2024-01-18

2024年は訓練からスタート。

 新年明けましておめでとうございます。今年も本ブログをどうぞよろしくお願いします。


 今年は航空事故や地震など、様々な心配なことが起こる年明けになってしまいました。航空事故は航空業界に携わるものとしても注目して経過を見守っています。今日のニュースでJALの元社長となった方が「アナログな無線通信はリスクが高い」とおっしゃっていて、その通りだよなと思いました。最近ではCPDLCといったデータ通信を使ってパイロットと航空管制官が通信する方法もだいぶ普及してきてはいますが、いまだに離着陸の許可や地上滑走許可などはほとんどが音声による無線通信に頼っています。海保のパイロットが無線指示を間違って理解して滑走路に進入したことが事故の原因であるような感じの報道がされていますが、無線を聞き違えたり、復唱したけど頭の中では違うことを考えるということは誰にでもあり得ます。そういうミスを防ぐためにパイロットは2名以上乗務しているわけですし、管制官の方々も注意を払っているはずです。JALのパイロットが操縦していたエアバスA350型機ではパイロットはヘッドアップディスプレイ(HUD)を使って着陸操作をしていたと思われ、そのディスプレイ上の表示と地上にいた海保の機体がちょうど重なって見えづらい状況だったという話も耳にしました。今回の事故から航空業界が学ぶこと、改善することはとても多くあるように思います。


 さて、僕はフランスで新年を迎え、1月9日にカナダに戻ってきました。 今月は半年に一度のシミュレーター訓練があるので、その前に2ペアリングほど飛んで、休みの間に鈍った勘を取り戻すのにはちょうど良い形になりました。


 一昨日、昨日とトロントの訓練施設でシミュレーター訓練を受けてきました。今回は1日目が訓練日、2日目はLOFT(Line Oriented Flight Training)という、普段のフライトで起こりそうな状況にリアルタイムで対処する訓練イベントでした。エンジン火災、急減圧、油圧システムの故障、その他システム不具合など、いつもと同じように色々なシステムトラブルに対処する手順の復習をやりました。今回のトレーニングパートナーは機長資格を持ったパイロットだったので、僕は副操縦士のオペレーションに集中することができました。過去数回の訓練は全て副操縦士とペアになったので、セッション途中で席を入れ替えて1人が機長の役目をやらなければならず、普段よりも訓練に時間がかかることはもとより、LOFT訓練をすることができず、毎回フライトテスト(PPC)をやってきました。PPCはある程度シナリオが想像できるので楽と言えば楽なのですが、やはりLOFT訓練で毎日のフライトに役立つ知識や手順の確認をした方が有益であると思います。訓練は2日とも様々な項目がぎっしり詰め込まれているので、4時間ぶっ通しでのセッションでしたが、大きなミスもなく、ちゃんと手順のおさらいをして今回の訓練も無事終了、また6ヶ月飛べることになりました。


 ここ最近カナダは真冬の天候で、西部ではマイナス40度というところもあったようです。トロントはマイナス13度ほどでしたが、僕は訓練とホテルの間しか移動していないので、それほど寒さを感じる時間はありませんでした。


毎回お馴染みの怖い箱(笑)

(トロントからモントリオールに戻ってくるフライトの機窓から)


 今月はシングルデーペアリングがほとんどなのですが、明日からは今月唯一の2デーペアリングでドミニカ共和国まで行ってきます。ビーチから見る日の出がとても綺麗な場所なので楽しみです。



(つづく)

2023-12-28

2023年最後のフライト。

  今年もあっという間に年の瀬がやってきました。今年は大きな怪我や病気もせず、仕事もプライベートも全てがスムーズに進んだ良い一年になったように思い、とても満足しています。仕事は毎月のスケジュールがほぼ希望通りのものをもらえるようなセニオリティまで上がってきたこともあり、そのおかげでプライベートを充実させることもできました。近い将来、今のナローボディ機の副操縦士のポジションから次のステップに進むことになりますが、そうなると相対的なセニオリティは確実に下がります。そうなるとスケジュールの自由度が下がり、生活の質が下がってしまうことは間違いありません。ですから、今のうちにシニアパイロットとしての恩恵を十分味わっておこうと思っています。


