2019-03-25

春の一時帰国。

 今月は月の頭から必死に働きました。 数回あったのが、夕方から仕事開始でアメリカのフロリダ方面に行き、折り返してトロントに戻って来るという1-day pairingです。 ただ、トロントに戻って来るのが日付が変わって午前2時頃で、その時間にはいつも通勤に使っている電車が走っておらず、仕方なく夜行バスに乗って自宅に帰る、という日が何日かありました。 そこまではまあ仕方ないと思うのですが、酷かったのは同日の夕方からまた仕事に行かなければいけなかったこと。 早朝に帰宅して、普段であればベッドから出るような時間にベッドに入ってなんとか眠りに付き、正午すぎに起床。 そしてまた数時間後には仕事に出かけるというような勤務パターンを数回やりました。 その甲斐あって、今月の勤務は13日までで、残りはおやすみという素晴らしいスケジュールになりました。  今の僕のポジションでは働きたいときに思いっきり働き、休みたいときにがっつり休めるので、かなり満足しています。 

 本当であればおやすみはフランスに行くつもりでいたのですが、日本にしばらく帰っていないこと、そして今月を逃すと秋頃まで帰国できないこともあって、急遽日本に一時帰国しました。

 行きでは以前一緒に働いたことがある日本人FAさんとゲート付近で会い、おしゃべりをしていたらあっという間に搭乗時間になりました。 トロントから羽田までは飛行時間13時間ほどの長旅です。 今回はプレミアムエコノミーの席に乗せてもらいました。 お隣の席にはフィギュアスケートのおっかけをしているおばちゃん。 背もたれの倒し方やエンターテイメントシステムの使い方をご存知なく、例え僕が映画を観ていようが、音楽を聞いていようが、遠慮なく肘打ちしてきて、「ね〜ね〜、これどうやってやるの?」と聞いて来る愛嬌たっぷりのおばちゃんでした(笑)。 羽生結弦が出ていた大会を観に行くって言ってました。 そういう定年後の過ごし方もあるんですね。

 羽田についたのは日付が変わり翌日金曜の夕方で、その日は品川・泉岳寺付近のアパホテルに滞在しました。 同日に実家まで戻るのはちょっとしんどいのと、今回乗せてもらう予定だったANAの予約状況がいっぱいだったようなので一晩の宿を取りました。 いつものように時差ボケがあるので、朝一番で公衆浴場にいったり、朝4時に泉岳寺付近を徘徊したり、なか卯で朝からカツ丼を食べたりして楽しみました。 いや〜、やっぱり日本は楽しい!

 翌日、羽田から小松空港まで移動しました。 あいにく最初の空席待ちの便はいっぱいで乗せてもらえず、次の便まで4時間ほどあったので、一旦空港を出ることにしました。 初めてセキュリティーゲートのあたりを逆行しました。 こんなこともできるんですね。 そしてスーツケースをコインロッカーに入れ、電車に乗って銀座方面に向かい、築地市場に行くことにしました。 どこも観光客(「インバウンド」ですか・・・笑)でごった返していて、観たものといえば食べ歩きをしている観光客くらいしか記憶にありません(笑)。 僕も屋台のようなところで中華そばを食べ(あまりおいしくなかった・・・)、たい焼きを買い(まあまあだった)、そしてコーヒーを飲み(安定のスタバ)、食べ歩きを満喫しました。 築地本願寺にも行きました。 Xのhideの葬儀があったところらしいです。 とてもユニークな建築物で、なかなか見応えがありました。 

 ちょっとした遠足を楽しんだあとはまた羽田に戻り、再度セキュリティーを通過してゲートに到着。 今回は無事に乗せてもらえました。 毎回のことですが、機種は767(Air Japanの767)でした。 プッシュバック直前で空港周辺に雷雲が発生していたようで、離着陸が一時ホールド状態だったそうです。 「カナダだったらそんなもん構わずにバンバン飛ぶけどなぁ」とも思いましたが、そこは安全第一、超慎重な日本の航空会社。 そしてその際の機長さんのPAがまたすごかった。 天候による遅れを詫びるのはまあわかる気がしますが、ご丁寧にも「手荷物検査にご協力いただきありがとうございました」から始まり、「保安検査場を迅速にご通過いただきご協力ありがとうございます」、「定時出発にご協力いただきありがとうございます」などなど、まあまあ次から次へと最初の1分ほどはお礼を述べられてらっしゃいました。 こういうのは海外に長くいると(ましてや同じ業界で働いていると)なんとなく違和感を感じてしまいます。 でも、日本ではこれくらいが普通なんですかね?!

