2023-02-28

エキサイティング!ラスベガス。

  二月もそろそろ終わりですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。モントリオールはまだ雪が降る日があり、気温もマイナス10度以下に下がることもあります。春の訪れはもうちょっと先のように感じます。


 ここ最近の仕事はラスベガスに行くことがほとんどです。これまでもラスベガスに行くことが多かったのですが、今月は主に自分でリクエストしてラスベガスに行っています。今月のペアリングの多くはあまり効率の良いものがなく、特に3日または4日間のペアリングはかなり非効率です。主な理由はリージョナル航空会社がパイロット不足でルートをカバーできないようで、そのルートを我々が飛ぶと言うヘンテコな構図になっています。僕は幸いセニオリティが高いおかげでそういうルートを飛ばずに済んでいます。1日に3レグとか4レグというスケジュールはリージョナル時代にはよくやりましたが、今はもうやりたくはありません(笑)。


 さて、そのラスベガス。今月は波乱万丈なフライトになることが多いです。ラスベガス空港は四方を山に囲まれているため、一度風が強まると乱気流が発生します。また、前線が通過するにともなって風向きが頻繁に変わります。そのため、巡航中にアプローチの準備をしても降下を始めると着陸する滑走路が変更になるということが頻繁に起こります。また、ジェット気流が強い日だとモントリオールから西向きに飛んでいく際に時速200キロ近い向かい風の中を飛ぶことになることもあったり、ロッキー山脈の上ではマウンテンウェーブやタービュランスが起きることも多々あり、なかなかチャレンジングなフライトになることもあります。


 先週のフライトでは到着予定時刻にラスベガス周辺に強風警報が出ていました。風は30ノット以上、ガスト50ノット以上という状態で、多くのフライトが着陸できず、風が収まるタイミングが来るまでホールド(上空待機)させられていました。我々もホールドを指示されました。あいにくその段階で残燃料には限りがあり、天候が回復するような感じでもなかったため、これ以上ホールドすることはできなくなる残燃料になってしまう前にアリゾナのフェニックスへ目的地変更を決定しました。フェニックスに着陸後、燃料を補給し、必要な書類等の準備が整ってから再度ラスベガスに向けて離陸。予定よりも約3時間強遅れてラスベガスに着陸しました。幸いその頃には安全な着陸ができる風速まで下がっていました。

(写真上:モントリオールからラスベガスまでの一般的なルート。北米をほぼ横断します。)


(写真上:ホールドしていた時の軌跡。このときは15マイルレグでのホールドでした。)

(写真上:ホールディングパターンを数回回ったあと、フェニックスまで目的地変更となりました。比較的ラスベガスに近いフェニックスですが、風は全く問題ありませんでした。)


 昨日のフライトでは同じく風向きがコロコロ変わる天候だったため、アプローチ中に着陸する滑走路を計5回変更しました。滑走路を変更するくらい大したことないと思われるかもしれませんが、変更するたびにコクピット内で色々準備をしなければなりません。フライトマネジメントコンピューターに打ち込むルートの確認や着陸距離の計算、ブリーフィングなど、やることは山のようにあります。さすがに5回目の変更となるとこちらも嫌気がさしてきますし、それがひいてはフライトへの集中力の欠乏にも影響しかねません。気持ちを冷静に保ってフライトし続けるのは案外大変なものです。この日は8Rとという東向きの滑走路に初めて着陸しました。この日はモントリオールを離陸する段階で燃料をタンク満載に入れての離陸でしたが、向かい風が時速150キロほど吹き続けていましたので、フライトプラン通り飛んでも燃料はギリギリという感じのフライトでした。フライト中は常に燃料の確認をし、万が一の場合に備えてプランB、プランCまで色々考えながらのフライトとなりました。 通常は5時間程のフライトですが、この日は6時間以上かかりました。ナローボディー機で6時間以上飛ぶと言うのは結構燃料的にギリギリです。6時間も飛べばカナダからロンドンくらいまで行けてしまうくらいの時間です。


 そして昨日はラスベガスからモントリオールに戻ってきたのですが、モントリオールで着陸をする際に我々の前に着陸した飛行機が滑走路を出るのに時間がかかって我々との距離が近づきすぎたため、管制塔からゴーアラウンド(着陸復行)を言い渡されました。シミュレーター訓練では毎回やるゴーアラウンドですが、エアバスの実機でやったのはこれが初めてでした。訓練通りの手順で訓練通りに綺麗なゴーアラウンドとなりました。やっぱり訓練は大事だなと再確認したのと同時に、身体がちゃんと手順を覚えていて、何も考えなくても自然と手順が出てきたことに我ながら感心しました。2回目のアプローチでは先行機がいなかったこともあり余裕をもって着陸できました。雪が積もっていたため滑走路は結構ツルツルな感じでしたが、安全に着陸できてフライト終了となりました。

(写真上:着陸をやり直し、左旋回して再度着陸となりました。)


 これまでラスベガスに行く時は「着陸の際にちょっと乱気流があったり追い風で降りるから着陸準備を早めにやろう」と気にかけるくらいだったのですが、ここ数回のフライトで毎回いろんなことが起きるので色々考え直す機会となりました。まさに訓練でやっているようなことが毎回起こるので、訓練の大切さを再確認する良い機会となっていますし、毎回色々な経験ができているのでとても充実しています。

 果たして次のフライトではどんなことが待ち構えているのか・・・。楽しみなような、そうでもないような(笑)。

 明日、またラスベガスに行って今月の仕事は終了です。


(つづく)