2021-11-09

再び空に舞い戻る。

先週、キューバのサンタクララとバラデロというところに行ってきました。サンタクララ便がline indocのフライトで、その後のバラデロ便がline checkのフライトでした。サンタクララもバラデロもキューバの北部にあるリゾート地です。コロナ前であれば観光客がわんさかと訪れるカリブ海のバケーション地で、特に冬の間はカナダの冬を嫌う人々が大勢で移動するいわゆる「スノーバード」の目的地の一つです。モントリオールからは片道4時間ほどで、距離的にも遠くなく、それでいて気温が温暖なところです。僕が行った時もモントリオールは限りなく0度に近い気温にもかかわらず、サンタクララもバラデロも気温は約30度。僕もプライベートで一度は行ってみたいものです。


最初のサンタクララ行きは約8ヶ月ぶりの実機飛行になりました。久しぶりのフライトプラニングルーム、保安検査場、搭乗ゲートなどなど、何もかもが新鮮に感じました。たった8ヶ月ですが、やはり長い時間が経ってしまったことを実感しました。コクピットに入ってしまえばあとはシミュレーターでの訓練によく似ていますし、体に染み込んでいる(はずの?)エアマンシップが実力を発揮してくれてさほど戸惑うことはありませんでした。シミュレーター訓練では当然のことながらいろんな緊急事態が次から次へと発生し、それの対処をするわけでめちゃくちゃ忙しくなるのが常ですが、実際のフライトでは幸いにもそんなことはなく、いたってリラックスしたオペレーションです。その違いに少し違和感を感じ、上昇中にも「あれ、なんかやることなかったっけ?」と疑心暗鬼になることすらありました。やらなければならないチェック等をすべてやってしまった後も何か他にやるべきことがあるんじゃなかったかと色々考えるのですが、やはりすべてやり終えてしまっています。そこにきてやっとコクピットの音、匂い、そして窓から見える青空や地上の景色を懐かしく思いながら楽しむことができました。やっぱり空を飛ぶのって素敵です。


 サンタクララ空港に到着すると、そこは本当にこじんまりとした空港で、かなりチャーミングでした。ターミナル方面に目をやると、それこそ30人ほどのスタッフと思われる人々が安全ベストを着て待機しています。そうだ、人件費の安い中南米ではこういうことはよくあるんだ、と思い出しながらも、「それにしても多すぎね?」と感じたのも束の間、駐機場に入る手前に消防車が2台スタンばっています。どうやら僕が乗務した便がモントリオールからサンタクララへの今シーズン初のフライトだったようで、消防車からの敬意を込めた放水で迎えられました。これは僕自身初めての経験だったので良い思い出になりました。エンジンを止め、チェック類をすべて終えて外に出るとそこは常夏。陽気なスタッフ達に迎えられ、束の間の休憩をとりました。モントリオールに戻る帰りの便の出発は約1時間後だったので、その間にウォークアラウンドをし、外で写真をパシャパシャ取りました。サンタクララのコロナの状況は知りませんが、グランドスタッフは皆マスクにフェイスシールドという姿でした。島国は医療体制の逼迫が起こりやすいため、どこの都市でも比較的警戒度が高い印象を受けます。


サンタクララを定刻で出発し、一路モントリオールまで飛び帰ってきました。途中揺れることもありましたが、幸い雷雲に行き手を遮られることもなく、スムーズなフライトでした。シミュレーターでは基本的には起きないタービュランスに気を使ったり、天候によって進路変更をしたりレーダーを使って前方の天候を確認したりすることを久しぶりに行い、やっと実機で飛んでいるという感覚が戻ってきました。僕は帰りの操縦を担当したのですが、モントリオール空港での着陸もうまく決まり、我ながら8ヶ月のブランクを感じさせない良い着陸だったと思いました。一緒に飛んだトレーニングキャプテンからもお褒めの言葉をいただき、書類にサインをもらって次のフライトがラインチェックという運びになりました。


それから2日後、ラインチェックでバラデロに行きました。こちらもサンタクララ同様、僕は初めていく空港です。キューバというのは面白く、他の国と違って地上無線施設が充実していないようで、地上で通常使うACARSという無線データ通信ができません。会社支給のiPadに入っている世界で利用できるSIMカードもローミング不可です。そのため、復路のフライトで必要なデータ類(主に離陸時のパフォーマンス計算)は往路の巡航中に入手する必要があります。これを忘れてキューバに降りてしまうと電波がなくて色々面倒なことになるんだとか。こういう今まで経験したことがないことも今回の2回のフライトで体験できました。また、バラデロ行きはエアバスA321というちょっと長めの飛行機です。乗客数はそれこそ以前乗務していたボーイング767型機とそんなに違いません。最大離陸重量も319や320よりは重いです。飛ばし方はほぼおんなじですが、胴体が長いため、離着陸時にお尻を擦ってしまうテールストライクに注意が必要な機体です。とはいえ、767のようなワイドボディの操縦を経験しているパイロットであればそんなに気を使うことはありません。


