2020-09-05

過去ログ:2006年12月22日〜2006年12月23日

ビクトリア69日目:長い一日。
2006年12月22日金曜日


 タイトル通りの長い一日でした。 昨晩はあまりよく眠れず、変な夢を何個も見ました(笑)。 朝は8時に起床(日本の皆様、起きるのが遅くてごめんなさい!)し、10時にクラブに着くように家を出ました。 朝のATISを聞いてみると天気は良いものの、cumulus(積雲)があったり、意外にもシーリングが低かったりします。 本土に行くには海を超えますし、万が一のエンジントラブルの場合を想定してC-172がグライドして陸地に辿り着けるようにするため高度を高くとる必要があります。 予定の高度は5500ftとしていましたので、今朝のコンディションは「ふむむ・・・」という感じでした。

 なにはともあれクラブに到着し、C-172のPOH(Pilot’s Operating Handbook)を借り、Nav Logというナビゲーション作成用のフォームを数枚とフライトプラン提出用のフォームをディスパッチャーのブラッドからもらい、ブリーフィングルームを使ってプラン作成開始です。

 先日ブリーフィングをしてもらったおかげで、スムーズにプランを立てることができました。 それでも要領が悪く、チャートに線を引いたり、ドリフトラインという線を引いたりするのに結構時間がかかってしまいました。 ビクトリアからアボツフォード、アボツフォードからチリワック、チリワックからビクトリアに戻るという3つのルートから成り立つプランを作成しました。 1つのルートにつき1つのプランを立てます。 すべてのルートを作成するのになんやかんやで1時間以上かかってしまいます。 ようやく完成!っと思っているところにインストラクターが登場。 そしてシーリングが低く、飛んで行く予定だった空港の天候もあまりよくないとのことで、予定のルートはとりやめに・・・(笑)。 僕の約2時間のプランはすべて台無しになってしまいました(涙)。 それじゃ今日はもう飛ばないのかと思いきや、北ならいけるかもしれないということで、すぐにビクトリアからナナイモ(CYCD)、ナナイモからクオリカンビーチ(CAT4)、クオリカンビーチからビクトリアというプランを立てることになりました。 チャートに書いた線を消しゴムで消して、一からプラン開始です(涙)。 これでまた1時間半ほどかかることに。 これらの空港はすべてビクトリアから見て北西に位置する空港で、バンクーバー島(ビクトリアがある島)にある空港です。 ですから、CYYJからCYCD、CYCDからCAT4はいいのですが、CYYJからCAT4は他の2ルートとほぼ同じエリアを飛ぶことになり、チャート上に線を引いても線だらけでなにがなんだか分からなくなってしまいます。 インストラクターに相談したら、とりあえず直線だけ引いておいて距離を計ってだいたいの必要時間がわかっていれば、ルートのプランニングはクオリカンビーチでやってもいいとのこと。 ということで、とりあえずは往路のプランを済ませました。 その後、4年ぶりとなるフライトプランを電話でファイルしました。 4年前にどうやってやったのかは正直まったく覚えていませんが、恐らくサスカトゥーンのインストラクターに言われるがまま、なにも理解しないままファイルしていたと思います。 今回は分からないところはインストラクターに聞いたりサンプルを参考にして仕上げ、KamloopsというところにあるFIC(Flight Information Center)に電話をしました。 言う項目はたくさんありますが、言い方はトランスポンダーコードを入手するときのように言葉を羅列するのがベースとなります。 特に問題なく、全行程に必要な時間は2時間40分ということでプランを提出しました。

 ようやくビクトリアを出発できたのがちょうど午後2時です。 この段階でかなりのスピードで計算をしたりしました(それも普通の倍!)ので、かなり疲労していました(笑)。 フライトは滑走路09からレフトターンをして、いつもローカルウエストに行くときのカウチンディパーチャーをタワーから指示されました。 本来のプランでは2500フィートまで上がる予定でしたが、この段階で既に雲がかなり下がってきています。 インストラクターの指示でとりあえずは1300フィートほどで水平飛行に移りました。 カウチンを超え、いつものローカルウエスト方面に抜けて飛行を続けます。 この辺りから予定のルートをたどります。 久しぶりのクロカンフライトということと、やることの多さ、コクピット内のマネジメントの下手さがもろに出て、あたふたしてしまいます。 そうこうしていると予定のヘディング(方向)とは違う方向に飛んでしまいます。 ナナイモまでは30分もかからない道のりなので、上昇してヘディングを決めて、グランドスピードを出して、などなどをやっていると半分パニック状態です。 空港まではとりあえず辿り着けましたが、内容は60点というところでしょうか。 ナナイモはナナイモレディオというタワーのような設備があり、そこの人と交信をします。 レディオはタワーとは厳密には違うため、指示や許可は出しません。 ただ情報を提供してくれるだけです。 風の情報、altimeterのセッティング情報(気圧)、使用されている滑走路の番号を教えてもらい着陸します。 着陸後は誘導路を使って管制室の横にあるスペースで一旦停まりました(エンジンはかけたまま)。 そしてすぐに次のクオリカンビーチに向かって離陸です。 クオリカンビーチまでの道中も予定の進路から逸れました。 空を飛びながら数字の計算をするというのは文系の人間にとってはなかなか大変です(笑)。 「空港を何時に離陸して、ここを何時何分に通過したから、グランドスピードは何ノットで、残りの距離は何マイルだから、予定到着時刻は何時何分・・・」といった計算をフライトコンピュータを使ったり暗算をして行います。 慣れるのには時間がかかると思います。 クオリカンビーチはmandatory frequencyという周波数があるだけで、誰とも無線で話をすることはありませんが、自分がどこにいるか、なにをしているかなどを他のトラフィックに分かるようにbroadcast(放送)しなければいけません。 誰とも話さないので気楽です(笑)。 ただ、他のトラフィックがいないかに注意をしなければいけません。