 昨日が今年最後のフライトで、一昨日、昨日と連続でキューバに行ってきました。一昨日はサンタクララ空港、昨日はオルギン空港までの日帰りフライトでした。キューバは僕はあまりいったことがなく、サンタクララに行くのは1年ぶりくらい、オルギンに行くのは初めてでした。キューバという国について僕が知っていることといえばハバナの葉巻、カラフルな街並み、レトロな車、そしてあとはアメリカやロシアが絡んだ歴史的の一部くらいです。まだレイオーバーでキューバに滞在したことはありませんが、いつか行ってみたいところの一つです。駐機中にフェンス越しに駐車場が見えたのですが、そこに出入りする車の多くが今まで写真などで見たことがあるレトロな車ばかりでした。フライトは2日とも強烈な乱気流が報告されているような大荒れの気象条件で、どの高度を選んでも揺れがとまらない残念なものでした。アメリカのニューヨークからキャロライナ州あたりまで1時間弱、中度の乱気流が続きました。幸いお客さんの中で気分を悪くする人はいなかった(というか、我々パイロットに報告される程深刻な状況にはならなかった?)ようです。


サンタクララ空港のターミナル

空港の名前にはサンタマリアとありますが、サンタクララという場所の空港です。


オルギン空港にはカストロ議長の写真が設置されていました。

お隣はアメリカの航空会社


 今月は月の頭に1週間程休みがあり、今日から来年1月7日までお休みです。そのため、今月中旬は6日連勤で1日休み、また6日連勤というパターンで働きました。なかなか疲れたなというのが正直な感想です。来月は訓練があるためスケジュールに制約があり、ほぼ全てのフライトがシングルデーのペアリングです。毎日2回自宅と空港の間を自動車通勤するのは気が滅入りますが、何とか頑張ろうと思います。

 最後にスクリーンショットを1枚↓




これは今年の僕の飛行データです。146便の運航を担当し、旅客者数は2万2千人程でした。今年も無事故無違反でお客さんを安全に目的地までお届けできてよかったです。


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 今年もこのブログやフェイスブックのグループを通していろんな方からメッセージをいただきました。パイロットを目指している方やその親御さん、カナダに留学に来る方、または同業者の方など、本当に様々です。僕の拙い文章がどなたかの何らかのお役に立てていれば嬉しいです。今はSNSを通して誰とでも繋がれますし、生の声を聞くこともできます。僕がカナダに来ることを検討していた頃は今ほど情報がありませんでしたから、自分から動いていろいろリサーチする必要がありましたが、今はそんな努力をしなくても指先でスマホ画面をタッチするだけで情報が簡単に手に入ります。それがいいのか悪いのかはわかりませんが、少なくとも情報は自分で精査して利用する必要があると日々感じていますし、自分で行動を起こさなければ何も変わらないということは今も昔も同じであると思います。パイロットを目指している方にとっては今は絶好の機会が訪れていますから、努力して夢を叶えてもらいたいと思っています。


 以上、2023年最後の書き込みでした。本年もこのブログを読んでいただきましてありがとうございました。2024年が実り多い良い一年となりますように。皆様、良いお年を。


(2024年もマイペースで続く)












2023-11-10

17年が経ちました。

  少し時間が空いてしまいましたが、カナダに来て先月で17年が経ちました。毎年このブログでこの移住記念日のことは書いてあるので繰り返しになるかもしれませんが、時間が経つのは早いものです。日本を出たときは登山用バックパック一つとダンボール箱に梱包したマウンテンバイクだけが所持品でした。西海岸からスタートしたカナダ生活も紆余曲折を経ていつの間にかかなり東の方までやってきました。なかなかの冒険だったと自分でも思いますが、特に大きな病気もせずここまでやってこれてよかったです。以前はこのブログは毎日更新を心がけていました。当時は人生そのものがとてもシンプルで、異国の地で友達も特に多くはなかった僕にはブログを更新することが日記を付ける感覚で、良い時間潰しだったのだと思います。17年前であればまだ日本との繋がり、日本にいる友人達との繋がりも強く、そういう人たちに向けたメッセージを書く場でもありました。時間が経つにつれ、そういったつながりも残念ながら希薄になり、こちらでの生活が人生の中心になり、そうしていつの間にかバタバタといろんな人生ドラマが起き、毎日に追われてここまできたという感じもします。20代後半で日本を出たのがつい先日のように感じられますが、僕もあっという間に四捨五入で50歳になる歳になりました。これからあと何年カナダにいるのか、最近そういうことも思うようになってきました。