 今回の監査機長は前回のトレーニング機長同様とても優しい方で、フライト中には色々な話もでき楽しいフライトになりました。ラインチェックフライトはほぼ100%で往路の操縦を担当させられます。そのため、バラデロまでのフライトは僕が担当しました。初めて行く空港だったのですがちゃんと下調べはしてありましたし、監査機長にも色々とバラデロではこういうアプローチをすることが多いといった説明をしてもらっていたので特に困ることはありませんでした。キューバのATCは比較的英語も聴きやすいですし、感覚的にはアメリカのuncontrolled  airportに飛んでいっているような感じです。キューバのアプローチ管制はレーダーがないらしく、音声での通信に基づいて航空管制をしているそうです。そのため、先を飛ぶ飛行機がいない場合には結構遠くにいる段階でアプローチクリアランスを出され、「後はご自由に」という感じでほったらかしにされることがあります。その場合はアプローチチャートに書かれた最低高度や速度制限を守りながらアプローチをすることになります。大きな国際空港では最後の最後まで管制官が高度や速度の指示をしてきますから、われわれパイロットは言われたまま操縦すればいいのでそちらの方が楽です。一方、キューバのようなところに来ると我々で色々考えて操縦しなければ危険につながることもあり、特に、降りていい高度の確認は重要になってきます。今回はアプローチ中の速度や高度のコントロールもイメージ通りに行き、あっという間にバラデロ空港に着陸となりました。バラデロ空港はサンタクララほどチャーミングでなく、いわゆる普通の空港でした。我々以外誰もいない閑散としたターミナルを見る限り、旅客はまだ戻ってきていないように感じました。機長の話では、繁忙期にはターミナルのゲートすべてが飛行機で埋まり、ゲートが空くまで何十分も待機させられることすらあるという話です。また早くそういう状況に戻ってもらいたいものです。


バラデロからモントリオールまでは機長の操縦で、僕はPM(Pilot Monitoring)の業務をやりました。燃料や経過時間のチェック、無線、書類等々をこなします。これが訓練後4レグ目でしたが、もう戸惑うことも無くなっていたので、だいたいの感覚は8ヶ月前のレベルに戻ってきたように感じました。モントリオールに到着後、機長からはお褒めの言葉とおめでとうの言葉をいただき、これで10月中旬から始まったRTS(Return to Service)訓練が無事に終了となりました。仕事ができるっていいですね。なんだか自分には価値があるという感覚になります(笑)。仕事をしていなかった間はなんだか申し訳ないというか、役立たずというか、そんな感覚すら感じていましたから。


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訓練が終わり、今月のスケジュールはすでに発表されているため、僕は今月の最後までリザーブです。電話がかかってくるまで自宅待機です。せっかく訓練していいペースで飛んできたのに、またこれで飛ばなくて自宅待機に舞い戻ってしまいました。なんだかな〜とも思いますが、仕方ありません。色々忘れちゃう前にもうちょっと飛んでおきたいと思っています。


今日の写真はサンタクララで降ろした乗客の皆さんをコクピットから見送ったときのものと、グランドクルーと日暮れの様子です。











(つづく)






2021-10-30

シミュレーター訓練終了。

 ようやく仕事に戻るための訓練が終わりました。訓練はまずはIPTを使っての訓練で、トロントで行われました。そのため、久しぶりに飛行機に乗ってトロントに前入り。ホテルに泊まるのはいつぶりだろう?おそらく前回飛んだとき以来なんで少なくとも半年以上は経っています。空港側のホテルで、前回のエアバス以降訓練でも泊まったホテルです。なにも大したことはない普通のホテルなんですが、なぜか微妙にテンションが上がりました(笑)。


訓練は資料に目を通した限りは今までの手順を思い出すためのおさらい訓練ということになっていたのですが、インストラクターとのブリーフィングではガッツリ知識を試される内容でした。今まで知らなかったことも学ぶことができてなかなか楽しかったです。肝心のIPTではやはり色々忘れいていたことが露呈される形になりましたが、それでもこれまで自習やイメトレしてきたことが役立って、特に困ることはありませんでした。トレーニングのパートナーの機長はエアバス歴10年のベテランです。操縦の手順はさすがベテラン。でも、お互いに色々忘れていたので、お互い様に確かめ合いながら訓練を進めました。


IPTが終わったらそのままモントリオールに戻ってきて、1日だけ休みがありました。そして今度はバンクーバーまで移動してのシミュレーター訓練となりました。バンクーバーに行くのはこれまたお久しぶりだったので結構テンションが上がりました(笑)。