 フライトは結局30分ほど遅れて小松空港に到着。 そしてバスに乗り継いで実家には夕食時に到着しました。 懐かしい街並みを観ながら家まで歩くのがちょっとした楽しみです。

 実家ではレンタカーを借り、親戚の家に行ったり、母親と一緒に小松まで買い物に行ったり、途中で小松空港に立ち寄って自衛隊機や旅客機を見たり、空港側にある航空プラザに行ったりもしました。 この航空プラザ、毎回バスで小松空港に来る際に見える建物で、外には古い自衛隊のヘリや訓練機が展示されていて、いつかは行ってみたいと思っていた場所の一つでした。 中にはなかなか面白いものもあり、しかも入場無料。 子どものみならず、大人でもある程度楽しめる内容になっています。 

 結局、実家に1週間ほど滞在し、またカナダに戻って来ました。 小松空港を10時半過ぎに出発するANAさんの便に乗せてもらい、羽田についたのが12時前。 トロント行きの便は午後6時過ぎ発なので、東京で6時間近く時間がありました。 そのため、またもやスーツケースをコインロッカーに預け、モノレールと電車を乗り継いで東京見物に出かけました。

 今回はまずは山手線で秋葉原まで行き、中古パソコン店を少しだけ観て回りました(今使っているコンピュータは8年以上も前のモデルなので買い替えを検討しています)。 そしてそこから歩いて上野へ。 結構近いんですね。 上野では恩賜公園、不忍池あたりで桜を観て来ました。 まだ二分咲きといった感じでしたが、それでも雰囲気は楽しめましたし、気温があがって初夏といった感じで気持ちが良かったです。 ここ数年桜は観れていなかったので今回はとてもうれしかったです。 桜を愛でる気持ちなど子供の頃はありませんでしたが、今はそういうのが少しずつわかって来たような気がします。 そりゃあ白髪も増える年頃なわけです(笑)。

 そういえば、イチローの引退試合をテレビ中継で観ていました。 あの試合があったのが実家を出る日の前日の夜だったので、インタビューを観ていたらかなり夜更かししてしまいました。 試合後のインタビューでイチローが語った内容(外国に住んで初めてわかること、等)は僕の体験と被るところもあり、共感できました。 今、海外にお住まいの方ならみなさんウンウンと納得されることでしょう。 ただ、イチローは本人が言っているとおり人望はあまりないのではないかと思います。 「イチロー節」と呼ばれる彼独特のユーモアは理解が難しいところがありますし、彼が記者からの質問に答えず、「それ、今ここで答えなきゃいけません?」といったように「質問に質問で答える」態度は僕個人としては観ていてあまり気持ちがよくありませんでした。 でも、彼が天才ベースボールプレーヤーだったことは間違いがないので、天才はやはりああいう感じになるんだなという結論にたどり着きました(笑)。 なにはともあれ、かくいう僕もWBCなどでイチローに感動させてもらった日本人の一人です。 歴史的な出来事を日本で観れたことは素直に嬉しく思いました。

 トロントまでは12時間ほどのフライトで到着。 トロントについたのは出発した日と同日、しかも1時間早いという感じでなんとも不思議です。 昨日と今日は時差になれるためにゆっくりしたり、友人と食事をしてきました。 来週はいろいろとばたばたするのですが、それでも今月いっぱいは仕事はないので、どこかで残業フライトができないかと企んでいます。

 それでは今回の一時帰国の写真をどうぞ。

築地市場周辺は買い物客で賑わっていました。

多くの観光客は外国人のようでした。

親戚の家に行く途中、白山連峰が見えました。 手前はローカル電車の線路。

子供の頃にこの神社でよく遊びました。 

小松空港では戦闘機がちょうど着陸してきました。 F-15ですかね。

航空プラザにはJALの767の巨大写真があり、あたかもコクピットに座っているかのような写真が撮れます(笑)

少しだけですが釣りにも行きました。 釣果はゼロ。

定年後はこのおっちゃんらのようにのんびり釣りをして暮らしたいというのが子供の頃からの夢です。

上野東照宮は桜が綺麗に咲いていました。

まだ満開とはいえないながらも、綺麗に咲いていました。

ブロンズ色とピンクのコントラストが綺麗。


上野恩賜公園入り口付近。 

公園内では猿回しなどもやっていて、なかなか良い雰囲気でした。

 

 次回の一時帰国はおそらく秋頃と思います。 その際には第2回FBグループのオフ会を開催したいと思っています。 今回はかなり急に一時帰国を決めたため、友人などにも一切連絡を取りませんでした。 


(つづく)



