2023-02-28

エキサイティング!ラスベガス。

  二月もそろそろ終わりですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。モントリオールはまだ雪が降る日があり、気温もマイナス10度以下に下がることもあります。春の訪れはもうちょっと先のように感じます。


 ここ最近の仕事はラスベガスに行くことがほとんどです。これまでもラスベガスに行くことが多かったのですが、今月は主に自分でリクエストしてラスベガスに行っています。今月のペアリングの多くはあまり効率の良いものがなく、特に3日または4日間のペアリングはかなり非効率です。主な理由はリージョナル航空会社がパイロット不足でルートをカバーできないようで、そのルートを我々が飛ぶと言うヘンテコな構図になっています。僕は幸いセニオリティが高いおかげでそういうルートを飛ばずに済んでいます。1日に3レグとか4レグというスケジュールはリージョナル時代にはよくやりましたが、今はもうやりたくはありません(笑)。


 さて、そのラスベガス。今月は波乱万丈なフライトになることが多いです。ラスベガス空港は四方を山に囲まれているため、一度風が強まると乱気流が発生します。また、前線が通過するにともなって風向きが頻繁に変わります。そのため、巡航中にアプローチの準備をしても降下を始めると着陸する滑走路が変更になるということが頻繁に起こります。また、ジェット気流が強い日だとモントリオールから西向きに飛んでいく際に時速200キロ近い向かい風の中を飛ぶことになることもあったり、ロッキー山脈の上ではマウンテンウェーブやタービュランスが起きることも多々あり、なかなかチャレンジングなフライトになることもあります。


 先週のフライトでは到着予定時刻にラスベガス周辺に強風警報が出ていました。風は30ノット以上、ガスト50ノット以上という状態で、多くのフライトが着陸できず、風が収まるタイミングが来るまでホールド(上空待機)させられていました。我々もホールドを指示されました。あいにくその段階で残燃料には限りがあり、天候が回復するような感じでもなかったため、これ以上ホールドすることはできなくなる残燃料になってしまう前にアリゾナのフェニックスへ目的地変更を決定しました。フェニックスに着陸後、燃料を補給し、必要な書類等の準備が整ってから再度ラスベガスに向けて離陸。予定よりも約3時間強遅れてラスベガスに着陸しました。幸いその頃には安全な着陸ができる風速まで下がっていました。

(写真上:モントリオールからラスベガスまでの一般的なルート。北米をほぼ横断します。)


(写真上:ホールドしていた時の軌跡。このときは15マイルレグでのホールドでした。)

(写真上:ホールディングパターンを数回回ったあと、フェニックスまで目的地変更となりました。比較的ラスベガスに近いフェニックスですが、風は全く問題ありませんでした。)


 昨日のフライトでは同じく風向きがコロコロ変わる天候だったため、アプローチ中に着陸する滑走路を計5回変更しました。滑走路を変更するくらい大したことないと思われるかもしれませんが、変更するたびにコクピット内で色々準備をしなければなりません。フライトマネジメントコンピューターに打ち込むルートの確認や着陸距離の計算、ブリーフィングなど、やることは山のようにあります。さすがに5回目の変更となるとこちらも嫌気がさしてきますし、それがひいてはフライトへの集中力の欠乏にも影響しかねません。気持ちを冷静に保ってフライトし続けるのは案外大変なものです。この日は8Rとという東向きの滑走路に初めて着陸しました。この日はモントリオールを離陸する段階で燃料をタンク満載に入れての離陸でしたが、向かい風が時速150キロほど吹き続けていましたので、フライトプラン通り飛んでも燃料はギリギリという感じのフライトでした。フライト中は常に燃料の確認をし、万が一の場合に備えてプランB、プランCまで色々考えながらのフライトとなりました。 通常は5時間程のフライトですが、この日は6時間以上かかりました。ナローボディー機で6時間以上飛ぶと言うのは結構燃料的にギリギリです。6時間も飛べばカナダからロンドンくらいまで行けてしまうくらいの時間です。