 仕事は順調にやっています。ここ最近は我が社のリージョナル路線を担当する会社のパイロット確保がうまく行っていないとやらの理由で、僕が属する部署がそういったリージョナル路線を飛ぶことが多いです。僕自身がそのリージョナル会社にいた頃には1日4〜5レグ飛ぶことも多くありましたが、プロペラ機乗務からジェット機乗務に異動してからは1日2レグほどになり、今の会社で767を飛ばしていた頃には1日多くて2レグ、ほとんどは1レグというかんじになりました。今のエアバス乗務ではセニオリティが高くなってきたおかげで1日2レグ以上飛んだことはここ数年間ありません。毎月のスケジュールビッドの時期になると翌月のペアリングが発表になるのですが、ここ最近は毎月1日2レグ以上のペアリングが占める割合が多くなってきているように感じます。つまり、リージョナル部門のパイロット確保が相変わらずうまく行っていないという証拠でしょう。様々な理由があるようですが、リージョナル部門のパイロット不足は今後しばらくは解消されないように思います。


 先月は1デイペアリングが多くありました。朝仕事に行って夜帰ってきてペアリングが完結する、「1日だけ働くペアリング」です。これの利点は毎日自分のベッドで眠れること。食事を家でとれるので食生活や健康面で有利であることなどがあります。逆に不利な点は1日2回車で空港と自宅の間を運転しなければならないこと(モントリオールのラッシュアワー時の交通渋滞はなかなか酷いです)。最長で4デイペアリング(3泊4連勤)というのもあるのですが、最近の4デイは前述の通りリージョナル路線を飛ぶことが多く、1日4レグ飛ばされるなんてこともあるので避けています。飛行時間が少ない頃であれば4レグも飛べればご機嫌だったでしょうが、今ではそういうハングリー精神は一切ありません(笑)。リージョナルのころはよく4デイをやっていましたが、今はライフスタイルが変わったので1デイか2デイをやることがほとんど。先月の行き先で多かったのはフロリダにある空港とメキシコのカンクンです。アリゾナ州フェニックスにも3回行きました。飛行時間は短いもので片道3時間程度。長いものでは5時間を超えます。エアバス320(CEO)シリーズで飛行するには長過ぎる飛行時間です。エアバス320型機はヨーロッパなどで片道1-3時間の距離を飛ぶのに性能を発揮する機体のようですから、5時間のフライトでジェット気流に抗って飛ぶ時などには燃料の問題などが頻繁に発生します(=飛行時間が長すぎて燃料が足りなくなる可能性が上がる)。離陸重量や離陸の際のエンジン能力の計算なども普段よりシビアにならざるを得ない場合もあります。我が社には燃料効率の良い737MAXやエアバス220などもあるので、そっちを使えばいいじゃんとよく思いますが、コスト面などの諸事情で僕の所属する部門が現状カバーしている状態です。早く改善してくれればいいのですが。


 ここ最近、いろんな書類等の更新手続きをやる必要がありました。一つはPRカード。カナダ永住者に交付される永住者カードで、5年に1回更新する必要があります。前回更新時は書類を郵送する形で更新しましたが、今回はポータルサイトを使って全てオンラインでの申請でした。予想以上に迅速に処理され、申請をしてから1ヶ月ほどで新しいカードが郵送されてきました。過去2回分のカードを記念に保管しているのですが、確実に自分が歳を重ねているのが写真を見れば一目瞭然です(笑)。 あと一つ、仕事で使う制限区域進入許可証も更新する必要がありました。これも5年に1度の更新です。こちらもスムーズに更新でき、申請してから3ヶ月ほどで発行されました。申請時に書類を受理してくださった女性係員の方が僕の日本のパスポートのページにある透かしにいたく感動されていたのですが、今回新しいカードを受け取りに行った際にも同じ女性で、「あなた、確か日本のパスポートの?」といった具合に覚えていてくださいました。日本国パスポートの影響力は凄まじいです。


