2020-05-30

税金の無駄遣い?

 東京上空をブルーインパルスが飛行したそうですね。 医療従事者への感謝を表すためのフライトということで、東京上空を3周くらいしたんだとか。 いいですね〜。 

 こちらカナダでも、カナダ軍のアクロバットチーム・スノーバーズがカナダ主要都市上空を飛行するツアーをちょっと前に行いました。 作戦名は「Operation Inspiration」というもので、カナダ東部から始まって西海岸まで飛んでいくというものでした。 モントリオール上空にもくるという情報をSNSでキャッチしたので、当日は自宅マンションの屋上でスタンバイしていました。 

 予定ではモントリオール対岸の南東部からジャックカルティエ橋付近を飛行してモントリオール島に入るということでしたが、当日はあいにく北西から比較的低い雲が流れ込んで来ていたため、どうやら当日に飛行ルートを少し変更したようでした。 それでも屋上から少しだけスノーバーズの姿を見ることができました。





 日本のニュースでも今回のデモンストレーション飛行は人々に感動を与えたと報道されていますね。 僕自身はもともと飛行機好きなのでこういうのは好きなのは当たり前かもしれませんが、飛行機に興味がない人でもアクロバット編隊が青空に白い線を描いて飛ぶ姿を見るとなぜか感動するようです。 特に今のような、あまり良いニュースがほとんどない毎日の中で見る白いスモークは心を打つものがあるのかもしれません。 医療従事者への感謝を表すという目的がこのフライトに盛り込まれていると知るとなおさらだと思います。 飛行機で人々に感動を与えられるのは素晴らしい。 飛行機にはそういう不思議な力があるように思います。 こういう状況だとこのことを再確認させられます。

 ところが、こういうことをすると必ず「税金の無駄遣い」という人が出て来ます。 そんなお金があるなら保証に回せ、という気持ちもわからなくもありません。 でも、SNSを見ていても人々に感動を与えたことは間違いがなく、そういうことに使うお金なら悪くないと思います。 外出自粛で家に篭ってみなさんはなにをしていますか? Netflix, Youtube, 漫画にアニメ、その他諸々のいわゆる「芸術・アート」にかなり助けられているはずです。 そういう分野の発展に使われる税金などにもケチをつける人がいますが、そういう人も実は芸術・アートのお世話に多大になっているわけですから、なんでも「無駄遣い」でくくるのは間違っているようにも思います。 

 今回のブルーインパルスのフライトを見た医療従事者の方々が全国民からの感謝の気持ちを受け止め、少しでも心が安らいだことで今後もコロナとの戦いに尽力していただけるのであれば、今回の税金の使い方は正しかったと言えると思います。



(つづく)




2020-05-27

新機種発表。

 先日機材ビッドの結果が発表になりました。 結果は・・・。


























 エアバスA320!

(写真:ブリタニカ百科事典オンラインより)

 ということで、ベースは変わらずモントリオールで、乗務するのはエアバス・A320/A321という結果が出ました。 

 今回のビッドはいろいろ考えるところがあったのですが、結局は想像していたよりもセニオリティ的に良い位置につけることができたので比較的満足しています。 

 ビッド期間の最初のころは最新機種であるエアバスA220(旧ボンバルディアCS100/300シリーズ)に移行しようと考えていました。 最新機種だし、もっともセニオリティ的に低い機種だったのでシニアになるのには一番近道であるとも考えました。 であれば機長昇格にも近くし、そもそも最新機種だからしばらくは我が社もこの機種を手放すことはなかろうと考え、長いキャリアプランで考えた時にはこのA220がもっとも良いと考えたのです。 

 しかし、いろいろなシナリオを考え始めると、A220よりもA320のほうが良いのでは、と考えるようになりました。 そもそもA220はボンバルディア製であることを考えれば僕は既にボンバルディアの飛行機の操縦経験があります(Dash-8, CRJ200/900)。 A220もきっとデザインフィロソフィーは似ているはずであることから、キャリア育成の観点からはメリットが少ない。 一方のエアバスは今まで操縦したことがありませんのでこちらのほうが魅力的です。 また、エアバスA320型機は世界中で運航されている超ベストセラーのナローボディ機です。 ボーイング737と肩を並べて人気な機種ですが、ヨーロッパやアジアを見る限りではエアバス > ボーイングという構図のような気がします。 また、エアバスの良いところは、320が操縦できれば330, 340(もうほとんど存在しませんが)、350、380と、ほとんどの機種の操縦方法やデザインフィロソフィーなどはとても似ているという点です。 我が社でも319/320/321以外にワイドボディ機の330を、以前は340も運航していました。 将来的にまたワイドボディで海外フライトをしたくなった場合には330があるし、その移行はスムーズに進むはず。 エアバスは320や330に最新のエンジンを載せたneo(new engine option)シリーズ機でも勢いを増していますし、737Maxの件でダメージを受けているボーイングよりも好調な印象を受けます。 さらに320でしばらく乗務したあとは機長昇格へのチャレンジも同じ機種でできる。 そう考えるとA220よりもA320のほうがメリットが多いと判断しました。