 クオリカンビーチに無事到着し、ターミナルビルのようなところ(平屋の小さいビル)の前に飛行機を停めました。 するとターミナルから人が出て来て、「そこにはもうすぐナバホが飛んでくるから、あっちに移動して」といって、ジェットヘリがちょうどエンジンスタートをはじめたところを教えてくれました。 ジェットヘリが離陸してからインストラクターと飛行機を押します。 水平尾翼のところを下に押すと前輪がういて、メインギア(2輪)だけになるので、そこで横に押して方向転換します。 そのあとは翼と胴体をつないでいるストラットを押して人力で移動させます。 さすがに172は152に比べると重いです。 1人で動かすのは結構大変だと思います。

 クオリカンビーチに着いたらターミナルの中に入り、帰りのプランを立て始めます。 チャートに書いてあったナナイモまでとクオリカンビーチまでの線はすべて消し、新しい線を引きます。 距離の計算、時間の計算、燃料の計算などをしてプランを立てます。 フライトプランに全行程は2時間40分として提出してあるので、その時間が終わるまでにビクトリアに帰ってフライトプランを閉じなければいけません。 そうでないとSAR(Search and Rescue) が発動され、エラいことになるそうです(汗)。 日暮れも近づいているので急いでプランを立てました。 なんとか用意をして再度離陸です。 ビクトリアまでは60マイルほどの距離だったと思いますが、かなりヘッドウィンドが強かったので、結構時間がかかりました。 そのため、インストラクターの指示でナナイモ辺りを通過中にpacific radioというFISE(Flight Information Service En Route)に無線でコールし、フライトプランの到着予定時刻(ETA)を30分延長してもらいました。 そんなことが出来るとは知らなかったので、便利だな〜って思いました。 ナナイモを通過するころにはすっかり暗くなり、ビクトリアに到着したのは日が沈んだ午後5時頃でした(おかげでクロカンフライトの一部がナイトフライトの時間に算入できました!)

 結局今日のフライトは3時間弱のクロカンフライトとなりました。 クラブに到着してkamloopsのFICに電話をしてフライトプランを閉じました。 これを忘れるとSARのお世話になりますので注意が必要です。 ログブックに必要事項を記入したりしてすべてを終えたのが6時頃でしょうか。 よく考えたら朝にバナナブレッドを2枚食べただけで、あとはなんにも食べていません。 かなり疲労しました。

 ようやく家に帰って来て、そのままベッドに横たわりました。 今日は4年ぶりのクロカンフライトで正直かなり参りました。 「よく4年前は1人でこんなことできたな〜」っていうのが正直なところです(笑)。 平地でなんにもないサスカトゥーンでのクロカンはここでのクロカンよりは明らかに簡単で、安全だったと思います。 なにかあればそのまま下の麦畑に降りるだけで済みますから。 ここでは山があったり海があったり、コントロールゾーンがあったりと、かなり勝手が違います。 でも、この試練を乗り越えれば本当のパイロットとしての技量が身に付くんだと思います。 このまま頑張ろうと思います。 でも今日はばてばてで半べそ状態です(汗)。 「クロカンフライトに行ったら写真を撮るぞ〜〜!」っと意気込んでカメラを持って行きましたが、写真どころは食事すら摂れませんでした(苦笑)

 長くなりましたので今日はこの辺で。 写真はクラブ内にあるPIK(Pilot Information Kiosk)で、いつもこのPCを使ってMETARなどの情報をフライト前に確認します。

 今夜はビールでも飲んでベッドにダイブします(笑)。

 

(つづく)

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ビクトリア70日目:ナイトソロ。
2006年12月23日土曜日


