2019-12-21

リマ・風邪・仕事納め。

 先月に引き続き、今月もペルーのリマに行ってきました。 この日一緒に飛んだのは日系機長。 日本で生まれたそうですが、育ちはカナダ。 親御さんは日本語を教えなかったようで、日本語は全くはなさないそうです。 なんだかもったいないな〜と思いましたが、よそ様の子育てに異議申し立てをする筋合いはございません(笑)。 

 今回は久しぶりに僕がモントリオールからリマまでの操縦を担当。 フロリダを抜け、キューバ上空を飛び、パナマを通って南米大陸にと進んで行きます。 パナマ周辺はほぼ一年中大きな積乱雲や雷雲が発生していて、パイロットの間ではThe Wall(壁)と呼ぶ場合もあるようです。 この日は満月ということもあり、雲の位置をある程度目視確認しながら飛ぶことができたので楽チンでした。 月が出ていないとレーダーに頼ることになるのですが、レーダーには映らない雲というのもあり、ぎりぎりにならないとどこに雲があるのかわからない場合もあるので注意が必要です。 

 約8時間のフライトの末、いつもどおりのアプローチを行って無事に着陸。 リマに自分の操縦で下ろすのは久しぶりだったので楽しい着陸となりました。

 ホテルに到着したのは午前2時過ぎ。 シャワーを浴び、少しゆったりとしてから就寝。 こういう生活リズム、絶対健康には悪いです(笑)。

 翌朝、マーケットでも観に行こうとロビーに降りたらフライトアテンダントの子が二人いて、ちょうどこれからマーケットに行くというので一緒に連れて行ってもらいました。 マーケットではアルパカの毛で作られた毛布やセーターを扱うお店に立ち寄り、僕はアルパカ毛布を2枚購入。 初めてアルパカ製品を買いましたが、現地では安いですし、柄もモダンでおしゃれ。 お土産やプレゼントには最適です。 

(写真上:ここでアルパカ毛布を買いました。)

(写真上:公園にはやはり多くの猫が。)

(写真上:リマは夏。 気温は20度ちょっと)

(写真上:ここにも猫が)

(写真上:今年もこの箱でいろいろな緊急事態の対応をおさらいしました。)

(写真上:今年は離着陸が40回ほど、飛行時間が750時間ほどとなりました。)



 ホテルを出発したのは午前1時過ぎ。 フライト出発時刻は午前3時過ぎ。 こんな時間に旅行に出かけるってものすごいですよね(苦笑)。 なのに、こんな時間でも空港は大賑わい。 これは毎回のことなので、リマというのはなんとも不思議な都市だと毎回思わざるを得ません・・・。

 フライトの途中から体調に異変が。 なんだか悪寒がします((((;゚Д゚)))))))。 業務には影響はありませんでしたが、家に帰ってくるころには完全に熱がある感じがしました。 検温すると38度以上の熱が。 これはきっとインフルエンザ? ということで、次のお仕事は病欠となりました。 今月はシミュレーター審査もあるので、なるべく早く体調を治すために安静にしていました。 久しぶりに高熱が数日続き、かなりしんどかったですが、ようやく体調も回復してきて、シミュレーター訓練も無事に終え、仕事納めとなりました。

 今年一年を振り返ると、昨年よりも働いたなという印象です。 実際に飛行時間をみても今年は昨年よりも100時間ほど多く飛んでいます。 これはすべてドラフト(自主的休日出勤)のためで、その分お給料が増えました(笑)。 来年はもうちょっとセーブしても良いかなとも思いますが、今年は引っ越しなどでいろいろと物要りだったため、お給料が増えたのは助かったというのが正直なところです。 

 今年は海外便を主にビッドして働いていたため、時差ボケに悩まされ、睡眠障害にも悩まされる一年でした。 飛行機には慣れ、訓練でも落ち着いて対処できるようになっているのが自分でもわかるので満足しています。 でも、健康な体があっての仕事ですから、来年は体調優先のスケジュールで仕事ができるといいなと思っています。 

 というわけで、明日から冬季休暇となります。 今年一年このブログにお付き合いくださりありがとうござました。 皆さま、良いお年を!