 そして昨日はラスベガスからモントリオールに戻ってきたのですが、モントリオールで着陸をする際に我々の前に着陸した飛行機が滑走路を出るのに時間がかかって我々との距離が近づきすぎたため、管制塔からゴーアラウンド(着陸復行)を言い渡されました。シミュレーター訓練では毎回やるゴーアラウンドですが、エアバスの実機でやったのはこれが初めてでした。訓練通りの手順で訓練通りに綺麗なゴーアラウンドとなりました。やっぱり訓練は大事だなと再確認したのと同時に、身体がちゃんと手順を覚えていて、何も考えなくても自然と手順が出てきたことに我ながら感心しました。2回目のアプローチでは先行機がいなかったこともあり余裕をもって着陸できました。雪が積もっていたため滑走路は結構ツルツルな感じでしたが、安全に着陸できてフライト終了となりました。

(写真上:着陸をやり直し、左旋回して再度着陸となりました。)


 これまでラスベガスに行く時は「着陸の際にちょっと乱気流があったり追い風で降りるから着陸準備を早めにやろう」と気にかけるくらいだったのですが、ここ数回のフライトで毎回いろんなことが起きるので色々考え直す機会となりました。まさに訓練でやっているようなことが毎回起こるので、訓練の大切さを再確認する良い機会となっていますし、毎回色々な経験ができているのでとても充実しています。

 果たして次のフライトではどんなことが待ち構えているのか・・・。楽しみなような、そうでもないような(笑)。

 明日、またラスベガスに行って今月の仕事は終了です。


(つづく)

















2022-12-30

2022年 総まとめ

 今年も残すところあと数日となりました。2022年は皆さんにとってどんな年だったでしょうか。


思い返すと今年はコロナの影響はまだあったとはいえ、仕事もパンデミック以前と同じレベルに戻りましたので忙しく飛んでいました。プライベートでは長女が生まれてきてくれたので毎日の生活にハリがでました。体調を大きく崩すことも今年はなく、幸せな一年になったように感じます。


日本でも報道されているとおり、北米東海岸で発生した爆弾低気圧の影響もあって仕事で遅延が発生することが多いです。大雪警報が出た日もあり、しかもその日に乗務予定だったので少し心配したりもしましたが、予想していたほどの影響が出なかったのが不幸中の幸いでした。


最近乗務する際、APUが動かない機体に当たることが多いです。APUというのは機体の尻尾部分にある小さい発電機です。飛行機は駐機中には地上装置を接続して機内に電力を供給したり、冷暖房で温度調節された空気を送ります。出発の際にはそれらを取り外すため、その前にAPUを始動させて自前で電力とエアコンをかけれるようにします。また、2基のエンジンを始動させるにはタービンを回すための高圧空気が必要になるので、それもAPUでまかなうことになります。つまり、APUはかなり大事な飛行機の部品なわけです。


そんなAPUが何らかの理由で動かない状態になっても安全な運航には影響はまずありません。ただ、エンジンをかけたりする際には通常とは違う手順を踏むことになり、ちょっとだけ面倒です。なぜAPUが故障している機体が多いのかは謎ですが、風の噂では「低気温が影響している」とか、「普段よりもAPU利用サイクルが多いからAPUに負担がかかり過ぎている」とか、「単純に人手不足でメンテナンスの人たちが修理する時間がない」とか、「直せる人手はあるけど旅客需要が急速に戻ってきたため飛行機を整備する時間がなかなか取れない」とかがあるようです(安全運航に必須の整備はしっかりされていますので、手抜きをしているというわけではありません)


12月のクリスマス前後はいつも人手不足ですし、パンデミックの影響もあってかここ最近はどこの部署も慢性的な人手不足になっているようです。一時解雇されたスタッフの呼び戻しがうまくいっていなかったり、再訓練のスケジュールがそもそもいっぱいいっぱいだったりと、いろんな悪条件が重なっているようです。パンデミックの影響から完全に復活できるにはもうしばらく時間がかかりそうです。


今年も日本に帰ることができなかったことがとても残念です。本来は今月の休暇を利用して帰る予定でしたが、諸事情によりキャンセルしました。来年の春先には家族全員で帰国できればいいなと思っています。


さて、年末は今日から4連勤です。今日の午後からフロリダに行き、大晦日と元旦はラスベガスに行きます。年末年始もしっかりと働きます。今日は仕事に行く前に早めの年越し蕎麦を作る予定です。