 今日は久しぶりに早起きをしてみました。 それでも朝7時過ぎですが。 日本で働いていたときは平日でも休日でも朝は7時15分に起きるという生活をしていたので、そのリズムに戻してみようかと思ったわけです。 ところがどうでしょう。 こちらの朝7時はまだ真っ暗です。 そこでデータを確認してみたら、日の出は朝8時、日の入りは午後4時とのことです。 真っ暗な中起きて、なにもすることがないと、早起きしたことが腹立たしく思えてきます(笑)。 日本のように「めざましテレビ」が放送されているわけでもなく、こちらのテレビは朝から観る気もしないですから、結局ベッドに舞い戻り、再度起きたのは午後9時過ぎといういつものパターンで落ち着きました(笑)。 これが夏とかなら朝早く起きてサイクリングというのもありなんでしょうが・・・ しばらくはだらだらさせていただきます(笑)。

 さて、今日は朝から忙しい一日でした。 昨日の疲れは昨晩の睡眠とビールによって解消され、朝はすっきりです。 まずは昨日のクロカンフライトの復習をしました。 クロカンのプランを立てるときに、飛行機の飛ぶ方角を決める「Set Heading Point」(SHP)というポイントを決めて、そこに到達したら予定の方角に方向を変更するということなのですが、そのSHPに着いたときにはやらなければいけないことが3つあります。 「3Ts」と呼ぶらしいのですが、(1)Time(SHPに着いた時間をログに書く)、(2)Reset D.G.(Directional Gyroを確認してずれていたら方位磁針を見て再設定する)、(3)Turn(予定の方角に飛行機をターンさせる)ということらしいです。2つ目のやつはreseTのTだそうです(笑)。 このことを頭にいれ、後はpressure altitudeという、altimeterの気圧設定を29.92(standard)にしたときに表示される高度、外気温(コクピット内に温度計があります)、ASI(Airspeed Indicator)に表示されているIAS(Indicated Airspeed)を使い、フライトコンピュータを使ってTrue Airspeed (TAS)の計算をする方法などを復習しました。 他にもETA(Estimated Time of Arrival)やグランドスピード(対地速度)の計算方法、予定のコースからドリフトした場合のコースの変更方法などを復習していつものようにドキュメントとしてまとめました。 

 これが終わったら、またもや熟れすぎになりかけのバナナが4本もあったので、今日も懲りずにバナナブレッドを焼くことにしました。 牛乳がないのでスーパーに買いに行くと、ドアのところにホリデーシーズン中の営業時間が貼り出されています。 よく見ると、25日26日は休業、その後も元旦は休業、その前後は限られた時間だけ営業となっています。 「こりゃまずい・・・」っと突然焦りました。 っというのも、こちらには日本のコンビニのように年中無休のお店なんてないと思いますし、ホリデーシーズンはほとんどの人が休んでしまうので、下手したら食べ物がそこをついて餓死なんてことに・・・はならないまでも、食べ物がないのは困ります。 ということで急遽予定を変更し、色んな物を買い込みました。

 家に帰って来て、まずはバナナブレッドを焼きます。 レシピを見ながら用意をしますが、だいぶ慣れてきたのか手際がよくなりました。 さっさとオーブンにぶち込んで、その後は今晩のおかず、餃子の用意をします。 前回Fujiyaにいったときに買っておいた餃子の皮と、昨日スーパーで買っておいた白菜に似た野菜(?)やネギに似た野菜(?)を切り刻みます。 日本でも餃子は作ったことがあったので、それなりの形になりました。 結局50個ほどの餃子を作って、3分の1は今夜のおかず、残りは冷凍保存となりました。 下準備が結構時間がかかるので、バナナブレッドの用意と合計で2時間以上は料理をしていたと思います。 餃子は今夜食べてみましたが、少しジューシーさにかける感じ・・・ なにがいけなかったのか。 次回はもっとうまくできるように頑張ります。