 先月末から今月頭までフランスとスイスに滞在していました。家族の小旅行でスイスの首都ベルンとフリブーグに行ってきました。この時期のスイス方面はあまり天気がよくないので、1日目はやや雨に降られましたが、2日目は天候にも恵まれ、楽しい時間を過ごすことができました。スイスは面白いところです。高速道路では多くのスイス人は法定速度をしっかり守ります。というのも、高速道路には多くのスピードカメラが設置されていてすぐに罰金切符を切られてしまうというのが理由のようです。それ以外にもスイス人は日本人の気質に似ているのか、ルールを守ることを善としているような感があります。あまりフレンドリーではない国民性という噂も聞きますが、親切な人が多い印象を受けます(少なくとも形式的には)。


 あ、そして、今日モントリオールは積雪がありました。確か僕がヨーロッパに行っている間にも一度降ったと思うのですが僕は見ていなかったので、今日が僕にとっての初雪です。嫌な季節がやってきました。毎年どんどん冬が嫌いになって行きます。昔はそんなに気にならなかったのですが、最近は寒さよりも暑さ、冬よりも夏が好きになってきました。


シャモニーから見るモンブラン

ベルン

ベルン旧市街

紅葉が進んでいました。

帰りに立ち寄ったグリュイエール

こちらも紅葉が綺麗

(続く)


2023-08-25

訓練終了とフランス語検定。

  ここ数日、急に風が涼しく感じられるようになってきたモントリオールです。今朝ベランダに出てみたら、朝のそよ風の温度は明らかに秋風のそれ。短い夏の終わりがすぐそこまでやってきている感じがします。


 先月末にトロントで半年に一度のシミュレーター訓練を受けてきました。今回も前回に続き副操縦士とペアになっての訓練でした。今回のトレーニングパートナーは以前FedExの飛行機を飛ばしていたという人。今回がエアバス320型機に乗り始めて初めてのリカレント訓練ということでした。このブログを読んでくださっている方で記憶が良い方ならすぐに思い出されるかもしれませんが、機種変更をして最初のリカレント訓練というのが実はなかなか大変なのです。長い初期訓練から解放され、やっと野に放たれたパイロットの中には緊張感が一気になくなり、勉強をやめたりする人もいます。そんなこんなで半年ほどなぁなぁな感じで飛んでいて、さ〜訓練ですよとなるとそこから緊張感を以前のレベルまで持ってくるのにはなかなかの努力や時間が必要になることもあります。そういう状態にならないように、真面目なパイロットは日々精進を続けているわけですが、パイロットも人間ですから、ちょっとくらいリラックスしたくなることもあるわけです。


 今回の訓練パートナーはエアバス経験は浅いものの、以前のエアラインで機長もされていたようなので、ほとんどの面では問題なくお互い上手にできました。ただ、エアバス独自の緊急時の手順などのSOP面がやや弱くなっていたため、訓練初日では色々と教官から指摘を受けたりもしましたが、そこはさすがプロ、2日目のフライトテストでは圧倒的に上手にできるようになっていました。問題なく合格し、お褒めの言葉をもらって無事終了。今回も学びの多い訓練でした。


 そして一昨日は路線監査フライトをやってきました。日帰りのフォートマクマレーまでのフライトでした。片道4時間ほど、合計8時間ほどのフライトでした。フライト中は色々な質問をされ、うまく答えられないとそこで指導が入るという感じです。既に知っていることの確認、新しい情報のシェア、よくある誤解や間違いの指摘などが主で、これまた学びの多いフライトになりました。こちらも無事に合格し,これでまた半年飛べることになりました。


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 今月の初旬,フランス滞在中に管轄県庁所在地の役所にてフランス語能力試験を受けてきました。フランス国籍保持者の子を持つ親は自動的にフランス滞在許可証を申請・受理することができます。もし,そのままフランス国籍まで取ろうと考える場合には色々な試練が待ち構えています。そのうちの一つはフランス語能力の試験を受けること。そしてフランスの文化,政治,その他もろもろを勉強するための講座に出席することです。僕の場合はフランス国籍を取る予定はありませんし,滞在許可も特別必要ではありません。ただ、万が一(パンデミックなど)の場合も想定し、滞在許可証だけは更新していこうと妻と決めました。そのための第一ステップが今回のフランス語能力試験でした。これらのステップを踏んでおくと、次回の滞在許可証更新の際に有利になるそうです(1年更新が2年更新、5年更新、10年更新となるそうです)。