今日の写真は娘とそり遊びをしていたときのものです。





今年も本ブログをご覧いただきありがとうございました。このブログを通していろんな方々と交流できる機会を得ていることに感謝しています。皆様、良いお年をお迎えください。来年もどうぞ宜しくお願いします。




(2023年もつづく)

2022-11-27

娘の初旅行。

  しばらく更新していませんでしたが、それなりに忙しくしています。ここ最近の仕事ではラスベガスとフロリダに行くことがほとんどで、身体にとっては楽なスケジュールをもらっています。スケジュールは毎月希望を出してセニオリティ順にコンピューターが決めていくというものですが、なかなか希望通りのスケジュールをもらえないこともあります。今月は1日間か2日間のペアリングを希望し、できれば1日間ペアリングが良かったのですが、結局はほとんどが2日間ペアリングでした。ただ、3・4日間ペアリングは避けたいという希望はちゃんと通ったのである程度満足はしています。


 ラスベガスまでのフライトはこの時期は偏西風が強いことがあり、普段なら5時間ほどで到着するところ6時間以上かかってしまうこともあります。向かい風が時速にして200キロほどの日もありますので、それだけ我々の巡行速度が落ちるということになります。こればっかりは仕方ありません。一方で、ラスベガスからの帰りのフライトは普段よりも早くモントリオールに到着できます。先日は追い風が強く、時速1000キロ以上の対地速度が出ました。


 最近一緒に仕事をする機長の中には僕よりもセニオリティが低いジュニアキャプテンがたまにいます。何だか自分が歳を取ったような気になります(笑)。自分も近い将来キャプテン昇格に挑戦するつもりなので情報収集のために色々話を聞いています。新米機長と飛ぶとなかなか面白いことも多いです。機長訓練が終わったから一気にリラックスしてダラける人もいれば、まだ機長になって一週間も経っていないのにベテラン風の発言や行動をする人何かもいます(笑)。人間ウォッチングは本当に面白いです。一緒に飛ぶ人のことをまとめて本にして出版しようかと思うほどです。


 僕の場合は機長昇格に挑戦することもできる一方、ワイドボディ機の副操縦士に戻ってまたヨーロッパ方面に飛ぶことも選べます。どちらにしてもお給料は上がりますからいいのですが、機長になれば当然責任が増しますし、副操縦士の時よりも相対的なセニオリティが下がりますので生活の質が下がる可能性が高いです。子供が小さい間にジュニア機長になることは避けたいです。ワイドボディの副操縦士に戻るとまた海外に行けて面白いことがある反面、時差ボケや睡眠不足と格闘し続けることにもなります。さらにまた機種変更訓練で2ヶ月ほど時間が取られます。こんな理由で今後の身の振り方を色々考えている日々です。選択肢があると言うのはいいことですけど。


=============================


 10月末から今月中旬まで3週間ほど妻と娘がカナダに遊びに来ていました。まずは僕が先月末にフランスまで家族を迎えに行って、3人でカナダに戻ってきました。娘にとっては生後6ヶ月にしてこれが初めての飛行機、初めての海外旅行、そして初カナダと色々初めてが続きましたが特に問題もなく元気にいてくれ、とても楽しい時間を家族3人で過ごすことができました。きっと娘は今回の滞在のことは大きくなっても覚えていないでしょうが、僕や妻にとっては思い出深い時間となりました。帰りは妻1人で娘とフランスに戻って行きました。荷物も多いし少し不安でしたがしっかりとやってくれたので良かったです。行きも帰りも良い席を提供してもらったので彼女にとっても比較的楽な空の旅になったようです。


 明日はアメリカのタンパまでの日帰りフライトです。それが終わると来月下旬まで休暇が入っているのでお休みです。またフランス、そして今回は日本にも12月中旬に超短期間帰国する予定でいます。



 今日の写真は先日のラスベガスからの帰りの夕暮れです。この時期の夕暮れと地上の雪のコントラストはとても綺麗です。



(つづく)

2022-09-10

やればできる人もいるのも事実。

 先日久しぶりにラスベガスまで行ってきました。数ヶ月前までのスケジュールではモントリオールを夕方に出発して5時間のフライトで現地着が現地時刻の夜遅くという感じでしたが、今の時期のスケジュールは時間がややずれていて、モントリオールを午後遅くに出発し、ラスベガス到着は夕方という感じでした。