バンクーバーでの訓練はいきなり緊急事態の訓練から始まりました。久しぶりのシミュレーターなんだからちょっとくらい普通の離着陸の練習をしたりするウォームアップの時間をくれてもいいのに〜と思いながらシステムトラブルやらエンジントラブルの手順をやってました。しばらく飛んでいなくてもこういう手順は結構すぐに勘が戻りました。そして次の日には離陸直前のエンジン停止などもやりまして、結構ガッツリの訓練という印象でした。しかも朝4時半からのブリーフィングが連日続き、なかなか大変でした(とはいえ、バンクーバーの午前4時はモントリオール時間の午前7時なので、思ったほど大変ではありませんでした)。


シミュレーター訓練2日目はいわゆるフライトテストで、それも無事に合格。その後は2日間のお休みをもらいました。フライトテストを終えてホテルに戻ってきたのは午前10時過ぎ。少し昼寝をして、さ〜て、これからなにをしようかな〜と思っていたら、僕のブログを見てくださっている方から偶然にもメッセージをもらいました。どうやらバンクーバー近郊で訓練をしているとのこと。ちょうど時間もあるのでコーヒーでもどうですか?とお誘いして、スタバではじめましてとなりました。奥様にも来て頂いて、とても楽しい時間を過ごせました。こういう出会いがあるからブログやFBグループはやりがいがあります。


おやすみ初日は古い友達に会うためにダウンタウンへ。彼女と会うのもなんやかんやで7年ぶりほどでした。僕はおっさんになっているのに友達は7年前と特に変わらず。女性は強いです笑 そしてその日の夜には日本人パイロットのお友達3人と合流して牛角に行きました。バンクーバーにも牛角があるんです。とはいえ、僕は日本でも行ったことがなかったので初めての経験となりました。楽しい食事に話も弾み、とても楽しい時間を過ごしました。


おやすみ二日目は引き続きお勉強。気分転換に長い散歩にも出かけましたが、あいにくお天気はBC州特有の雨でした。BCでは10月から翌年3月頃までは雨季です。雪が降ることがあまりない代わり、雨が連日降り続きます。BC州以外に住むカナダ人の多くはBCの雨季を忌み嫌います。「雨が降るよりも、おひさまが見える日があるなら極寒でも積雪があってもいい」と言って東部の冬季の気候を好む人が多いです。僕はBCに8年近く住んだので、これまではBCの雨の冬の方が雪と極寒よりも良いと思っていました。でも、BCを離れてからかなりの時間が経ってしまったため、今回のバンクーバーの雨はあまり好意的に受け入れることはできませんでした。やっぱりおひさまが出ている方が雨や曇りよりもいいのかも?と思う自分がいました。知らず知らずのうちに東海岸での生活に慣れてしまったようです。


訓練最後の2日はLOFT(Line Oriented Flight Training)と呼ばれる訓練で、実際のフライトで起こりうるトラブルやシナリオに基づいての訓練となりました。1日めのLOFTではバンクーバーから古巣ビクトリア空港までのフライトでしたが天候が悪いためビクトリアには着陸できず、色々考慮した結果、アボツフォード空港(これまた昔よく行った空港)へダイバートするというシナリオでした。簡単そうで色々学ぶことがありました。2日めでは離陸後に機内に爆弾があって25分以内に爆発するというシナリオだったり、客室内が離陸直後に煙でいっぱいになったなどのシナリオでした。冷静に機長とプランを立てて実行するというなかなか面白い訓練になりました。普段は考えないこともこういった訓練で色々考える機会を与えられ、それが普段のフライトを安全に行うための良い経験になります。一週間ほどのバンクーバーでの訓練はとても良い経験になりました。


次は来週にキューバへ2回フライトがあります。これらのフライトを終えれば晴れて仕事に正式復帰という扱いになります。やっぱり何かに取り組むというのは楽しいですね。勉強も楽しいし、訓練も楽しかったです。キューバにはいったことがないので、またいろんなところに飛んでいけるようになることに感謝しながら仕事に復帰して行きたいと思います。


今日の写真はシミュレーターです。久しぶりのシミュレーターでしたが、特に戸惑うこともなかったのが幸いでした。





(つづく)

2021-10-11

やっぱ好きやねん

 前回の投稿から少しまた時間が空いてしまいました。なにかとばたばたしていておりました。元気にやっています。心配してくださった皆様、お気遣いありがとうございます。

 さて、かれこれまた半年以上フライトがない生活をのらりくらりと送って来ましたが、とうとう仕事復帰のための訓練日程の連絡がありました。訓練は今月中旬から、トロントとバンクーバーでの訓練になるようです。これだけ時間が空いたんだから何らかのリフレッシャー訓練でもあるのかと思っていたのですが、どうやら大袈裟なものはない模様です。シミュレーターで数回訓練セッションを受け、路線審査を受けてまたラインフライングに戻されるようです。なんだかざっくりしすぎてない?っと思ってしまいます。あ、一応は通常の手順確認のためのセッションは入れてくれたみたいです。

