そんな状況ですから、今は完全にセーブモードでの経営になっています。 決算報告のプレスリリースにも含まれているとおり、向こう数年間の機材プランも見直され、新たなプランが発表されました。 コロナが一旦収束してもすぐには旅客数回復は見込めず、今後しばらくは便数も就航路線数も少なくして運航していく予定ということです(2019年の水準に戻るには2~3年はかかる見込み)。 その計画に基づき、次の3機種、計79機が即刻、または近いうちに退役させ、運航規模を一気に縮小することになりました。 退役するのは、
エンブラエル190 (即刻退役)
ボーイング767 ((((;゚Д゚)))))))
(写真はすべてこちらから引用)
ということで、僕がこれまで3年ほど乗務してきたボーイング767はカナダの旅客航空会社シーンから姿を消すこととなりました。 約3年、飛行時間約1,800時間で767とは突然の別れとなりました。 昨年末まではまさかこんな日がこんなに突然やってくるとは思ってもみませんでしたが、これが現実です。
僕にとっては初めてのワイドボディ機(機内に通路が2本ある大型機)。 母国に自分の操縦で帰国したのはこの飛行機が初めて。 大西洋を横断してヨーロッパに行ったのもこの飛行機が初めて。 赤道を超えて南半球に行ったのもこの飛行機が初めて。 パイロット3名での運航をしたのもこの飛行機が初めて。 本当になにもかもが初めてで、とても良い経験をさせてもらえました。
767は、787や777と比べるとデザインは古く、燃費もよくありません。 運航速度もやや遅いですし、離陸最大重量も低め。 とはいえ、業界では「work horse(馬車馬のような働き者)」と呼ばれることも多く、多くの人々に親しまれてきました。 飛行機ファンにもいまだに根強い人気をほこります。 機首あたりを見るとどことなく昔の新幹線ひかりのような雰囲気を垣間見ることもでき、懐かしさを感じます。 GEまたはPWのエンジンはとてもパワフルで、最大積載量での離陸であってもまったく非力には感じませんでした。 さすがに重いと上昇率は落ちますが、通常のフライトではとにかくパワフルで、35,000フィート以上であってもぐいぐい上昇することができました。 とはいえ、コクピット内は古い計器類と新しいEFIS類が混在し、航空機業界が歩んできた時代の流れを感じました。 システムは信頼のおけるもので、弱い点があるという印象は受けませんでしたし、フライト中に大きな問題が起きることは一度もありませんでした。 自動操縦中に時たま意味不明なことをしでかしたり、コマンド通りの動きをしない時もありましたが、それもすべて慣れてくると予想がつき、エラーはパイロットがカバーするという感じで、「持ちつ持たれつ」な関係での操縦は楽しくもありました。 風30ノット以上、ガストが50ノット近くある嵐のなかのランディングでも安定性は抜群でした。
近いうちに次に乗務する機種が発表になります。 決まったらまたこちらで報告します。 機種決定後、トレーニングの予定が発表になり、また2ヶ月ほどの訓練が始まって新しい飛行機についての勉強が始まります。 この業界、これだけ世界情勢に影響を受けやすく、常に勉強をしつづけなければいけません。 かなりMな世界です(笑)。
最後に767の写真をご覧ください。
メインラインに所属していたころに乗務した767
1年目は補欠パイロットだったので、普段行かない場所に行きました。 これはカリブ海のバルバドスにチャーターフライトで行った時。
LAで壊れ、修理した767をピックアップしにも行きました。
オーバーヘッドパネルは737よりはモダン化されていますが、それでも古い印象を受けるスイッチ類が多くあります。 ときどきカバーがぽろっと取れることもあります(笑)
LCC部門に移ってからはウイングレットがついた767に乗ることも増えました。 ウイングレットがあるとぐっと印象がかわります。
カリブ海の国に行くと雰囲気がガラリとかわり、気持ちだけバケーション気分を体験できました。
夏はヨーロッパ、冬は中南米というパターンもよかったです。
多くの乗客のみなさんを安全に目的地まで送り届けることに喜びを感じました。
LCC部門の客室乗務員は若い子が多く、とても新鮮でした。
この曲線美。 独特のスタイルを持つ767は美しい飛行機でした。
さようなら、767! ありがとう、767!
(つづく)
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