(2020年もつづく)



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年齢の問題

 僕にメールをくださる方はだいたい2パターンに分かれます。 今、大学生(または高校生)で、パイロットになりたい人と、今は社会人で、昔パイロットになりたかったが何らかの理由で諦めざるを得なかったが、今になってパイロットへの憧れが再びぶり返したパターンです。 

 今まだ20〜30代の方は年齢なんか気にする必要はありません。 どんどん挑戦することをオススメします。 

 今、既に40代またはそれ以上の方にはいろいろ考えてもらわなければならないことが増えて来ます。 そもそも海外でパイロットになるのに年齢は関係ありません。 40歳から訓練を開始してもエアラインパイロットになることは可能だと考えます。 海外では日本のように履歴書に写真を貼ることもなければ、生年月日を書くこともありません。 容姿や年齢で差別してはならないからです。 しかし、海外でのパイロットの給料は最初のうちはとても低いです。 さらにエアライン前の仕事のお給料となると、それこそ日本の大卒初任給レベル(またはそれ以下)です。 それが時には数年間続きます。 仮に今、日本でばりばり仕事をしていて、お給料も家族を養っていくのに困らないくらいもらっているあなた。 そのお給料と地位・名誉を捨て、初任給レベルの生活に戻れますか。 それを数年間続ける覚悟はありますか。 しかもその後の仕事の保証はどこにもありません。 それが不安になって夜眠れなくなったりはしませんか。 もし答えがイエスなら海外でパイロットを目指すのはもう一度よく考えた方が良いかもしれません。 

2019-12-12

今年最後のバルセロナ。

 ここしばらくはモントリオールではあまり雪が降っていません。 時々数センチ積もっては溶け、積もっては溶け、といった具合です。 気温もマイナス10度以下にはあまり下がりません。 雪が降ってもリスたちは元気に走り回っています。

 昨日まで今シーズン最後になるバルセロナに行ってきました。 今回はレイオーバーが丸二日だったのでゆったりと街を歩き回ることができました。 さすがのバルセロナもこの時期になると気温が結構下がり、最高気温が15度ほど、最低気温は5度ほどです。 

 今回のバルセロナ行きは最近よく一緒に飛ぶ元空軍の機長 この人の経歴がすごく、アメリカ空軍でF16、カナダでF18を飛ばしていて、教官までやった方です。 あと一年ちょっとで定年ということもあり、かなりリラックスした方です。 僕はこういうおじいちゃん機長との相性が良いです() 

 バルセロナに向けて降下中、バルセロナアプローチのATCから指示が出ましたが、スペイン語訛り強すぎて何を言っているかわかりません。そもそも英語が第二言語の僕は外国語訛りの英語を聞き取るのが苦手です。 機長ならわかったかな?と思って横を見ても首を横に振っています() Say again?」と言って再度指示をリクエスト。 それでも聞き取れません。 機長は「もしかしてヘディングって言ってる?」っていうので、「なんですか、ヘディングですか?」と管制官に言い返すと、「ソーデス、へデング110,レダーベクタ フォー ファイナル」的な、訛り大盛りで指示が出ました() その後は無事にアプローチを続け、無事に着陸しました。 スペイン語圏の管制官は本当に何言ってるのかさっぱりわからないときがあります。 スペインはまだましですが、南米の方はもっとひどい 緊急時のときに意思疎通ができるのか、大きな疑問が残ります。

 今回のバルセロナレイオーバーでは初日は機長のタパスバーに出かけました。 ワインと突き出しで3ユーロと格安のバー。 これがなかなかよろしくて気に入りました。 



 街はすっかりクリスマスの雰囲気に包まれていました。 街は買い物客と観光客でごった返していました。 街のイルミネーションがきれいで良い雰囲気でした。 こういうスペインも悪くありません。


(写真上: クリスマスマーケットが開かれていました。)









 レイオーバー二日目はバルセロナでも人気のピザ屋に行きました。 最近ピザをゼロから作ろうと目論んでいて、研究を兼ねて行ってきました。本格的なナポリピッツァでおいしかったです。 皿よりもでかいサイズにビビりました()



(写真上:こちらもガウディが設計した建物)

(写真上:巨大なクリスマスツリーが飾られていました。)

(写真上:バルセロナらしい広場)

(写真上:バルセロナはとにかく犬が多いです。)



(写真上:クリスマスマーケットでは木が売られています。)



 最終日は朝8時過ぎ(モントリオール時間で午前2)に起床。 フライトは正午ごろ出発でしたが、フローコントロールの影響でプッシュバックが少々遅れました。

(写真上:お隣は魔法のレッドカーペット号。)

