2018-06-14

初・南米ペルー。

 1週間強の休暇が終わり、また仕事に復帰しました。 今回の一時帰国でもバッチリ時差ボケになりましたが、とりあえずある程度機能できるレベルに戻るまでの時間は明らかに以前よりも早くなりました。 通常、僕は外国への旅行のあとは最低3日は自宅のある場所の時間帯で過ごし、時差ボケが治ってから仕事に戻るようにしています。 体調不良は許されない仕事なので、その辺りは結構シビアに考えるようにしています。 今回は2日目には仕事に戻れるくらいまで回復していました。 いつも幾つものタイムゾーンを飛び越える仕事をしているせいか、少しずつ身体が時差にもある程度耐えられる身体になってきているように感じます。 一方で、睡眠の質や時間が低下しているのもまた事実。 果たして今の仕事が健康に及ぼす害というのはどのくらいあるのか。 こればっかりは今はわかりません。 

 復帰最初の仕事で南米ペルーの都市リマに行ってきました。 南米は今回が初めてです。 赤道を超えて南半球に飛ぶ日が来るとは思いもしませんでしたが、意外と早くやってきました。

 ちなみに、航空英語ではL(エル)はLIMA(リマ)と発音します。 僕がパイロット訓練を始めた頃に必死に航空英語アルファベットを暗記したわけですが、その時は「リマってなんなんだろう?」と思いながら丸暗記したことを今でも覚えています。 リマは都市名だったんですね(笑)。

 今回の飛行経路はこんな感じです↓


 トロントを出発したあと、ひたすら南下します。 途中でアメリカのフロリダ半島を通過し、キューバ上空を飛び、ケイマン諸島、パナマ周辺を通過します。 南米に入るとコロンビアやエクアドルの西側を飛び、いずれペルーの空域に入ります。 飛行時間は往路が8時間弱、復路はトロントではなくモントリオールまで行くので8時間を超えます。 そのため、行きの便には帰りの便で乗務する3人目のパイロットがデッドヘッドで同行しています。 FOで十分なフライト(機長+副操縦士2名)ですが、どうやら今月は機長の数が余っているようで、デッドヘッドのパイロットも機長。 したがって、復路は僕以外に二人の機長が乗務しました。

 フロリダ南部からパナマまでの空域は気流が悪いことが多いそうで、この日も比較的揺れました。 また、洋上で気温も高いエリアなので、積乱雲が多く発生します。 この日も幾度となく右へ左へ雲を避けながらのフライトになりました。 飛行機に備わっている天気レーダーを駆使してのフライトになりますが、このエリアには水分をあまり含まない積乱雲も多いらしく、そういった雲はレーダーにはうまく映りません。 夜のフライトでは月明かりを利用して雲を目視確認したり、あとは雷の位置を見ながらフライトすることもあります。 この日同乗した機長の話では、パイロットの中にはこのルートを飛ぶ日は満月の日のペアリングしか選ばないシニアパイロットもいるんだとか。 このエリアの積乱雲は最高高度が高度5万フィートを超えるものもあり、こういう雲は横に避けるしかありません。 僕が乗務する767では上を超えることは不可能な高度です。

 南米コロンビア、エクアドル、ペルーのあたりには高度2万フィート(6000メートル)以上のアンデス山脈が連なります。 そのため、この付近を飛ぶ時には万が一の急減圧やエンジン停止に備え、エスケープルートというルートが設けられています。 フライト中はそのルートを確認しながら飛びます。 南米に到達する頃には外は真っ暗なので、あいにくアンデス山脈が見えることはありませんでした。 残念!!!