 この日に飛んだ機長は恐らくまだ30代前半。彼のお父さんも同じ会社でA330型機の機長をされているようで、なかなかのエリートです。しかも身長は推定180cm以上、引き締まった身体で、顔は超彫りが深いラテン系のハンサム男です。世の中不公平なことばっかだなと感じざるを得ませんでした。それはさておき、この機長からフライト前日にメールが来ました。内容はこんな感じ↓

 

 「明日のフライトで一緒だけど、当日は搭乗ゲートで落ち合おうね。それと、レイオーバー中にチャールストン山にハイキングに行くけどよかったら一緒にどう?ちょっと難しいハイクで、約8時間、30キロ弱歩くけど」

 

 いやいやいやいや、そんなハイキングは僕には無理です。一応元山岳部ではありますが、そもそも今のラスベガスの天気ってこんなんですよ↓

 


 

 ここしばらくのラスベガスは日中は気温が40度を超える酷暑のようです。あとで聞いた話では山のほうにいけば気温は幾分下がるようで、山頂付近では20度を下回るんだとか。とはいえ、8時間歩く元気は僕にはないので丁重にお断りしました。

 

 フライトは行きが僕担当、帰りが機長の操縦担当となりました。だいたいの場合は「行きと帰りどっちがいい?」と聞かれることが多いです。僕はどっちでもいいんですが、ラスベガスは久しぶりだったので行きの操縦をやらせてもらいました。ちなみにどちらも「どっちでもいい」ということになった場合、いろんな方法で誰が先に飛ぶかを決めます。コクピット内の高度セレクターのノブをテキトウに回して出た高度が奇数だったら機長、偶数だったら副操縦士とか、加圧装置のどちらがアクティブになっているかで決めるとか(システム1だったら機長、システム2だったら副操縦士)。なかには「じゃあ君が先ね」って言ってくる人もいますし、なにも聞かずに最初のレッグをかっさらっていく機長もいます。

 

 ラスベガスまでの途中でロッキー山脈を越えるのですが、ちょうどそのあたりで雷雲が発生していたのでなんどか迂回を強いられましたが、それ以外はいたってスムーズなフライトでした。久しぶりにRNAV Visual 19Lというアプローチで目抜き通りに平行に着陸しました。いつもなら真っ暗な中をアプローチするのですが、今回はまだ明るかったこともあり、いつもと違ってなんだか新鮮に感じました。 着陸後、お客さん達にお別れをいっていたら、高齢の女性から「いままでの着陸で一番スムーズだったわよ!」といわれました。僕的にはいつも通りの、特にスムーズでもハードでもない着陸だったと思っていたのですが。あとで客室乗務員の子に言われたのはこの女性はイギリスからのお客さんだったそうです。イギリス人パイロット、どんだけいつもハードに着陸してるんやろ?と思ってしまいました(笑)。

 

 普段と違ってまだ時間は早いこともあったのでホテル到着後に早速お散歩に出かけました。この時で気温はまだ40度弱。夜になれば下がるかなと思いましたが、結局30度を下回ることはなかったです。ラスベガスの夜は本当に人が多く、コロナなんて過去の話さバリに誰もマスクなんかしません。さすがにちょっと怖い感じになってきたので早めに散歩を切り上げ、人気の少ない通りを通ってホテルに戻りました。

 翌日は1日お休みだったのでいつものとおり街を歩き回りました。気温は40度を超えましたが、意外と慣れるものです。ただ、水分補給だけはまめにやりました。

 

 3日目は朝早くにホテルを出発。とはいえ、モントリオール時間でいえば午前9時過ぎなので体への負担も少なく楽チンでした。帰りはお天気もよく、本当に順調なフライトで退屈すぎるくらいでした。フライト中にフライトアテンダントの女の子と話をしましたが、どうやら彼女はパイロット志望のよう。結構FAさんでパイロットになりたいという人は多いんです。ただ大変なのはそういう人たちは既に僕らパイロット側の生活がどういう感じなのか(客室乗務員よりは生活の質が高いことが多いこと)を知っているので、そこにたどり着くまでにどうしても経験しなければならない下積み生活をする根性がなかったり、夢見がちなところがあることです。今までにもパイロットになりたいFAさんとたくさん話をしましたが、実際に訓練を始めるに至るのは本当に数少ない印象です。それでもちゃんと計画をねって行動に移す人もいるのも事実。先日、モントリオール空港でデッドヘッド便の搭乗待ちをしていたところ、以前のリージョナル時代に一緒に飛んだことがあるFAだった男の子がパイロットの制服を来て歩いているのを遠くから見かけました。「あ〜、彼の夢がかなったんだなぁ〜!」と思ってちょっと嬉しくなりました。やればできる、でも、最初の一歩を踏み出すのは歳を重ねるごとに難しくなるのも事実です。