 さて、今夜は6時からのナイトフライトでした。 6時ちょっと前についてウォークアラウンドを済ませ、インストラクターが現れるのを待ちます。 6時30分頃には真っ暗な中を出発。 サーキットを教官と飛び、3回タッチアンドゴーをしたところで教官が降り、僕が1人でナイトソロデビューとなりました。 風もほとんどなく、とてもスムーズでした。 ただ、日が落ちて気温が下がって来たからか、霧が出始めました。 滑走路09のシュレスホルド(threshold=滑走路の一番端)あたりから1000ftほどは霧があり、視界が一時的に悪い感じです。 それでもたいした影響はなかったので、タッチアンドゴーを繰り返します。 途中で滑走路が09から27に変わり、途中で180度ターンをしなければいけなくなりました。 どうも僕がソロをやるときはこういう不思議な指示が頻繁に出されるようです。 今日もセスナ172でのフライトです。 VFCでは夜の172は152のレンタル料金で飛ばすことができるのでお得です(1500円/1時間 ほど割安になります)。 ディスパッチャーに「なぜ夜は安いの?」と聞いたところ、「なるべくたくさんの人に172を使ってほしいから」という答えが帰ってきました。 お得なのは良いことです(笑)。 フライトですが、サーキットは特に問題ないですが、やっぱり着陸が152とは少し勝手が違います。 着陸後にバウンドしてしまったりしました。 なぜかを考えたら、やっぱりエアスピードが高いということと、接地がスムーズではないからだと思います。 次回はもっとグランドエフェクトで水平飛行を保ち、エアスピードがもっと落ちてからフレアをかけようと思います。 タッチアンドゴーを終えて普通の着陸(full-stopと言います)をするときの着陸許可では、着陸するのは滑走路27なはずなのに09(正反対方向)に着陸許可が出ました。 きっと間違いだと重い、「Cleared to land 27・・・」っとおそるおそるタワーに言うと、「You are right!!」っという笑い声が。 お疲れのご様子です(笑)。 遅くまで管制官の方々もご苦労様です。 最後のファイナルターンで数秒霧か雲の中に入って周りが見えなくなる瞬間がありました。 ちょっと冷やっとしましたが、計器を見て安全にファイナルに乗せれました。 やっぱり計器飛行の技術は大切だな〜と改めて実感しました。 

 今日の写真は夜の172のコクピットです。 暗いので写真がぼけちゃいました。 すみません。 この赤い色が以前話したコクピット内の照明です。 夜間視力に影響がでないように赤いライトになっています。 明るさはこの写真くらいの明るさですが、周りが真っ暗なので、時間が経つにしたがってこの明るさでも十分必要なものは見えるようになりますから不思議です。 そういえば、今日も空は綺麗で、途中は5秒間ほどの流れ星も目撃しました。 カナダの空は綺麗です!

 明日は天気が良ければナイトソロに出かけようかと思っていますが、どうも天気は下り坂のようです。 25日26日は教官が全員休みをとる(働いちゃだめなんだそうです)ということで、僕も休みにしようかと思っています。 26日はBoxing Dayという休日です。 Boxingとはいっても、スポーツのボクシングではないそうで、なんでも25日に働かなければいけなかった召使いに主人が箱にいれたプレゼントを渡す日という歴史的な背景がある休日だそうです。 27日には今度こそ本土へのクロカンフライトとなりそうです。 またプランを立てて、手順を確認しなければいけません。 あ〜、頭が痛い!(笑) 

 ではまた明日。

 

(つづく)

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【編集後記】

 ナイトレーティング(Night Rating)という限定解除は自家用操縦士資格を取得した後に通常行われる訓練です。これがないと夜間飛行はできません。訓練は当然夜間に行われるものが多いので、夏などの日が長い季節にやる訓練ではありません(できますが、日が暮れる夜10時近くまで待つことになります)。一方、秋口から春先にかけては日が暮れるのが早い(早い時だと午後4時過ぎには暗くなる)ので、ナイトレーティングにはもってこいです。実際、僕が住んでいるところの近くにある小規模空港でも最近はナイトレーティングをやっているのか、小型機のエンジン音が夜になると聞こえてきます。

 夜間視力を守るために赤いライトを使ったり、なるべくコクピット内の照明を薄暗くするのが基本ですが、プロになるとそうとも限りません。フライト中では書類(ログブック等)をこなす必要もあり、ある程度の明るさが必要です。ましてや一緒に飛ぶ機長が高齢の方だと薄暗いコクピットで細かい文字を読むのが難しい人も少なからずいます。そういう人は「照明つけてもいい?」と断りを入れてから大きな明るい室内灯をつけます。自分勝手な人であればいきなり眩しい照明をつける人もいますが、ごく少数です(笑)。人によって好みはありますが、僕は夜間フライト中はなるべく照明をつけたままにするほうが好みです。照明が着いていたほうが眠気を抑えることができますので。大西洋横断中などはカナダ時間で真夜中から早朝の時間のフライトになるため、その時間にライトを消して真っ暗にすると必然的に睡魔に襲われそうになることもあります(パイロットも人間です。超人ではありません)。そういうときはガンガン照明をつけて眠気を抑え、コーヒーを飲んだり、食事を採ったりすることもあります。そうこうしていてヨーロッパ大陸に差し掛かるころには日が昇ってきます。この日差しが身体にはかなりきつい。体内時計では眠っているはずの時間なのに、目からの信号(日光)は朝の光なので、いきなり体内時計が狂うような感じがします。かれこれ半年近くフライトをしない日が続いていますが、この夜間のフライトはいまのところあまり恋しくありません(苦笑)。やはり深夜のフライトを頻繁にこなすのは健康にはよくないと思いますから。


(つづく)

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