 リマ空港はアメリカや他の南米の国々からのフライトで比較的忙しい空港です。 この日は北からのアプローチ。 ストレートインILSでの着陸となりました。 着陸後に問題発生(汗)。 予定よりも20分も早く到着したため、到着ゲートが空いていませんでした。 仕方なく無線でカンパニーに連絡をしますが、英語がなかなか通じない・・・。 10回ほど呼びかけてやっと返事をしてくれたと思ったら、英語が通じず、こちらからの呼びかけが無視されるような状態になってしまいました。 仕方なくディスパッチャーにACARSでメッセージを送り、ディスパッチャーが直接電話をかけてくれたようですが、それでもメッセージがなかなか通じなかったようで。 結局スケジュールの到着時間よりも10分以上遅れてのゲートインとなりました。 南米ではこういうことがよくあるそうです。 英語が通じないことも多くあるそうです。 特に、航空無線英語以外の英語は通じないことがよくあるそうです。 なるほどなるほど・・。

 実はリマには先週と今週の2回行ってきました。 2回ともレイオーバーは24時間ほど。 初めての南米の街だったのでちょっとだけ不安でしたが、想像を大きく裏切られる結果となりました。 

ペルー、リマ。 大好きです。 

 2回ともかなり楽しいレイオーバーとなりました。 食べ物は美味しいし、人はみんなやさしい。 スペイン語は話せないけど、英語をなんとか理解しようとしてくれます。 街は味がある。 カラフルな建物も多くて見ているだけでも楽しい。 北米では見ないような動物もいる。 なにより良いのはトロントとの時差はたった1時間! ヨーロッパに行くと時差に苦しむこともありますが、ここはそういったことがない。 今後もリマに行きたいと思わせてくれるようなレイオーバーになりました。

 では写真をどうぞ!

赤道(緯度0度)を通過!

街はバスがいっぱい。

 
バス。


またバス。 どれも結構満員。 ドアを開けっ放しで走っているバスもちらほら。

街はあざやか。

カフェで一服。 このエスプレッソマシーン、ペルーに2台しかないそうです。
 
公園は賑わってます。 靴磨きやらサッカーのトレカ売買やら。

そして公園にはなぜか猫がいっぱい。

すやすや寝てます。

3匹まとまって寝てました。

マスコット猫。

 
チュロスやらパンやらフルーツやら。 いろんな露店がありました。

どことなく生活のリズムがスローな感じ。

 
恋人の公園。

リアルな壁画。

街の標識や道路標示も当然ながらスペイン語。 PAREはSTOP。

 
新聞スタンド。

こういう古びたカラフルな建物も多くあります。

街のお店からはパワーを感じます。


車の多くは古い日本車や韓国車。

なかにはこんなフランス車も。

太平洋。

サーフィンをする人も多く見かけました。 安くサーフィンギアをレンタルできるそう。

この日は霧っぽい感じ。 この時期(南米は秋)は常にこんな感じだとか。

 
灯台のある公園。

立派な灯台です。


鳩のような鳥。 目が青いです。

ペルーでコーラといえばインカコーラ。 味はクリームソーダみたいで美味しいです。

 
これはロモ・サルタード。 ペルーを代表する国民食だそう。 超美味。

モントリオール空港に到着し、飛行機を後にします。 長いフライトお疲れ様。

 

 次回のフライトではアイルランドに行く予定でしたが、今日からしばらく休みが続き、特に予定もないので仕事をいれました。 明後日からギリシャのアテネに行ってきます!


(つづく)

















2018-06-07

一時帰国とオフ会。

 ご存知の方も多いと思いますが、僕はフェイスブックで「海外でパイロットになろう!」というグループの管理人をしています。 このグループは登録制ですが、基本的にはどなたでも参加いただけます。 メンバーは300名近くいます(2018.06.07現在)。 メンバーの多くは日本の大学生や社会人の方で、中には高校生や学生さんたちの親御さんもいらっしゃいます。 パイロットになるための具体的なアドバイスが欲しいという方々に参加いただいています。

 参加者の多くは閲覧のみで、質問なども特にないけれど、一応参加しましたという方も多いようです。 中にはグループでお知り合いになれたプロのパイロットの方もいます。 アメリカで飛ばれている方や日本で飛ばれている方。 大手で飛んでいる人もいればリージョナルやコーポレートでパイロットをされている方もいます。 僕自身、頻繁に投稿してはいないのですが、いつもいろんな方からの自己紹介を読ませていただいたり、メンバーの方々が情報を共有しあったり叱咤激励したりしている様子を楽しく見せてもらっています。 今はいいですね。 こうやってSNSなどを通して現役パイロットと直接話ができる機会があるのですから。 僕が子供の頃にはこういうものは存在しませんでした。 今の若者はラッキーだとつくづく思います。