 A320は今まで飛ばして来たボーイング767よりも小さく、巡航速度も遅いです。 乗客数も半数近く。 飛ぶルートも国内、北米、カリブ海あたりが主かと思われます。 もうヨーロッパや南米にはいけませんが、その分時差ボケに悩まされることも少なくなるでしょうし、どちらかと言えば以前リージョナルで飛んでいた感じのスケジュールに戻るのではないかと思っています。 それは楽しみ。 セニオリティ的にもFOリストの中でちょうど真ん中(50%)なので、僕よりも下に20名近いパイロットがいるため、おそらくリザーブにはならないのではないかと思いますが、昨今の情勢に影響を多大に受けるので、実際にどうなるかはわかりません。

 早速A320のオペレーションマニュアルを読み始めましたが、なかなか面白い飛行機です。 767とはそもそもデザインの構想がまったく違うようなのでとても新鮮です。


(つづく)

2020-05-26

マスク made in ケベック。

 本日(5月25日)から、こちらモントリオール市内でも一部の商店が営業再開を許可されることになりました。 モントリオール郊外では既に許可されていたのですが、なにせモントリオール市内はカナダでもっともコロナウイルス感染者数が多いため、他地域よりも2週間近く営業再開が遅らされました。 今日から営業再開が許可されるのは路面店で、独自の入り口を持つ店舗のみとのこと。 つまり、ショッピングモールのような大規模営業店は営業再開されず、比較的小規模のお店のみとなるようです。 今日はまだ外に出ていないのでどういう感じかわかりませんが、ここモントリオールではマスクをしない人が圧倒的大多数なため、やや不安です。 また、日本人のようにお上の指示を真面目に聞く人種ではそもそもないようなので、外出制限が緩められた直後から集会・パーティーなどを始めるような方々です。 経済が停滞することに不満を漏らすくせに自分の行動は咎めない、なんともお気楽な方々です。 日本では自粛警察などが問題になっているようですね。 その行動自体はどうかと思いますが、「出る杭は打たれる」の精神が骨の髄まで染み込んでいる日本人はこういう国民全員に自粛が求められるような事態になると強いなぁとつくづく思います。 当然、良し悪しがあるのも理解はできます。

 こちらはほんの数週間前までは雪がちらつく日もあったのに、今ではあっという間に夏のような気候です。 気温も20度を超え、今週中には30度を超える日も出てくるようです。 街は人出が増えて来ました。 それでも、お店などではソーシャルディスタンスを守っている模様です。 街を歩く人々の中にはそんなのかんけーねぇーといった感じの集まりも見かけますが、どこにでもそういうやつらはいます。

緑と日差しがきれいな時期になってきました。

 こちらでもようやく薬局などでマスクを買うことができるようになりました。 使い捨てのサージカルマスク(白や青)を先日買いました。 簡素な袋で包装されていて価格も日本での倍近くすると思いますが、あるに越したことはないということで購入。 品質タグにはもろに中国語。 QRコードがそれっぽく印刷されていますが、読み取るとWeChatのアプリダウンロードページになぜか飛びます(笑)。 洗って繰り返し使えるものもあったので買いましたが、これがひどい品質。 ザ・カナダ製って感じのクオリティーです(笑)。 生地は、例えるなら靴袋を切って縫製したようなものでごわごわです。 いったいどこの会社が作ってやがるんでぃと思って調べて見ると、ここケベック州で文房具を作っている会社でした。 よくもまぁこんな質のものを売ってお金を取ろうと思ったね、と驚きを隠しきれません。
 
薬局の入り口でもアルコール消毒をしたり入場制限をしています。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 仕事のほうはまだ特に動きがありません。 機材ビッドは先日締め切られ、今週中に結果発表があるという話です。 おそらくこの機種になるだろうなぁというのはわかっているので、また少しずつ勉強を始めています。 詳しい勉強内容は次回書いてみます。