 前回のボーイング767からエアバス320への機種変更訓練が始まったのもちょうど昨年の10月でした。どうやら10月は僕にとっては訓練の月のようです。10月に訓練をすると路線飛行に送り出されるのがちょうど冬シーズンになり、カナダの冬は滑走路が雪で覆われていたり、出発前にde-icingをする必要があったりとちょっと面倒な時期です。そういえば、どなたかに「日本では滑走路に雪がある場合は機長のみが離着陸を許されている」と聞きました。カナダでは副操縦士でもばんばん離着陸しますから、ちょっと不思議です。

 ということで、訓練の日程が決まったのでここしばらくは毎日マニュアル類を読んでいます。色々忘れていてちょっと焦ることもありますが、以前やっていたことの記憶が少しずつ戻ってくる感覚はなかなかどうして楽しいものでもあります。実際の操縦感覚は自転車と同じですぐに戻ってくるはずですからそれほど心配はしていません。細かな手順や知っておかなければならない数字等を中心に勉強し直しています。一度頭がスッキリしてから再度復習をやり直しているせいか、結構いろんなことがしっかり頭に入ってきます。また、前回の訓練では余裕がなかったからか、はたまた実機操縦経験がなかったからか、よく理解できていなかったことも多々あったように記憶していますが、今回はそういうことも具体的に理解できたりもしています。飛行機の勉強はもう15年以上なんらかの形で継続してきましたが、やっぱり楽しいと感じます。仕事に対する不満などでストレスが溜まることはあっても、やっぱりこういうのが好きなタチのようです。

 実は7月中旬からしばらくフランスに滞在していました。フライト中はマスク2枚重ねで、手指消毒も頻繁にやりました。カナダ帰国の際にはPCR検査が求められるのでやや面倒ではありますが、それでも以前のように行き来できるようになって嬉しいです。日本にも仕事に戻る前に帰りたかったのですが、14日ないしは10日の自宅待機がネックになり、結局帰れませんでした。年内に帰ることも今の調子では難しそうなので残念です。

フランスではハイキングをたのしみました。

牛の後ろに見えるのがモンブラン山

タイトルは今聞いているやしきたかじんの影響です(笑)。



(つづく)

2021-07-03

熱波とワクチン2回目。

 日本でも報道されていたとおり、カナダは数日前まで熱波に襲われていました。特にひどかったのが西海岸の山間部で、教官時代にマウンテンチェックライドで飛んでいた谷沿いの町リットンというところでは気温が49.5度まで上昇したそうです。それだけでもひどいのに、その直後に今度は山火事に見舞われ、町のほとんどが焼滅してしまったという報道もあります。まさに泣きっ面に蜂です。夏のカナダの山間部では森林火災がよく起きます。そのため、こちらでは夏の間だけ飛ぶ森林火災専門の消火作業パイロットという職業まであります。日本のようにヘリコプターでちんたらちんたらと火を消すのではなく、大型のエアタンカーを使って消化剤を含んだ水をどば〜っと落とします。危険を伴う仕事ではありますが、1年のうち数ヶ月だけ働けばよいので、夏だけ必死に飛んで、あとは国外でのんびり暮らすなんていうパイロットもいるそうです。

 我々が飛んでいるときに森林火災を目撃することがあります。大きいものであれば既に通報されている場合がほとんどですが、今、まさに発火したばかり!というようなものである場合には我々パイロットが航空管制官への無線会話を通して通報することもあります。「あの〜、今、我々の真下で煙があがってるんだけど〜?」と管制官に言うと、「あ〜、それね〜、既に報告済みですよ」っと言われる場合が多いです。でも、時たま、「え?どこ?だいたいの緯度・経度はわかる?」と聞かれることもあります。そういう場合にはコクピット内のフライトマネジメントコンピュータに表示されている位置情報を伝えます。その後、どういうプロセスで消火作業につながるのかまではわかりませんが、通報できた場合はちょっと良いことをしたような気持ちになります。

 今日現在、カナダではワクチン接種1回目を終えた人が実に6割を超え、2回接種完了した人が3割を超えています。今までは死んだ町のようだったモントリオールの目抜き通りでもレストランやバーなどが再び営業を始めました。イギリスでまたも感染者数が2万人を超えているということですが、カナダにもおそらくインド株がいずれは広まってくるでしょうし、今後どういうことになるか注視していく必要があると思っています。