 先月末、新しい会社での監査フライトが終わった翌日、日本に一時帰国しました。 今回は実家に戻る前に東京にしばらく滞在する予定でいたので、せっかくの機会なのでフェイスブックのメンバーの方々に直接会ってお話する機会があればいいなと思い、いわゆるオフ会を企画しました。 帰国するちょっと前にフェイスブック上で告知をし、場所はパイロット談義にふさわしいであろう羽田空港の展望デッキ付近としました。 

 当日は予想を上回る13名のメンバーの方々が土曜日だというのにわざわざ集まってくれました。 これにはちょっと感激(涙)。 本当は2、3名の方とお会いして、こじんまりとした会にしようと思っていたので逆にちょっと緊張しました(笑)。 集まってくれた皆さんの多くは大学・大学院生や社会人の方々がメインで、中にはもう少し年上の方もいらっしゃいました。 バラエティーに富んでいてとてもよかったと思います。 

 午前11時から2時間ほどの予定で始めたこのオフ会。 話を始めるとノートにメモをする方もたくさんいました。 2時間ほど経過したところで、「せっかくの土曜日なんですから、遠慮せずに退席してもらっていいですよ〜」と促しましたが、結局は開始から4時間ほどお話をさせてもらい、最後まで多くの方が残ってくれました。 なんだかこちらが申し訳なるほどでした。 

 今回のオフ会ではスタンダードな質問からカナダでの生活に関することまで、いろんな質問をもらいました。 お話した皆さんの立場が違うので、一つの答えで全員のケースに該当するということでは必ずしもなかったようです。 本当であればお一人お一人とじっくり時間をかけることができていた方がよかったとは思うのですが。 それはまた次回にでも実現できればいいかなと思っています。 いただいた質問はどれも誠実で真面目なものばかりで、中には返答に困るものもありました。 今まで聞かれたこともないことを聞かれ、いろいろ考えさせられることもありました。 「これからパイロットになりたい人はこんなことを考えているんだな」というように新たな発見もありました。 日本で現役で飛ばれているパイロットの方も数名参加してくださり、とても興味深い日本での航空業界のお話を聞くこともできました。 こういうふうにネットワークが広がっていくのはとても嬉しく思います。

 オフ会後にもフェイスブックでメッセージを個別にくださった方も多くいました。 社会人として、大人としてのマナーもしっかりしている方が多かったという印象で、なんだか皆さん一人一人を応援してあげたいという気持ちが強くなりました。 

 参加してくださった皆さん、どうもありがとうございました。 また次回帰国するときにも同じようなオフ会を実施できればと思います。

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 オフ会後は東京で友人と食事をしたり、買い物や観光地の散策をしたりしてしばらく時間を過ごしました。 今回は時差ボケもさほど酷くはなかったですが、やはり睡眠時間が足りず、体力的に少しだけしんどかったです。 寝れなかったのは時差ボケのせいももちろんありますが、それ以上に日本にいることに興奮してしまって寝れなかったというのがもっとも大きな理由だと思います。 すぐ側にコンビニがある、居酒屋がある、観光名所がある、と思うと、寝ている時間がもったいなくて(笑)。 東京に行くことは日本に住んでいた時はほとんどなかったのに、カナダに来てからのほうが東京に行く機会が圧倒的に多くなったのは不思議なことです。 東京という街は面白いです。 毎回帰国して、東京で少し時間を過ごし、今まで行ったことがない界隈を散策するのが楽しみになっています。 テレビで見た所や話で聞いた商店街など、そういうところを歩けるのは最高です。 ミーハーなんです。

 東京滞在のあとは羽田から小松空港までANAで飛び、そこから実家に戻りました。 今回の帰国の主な目的は母親の古希(70歳)のお祝いと、叔父の喜寿(77歳)のお祝いを兼ねて、さらには叔母も招待して計4名で温泉に行くことでした。 行き先は近場ですが、福井にある温泉町・芦原(あわら)温泉でした。 

