2022-08-06

仕事復帰のシム訓練。

  またもや久しぶりの投稿です。前回投稿してからまたしばらく時間が空いてしまいました。毎度のことながらこのブログをご愛読いただいている皆様、申し訳ありません。


 さて、先月末に育休を終えてフランスからカナダに戻ってきました。本当は仕事復帰のためのシミュレーター訓練が始まる前ギリギリにカナダに戻ってくる予定だったのですが、昨今の旅行者の急激な増加によって我が社の予約状況もパンデミック前の水準近くまで戻ってきているようで、ジュネーブ=モントリオール便は7月21日以降は連日満席・オーバーブッキングという状態だったため、急遽21日のフライトで泣く泣く戻ってきました。


 前回の投稿からフランス滞在中は毎日バタバタしていました。娘の健診について行ったり、娘の出生届を日本領事館に提出したり、パートナーとの結婚式準備に追われたり、婚姻届を出す準備をしたり、フランス滞在許可書の申請をしたりと、常に何かをしていた感じです。もちろん楽しいこともたくさんありました。天気が良い日には山や湖で何度もピクニックをしました。ツールドフランスが街を通過したので観戦にも行きました。娘を連れていろんなところを散歩したりもしました。とても充実した日々でした。


 娘はあっという間にもうすぐ4ヶ月になります。飲むミルクの量が、生まれた直後から比べると10倍くらいになりました。今では顔をじっと見つめたり体を触ったりするとキャッキャと笑います。夜は最後のミルクを8時過ぎに飲み終えると次の日の朝までぐっすり寝てくれます。首ももうすぐ座ります。子供の成長は本当に早くて驚きます。いろんな人から子育ては大変だと聞いていましたが、正直なところ、全く大変ではありませんでした。やはり1人で育てるのではなく、妻と2人で育てることができたからかもしれません。


 娘が生まれる前までは、育休を取るべきか、どのくらい取るべきか、生活に悪い影響は出ないか、仕事の勘が鈍ってしまうのではないか、などなど、色々と心配していたのが正直なところです。しかし、振り返ってみると特に心配する必要はなかったです。


 育休は3ヶ月取ったのですが、もっと長くてもよかったかなというのが正直なところです。ただ、3ヶ月以上取るにはいくつかのハードルを越える必要があったため、今回は延長しませんでした。育休中はケベック州政府からのお給料補助があったため、仕事をしている時の8割弱の収入を保つことができたので助かりました。仕事の勘ですが、これだけは少し影響が出ました!


 8月2〜3日にトロントでシミュレーター訓練を受けてきました。結果からいえば問題なく合格し、免許の更新ができたのですが、それまでの工程がなかなか大変でした。僕は育休中はフライトのことを一切考えないようにしていましたので、7月21日にカナダに戻ってきてから訓練に行かなければならない10日ほどで今までの知識を全て頭に入れ直しました。4ヶ月ぶりに飛行手順マニュアルを読み返してみると、本当に初歩の初歩的なことまですっかり頭のメモリから消去されていたことに気がつきました。これはちょっとまずいかな?と少し焦りましたが、10日もあれば十分なはずだし、ここ2年ほどで2回も長いブランクが空いた期間(後述参照)があったにもかかわらず問題なく仕事復帰できたこともあったのでそこまで深刻な問題にはならないだろうと思っていました。


 訓練は1日目が訓練項目をこなすフライトを4時間やり、2日目がフライトテストです。1日目の最初のうちはかなり緊張していましたし、自分の周りで起こっていることを即座に把握することができず、いってみればトンネルビジョンのように周りがよく見えなかったのでビビりました。ですが、1日目の最後の頃にはさすがに感覚が戻ってきまして、2日目のフライトテストではある程度落ち着いてフライトすることができました。とはいえ、普段訓練にくる時とは明らかにパフォーマンスが落ちていたことは否めません(普段の8割くらいの出来だったように思います)。一緒に飛んだ機長と監査機長には「君、本当に4ヶ月飛んでなかったの?ちゃんとできてるじゃん」と驚かれましたが、自分の中ではあまり満足できる内容ではありませんでした。さすがにおんなじような内容の訓練や試験を今までに何度も受けてきてパスしてきたので、ちょっとやそっとのことでは落ちることはないとは思いますが、久しぶりにかなり緊張しっぱなしだった二日間だったので、訓練を終えて自宅に戻ってきたらどっと疲れが出ました。


 今回の訓練がなぜ大変だったのかを自己分析してみたのですが、よく考えてみるとパンデミックが始まった時に数ヶ月飛ばなかった時はボーイング767からエアバス320に機種変更になったので、そもそも訓練はゼロからのスタートだったのです。エアバスの勉強をするには十分すぎるほどの時間もありました。その後再び地上待機を言い渡されて数ヶ月自宅待機になったのですが、その後の職場復帰の際にはシミュレーターで訓練をする前にIPTで手順のおさらいをするReturn To Work (RTW)セッションが設けられていました。そのため、1日目でおさらいをしてから2日目の訓練と3日目のフライトテストまでスムーズに持っていくことができました。ところが今回はそういった補助輪的なセッションはいっさいなく、いきなりぶっつけ本番的な感じでの訓練となったわけで、そのためかなりしんどい印象の訓練になってしまったというわけだというのが僕の分析です。


 何はともあれこれで仕事に復帰となります。3ヶ月以上離着陸をしていない期間があるため、次回の実機でのフライトは路線審査ということになっています。行き先はドミニカ共和国のプンタカナです。片道4時間半、往復9時間の長い1日になります。しかも審査だから色々知識を試す質問をされるのではないかと思います(これは路線審査機長にもよりますが)。あと数日まだ勉強の日々が続きそうです。




 今日の写真はモントリオールからトロントまでの移動の日に機窓から見えたモントリオール空港ターミナルです。だいぶ飛行機の数が多くなってきています。ターミナル内は旅客でごった返しています。それこそパンデミック前よりも人が多いほどです。ちなみにターミナル内はマスク着用義務はありません。



(つづく)