 僕自身は明日7月3日に2回目のファイザーワクチンを接種する運びとなりました。1回目を接種した段階では「2回目は8月後半」と言われていましたが、ここに来て前倒しして2回目を受けることができるようになりました。最初の頃はそれこそワクチン接種開始に出遅れた感のあったカナダですが、今では世界でも有数のワクチン接種率となっているようです。2回目は1回目よりも副反応が強くでるという話なので、少しだけビビっています(笑)。

 カナダの航空業界は少しずつ勢いを取り戻し始めている兆候が見えるようになってきました。リージョナル航空のほうではレイオフされていたパイロットの呼び戻しが始まったようですし、我が社のほうでも客室乗務員が夏シーズンを見据えて呼び戻されています(まだまだ少数ではあります)。国際線の需要も少しずつ回復してきてはいますが、パイロットを呼び戻すほどの需要はまだないようです。しかし、最近になってカナダ政府はワクチン接種済みの国民や永住者が国外から帰国する場合のホテル隔離措置を条件付きで免除するようになったため、海外にバカンスに出かける人の数は確実に増えています。僕もときどき暇な時に自社便の搭乗者数を調べたりするのですが、ヨーロッパ方面へのフライトでは搭乗者数が8割を超えるフライトも出始めています。ワクチンを打ったからもう平気だ!というわかりやすい態度の変化をするのがこちらの方々の傾向のようですが、これからもしばらくはマスクや手洗いに気をつけ、ソーシャルディスタンスを保っての移動を心がけてもらいたいものです。僕自身はまだレストランに行って屋内で飲食するのにはやや抵抗があります。先週末に始まった世界最大の自転車ロードレースであるツールドフランスのテレビ中継を観ても、フランスの沿道の観戦者数の多さとマスク着用率の低さには強い違和感を感じます。

 自分のブログを見直して見て、改めてしばらくフライトしていないということに気がつきましたが、それでもまだ半年ほどなんですね。この半年間でフライトのことはすっかり頭から消え去ってしまいました。折を見て自分がどのくらいエアバスのことを覚えているかを自問自答すると、本当にいろいろ忘れてしまっているので驚きます(笑)。とはいえ、職場復帰が決まったら1週間もあれば十分に以前の知識レベルに戻せる自信があるため、さほど気にはしていません。今までも2週間働いて2週間休むというような、ダウンタイムが長いパターンで仕事をしていたため、少し時間があいても問題ないことも確認済みであるため、今はあまりむやみに復習などしないようにしています。してもすぐに忘れちゃいますから。

 先日までの熱波はようやく去り、今日からモントリオールはまた気温が20度前後となっています。半袖短パンでは肌寒いので夏らしく感じませんが、毎日体感気温35度くらいの日が続いたあとなのでひんやりして気持ちが良いです。ワクチン接種を完了して早く移動できる日が来ることが待ち遠しくてなりません。

 今日の写真は川沿いの夕暮れです。





(つづく)

2021-06-03

懐旧。

  6月が始まりました。こちらカナダのワクチン接種はだいぶ進んでおり、国内感染者数の数も軒並み減少傾向にあります。ここモントリオールではこれまで実施されてきた夜間午後9時半以降の外出禁止令が解かれました。今は子供対象のワクチン接種を進めながら、高齢者の2回目の接種が始まろうとしているところです。ケベック州だけを見ると、州民の75%が最低1回ワクチンを接種していることを当面の目標にしています。そのレベルを超えれば多くの制限が解かれることになるようです。今週末からはモントリオールも警戒段階が1レベル緩められ、レストラン内での食事もできるようになるそうです。気候もよくなってきたので、テラスで飲食を楽しむ人々の姿を見かけることが多くなってきました。

 先日、藤原正彦著の「この国のけじめ」を読み終わりました。この方の本を読んだのは初めてでしたが、いろいろと祖国やその歴史について考えさせられることが多かったです。コロナ禍で国の弱さが露呈されてしまった感が否めませんが、その理由のいくつかがこの本に書かれていたことに関連しているように感じました。

 僕自身は5月8日に1回目のワクチン(ファイザー社製)を接種してもらいました。インターネットでの予約はスムーズで、当日の大規模接種会場も動線がしっかりと確保されていて混乱はまったくありませんでした。入り口ではヘルスカードをスキャンして予約を確認し、その後会場内に通されました。まずは問診から始まり、その後に接種、そして15分ほど会場内の待合スペースで待機してから解散という流れでした。僕に接種してくれたお医者さんは歯科医の方でした。副反応は特になく、腕に痛みを感じたくらいでした。接種から約1ヶ月経った今日、接種証明がメールで届きました。QRコード付きの接種証明なので、おそらくこれらがいずれ発行されるワクチンパスポートなるものに利用されるのだろうと思います。