 芦原温泉の老舗旅館「はいや」という宿をネットで予約しておきました。 ここがとてもよかったです。 とても風格のある純和風の建物。 温泉は露天風呂もある。 食事は個室での越前懐石。 お腹いっぱいの新鮮な食事が出て来ました。 食事が終わる頃には若女将さんが挨拶に来てくださったり、母と叔父へのプレゼントまで用意してくださったのには感謝です。 部屋は3部屋ある離れ。 これで少しばかりではありますが、今までお世話になってきた親や親戚に少しだけ恩返しができたかなと思います。 これからは帰国の度にどこかに連れて行ってあげたいと思っています。 僕もそういうことをしないといけないというか、したいと思うような歳になってきました。 我ながら成長したな〜と思う今日この頃です(笑)。

 では、今回の帰国の際の写真をどうぞ。

浅草橋付近の屋形船。東京の下町らしい雰囲気が素敵です。

 こういうなんの変哲のない路地も好きです。 これは午前6時前。

スカイツリーが見える街に住めたらいいなと思うことも。

もうすぐ梅雨がやってくる5月後半、街には紫陽花が。

お祭りをやっている界隈もありました。

オフ会の日、羽田空港はいつも通り混雑。

オフ会後には渋谷に足を運びました。 人酔いしました。

「ヤフーで検索してください」とありますが、今なら「ググってください」のほうが伝わるでしょう。

無駄のない駐車場と車。 ザ・日本。

芦原温泉「はいや」のお風呂。 誰もいなかったので写真を1枚。

ここのロビーに住みたいです。 お庭が最高。

こちらは実家の日本最古の天守閣・丸岡城です。 毎回帰国時はここに散歩に行きます。

羽田⇄石川県・小松まではANAさんにお世話になりました。 僕が乗務する機体と同じだったので楽しみ倍増。

帰国直前の東京駅八重洲地下街でのランチ。 板前さんが握ってくれたランチスペシャルです。 ちなみに好物はエビです。

出発まで時間があったので展望台へ。 遠くに政府専用機が見えました。

最後は羽田国際線ターミナル内をふらふら。 一旦出国するとな〜んにもないんですよね、羽田のターミナルって。 羽田からトロントまでは自社便で。



(つづく)



2018-06-02

再びラインチェック。

 ついこの前メインラインのほうで年に一度のラインチェック(監査フライト)をやって、あ〜やれやれと思っていたのも束の間、今回のLCC部門への異動に伴い、またもや監査フライトをやらなければいけなくなりました。 監査フライトはday tripで、行き先はアメリカのフロリダ州フォートローダーデールです。 こんな都市がフロリダにあることも知りませんでしたし、地図でフォートローダーデールどこか指差せと言われて無理です。 僕のアメリカの地理知識はお恥ずかしながらその程度です。 飛行機にはちゃんとしたフライトマネジメントシステムやGPSが備わっているので、世界中の空港に、場所を知らなくてもプログラミングさえちゃんとやれば、ちゃんと到達できます。 これってすごいですよね・・・。

 監査フライトの朝はアメリカへのフライトなので、トロント空港にいるうちにアメリカの入国審査を受けてしまいます。 プリクリアランス(Pre-clearance)と呼ばれるもので、カナダの主な空港からアメリカが最終目的地のフライトに搭乗する場合はカナダ側でプリクリアランスを受けることになっています。 僕は最近NEXUSカードを入手したので、アメリカに入国するのは今までよりもスムーズに手続きできるようになりました。 NEXUSについてはまたいずれ。

 プリクリアランスを通過し、アメリカ側のクルールームで監査機長の到着を待ちます。 が、予定の時間になっても現れません。 ときどきこういうのがあります。 本来であれば予定時刻にパートナーが現れない場合にはクルースケジューラーに電話をすることになっています。 万が一、寝坊などで仕事に来ない場合にはフライトが遅れてしまいますから、そういうことを防ぐための手順です。 でも、実際のところは遅れて来そうな場合には、遅れているパイロットのほうがクルースケジューラーに電話をかけていて、いずれクルースケジューラーから時間通りに出勤したパイロットに連絡が入ります。