 離陸後はスペイン北部に向かって飛び、そこから北西に舵を切り大西洋を横断しました。 途中、大きな揺れが予想されるエリアがありましたが、特に揺れることもなく通過できました。 カナダに上陸すると、そこからモントリオールまでさらに3時間程かかります。 カナダという国は本当にスケールがでかいです。 しばらくするとジェット気流の影響でかなり揺れるエリアに入りました。 向かい風が190ノット(340キロ/)にもなりました。 おかげで地上速度を稼ぐことができず、プロペラ機のような速度で飛ばざるを得なくなり、モントリオールに到着したのは予定よりも1時間近く遅くなりました。 天候の影響とはいえ、お客さんには申し訳なく思いました。

 明日からまたペルーのリマに行ってきます。 今回飛ぶのは日系カナダ人機長のようで楽しみです。



(つづく)

2019-12-05

今年初のde-iceと、de-icingの説明。

 11月最後のペアリングでは久しぶりに南米ペルーのリマに行ってきました。 モントリオール出発が午後5時すぎ。 この日は今年初の大雪だったため、いろいろなハプニングがありました。 

 カナダは雪には慣れっこと思われがちですが、そうでもないことが多いです。 カナダでも西海岸のバンクーバーやビクトリア周辺はあまり雪が降りません。 そのため、ちょっとでも雪が降ると街はパニックに陥りがちです。 その点は日本の関東地方と似ているでしょうか。 一方、カナダ東海岸は雪深い地域として知られています。 そのため雪には慣れているはずなのですが、雪が降り始めるシーズン初旬はややパニック気味になります。 街では車がスタッドレスを履いておらず、事故が多発します。 そもそもケベック州はスタッドレスの着用が義務付けられているのですが、雪が降るのはまだまだ先だと悠長に構えている人達はいきなり雪が降るとあたふたするという始末です。 空港でも同じような感じで、初雪の日は飛行機を牽引・プッシュバックするトラックのタイヤにはチェーンがまだ巻かれていない場合もあり、ゲートからプッシュバックしようとしてもタイヤがスリップしてどうにもならない、という光景が多発します。 こんな光景を毎冬見てきました(笑)。 今年が東海岸で冬を過ごす3年目になりますが、ほぼ毎冬同じ光景を見ています。 小型機であれば問題ないのかもしれませんが、ボーイング767は時には180トン近い重量になります。 ちょっとでも雪が降っていたり、地面に氷が張っていると小さなトラック、ましてやノーマルタイヤのトラックではプッシュバックができません。 この日も同じ状態になりまして、結局、チェーンを履いた大型のトートラックが到着するまで待つ羽目になりました。 

 この日飛ばすことになった機体はモントリオールに1日以上前に到着していたものだったため、夜の間に霜が降りていたためde-iceをする必要がありました。 今年初のde-ice。 しかもモントリオール空港では初めてとなる経験でした。 De-iceのためのスポットに移動するも先約が何機もいて、我々の順番が来るまで長い間待つ羽目になりました。 モントリオール空港の夕方は出発ラッシュで、主にヨーロッパ方面に向かう機体で忙しくなります。 この日もエアフランス、ルフトハンザなどのワイドボディ機が我々の先に待機していました。 

 ワイドボディ機の場合はいろいろ面倒なことがあります。 De-icing Bayのスポットの中には大型機の翼幅に対応しきれないスポットもあるため、必然的に我々が入れるスポットの数が少なくなります。 そのため、先約があるとそのスポットの空きがでるまで待つことになります。 これが小型機の場合ならどこでも入れるのでさっさとde-iceして出発できるのだと思います。 

 今までde-icingについて詳しく書いたことがなかったので、今回は一般的な手順を説明します。

 まず、気温が下がった日にはゲートに到着した段階でde-iceの必要があるかどうかを目視確認します。 飛行機によって違いますが、ボーイング767の場合は客室内から翼を見てチェックします。 また、外に出てエンジン内に雪や氷が付いていないかを確認する場合もあります。 翼に雪が積もっていたり着氷がある場合にはde-iceが必要ということになります。 出発前の点検でde-iceが必要な場合には会社からデータリンクで「de-iceが必要です」というメッセージが届く場合もあります。

 De-iceが必要な場合にはゲート出発約30分前にDe-icing Coordinatorという役割の人にde-icingが必要な旨を無線で事前連絡しておきます。 