 試験は県庁所在地のアヌシーで行われました。試験会場に入るとまずは20分ほどの筆記試験を受けました。試験は4つのセクションに分かれていて、自分の情報を書き込むセクション、新聞記事を読んで答える問題、簡単な会話例文の空欄を埋める問題、作文問題といった感じでした。それが終わると試験官とのマンツーマンの面接でした。それが終わったら一旦待合室に戻され、最終的にフランスに同化するための努力をしますよ〜といった書類にサインをさせられ、そこで4回にわたって行われる文化講座の日程やフランス語向上のためのレッスンについての説明がありました。


 っと、ここまで全てフランス語で行われるんです!! フランス語ができるのが当たり前、できないやつは来んな的な感じがバンバン伝わってきます。僕のフランス語は大学で1年間勉強しただけ。あとは独学や妻との会話などで学んだ語彙くらいしかありません。英語ができない頃に初めてアメリカに行った時の感覚が戻ってきてしんどかったです!結局僕のフランス語はレベルA1というふうに判断され、まあ何とか簡単な会話ができるというレベルということでした。まあそんなもんでしょう。A2にあげるために100時間のフランス語レッスン(無料)を受けなさいと言われましたが、強制ではないそうです。「これって強制ですか?」と聞いたら、担当官のおばちゃんに「強制ではないけど、フランスで暮らしたいんでしょ?だったら当然レッスン受けるわよね〜?」と言われて苦笑い。まあ僕はフランスで暮らす予定はないんですけども。時間があれば喜んで受けますけどね。


 っという感じで、次回の渡仏時は1回目の講座に参加してきます。何でも朝9:30分スタートで丸一日という感じのスケジュールのようで、それを4回に渡って受講します。まさかここに来てまた教室に行くことになるとは思いもしませんでしたが、なかなか面白そうなのでちょっとだけ楽しみです。


 今日の写真はラスベガスのホテルにあるスタバで売ってたチョコレートクロワッサンです。日本円で870円(税込)ほどです。今の円安の時期に海外旅行に出るのは勇気とお金が入りますね!



(つづく)


2023-07-06

久しぶりのビクトリアとバンクでの旅行。

  あら、また時間が経ってしまいました。気がつけば夏ですが、皆様お元気ですか。こちらモントリオールは暑くて蒸し暑い日が多くなりました。嵐が来てゲリラ雷雨的な雨が降ることもあります。とはいえ、日本の夏ほど過ごしづらいことはないように思います。日本の夏を最後に経験したのはもうかれこれ7、8年前になりますでしょうか。毎年酷暑のニュースを観ているので、日本に夏に帰国する勇気はありません。


ここ数ヶ月のフライトでは相変わらずアメリカのフロリダに行くことが多いです。3回に1回は嵐だらけ、雷雲だらけの中を飛ぶことになる感じで、そういう日は仕事に行くのがとても憂鬱です。アメリカの管制官はかなり前もって悪天候を避けるルートを提供してくれ、我々がレーダーを見ながら雷雲を避けるということはそれほど多くありません。ただ、彼らがあまりにも積極的にルート変更を指示してくるので、フロリダまでの3時間程のフライトの間に到着ルートを5回も変えられて、そのたびにフライトマネジメントコンピューターにルートを打ち込み直すという手前のが発生することもあります。面倒なのは当然ですが、コンピューターにルートを打ち込む度に確認作業が発生しますし、そのたびに当然ながらヒューマンエラーが発生する可能性も増えるわけです。ということで、できれば変更は1回にしてほしい。うぅぅ。


先日は古巣ビクトリアへのフライトが3連続でありました。レイオーバーは11時間と寝るだけに行くようなペアリングでしたが、それでも以前住んでいた街に行けることはワクワクしました。しかもショートレイオーバーだったのでホテルはカナダ移住当時住んでいた空港近郊の町シドニーのホテルです。ということで朝は早起きして海辺を散歩したりして楽しみました。静かな水面、鳥たちの声、僕以外誰もいない静けさ。またビクトリアに住みたくなりました。











プライベートでは家族のいるフランスに毎月行っています。先月末からモントリオール発ジュネーブ行きがエアバス330型機からボーイング777型機に機材変更になりました。これは嬉しい・・・。777の方が優れている理由ベスト3はこちら↓


⒈座席数が多い(スタンバイで旅行する際には助かります)

⒉巡航速度が若干速い(飛行機の中で過ごす時間がやや短くなります)

⒊クルーが休憩するためのオーバーヘッド・クルーレスト空間がある(通称バンク bunk)