 

 モントリオールに着陸すると気温は13度。実に30度ほども差があります。体調管理には気をつけなければと思います。

 

 

(つづく)


 

2022-09-05

やっと勘が戻ってきた。

 9月に入り、モントリオールは早くも秋のような天気の日が多くなってきました。今朝は曇り空で気温13度。とはいえ、日中は湿度も高く、気温も25度ほどまで上がります。雷がなることも数日に1回はありますし、まだまだ夏っぽさも残ってはいますが、ここから秋、そして冬への移り変わりはとても早いはずです。

 さて、先月10日に路線審査でプンタカーナに行ってきました。一緒に飛んだのはフランス人の女性機長。偶然にも妻の生まれた市の近くで生まれ育ったのことで会話のネタには困りませんでした。プンタカーナまではWATRS(West Atlantic Route System)と呼ばれる空域を通ることがあります。ここを通るには決まった手順が存在し、主に無線での位置報告や緊急時のルート逸脱方法などを知っておく必要があります。洋上はレーダーがないため航空管制官に我々の位置がリアルタイムで伝わらないため、既定の位置(ウェイポイント)を通過した時刻、速度、次の位置報告地点通過予定時刻などをHF無線を使って報告します。ボーイング767に乗務していた頃はCPDLCというシステムが備わっていたため、主に衛星電話を経由してコンピューターが自動で位置報告をしてくれていたので楽でしたが、僕が今乗務しているエアバス320シリーズはCPDLCや衛星電話装置がない機体が多いため、従来の方法でHF無線を使って位置報告をします。

(アメリカ東海岸沖に設定されているWATRS空域 ICAOウェブサイトより)

 実を言うとこのルートをエアバス機で通過するのは今回が2回目?だったので、前日までに手順をしっかり復習しておきました。 そのおかげで特に困ることはありませんでした。洋上は天気が良いことが多いのですが、今の時期は嵐や超巨大積乱雲が発生することが多いです。そのため、今回も何度も雲を避けるために進路変更を余儀なくされました。WATRSを飛んでいるときは天気を避ける手順も通常のフライトとは違う手順があるので、そういった手順を見直すための良い機会になりました。プンタカーナでは実に5ヶ月ぶりになる実機での着陸をしましたが、スムーズに決まって機長さんにお褒めの言葉をいただけました。細かい数字とかは簡単に忘れちゃいますが、体に染み付いた離陸・着陸の感覚というのはそう簡単にはなくならないものです。

 プンタカーナでは外で写真の一枚でも撮ろうかと思っていたのですが、久しぶりのラインフライトということもあって心の余裕がほとんどなく、写真は一枚も撮れませんでした(笑)。そうこうしているうちに復路便のお客さんたちの搭乗が始まり、そそくさとプンタカーナを後にしました。帰りは機長の操縦で、巡航中にいくつか質問をされたり、それまでの手順で気がついた点などを指摘してもらいました。今後のフライトに役立つ情報ばかりでした。WATRS空域を抜け、アメリカ・ニューヨークのあたりに差し掛かったところで早々にラインチェックは合格、「(パイロットの仕事に)おかえりなさい」という言葉をかけてもらい今回の路線審査は終了となりました。いや〜、よかった、よかった。

 路線審査が終わってからはリザーブと言うことで呼び出しがかかると飛びに行くということを8月いっぱいやりました。リザーブ日の半分くらいは呼び出しがかかり、赤毛のアンで日本人観光客に人気のプリンスエドワード島に行ったり、僕がパイロットライセンスを取ったビクトリアに行ったり、アメリカのマイアミに行ったりしました。飛ぶ回数が増えるに連れて以前の勘が戻ってくるのがよくわかりますし、フライト中の心の落ち着き度、そして周りの状況を全体的に判断できる余裕が生まれてくるのがわかります。