「〇〇機長、ハイウェイが混んでて、予定よりも30分遅く出勤するそうですからお伝えしておきます」

とか、

「△△機長、駐車場がいっぱいで空いてる場所を探しながらぐるぐる回っているらしく、出発時間までには間に合いますって電話がありましたから」

といった感じです。 または、ほんのちょっとだけ遅れている場合にはクルールームには寄らず、乗務する飛行機のゲートに直接現れる人もいます。 リージョナルで働いていた期間もいれて4年ちょっとですが、今のところパートナーが仕事に無断欠勤したことはありません。 今回もいつもとおんなじパターンだろうな〜と思い、慌てることもなく淡々とフライトプランをプリントアウトし、カバンを引きずりながら飛行機に向かおうとクルールームを出たところで監査機長と合流。 よかったよかった(笑)。
 
 この日乗務する機体は2日間ほど飛ばずにトロントに駐められていました。 そのため、格納庫からゲートまで牽引されてやってきました。 大きな飛行機の場合にはいわゆる「ウォークアラウンド」と呼ばれるフライト前のパイロットによる点検は不要な場合が多いです。 この日もウォークアラウンドは不要だったので、すぐに1日の始めに行わなければならないfirst flight of the day checkという点検をコクピット内で始めました。 

 ここで問題発生。 いつもなら点検中にすべて点灯するはずのライトが一つだけ点きません。 これは緊急脱出時に必要になる装置をテストするスイッチで、これがうまくテストできないと出発できません。 このライトが点かなかったのは今回が初めてです。 毎フライト同じ点検を何度もなんどもやっているので、いつもは点いているはずのライトが点かないと意外にもすぐに気がつきます。 慣れっていうのはすごいですね。  結局、メンテナンスの人が3人くらいやってきて、あ〜でもない、こ〜でもないを繰り返し、やっとのことで問題解決。 出発時刻がやや遅れてしまいました。 お客さんには申し訳ありませんが、安全優先なので仕方ありません。 

 あとから聞いた話ですが、LCCのフライトに乗っているお客さんたちはメインラインのお客さんたちとはだいぶ態度が違うそうです。 LCCのお客さんたちの目的地は主にバカンス地。 しかも行き先が最終目的地。 ですので、ちょっとの遅れくらい気にしないわ〜っていうノリの方が多いんだとか。 実際、フライト中のトイレ休憩の際にお客さん3名ほどと立ち話をしましたが、遅れなどぜんぜん気にしていないとのこと。 超陽気で、こちらが驚かされたほどです。 一方、メインラインのお客さんの多くはビジネスマンや、どこかの空港で次のフライトに乗り継ぐ方々が多いです。 ですから、ちょっとの遅れでもそういうお客さんたちはピリピリしています。 気持ちはよくわかります。 

 フォートローダーデールまでは僕の操縦でした。 途中で大きな積乱雲が発生していたので、進路を右へ左へと雲を避けてのフライトになりました。 特に揺れることもなく、スムーズなフライトとなりました。 

 フロリダの半島に差し掛かると何百キロも続くまっすぐな海岸線が見えて来ます。 アメリカはスケールがでかい! フォートローダーデール空港は特に忙しくもなく、リラックスしてアプローチ&ランディングとなりました。 着陸後ゲートインまでは1分足らず。 こういう空港、好きです(笑)。

 帰りは機長の操縦。 こちらもスムーズなフライトでした。 途中で監査のための質問をいくつかされましたが問題なく返答でき、「監査終了! 〇〇へようこそ!」(注:〇〇はLCC会社名)という言葉を頂戴しました。 いや〜、よかったよかった。 これで無事に次の日から日本へ帰れる〜と安堵しました。

 今回の監査では面白い体験をしました。 それがこれ↓


 中央に見えるのは「ノーズウィールステアリング」、通称「ティラー」と呼ばれるもので、飛行機の着陸装置の前輪を左右に動かすために使うハンドルです。 通常このティラーは機長席側(左席)にしかついていないことが多いのです。 大型機になると左右に一つづつ付いているようですが、今まで乗務してきた767の場合は機長席にしか付いていませんでした。 ところが、今回乗務した767には両側にハンドルが付いていました。  監査機長に「今まで右席にもティラーがある767は見たことがない」と告げると、