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 モントリオールはだいぶ夏らしい日が多くなってきました。気温が20度後半になることも多く、嵐が過ぎていく日も時たまあります。そういえば、飛んでいた頃はこの季節は入道雲を避けながらのフライトだったな〜なんて思いながら毎日散歩をしています。雲の避け方にはいろいろあって、経験値が物を言うと思うのですが、ときどき自分が決めたルートで飛んだら結構揺れたり、結局逆方向に行っていたほうがよかったかも?なんてがっかりすることもあったのが今では懐かしい思い出です。最近は引き続き時間があるので時々車でモントリオール郊外に散策に出かけたりもしています。この1年ちょっとでモントリオールの道路事情にはだいぶ詳しくなったと感じています。今なら大体の場所はGPSを使わなくてもいけるようになりました。

 こういう夏の気候になると、夏によく仕事で行っていたギリシャ・アテネを思い出します。外に立っているだけで汗がにじみ出てくるような日差し、なのにカラッとしていて気持ちがよい気候が夏のアテネです。『失ってみて初めてその大切さに気づく』なんてことがよくありますが、ギリシャに行けていたことはまさに自分にとってのそれで、夜中じゅうフライトしたり時差ボケに悩まされることもあって大変ではありましたが、それであってもギリシャをはじめとしたヨーロッパのリゾート地に仕事で飛んで行けていたことはとても幸せだったと思っています。そんなことを考えながら、ここ最近はグリークサラダをよく作ります。材料はきゅうり、トマト、フェタチーズ、パプリカ、お好みで玉ねぎ、オリーブ、塩胡椒少々とオリーブオイルです。オレガノを入れるとさらに良いです。本場ではサラダの上にフェタチーズが切られていないままの板状でど〜んと乗っかって出されます。それでいて格安。「仕事で行ったところで一番のお気に入りは?」と聞かれるとだいたいの場合はアテネと答えます。あれ?これは以前にも書いたかな?

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 相変わらず飛んでいませんが、昨日になって航空身体証明書の更新をしました。去年は確か会社のクリニックに出向いて通常通りの診察を受けましたが、今年はtelemedicalということで遠隔での診察(Zoomのようなもの)のみになりました。こんなんで大丈夫?とも思いますが、なにか問題があったりする場合にはクリニックに呼ばれるとのことです。僕は特に体調の変化もないし、「はい、オッケー」と言われて30分弱の診察のあとで無事に第1種航空身体証明が更新されることになりました。来年は通常通りの診察でもいいな〜と感じたり、感じなかったり。


海みたいですが、川です。右側の車が僕の日産マーチ(北米名:MICRA)です。


大きな嵐雲が通過することがあります。


これはもう2年前のギリシャ・アテネです。コロナ後にぜひまた行きたい場所の一つです。


グリークサラダは簡単、美味しい、日持ちする、といいことばかり。


夜間外出禁止令が解除された日の夕方、公園ではお祝いのライブ音楽が。


ほぼ毎週のようにパレスチナ人のデモ活動が行われています。


モンロワイヤル山は新緑が綺麗で、散歩がてらの簡単なハイキングに最適です。





(つづく)

 

2021-05-04

トンネルの出口は近い?

 昨日になって食器洗い用洗剤が底をつきました。ポンプ式の環境にやさしいタイプの洗剤です。本当に環境に良いのかわかりませんが、そういう謳い文句で売られていて、値段も一般的な洗剤よりも少し高いものです。少しでも自分にできることはやろうなんて善人面をして購入したのはいいものの、この洗剤は油切れが悪くてスポンジの泡立ちも悪いため、普通の洗剤ならポンプ1回で済むところを2回も押すことになります。結局、環境に良くない洗剤の倍の速度で使い切ってしまいました。果たして倍の量を使ったとしてもこの環境に良い洗剤のほうが地球や環境にやさしいかったのかどうか・・・。

 コロナ対策も食器洗剤と同じで、経済を回す必要があるからとだらだら生半可な対策を続けるよりも、たとえ短期的には経済に影響を与えるとしても、がつんと効き目のある手段で対策したほうがよい(よかった?)ように思います。


 さて、5月が始まりました。僕の生活は特に大きな変化はありません。先月に入ってようやくカナダ政府が航空業界への経済支援策を発表しました。まずは僕が働く会社向けの支援パッケージが発表されました。賛否両論あるようですが、とりあえずは会社が経営破綻する可能性が少なくなったようなので一安心しています。他の航空会社向けの支援策もじわじわと発表されはじめました。今のカナダには経営破綻目前と噂される会社もあり、やはりカナダ政府の支援策発表のタイミングがあまりにも遅すぎたという感が否めません。同じ北米でもアメリカと比べるとワクチン接種率も低いし、ここ1年間で受けた経済的ダメージの大きさも雲泥の差です。