 9月に入り、リザーブではなく最初から予定が組まれたブロックホルダーという立場に戻りました。リザーブだと1ヶ月18日勤務ですが、ブロックだと16日勤務です。今月は月末に休暇がありますので、実質勤務日は12日です。行き先もお休みも希望通りに通って最高の月になるはずです。今回またビクトリアに行くペアリングがあるので、昔の仲間に連絡を取ってみようと思っています。自分が訓練した空港に自分の操縦するジェット機で舞い戻ると言うのはとても感慨深いものがあります。

 今日の写真は先日フロリダはオーランドからの帰り道に通過したニューヨーク・マンハッタン周辺の夜景です。



(つづく)



2022-08-06

仕事復帰のシム訓練。

  またもや久しぶりの投稿です。前回投稿してからまたしばらく時間が空いてしまいました。毎度のことながらこのブログをご愛読いただいている皆様、申し訳ありません。


 さて、先月末に育休を終えてフランスからカナダに戻ってきました。本当は仕事復帰のためのシミュレーター訓練が始まる前ギリギリにカナダに戻ってくる予定だったのですが、昨今の旅行者の急激な増加によって我が社の予約状況もパンデミック前の水準近くまで戻ってきているようで、ジュネーブ=モントリオール便は7月21日以降は連日満席・オーバーブッキングという状態だったため、急遽21日のフライトで泣く泣く戻ってきました。


 前回の投稿からフランス滞在中は毎日バタバタしていました。娘の健診について行ったり、娘の出生届を日本領事館に提出したり、パートナーとの結婚式準備に追われたり、婚姻届を出す準備をしたり、フランス滞在許可書の申請をしたりと、常に何かをしていた感じです。もちろん楽しいこともたくさんありました。天気が良い日には山や湖で何度もピクニックをしました。ツールドフランスが街を通過したので観戦にも行きました。娘を連れていろんなところを散歩したりもしました。とても充実した日々でした。


 娘はあっという間にもうすぐ4ヶ月になります。飲むミルクの量が、生まれた直後から比べると10倍くらいになりました。今では顔をじっと見つめたり体を触ったりするとキャッキャと笑います。夜は最後のミルクを8時過ぎに飲み終えると次の日の朝までぐっすり寝てくれます。首ももうすぐ座ります。子供の成長は本当に早くて驚きます。いろんな人から子育ては大変だと聞いていましたが、正直なところ、全く大変ではありませんでした。やはり1人で育てるのではなく、妻と2人で育てることができたからかもしれません。


 娘が生まれる前までは、育休を取るべきか、どのくらい取るべきか、生活に悪い影響は出ないか、仕事の勘が鈍ってしまうのではないか、などなど、色々と心配していたのが正直なところです。しかし、振り返ってみると特に心配する必要はなかったです。


 育休は3ヶ月取ったのですが、もっと長くてもよかったかなというのが正直なところです。ただ、3ヶ月以上取るにはいくつかのハードルを越える必要があったため、今回は延長しませんでした。育休中はケベック州政府からのお給料補助があったため、仕事をしている時の8割弱の収入を保つことができたので助かりました。仕事の勘ですが、これだけは少し影響が出ました!


 8月2〜3日にトロントでシミュレーター訓練を受けてきました。結果からいえば問題なく合格し、免許の更新ができたのですが、それまでの工程がなかなか大変でした。僕は育休中はフライトのことを一切考えないようにしていましたので、7月21日にカナダに戻ってきてから訓練に行かなければならない10日ほどで今までの知識を全て頭に入れ直しました。4ヶ月ぶりに飛行手順マニュアルを読み返してみると、本当に初歩の初歩的なことまですっかり頭のメモリから消去されていたことに気がつきました。これはちょっとまずいかな?と少し焦りましたが、10日もあれば十分なはずだし、ここ2年ほどで2回も長いブランクが空いた期間(後述参照)があったにもかかわらず問題なく仕事復帰できたこともあったのでそこまで深刻な問題にはならないだろうと思っていました。