「じゃあ、今日は君がタクシーしてね!」

と言われました。 タクシー、すなわち、地上を動くことです。 通常は機長がタクシーすることがほとんどで、副操縦士がタクシーすることはまずありません。 そのため、僕が最後に飛行機をタクシーさせたのはもう4年以上前です。 つまりはペーパードライバー(笑)。 しかも、最後にタクシーしたのはキングエアという小型機なので、その飛行機にはティラーはなく、ラダーペダルを使ってのタクシー操作でした。 ティラーを使ったのはシミュレーター訓練の時のみです。 いきなりタクシーさせてもらえたのでちょっと緊張しましたが、そこはやればできます(笑)。 一番難しく感じたのは、ターンをしたあと。 このハンドルから手を離すとノーズギアは自動でまっすぐに戻ろうとします。 油圧式なので、ほんのちょっと気を抜いて力を緩めるとぐわんっと機体が揺れます。 なので、力を最後まで抜かず、ゆっくりとニュートラルの位置まで戻してやる。 そう教わりましたがこれがなかなかどうして簡単ではないのです。 おそらく腕が短いというのが理由の一つだとは思うのですが(笑)。 機長昇格時までにイメトレをしておくことにします。 一番感動的だったのは、誘導路から滑走路に進入してセンターラインに乗せるところです。 767は大型機なので、小型機よりも意図的にオーバーステアをします。 大型トレーラーが交差点を曲がるときに大きく旋回するのと同じ理屈です。 いつも機長がやっているのを見ていると、「そろそろ曲げないと滑走路の端までいっちゃいますけど?!」と思うギリギリのところまで曲げ始めないこともあります。 そうしないと後輪の間にセンターラインがうまくこないのです。 ギリギリ近くから思いっきり曲げ、綺麗に前輪がセンターラインに乗る時は見ているだけでもかなりの満足度です(笑)。 それを今回やらせてもらえることになりました。 結果は意外とうまく行き、そのまま止まらず離陸となりました。 いや〜、楽しかった! 機長に昇格すればあれを毎回できると思うと、それだけで昇格する値打ちがあると思います(笑)。 

 といった感じでラインチェック終了です。 今月は南米ペルー、イギリス、アイルランド、アメリカ数都市に行きます。 今までとは行き先のバラエティーもだいぶ違いますので楽しみです。


(つづく)

2018-05-22

転職(?)しました。


 今働いている会社には通称「メインライン」と呼ばれる主な運航部門と、LCC部門の二つが存在します。 昨年1月から、僕はメインラインの767副操縦士として乗務してきました。 767の型式証明を取得し、乗務を開始してから1年ちょっと。 今月からLCC部門に移ることになりました。 このLCC部門はメインラインが親会社となる完全子会社という位置付けなので、形式上は他社への出向というような感じです。 なお、これは僕の希望による異動です。 理由についてはまたいずれ。

 このLCC部門、一般的なLCCとは意味合いが違うそうで、ピーチ、バニラなどがLow Cost Carrier(低価格エアライン)と謳っているのに対し、わが社の場合は「レジャーエアライン」と呼んでおり、目的地のほとんどがバカンスや避暑地などという風に差別化されています。 ただ、ややこしいので、ここではLCC部門と書くことにします。

 わかり易く例をあげると、「メインライン」がANAやJALで、その他の部門がAir Japanだったり、ANA Wingsだったり、J-Airだったりしたのと似たような振り分けです。

 以前はメインラインの機材・クルーで就航していた都市のうち、観光的要素の強い都市の多くがLCC部門の路線へと移行されてきました。 そのため、メインラインのパイロット達の多くは不満を漏らしているようですが、こればかりは運営側の方針なのでどうしようもありません。 レジャー地以外でも日本であれば関空や名古屋セントレア空港にも季節限定で就航しています。 したがって、新規路線の開拓の際にもLCCでとりあえず飛ばして、採算が取れそうならメインラインで引き継ぐというのが今後のビジネスプランのようです。 (今更ながらですが、このブログで書くことはすべて僕自身の意見・見解であり、僕の雇用主の意見ではありませんのでご承知おきください)。

  2012年に設立されたこのLCC部門。 機材はボーイング767-300ERとエアバス319/321で構成されています。 メインラインの767は残り7機ほどとなりました。 また、来年2019年末までに全てのメインライン所属の767型機を退役させると運営側は公式発表しています。 