3が実はものすごく魅力的で、我々パイロットは個人旅行の際にバンクを使うことが許可されているので、万が一客室が満席の場合でもバンクをリクエスト申請しておけばそこを利用して旅行することができます(運航クルーがバンクを利用しない場合のみ)。写真などを載せるとちょっとまずいと思いますので、興味がある方はググって見てください。先月末にジュネーブに行った時もこのバンクを利用させてもらいました。バンク内には客室にあるような座席が2席あり、その後ろに寝転がることができる簡易ベッドスペースが2つあります。カナダから中国やインドに行くような長距離路線を運航する際にはパイロットが3〜4名になり、フライト途中で交代交代で休息を取ることができます。その際に使われるのがこのバンク。そのため、客室からは隔離されたスペース(イメージとしてはビジネスクラスの座席があるエリアの上に存在するスペース)です。とても快適なのですが、唯一残念なのは窓がないこと。そしてやはり狭く圧迫感があるので、閉所恐怖症の人は耐えられないと思います。僕はとても快適にジュネーブまでのフライトを楽しませていただきました。


今日モントリオールに戻ってきて、また数日後から3週間ほど仕事を詰めています。今月は6ヶ月に一度の訓練が入っているので、明日からまた気分を入れ替えて仕事モードに入って行きます。訓練でトロントに行かなければいけないのが面倒臭いですが、頑張っていこうと思います。



(つづく)



















2023-03-20

波乱万丈のフライトがつづく

 3月も半ばを過ぎ、日本は桜が咲いたりして春めいた話題が多くなってきていますが、こちらモントリオールは今朝も雪がちらついています。みなさまお元気でしょうか。

 前回の書き込みでラスベガスでのことを書きました。それからここ最近忙しく飛んでいるのですが、ほぼ毎回なにか色々なことが起きるフライトが続きました。なので今日はそのことを記録しておこうと思います。

 先週ラスベガスに行った時のこと。普段ならホテルを出発する時間になっても迎えの車がやってきません。そろそろ会社に電話して催促しようかと思っている頃に車が滑り込んできました。「いや〜、ごめんごめん、道がめちゃくちゃ混んでてさ〜」とドライバーの男性がいいます。その日はラスベガスで建設関係機材の発表会イベントが行われていてそもそも市内は首から名札をぶら下げた中年おっさん連中のグループがそこらかしこにいてめちゃ混みだったのですが、それに加えてどうやらバイデン大統領がラスベガスに来ているとのこと。早速ウェブで大統領の公式スケジュールを見てみると確かにそうなっています。この段階ですでに嫌な予感。空港に到着するとはるかかなたにエアフォースワンが駐機されているのが見えます。セキュリティチェックなどを通過してゲートに到着、そして出発の準備をしていると無線から「グランドストップ」やら「ホールドプッシュ」などの言葉が聞こえます。どうやら我々の出発時刻とバイデン大統領の出発時刻が被ったようでした。その結果我々の出発時刻も否応なく遅らされ、スケジュール通りの出発とはなりませんでした。幸いにもそれほど大きな遅延にはなりませんでしたけど。エアフォースワンのパイロットはどこに行くにも優先されるでしょうから、ある意味ストレスの低い仕事なんじゃないかと勝手に想像してしまいました(別の類のストレスはすごいでしょうけど)。

 そのフライトでモントリオールに帰ってきたのですが、先日からモントリオール空港は3本ある滑走路のうち2本が閉鎖になっていました。そもそも1本は常に閉鎖されていて、我々パイロットのなかでは滑走路というよりむしろ誘導路として認識されているのですが(笑)。そのため、使える滑走路は1本のみ。何か嫌な予感。

 着陸態勢に入り、前に一機着陸機がいて、それに続いて着陸の許可が下りたのも束の間、「先行機がバードストライクを起こしたから、ゴーアラウンドしてください」と管制官からの指示が。ゴーアラウンド、そのまままっすぐ3000フィートまで上がってくださいとの指示通り飛んでいるとさらに追加情報が管制塔から入りました。「結構な数の鳥に当たったから、機械で滑走路を清掃しないといけないので最低でも20分ほどかかりますので、ホールドする準備をしてください」とのこと。またホールド(笑)。