2019-03-09

訓練の大切さ。

 先月最後のフライトでまた南米コロンビアの首都ボゴタに行く予定だったのですが、離陸直後にちょっとしたエンジン不具合が発生しまして、トロント空港に引き返すことになりました。 詳細は大人の事情もあるので書けませんが、日本だったら新聞に載るんじゃない?っていう感じのものです。 その日はトロント地方は雪が降っていて、出発が2時間ほど遅れていました。 プッシュバック後にde-iceもしないといけなかったので、それにも時間がかかり、ようやく離陸できたと思ったら不具合が発生してトロントに戻ることになりました。 安全に着陸できたのが何よりよかったと思いますが、お客さんの気持ちを考えると申し訳ないようにも思います。 我々が着陸するころにはすでに代替機の用意やその便のクルーも手配されていたようです。 そこはさすが!と思うところでした。 結局、お客さん達がボゴタに向けて再出発したのは予定から8時間近く遅れてのこととなたようです。 

 緊急時には「Mayday」という言葉を無線で使うことがあります。 これは文字どおり緊急事態で、一刻を争う状態の際に使われる緊急信号です。 一方、問題はあるけど、緊急事態とまでは言えない、というような場合には「PAN PAN」というフレーズを使います。 PANとはPay Attention Nowの略と教わりましたが、Possible Assistance Neededの略という説もあるそうです(wikipedia調べ)。 半年に一度の訓練ではこれらのフレーズが頻繁に出るわけですが、今回のエンジン不具合の際にはこのPANPANを発信しました。 これを宣言することにより、航空管制官達は我々が緊急事態に直面している、そしてなんらかの手助けが必要になる可能性があるという状況を理解します。 いつもはぶっきらぼうな感じで愛想もよくないことも多い航空管制官のみなさんも、このフレーズを発信するとがつくほど親切になります(苦笑)。 この日もいろいろ聞かれましたが、PANPANやMAYDAYを発信する場合には乗員乗客が何名いるか、燃料の残りはどのくらいか、そして危険物を搭載しているかを告げる必要があります。 この日は訓練と同じようにこれらの情報を告げ、トロント空港に無事着陸しました。 着陸後は滑走路上で一旦停止し、消防の人々にエンジン火災などが起きていないかや、その痕跡がないかなどを確認してもらいました。 特に異常はなかったのでそのままゲートへと戻りました。 いままで何度も繰り返し訓練してきたシナリオとほぼ同じようなことが今回のことでは起こり、訓練通りにチェックリストをこなし、機長やフライトアテンダントのみなさんと協力して無事に着陸できました。 不謹慎な言い方かもしれませんが、良い経験となりました。 そして、改めて日々の訓練の大切さを身にしみて実感しました。

 緊急事態を宣言すると、パイロット達の精神状態を考慮し、しばらくは仕事から外されます。 今回は半ば強制的に3日間のおやすみをもらいました。 また、いろんなところから電話がかかってきました。 その日の当直マネージャーからだったり、チーフパイロットだったり。 航空会社にとっては緊急事態宣言はとても深刻なシチュエーションなんだと再確認しました。 また、クルーのメンタルのケアも行き届いている印象でした。 

 そんなこんなで3月に入り、今月は最初の2週間近くをかなり少ない休日数で働いています。 今まで経験したことのない、「same day release/check-in」をやっています。 これはなにかというと、1日目にフロリダまでの往復を担当するのですが、チェックインは午後4時ごろで、トロントに戻って来るのが日付が変わって翌日の午前2時前です。 そこから自宅に戻って就寝し、その日の午後にはまた次のペアリングが始まるというものです。 これはなかなか過酷です。 この時期はまだ雪などの影響でフライトが遅れることも多く、2時前に仕事が終わる予定であっても実際には3時過ぎに終わったりします。 そこからバスに乗って帰宅すると、家につくのは午前4時頃。 そして6〜7時間眠って正午頃に起床。 遅い朝ごはんを食べ、一般の方々が帰路につくころに僕は仕事に向かうというパターンが今月は数回続きます。 午前3時過ぎに仕事が終わるなんて、違法にすればいいのにとも思います(苦笑)。 日本の場合は多くの空港が騒音問題などを抱えているため真夜中以降のフライトというのは原則的にあまりないと聞いたことがあります。 北米はそんなことはなく、夜中以降や超早朝のフライトもあったりします。
 
 ここ最近はフロリダのタンパ、フォート・ローダーデール、そしてコスタリカのサンホゼに行くことが多いです。 夏は雷雲などが多く発生し飛びにくいエリアですが、今は概ね飛行条件も良く、楽しいフライトが多いのが救いです。 ジェット気流の影響で揺れることも多いですが、嵐を避け続ける労力に比べると些細なものです。 今日の写真はフロリダ・キーウエスト周辺です。 いつかここをドライブしてみたいな〜と思っています。





(つづく)