 カナダ人はよく隣国アメリカと自国を比較したがりますが、今回のことで『カナダはアメリカには敵わない』という図式が明確になったように感じています。カナダ政府の対応の効果とスピードの非効率さは日本政府の対応が後手後手になっているのとよく似ています。


 モントリオールでは天気が良い日が増えてきました。天気が良いと公園はこの人盛り。マスクなんかくそくらえ。どおりで感染者数がなかなか減らないわけです。これを見れば日本人がいかに真面目なのかがわかるでしょう。


 4月半ばに二日ほど雪が降りました。それまでは毎日20度近くまで上がって初夏のような気候だったのに、いきなりマイナスに下がってしまいました。とはいえ、真冬並みの寒さではなく、マイナス2〜3度ほどに下がっただけですみました。この時期に雪が降るとモントリオール人は真冬並みの防寒着を持ち出してくるから滑稽です。彼らは果たして寒さに強いのか弱いのか・・・。


 陽気につられてカナダ雁が渡ってきました。これからしばらくは川辺などで子作り・子育てをします。今はさほど警戒心は強くないのでこのくらいよっても問題ないですが、一旦子供が生まれると彼らの性格は豹変し、ちょっとでも近寄ると口を開けて威嚇してきます。

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 さて、カナダのワクチン接種ですが、ここ最近になって少しスピード感が出てきたように感じられます。僕がいるケベック州では僕の年齢だと5月5日から接種予約ができるようになります。予約後、数日後には接種できるようです。個人的にはJ&Jの1回接種タイプのワクチンを接種したいと思っていたのですが、どうも製造工場の品質管理状態に問題があったとのことで、カナダ政府は一時的にJ&Jワクチンの接種を中断しています。血栓の問題で話題のアストラゼネカですが、こちらではアストラゼネカを接種している会場は予約の際に明記されていて、アストラゼネカ以外を接種したいときには他の接種会場を選べば良いようになっています。僕はおそらくファイザーかなと思っています。こちらでは2回目の接種日が明確化されていません。通常は1回目接種後3〜4週間後に2回目を接種するはずですが、ケベック州ではなるべく多くの州民に1回目を接種することに重きを置いていて、2回目は1回目の接種が大部分の州民に行き届いたタイミングで決定されるようです。本当にこんなんでいいのかなとも思います。

 ヨーロッパ諸国はワクチン接種を前提に旅行客等の入国を6月から許可するという報道もありますので、いよいよパンデミックの終わりが近づいてきているのかもしれません。そうなるとまた僕が空を飛べる日も近いのかもしれないのでワクワクします。


(つづく)















 

2021-03-21

カナダ or アメリカ。

  え〜、3月も既に後半に入りました。前回の書き込みに書いた通り、今月はリザーブではなく、ブロックホルダーになりました。ペアリングは2つのみ。一つはアメリカ・フロリダへの日帰りフライトで、もう一つは国内の3日間のペアリングでした。今の情勢を鑑みればペアリングが2つだけでもよしとしなければいけないと思っていたのですが、ここに来て会社の方針が変更になり、今月はフライトがすべてキャンセルになりました。

 以前の書き込みで説明したかもしれませんが、パイロットとして飛ぶためには免許や型式証明、そして航空身体証明などが必要になるのですが、実はそれに加えてある一定のフライト数(飛行時間、離着陸回数等)を一定期間内に行わなければならない「recency requirement」というものが存在します。一般的なホビーパイロットの場合であればその制限をクリアするのはさほど難しくありませんが、エアラインの場合は航空法で定められたrecency requirementに加えて会社が定めたrequirementが存在しますし、そもそもホビーパイロットのようにお金を出して好きな時に好きなところに飛ぶことは実質不可能です。カナダ国内はどこを見てもフライトの数が絶対的に少ない状態です。ところがパイロットの数は必要数以上雇用が維持されています。そのため、雇用されているパイロット全員のrecency requirementをクリアすることが現実的に不可能な状態に陥っています。そのため、僕が務める会社は暫定的に一定数のパイロットのフライトをキャンセルして地上待機にし、本当に必要な数のパイロットのみを飛ばすことで彼らのrecencyを充足させる方針に転換しました。僕は地上待機組みの条件に当てはまっているので、向こうしばらくはまたもやフライトがないことになりました。去年も3月からフライトがなくなっていったので3月が嫌いになりそうです。