 この段階で代替空港に向かわなければならない最低残燃料に近く、あまりホールドできる余力がありませんでした。急いでディスパッチャーに連絡し、代替空港を近くの空港に変更することでリザーブ燃料を減らすことに成功。そしてしばらくはホールドできる燃料を稼ぐことができました。それでもせいぜい25分ほどしか空中待機はできません。エアバスでも空中給油ができたらな!なんてことを妄想したりもしました。結局地上の方々が頑張ってくれたおかげで代替空港に向かうことには至らず、20分ほどで着陸が再開されました。無事に着陸し、この日の仕事は終了となりました。

(写真上:緑の線が飛んだルート。写真左下からモントリオールエリアに到着し、その後ぐるぐる回ってから着陸。)



 このフライトのあと、フロリダ・フォートローダーデール空港までの往復フライトがあったのですが、この日はどうやらイーロンマスクの会社がロケットを打ち上げる日だったようで、ちょうどフライトの途中で打ち上げが予定されていました。「空からロケット見えるかな〜♪」なんて呑気なことを考えていたのですが、ロケット打ち上げの影響で空域が大幅に閉鎖されていて、普段よりもかなり遠回りして目的地に到着しました。しかも強風の影響でロケット打ち上げは数時間後に延期されたとのこと。残念だと思っていたこのタイミングではまだロケット打ち上げには好意的な印象しかなかったのでした。ゲートインしてお客さんをおろし、モントリオールまでの復路フライトの準備を始めます。飛行計画をみるとなぜか飛ぶルートは先ほどは飛べなかったルート。もう打ち上げはなくなったのかななんて思ってゲートからプッシュバック。タクシーを開始するためにグランドコントロールに許可を求めると、「期限なし遅延」と言い渡されました。どういうこと?と思っていると、やっぱりロケット打ち上げの予定の影響で空域が閉鎖されていて、我々の出発進路がその空域をぶち抜けるので、そのルートを飛ぶ飛行機は全員地上待機、しかもいつ空域が再開されるかは未定、さらにはその空域付近を担当するFAA航空管制官の人手不足でさらに空域の自由度が減らされているとのこと。ゲートを出てしまったので仕方なく指示されるまま誘導路に進んでエンジンをシャットダウン。様子見の時間が始まりました。

(写真上:前には我々と同じ境遇の飛行機が5、6機待機していました。)


しかもこの日のパートナーはベテラン機長で、結構短気な人。朝から色々ぶつぶつ文句をいいながら何ともいえない雰囲気で一日がスタートしたのですが、今回の遅延でこの人のムードは最悪(笑)。いつも思いますが、この仕事で一番大変なのは悪い天気の日に飛ぶことでも、過酷な時間帯のフライトでもなく、気難しい人や面倒臭い人と一緒に飛ぶことです(笑)。この点はどの仕事でもきっと同じですよね。

 結局この日は誘導路で1時間ほど待機し、その後違うルートの飛行計画を再ファイルしてもらってようやく離陸となりました。ロケット打ち上げは夢がありますが、そのせいで迷惑を被る我々パイロットのことも少しは考慮してもらいたいもんです、全くもぅ。


 ってな感じで忙しく飛んでます。


(つづく)

















































2023-02-28

エキサイティング!ラスベガス。

  二月もそろそろ終わりですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。モントリオールはまだ雪が降る日があり、気温もマイナス10度以下に下がることもあります。春の訪れはもうちょっと先のように感じます。


 ここ最近の仕事はラスベガスに行くことがほとんどです。これまでもラスベガスに行くことが多かったのですが、今月は主に自分でリクエストしてラスベガスに行っています。今月のペアリングの多くはあまり効率の良いものがなく、特に3日または4日間のペアリングはかなり非効率です。主な理由はリージョナル航空会社がパイロット不足でルートをカバーできないようで、そのルートを我々が飛ぶと言うヘンテコな構図になっています。僕は幸いセニオリティが高いおかげでそういうルートを飛ばずに済んでいます。1日に3レグとか4レグというスケジュールはリージョナル時代にはよくやりましたが、今はもうやりたくはありません(笑)。