 出発準備が整うとプッシュバックとなりますが、その際にde-icing bayに向かう旨を管制官に伝えておきます。 

 De-icing padに近づくと、Pad Controlというde-icingエリアを総括する人と無線会話します。 大抵の場合、入って良いスポットナンバーを伝えられ、「Stop at the red bar, and conform when brakes are set」というようなことを言われます。 言われた通りスポットにタクシーし、ブレーキをかけます。 そして無線で「Brakes are set.」と連絡します。 そうすると、「Contact Iceman on 1XX.XX」(XXは周波数)と指示されます。
 
 Icemanは実際のde-icing spray業務を総括する人のことで、この人が実際にde-icingトラックを操作する作業員に無線指示を出しています。 Icemanと話す前にはde-icing checklistを読んで飛行機の支度をします。 De-icing中には機内にde-icing fluid(液体)が入ってこないようにしたり、トラックの作業員に危害が及ばないようにライトを消したりいろいろやることがあります。 チェックリストに沿ってそれらを行い、準備が整ったらいよいよIcemanと無線会話します。

 「Iceman, (コールサイン)、brakes are set, aircraft configured for spray, requesting Type 1 and 4, wings and tail」(訳:”Iceman, (コールサイン)、ブレーキはかかっています。 飛行機のde-ice準備は整いました。 タイプ1と4の液体を翼と尾翼にかけてください”)といったような指示を出します。 

 タイプ1という液体はオレンジ色の温められた液体で、これをかけて雪や氷を溶かします。(=de-ice)

 タイプ4という液体は黄緑色の液体で、これをかけることによって翼の表面を覆い、雪や氷が機体表面に届かないようにします。(=anti-ice) この液体は100ノット前後のスピードになると風圧で吹き飛ばされ、翼から剥離するように粘度を調整されているそうです。 

 スプレーが終わるとIcemanから無線で呼ばれます。 返事をすると、どのような液体をかけられたか、そのスプレーが何時何分に開始されたか、トラックや作業員がすべて安全エリアに移動したこと、de-ice後のチェックが済んだことなどが伝えられます。 そしてde-icing padを離れるためには再びPad Controlに連絡するようにと指示されます。
 
 タイプ4の液体にはHold Over Time(HOT)という時間があります。 これは、この液体が翼を雪や氷から守ってくれる時間の計算に必要になるものです。 細かい説明は省きますが、de-ice/anti-iceスプレーをした際の気象条件によって〇〇分以内に離陸しなければならない、といったように離陸までの時間が決められる場合があります。 万が一この時間内に離陸できない場合には再度スプレーすることになります。

 Pad Controlに無線コールする前に再びチェックリスト(post de-cing)を行います。 De-ice前に切ったエアコンやいろいろなスイッチ類の位置を再び離陸のための位置に戻します。 それが終わったらPad Controlに連絡し、de-icing padを離れて滑走路に移動するための許可をもらいます。

 っというふうに、お客さんにはわからないところで我々はいろいろやっているんです(笑)。 この日は初雪ということもあり、てんやわんやで、ゲートを出発してから離陸するまでに1時間以上かかりました。 その間もエンジンは回っているわけで、それだけ余分に燃料を消費します。 そのため、de-iceの必要があるときにはディスパッチャーは普段よりも少し多めに燃料を搭載するようにフライトプランを立ててくれます。

 
(写真上:de-icing中にお隣にいたB787が夕日の中スプレーされていました)


 今月はバルセロナ、リマ、プンタカナに行きます。 また、半年に一度のシミュレーター訓練もあります。 また勉強しています。

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訓練費用について

僕が訓練を受けたのは2006年頃です。 もう10年以上も前です。 従いまして、物価の上昇に伴って訓練費・生活費は上がっているはずです。 具体的な額はフライトスクールのウェブサイトに書いてあるか、問い合わせをすれば教えてくれます。 

参考まで、Victoria Flying Clubのウェブサイトにある情報によれば、PPL, CPL, Multi-IFRまで取得するには今日現在で最低でも60,000カナダドルほどかかるようです。

カナダでの生活費は日本(都市部)での生活費と大きく変わることはないと思いますが、場所によって差があります。 したがって、資金は余裕を持って用意することが望ましいです。 1ヶ月あたり最低でも1000~1500ドルは見積もった方が良いでしょう。 水準の高い生活をしたい、車を持ちたい、などのリクエストがあれば当然ながら生活費も上がります。 




(つづく)