 先週、メインラインからこのLCC部門への異動に必要となる講習を受けてきました。 会社のマニュアル等は95%メインラインのものを引き継いではいますが、形式上は独立した会社という位置付けなので、細かい違いがあったりもします。 また、オンライン講習もあり、いくつかの学科をクリアせねばなりませんでした。 そして先週、LCC会社での初めてのフライトとなりました。

 初めてのフライトの行き先はメキシコにあるリゾート地・カンクンです。 以前フライトしたことがあるバルバドスに似たような雰囲気の都市のようで、青い海と白い砂浜が広がる、北米人が大好きな休息地です。 特にカナダ人は長い冬の間に寒い気候から逃げるように中南米を訪れます。 そのため当社ではカンクンへのフライトをレジャーフライトと位置付けているようです。

 カンクンまでは約4時間のフライト。 先日行ったメキシコシティーへのフライトに似たような感じですが、カンクンはメキシコシティー空港ほど複雑ではないと機長から聞かされていました。

 メインラインで飛ばしていた767はほぼすべてが同じような計器類・無線機が備えられていました。 なので、どの機体を飛ばしてもセットアップはほぼ同じでした。 しかし、LCC部門の767にはいろんな型の767が存在します。 767であることは同じなのですが、製造年が違ったり、以前運航していた会社が違う関係で無線機や計器類の種類が違ったりします。 こういうちょっとしたことでも最初は戸惑うものです。 

 ちょっとかっこいいな〜と思ったのは、座席の前後・上下の調整が電動式になっていることです。 「チュウィ〜〜〜〜ん」という、なんとも近代的な機械音を放ちながら椅子が移動します。 これは今度ビデオに撮ってみたいと思うほどです(笑)。

 また、今までとは無線交信の際のコールサインも違います。 大したことないように思うかもしれませんが、例えるなら、結婚して苗字が変わるような感覚です(笑)。 管制官に呼びかけられていても気がつかないこともありますし、無線を発信するときにも間違って旧姓でコールしてしまったりします。 いや〜、恥ずかしい(笑)。 以前勤めていたリージョナルから今の会社に入ったときも訓練中になんどもコールサインを間違えて恥ずかしい思いをしましたが、どうやら今回も同じことを繰り返すようです。 我ながら学習能力が低くて情けない・・・(涙)。

 カンクンまでのフライトについてはまた次回。

 明日はまたもやラインチェック(監査フライト)で、アメリカのフロリダ州にあるフォートローダーデールまでの往復です。 約1週間ぶりのフライトなので楽しみにしています。 そして、明日が終われば明後日から休暇です。 今回は日本に帰ります。 約1週間の一時帰国ですが、最初は東京に数日滞在し、フェイスブックで運営しているグループのオフ会を初めて開催します。 結構な数の方々と羽田空港でお会いできるようなので楽しみにしています。

 なお、冒頭の写真はカンクン空港でのものです。 気温は三十度。 真夏で心地よい暑さでした。 



(つづく)

2018-04-27

Augmentでロンドン、そして氷雨(パート4)。

 今回でロンドンへのフライトに関する書き込みは最終回です。

 ロンドンの滞在は20時間ほどでした。 翌日には早朝8時過ぎ出発の便でトロントまでデッドヘッドすることになっていました。

 推定午前4時過ぎ。 おかしなことが起きました。 部屋の電話がなったと記憶しています。 鳴っていないのかもしれません。 いや、きっとなったはず。 うろ覚えでは、誰かと電話で話しました。 

 「あなたのデッドヘッドフライトですが、出発が2時間ほど遅れているので、ホテルチェックアウトも2時間ほど遅くなりますから」

 という連絡でした。 この時の僕は時差ボケと疲れからまったく記憶が定かではありませんでした。 「ここはどこ?! 私はだ〜れ?!」状態でしたから(笑)。

かかってきたと思われる電話。 誰だったんだろう・・・。 なんだか混乱気味で目が覚めました。 そして、本当にデッドヘッドフライトが遅れているんだろうか? あれは夢だったのでは?と思い、携帯を使ってスケジュールを確認します。 そうすると確かに遅れが生じています。 正夢か? それとも本当に誰かと話したのか? まったくわかりません。

 仕方なく、クルースケジューラーに電話をしました。 「いや〜、誰も電話してないよ〜」って言われましたので、いったい果たして誰と話しをしたのか・・・。 頭は超混乱状態です。 
 