 さて、そのラスベガス。今月は波乱万丈なフライトになることが多いです。ラスベガス空港は四方を山に囲まれているため、一度風が強まると乱気流が発生します。また、前線が通過するにともなって風向きが頻繁に変わります。そのため、巡航中にアプローチの準備をしても降下を始めると着陸する滑走路が変更になるということが頻繁に起こります。また、ジェット気流が強い日だとモントリオールから西向きに飛んでいく際に時速200キロ近い向かい風の中を飛ぶことになることもあったり、ロッキー山脈の上ではマウンテンウェーブやタービュランスが起きることも多々あり、なかなかチャレンジングなフライトになることもあります。


 先週のフライトでは到着予定時刻にラスベガス周辺に強風警報が出ていました。風は30ノット以上、ガスト50ノット以上という状態で、多くのフライトが着陸できず、風が収まるタイミングが来るまでホールド(上空待機)させられていました。我々もホールドを指示されました。あいにくその段階で残燃料には限りがあり、天候が回復するような感じでもなかったため、これ以上ホールドすることはできなくなる残燃料になってしまう前にアリゾナのフェニックスへ目的地変更を決定しました。フェニックスに着陸後、燃料を補給し、必要な書類等の準備が整ってから再度ラスベガスに向けて離陸。予定よりも約3時間強遅れてラスベガスに着陸しました。幸いその頃には安全な着陸ができる風速まで下がっていました。

(写真上:モントリオールからラスベガスまでの一般的なルート。北米をほぼ横断します。)


(写真上:ホールドしていた時の軌跡。このときは15マイルレグでのホールドでした。)

(写真上:ホールディングパターンを数回回ったあと、フェニックスまで目的地変更となりました。比較的ラスベガスに近いフェニックスですが、風は全く問題ありませんでした。)


 昨日のフライトでは同じく風向きがコロコロ変わる天候だったため、アプローチ中に着陸する滑走路を計5回変更しました。滑走路を変更するくらい大したことないと思われるかもしれませんが、変更するたびにコクピット内で色々準備をしなければなりません。フライトマネジメントコンピューターに打ち込むルートの確認や着陸距離の計算、ブリーフィングなど、やることは山のようにあります。さすがに5回目の変更となるとこちらも嫌気がさしてきますし、それがひいてはフライトへの集中力の欠乏にも影響しかねません。気持ちを冷静に保ってフライトし続けるのは案外大変なものです。この日は8Rとという東向きの滑走路に初めて着陸しました。この日はモントリオールを離陸する段階で燃料をタンク満載に入れての離陸でしたが、向かい風が時速150キロほど吹き続けていましたので、フライトプラン通り飛んでも燃料はギリギリという感じのフライトでした。フライト中は常に燃料の確認をし、万が一の場合に備えてプランB、プランCまで色々考えながらのフライトとなりました。 通常は5時間程のフライトですが、この日は6時間以上かかりました。ナローボディー機で6時間以上飛ぶと言うのは結構燃料的にギリギリです。6時間も飛べばカナダからロンドンくらいまで行けてしまうくらいの時間です。


 そして昨日はラスベガスからモントリオールに戻ってきたのですが、モントリオールで着陸をする際に我々の前に着陸した飛行機が滑走路を出るのに時間がかかって我々との距離が近づきすぎたため、管制塔からゴーアラウンド(着陸復行)を言い渡されました。シミュレーター訓練では毎回やるゴーアラウンドですが、エアバスの実機でやったのはこれが初めてでした。訓練通りの手順で訓練通りに綺麗なゴーアラウンドとなりました。やっぱり訓練は大事だなと再確認したのと同時に、身体がちゃんと手順を覚えていて、何も考えなくても自然と手順が出てきたことに我ながら感心しました。2回目のアプローチでは先行機がいなかったこともあり余裕をもって着陸できました。雪が積もっていたため滑走路は結構ツルツルな感じでしたが、安全に着陸できてフライト終了となりました。

(写真上:着陸をやり直し、左旋回して再度着陸となりました。)


 これまでラスベガスに行く時は「着陸の際にちょっと乱気流があったり追い風で降りるから着陸準備を早めにやろう」と気にかけるくらいだったのですが、ここ数回のフライトで毎回いろんなことが起きるので色々考え直す機会となりました。まさに訓練でやっているようなことが毎回起こるので、訓練の大切さを再確認する良い機会となっていますし、毎回色々な経験ができているのでとても充実しています。

 果たして次のフライトではどんなことが待ち構えているのか・・・。楽しみなような、そうでもないような(笑)。

 明日、またラスベガスに行って今月の仕事は終了です。


(つづく)