2020-04-19

今後の航空業界の行方予想 -第2回-

 今回は、これからの航空旅客の新しい形と、それがパイロットに与える影響について考えます。

 現在世界各国が行なっている行動制限、国境封鎖が解かれる日がいずれやってきます。 おそらくはアメリカが打ち出したような段階的な封鎖解除が実施されるとのが現実的でしょう。 人々が動き出し、また飛行機を利用する日がまたやってきます。 そんな中、コロナウイルスの第二次、第三次蔓延を防ぐため、航空会社は「3密」が起きないように配慮しなければなりません。 
 
 カナダ政府は昨日、当面はマスク(または類似品)を装用しないと飛行機に乗れないという新たなルールを打ち出しました。 マスクをしていないと保安検査場すら通過できないのとことです。 北米・ヨーロッパ諸国ではこれまで「マスクをするのはアジア人のみで、科学的な根拠・有効性はない」とみる風潮にありました。 それがここにきてウイルス拡散を防ぐ上である一定度効果があることを認めました。 

 エアカナダのプレスリリースによると、今後は機内でなるべく乗客同士の距離が近くなるのを防ぐため、下図のように配慮するとのことです:

「安全第一。 安全な旅行のために距離を取りましょう。」

「可能な限り、お客様になるべく距離をあけて座っていただけるよう、搭乗口係員が積極的に座席変更をいたします。」

このような動きに加え、まだ今のところ具体的な発表はありませんが、おそらく各空港も航空会社と連携し、空港に旅行客が集中するのを防ぐ方法を検討するかと思います。 そのためには便数制限をしたり、空港ターミナルへの入場を制限することも考えられます。 

 以上、どれも今後しばらくの間は旅客の集中を抑制することが最重要課題になるでしょう。 3密の発生を防ぐにはこうするほかはありません。 それではこの新しい動きはパイロットの数にはどのような影響を与えるでしょう?

 まずは必要とされる便数の増減について考えてみます。 旅客数が制限されれば必要となるフライト数は減ると思われますが、実は必ずしもそうではないかもしれません。 上記の図からもわかるとおり、乗客同士が席をあけて着席するとなると、一度に乗れる乗客の数も自ずと減ることになります。 上の図ではキャパシティの半分しかお客さんを乗せることができません。 僕が乗務するボーイング767ER機を例に挙げると、満席で282名乗れますが、新方式を採用すると半数の141名しか乗れないことになります。 機内で乗客間距離を最低2メートル取ることが必要であれば上の方式ではまだまだ十分ではなく、さらに有効座席数が減ることも考えられます。

 座席数が減ると航空運賃は上がります。 単純計算ではありますが、運航コストを乗客の頭数で割ったものが航空運賃になりますので、一度に運べる乗客数が減ることはすなわち航空券代が上がることにつながります。 もちろん、運航が一旦再開された直後は航空会社各社は行動制限中に失った収益を取り戻そうと航空運賃を一時的に下げ、シートセールのようなことを実施することも予想できますが、いずれ旅客数が戻ってくれば今度は有効座席数が足りなくなり需要と供給のバランスが崩れ、航空運賃はいずれは値上がりすることになるでしょう。

 ということで、移動制限・国境閉鎖が解かれた直後から当面の間は旅客数はある一定度戻ってくることが考えられますが、そもそも座席数には限りがあります。 これをパイロットの仕事に及ぼす影響に置き換えて考えると、有効座席数は減るものの今までと同じ数の旅客運搬をするためには座席数を制限した飛行機を今まで以上の便数飛ばす必要が出てくるかもしれません(便数は増えても運搬旅客数は変わらず)。 そのためには今まで以上にパイロットの数が必要になるかもしれません。 これはあくまでも希望的観測ですが(笑)。

 今後どうなるかは移動制限・国境閉鎖が解かれるまでに世界経済と消費者心理が受ける影響の度合いにかかっていることは間違いありません。


(つづく)

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