  とりあえずトイレに行こうと思い、ベッドから出ると、ドアの下に紙が一枚滑り込んでいるのが見えました。 それは会社からのファックスで、これでもやはりホテル出発が遅れるという連絡事項が書かれていました。 僕には実は予知能力が備わっているのかもしれない・・・。

 本来は午前5時過ぎのピックアップだったので、それに合わせて起きる予定だったのです。 でも、ピックアップが8時過ぎになったので時間ができてしまいました。 仕方ないので朝ごはんとコーヒーでも買おうとホテルを出て、近くのカフェに行きました。 

 カナダやアメリカではカフェ・レストランなどで注文をするときに、

「For here, or to go?」

と聞かれます。 

「ここで召し上がりますか、それともお持ち帰りですか」

という意味です。 これがイギリス英語では

「Eat in or take away?」

と聞かれることが多いように思います。 今は慣れましたが、最初はかなり戸惑いました。 イギリス英語独特のアクセントもあり、「なにいってるんだろう?」って混乱したこともありました。

 結局、ホテルを予定よりも2時間ほど遅れて出発。 空港ではターミナルで降ろしてもらい、通常のお客さんと同じようにセキュリティーを通り、ゲートに向かいます。

  ヨーロッパの空港は面白いです。 カナダやアメリカではセキュリティーを通る時には既にゲート番号がわかっている場合がほとんどで、そこに直接向かえば良いので明瞭です。 一方、ヨーロッパでは出発時刻のかなり直前まで出発ゲート番号が掲示されません。 ただ、毎回自社便がどこに到着してどこから出発するかはだいたい把握していますし、会社のアプリを使えばどのゲートに行けば良いのかがわかるので特に困りはしません。 このせいもあり、ゲートに到着してもお客さんは誰もいません。 皆さん、待機スペースでゲートが発表されるまで待機しているからです。

 僕はエスプレッソを買い、出発までの間、外にいる飛行機を眺めるのが好きです。 ロンドン・ヒースロー空港ではカナダやアメリカでは見かけない航空会社の飛行機を見かけることも多いです。

 
  スイス航空のカナダ製小型機CS-300がいました。 この飛行機はいまのところ僕が将来操縦したい飛行機ナンバーワンです。 噂では今後はこの飛行機はエアバスA230と呼ばれることになるとか・・・。

  搭乗が始まり、スムーズに機内に移動し、ボーイング777は離陸に向けてタクシーを開始します。 その間、外にはイギリスらしくブリティッシュエアウェイズの飛行機を多く見かけました。 ブリティッシュエアウェイズのコールサインは「スピードバード」。 なんかかっこいい(笑)。

 
ボーイング747は今でも現役で飛んでいます。 



ハンサムな顔をしています。

 
 これもロンドンヒースローあるあるだと思うのですが、出発時に管制官はスペースと時間を無駄にしないように次から次へと離陸許可、滑走路進入許可を出します。 この日も外を見ているとそのような光景が見えました。 上の写真では左側にいる飛行機が離陸許可をもらって離陸滑走を始めようとしているところです。 一方、右側の後続機は滑走路進入のみを許可された模様。 こちらのパイロットは遠慮なくガンガン出発機の後ろに陣取ります。 カナダであれば前の飛行機が離陸滑走を始めてからようやくゆっくりと滑走路に進入することが多いです。 イギリスでは前の飛行機のエンジンからのジェットブラストをもろに受ける距離に限りなく近いくらいのスペースしか開けずに滑走路に進入します。 お国柄でしょうか。

 フライトは7時間ほど。 幸い良い席をもらえたのでゆっくりと食事をし、仮眠をとり、邦画を1本観て快適な空の旅を楽しめました。 


 今の会社で働き始めた1年ほど前はロンドンから帰ってくると翌日まで時差ボケや疲れが残ることが多かったですが、最近は慣れてきたのか、カナダに戻ってきた当日は流石に疲れていますが、翌日には元のリズムに戻ることができるようになりました。 

 今回のペアリングの後、数日の休みがありました。 そしてその次は半年に一度のシミュレーター訓練と続きました。


(つづく)