコンタクトしていましたが、僕はなにを言っていたのかははっきりとはわかりませんでした(汗)。 現在の位置を報告していたと思うのですが、なにせ地名はあまりわかりませんからさっぱりです。 空港そばに戻ってくると、サーキット(空港周辺の飛行パターン)の中を飛び、無事滑走路27に着陸しました。 風があったものの、きれいに着陸できたと思います。 もちろんインストラクターのヘルプがあったからですけど(笑)。

 今日の感想としては、まずはようやく飛べてよかったという安堵感が一番大きいです。 次に、4年前に習得したテクニックのほとんどを粗いながらも体が覚えていたことに安心しました。 最初の30分くらいはかなり戸惑いましたし、やることの多さ、慣れない空域でのフライト、天候の悪さ、前回のスクールとの手順の違いなどからかなり圧倒された感がありましたが、振り返ってみるととりあえずは70点くらいの合格点は付けてもいい内容だったと思います。 

 それにしても今日の天候はひどかったです。 いきなり右から左に押し流されるような突風に遭遇したり、ジェットコースターのように突然高度が下がって体が浮き上がるようなこともありました。 慣れない人だったらきっと気分が悪くなるような状態でした。 これだけの環境でフライトしていれば、天候が回復したらもっと落ち着いてフライトに専念できると思います。 今日の反省としては、さまざまなことに圧倒されていたために外を見る時間が少なかったということです。 飛行中はとにかく外を見て、周りに他の航空機がいないことを確認しながら飛ばなければいけません。 次回からはもっと落ち着いて外を確認しようと思います。
 
 さて、明日も予定では午前10時からフライトです。 明日は今日よりも少しでも上手にフライトできるように頑張ろうと思います。 天気がどうなるかわかりませんが、この調子で順調に飛行時間を積んで行きたいと思います。
 
 ではまた明日! 
 
 
(つづく)

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【編集後記】

今回ようやくビクトリアでの初フライトとなりました。正直あまり覚えてはいませんが、きっとかなり緊張していたのだと思います。最初の頃や慣れていない頃はどうしても飛行機の動きを抑えることができず、結構風に流されたら流されたままになってしまうことがありました。慣れていないとどこまでアグレッシブに操縦桿やラダーペダルを動かして良いのかわからずそ〜っと動かしてしまい、結果的に飛行機の動きに後から対応するという奥手の反応になってしまうのだと思います。慣れれば飛行機がどういう動きをするのか想像できるようになりますから、迅速にコントロールを動かせるようになります。でも、やりすぎるとオーバーコントロールになることもあります。

METARの解読法を偉そうに書いていますが、一つ間違いがあります。どこでしょう?(笑)。もしかしたら一つ以上あったりして・・・。

よく聞かれる質問に「カナダに行く前にどのくらいの英語力がありましたか?」というものがあります。日常会話以上はできる英語力でした。それでも航空無線は最初はちんぷんかんぷんでしたね。やはりローカルな地名(今回のカウチンとか)を言われると英語力云々ではなく、知らないから耳がプロセスできないということが多々ありました。これはエアラインパイロットになってもそうで、初めて行く空港などでアプローチやアライバルのウェイポイント名を言われて、????っとなることがときどきあります。そういうときは予習をしてどのポイントを言われるかをある程度予想しておきます。まったく予想していないのと、ある程度予想をしておくのとでは対応がだいぶ変わって来ます。予習は大事です。それでもわからないときは素直に「Say again?」です。英会話ができる人間でもこんな感じですから、ネットなどで航空無線の内容を聞いてみてなにを言っているかさっぱりわからなくても落ち込む必要はありません。英語力がある程度ついて、耳が慣れればわかるようになります。


(つづく)

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