 訓練は1日目が訓練項目をこなすフライトを4時間やり、2日目がフライトテストです。1日目の最初のうちはかなり緊張していましたし、自分の周りで起こっていることを即座に把握することができず、いってみればトンネルビジョンのように周りがよく見えなかったのでビビりました。ですが、1日目の最後の頃にはさすがに感覚が戻ってきまして、2日目のフライトテストではある程度落ち着いてフライトすることができました。とはいえ、普段訓練にくる時とは明らかにパフォーマンスが落ちていたことは否めません(普段の8割くらいの出来だったように思います)。一緒に飛んだ機長と監査機長には「君、本当に4ヶ月飛んでなかったの?ちゃんとできてるじゃん」と驚かれましたが、自分の中ではあまり満足できる内容ではありませんでした。さすがにおんなじような内容の訓練や試験を今までに何度も受けてきてパスしてきたので、ちょっとやそっとのことでは落ちることはないとは思いますが、久しぶりにかなり緊張しっぱなしだった二日間だったので、訓練を終えて自宅に戻ってきたらどっと疲れが出ました。


 今回の訓練がなぜ大変だったのかを自己分析してみたのですが、よく考えてみるとパンデミックが始まった時に数ヶ月飛ばなかった時はボーイング767からエアバス320に機種変更になったので、そもそも訓練はゼロからのスタートだったのです。エアバスの勉強をするには十分すぎるほどの時間もありました。その後再び地上待機を言い渡されて数ヶ月自宅待機になったのですが、その後の職場復帰の際にはシミュレーターで訓練をする前にIPTで手順のおさらいをするReturn To Work (RTW)セッションが設けられていました。そのため、1日目でおさらいをしてから2日目の訓練と3日目のフライトテストまでスムーズに持っていくことができました。ところが今回はそういった補助輪的なセッションはいっさいなく、いきなりぶっつけ本番的な感じでの訓練となったわけで、そのためかなりしんどい印象の訓練になってしまったというわけだというのが僕の分析です。


 何はともあれこれで仕事に復帰となります。3ヶ月以上離着陸をしていない期間があるため、次回の実機でのフライトは路線審査ということになっています。行き先はドミニカ共和国のプンタカナです。片道4時間半、往復9時間の長い1日になります。しかも審査だから色々知識を試す質問をされるのではないかと思います(これは路線審査機長にもよりますが)。あと数日まだ勉強の日々が続きそうです。




 今日の写真はモントリオールからトロントまでの移動の日に機窓から見えたモントリオール空港ターミナルです。だいぶ飛行機の数が多くなってきています。ターミナル内は旅客でごった返しています。それこそパンデミック前よりも人が多いほどです。ちなみにターミナル内はマスク着用義務はありません。



(つづく)


 


 

2022-05-02

育休。


  久しぶりの投稿になります。ここしばらくバタバタとしておりました。その理由は子供が生まれたからです!4月中旬に予定日よりも2週間ほど早く娘が生まれました。そのための準備で忙しくしていたわけです。

 仕事はというと、3月の末にフライトして以来、4月上旬は2週間の休暇があったためそもそもお休みでした。そして子供が産まれてからは育児休暇を申請しました。うちの会社では最大1年間育児休暇を取ることができます。その間は無給ですが、健康保険や自社便のトラベルパスなどといった一定の福利厚生は引き続き使えます。また、住んでいる州によっても違うのですが、僕の居住地では最大8割弱の年間収入を支払ってくれます。つまり、仕事に行かずに自宅で子育てをしていても、今まで通り仕事をして儲けるお給料の大部分を州政府が会社に代わって支給してくれるというわけです。さすが毎月恐ろしい額の税金を差し引いているだけはあって、こういう子育てサポートはしっかりしているようです。

 今回はパートナーのいるフランスでの出産になったわけで、娘はフランスと日本の二重国籍となりました。フランス語の辿々しい僕がこちらで出産に立ち会うまでの話はいずれどこかでしたいと思いますが、一言で言えば「めっちゃ大変やった!」ということになるでしょうか(笑) かなりのカルチャーショックでした。言葉がうまくできないとこれほど大変なのかと改めて思い知らされました。出産後は病院に4泊し、それから自宅に戻ってきました。娘はおとなしい気質のようで、夜泣きもほとんどしないし、今のところはミルクやりもオムツ交換もお風呂入れも楽しくやっています。

 そんなわけで、このブログでパイロット関連の話が再びできるのは恐らく7月後半の仕事復帰・カナダへ帰国するあたりからとなると思います。



(つづく)