 ワクチン接種数は国によってとても大きな開きがありますが、航空業界の復興も同じく大きな開きがあり、最近になってその差が顕著になってきました。航空業界の本場アメリカはワクチン接種数世界一のようですが、航空業界もかなりパンデミック前の状態まで回復しつつあるようです。ワクチン接種と政府による潤沢な資金投入が主な要因のようです。一方、カナダはワクチン接種数が極端に低く、コロナ対策も政府は右往左往していて、航空業界に対する資金サポートもまだのような状態。航空業界の行く末は今も暗黒の真っ只中という感じです。カナダ国内の競合他社からは最近になってパイロットを追加レイオフするという発表もありましたし、リージョナル航空会社の一つが閉鎖に追い込まれました。大手航空会社の一つは経営統合か、それが実現しなければ倒産してもおかしくないというような状態です。いいニュースは一つもないといっても過言ではありません。

 下のスクリーンショットは今日現在の世界各国のフライト数を表したものです。黄色いシンボルの一つ一つが航空機を表しています。


まずは北米。アメリカを飛んでいる航空機の数がカナダと比べると圧倒的に多いです。


こちらはヨーロッパ。コロナ対策で苦しむ国が多いわりにはフライト数は多い印象。


某共産主義国もフライト数は多いですね。いい気なもんですね。


日本も結構ダメージを受けていますね。

 アメリカとカナダはこれまでは感染者数はアメリカのほうが爆発的に増加していたため、アメリカとカナダの国境封鎖に積極的だったのはカナダのほうだったはずです。ところがここに来てアメリカはワクチン接種数がめちゃくちゃ増え、感染者数の押さえ込みに成功しつつあります。一方のカナダは日本のように下げ止まりしている感じで、ワクチン確保も当初の予定よりも遅れているので、このまま行くと今度はアメリカ政府がカナダとの国境再開に懸念を示すのではないかと思えてしまうほどです。

 アメリカの航空会社は一時レイオフになっていたパイロットを呼び戻し始めていると聞きます。また、政府からまたもや資金注入があったようで、追加レイオフはすべて取り消しになり、さらには今度はパイロットが足りないということで、今後も採用を増やして行くという話まで聞こえて来ています。アメリカはバブリーですね〜!

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 最近、SNS界隈をほんの少し賑わせた「Clubhouse」。海外パイロット組の間でもClubhouseで会話を楽しむ人たちが多いようです。僕は興味がないので利用していません。ただ、使っている人の話によると、主にアメリカで働いている人が多く参加しているようです。カナダと比べてやはりアメリカで働くパイロットの数はかなりいるようですね。SNSで積極的に情報発信している人の数は多いですが、そういうことをしていない人の数も入れるとおそらくかなりの数です。そこもカナダとは比べ物にならないほどでしょう。

 日本でパイロットになれなかった人が外国でパイロットを目指すとなると最初に考えるのはおそらくアメリカです。そしていろいろ調べて行くうちにアメリカでライセンスを取ったあとのグリーンカード取得の壁にぶち当たるはずです。そこで「比較的移住しやすい英語圏の国」ということで浮上するのがカナダです。カナダは教養、経験、能力さえあれば永住権を取ることが可能な国で、そういった面ではとてもフェアな国だと思います。アメリカは必ずしもそうでない印象です。アメリカ人との婚姻関係を通してグリーンカードを取ることは容易でしょうが、そうでなければかなり難しいようです。

 カナダに来て暮らし始めて15年近く経ちましたが、カナダの航空業界のあれこれが見えてきた今、「カナダに来たことは正しかったのか」とふと考えることもあります。もしカナダではなくアメリカに行って訓練を受けていたらどうなっていたのかな?と妄想することがあります。アメリカは学生時代の留学や旅行で慣れ親しんだ国ではあります。航空業界の本場と言われるだけあって規模がでかいです。仕事の種類や数もカナダよりも圧倒的に多いです。一方でグリーンカードの高い壁があります。果たして僕はグリーンカードを取ることに成功してそのままエアラインまでの道を進むことができたのか。できたのであれば今頃はどこの航空会社で働き、どの都市に住居を構えていたのか。もしくはグリーンカード取得に失敗し、日本に舞い戻ることになっていたのか。はたまたアメリカを諦めてやっぱりカナダに来て、当初の予定よりも数年遅れてパイロットのキャリアを結局カナダで始めていたのか。たらればで想像をするとなかなか面白いですね。

 そんなことを考えて、「アメリカの生活も悪くないな〜」とか、「グリーンカードの抽選に申し込んでみようかな〜」と想いを馳せることもありますが、僕はニューヨークやシカゴなどの忙しい空域を飛ぶよりもカナダのんびりしたエリアを飛ぶほうが性に合っているとも思うんですよね。今のポジションや職場にもある程度満足はしていますし。でも、給料から天引きされる税金の額を見るたびに毎月必ずカナダを嫌いになるのも事実ではあります(笑)。



(つづく)