(つづく)

 

2020-05-20

「ご自分で判断してください」。

こんな記事を最近読みました↓


 国際航空運送協会(IATA)が今後の航空業界の需要回復の予測を発表とのこと。 昨年2019年度の水準に戻るのは、国内線で2022年、国際線で2024年、とのこと。

 ちなみにこのIATA、そして国際民間航空機関(ICAO)はどちらも本部がここモントリオールにあります!(っと、つい最近知りました・・・笑)


 しかも、場所は道を挟んで真向かいにあります。 以前、街の中を散歩していたら、見覚えのあるICAOのロゴがついた旗が掲げられているビルを発見してようやく知りました。 ICAOは日本やヨーロッパでは「イカオ」、北米英語圏では「アイカオ」と発音します。

 話を戻しますが、IATAは航空需要が戻るには2年ほどはかかるという見通しを示しているようです。 

 航空需要が戻るには各国の都市封鎖や国境封鎖が部分的にでも解除されることが条件になります。 記事によると、IATAは国内線であれば7~9月に再開するという想定での予測だそうです。 今のヨーロッパ諸国や自分のいるカナダ、北米やアジア方面の動向を見ていると、7~9月で妥当なような気もします。 台湾は今秋から海外からの観光客の受け入れを再開するとも言っていますね。 やはり秋口までは今のように人々の動きが滞った時間が続くような勢いです。

 このように、今後の見通しが不透明なため、僕自身もこれからこの業界や旅行業界がどうなるかはまったくわかりません。 そんななか、これからパイロットを目指すつもり(または、つもりでいた)の方々からメールやFBで問い合わせをもらっています。 質問の内容は「昨今の状況を鑑みて、パイロットを目指すか、それとも他の道を進むか、どちらが良いと思いますか」というものです。

 ごめんなさい、僕にはわかりません。 

 理想論・精神論で言えば、

 「パイロットになるのが夢ならば、なにがなんでも突き進んでいってください!」

 と言いたいところもあります。 今まで通りの景気や流れであればこういうことを言っていましたが、今の状況を見るとそう簡単にこういうことをいうのはあまりにも無責任とも感じます。 

 ということで、今、僕にこういう質問をされても、

 「ご自分で判断してください」

 としかいうことができません。 ごめんなさい m(._.)m  こんな状況であってもパイロットを目指して訓練を始めないと一生パイロットにはなれません。 やらなければいけないことを粛々とこなし、タイミングが回ってくるのを待つことはできますし、そうすればパイロットにはなれます。 ただ、そのタイミングがいつになるかはわかりませんので、長い間待つことになる可能性が高いです。 ただし、そのタイミングが来てから訓練を開始するのでは時差が生まれるため、雇用の波を逃す可能性もありますね。 

 今のうちに準備をして、待ち続ける精神的・金銭的余裕をお持ちであれば、パイロットの道を進めば良いでしょう。 不安がどうしても多く、自分は安定した生活が欲しいという方はやめておいたほうが無難かも。 パイロットに一旦なれたとしても、また10年後にはこのようなパンデミックが起こり、職を失う可能性がありますからね。 歴史を見るとそういう感じになっています。 とはいえ、どんな職種であっても影響を受けるのは変わりませんから、自分のやりたいことを10年間やって、パンデミックが来たらその時を耐え忍ぶ準備をするのもありかな? 

 ん〜、なかなか難しいですね(汗)。



(つづく)


2020-05-14

機材入札 その2

 僕がパイロットになる前は、大手エアラインに入るには長い下積みを余儀なくされ、大手航空会社に履歴書を見てもらえるようになるには飛行時間が7,000時間くらいはあるのが当たり前という時代だったそうです(北米の話です)。 ところがここ数年は2,000時間もあれば大手に引き抜かれるというようなバブリーな時代になっていました。 以前はワイドボディ機のFOに昇格するには、まずはナローボディ機に乗って経験を積み、ナローの機長として飛んでやっとワイドのFOに上がれるという時代だったそうです。 さらにその前にRP(リリーフパイロット)としての乗務が必要だった人も多いようです。 要約すると、以前の昇進モデルで定番だったのはこんな感じだったようです(必ずしもこうだったというわけではありませんが)↓↓↓

   ①ワイドのRP↓
   ②ナローのFO↓
   ③ナローのCA↓
   ④ワイドのFO↓
   ⑤ワイドのCA 
   ⑥幸せな定年退職

 ①で数年、②に上がって数年、③に上がるころには勤続年数が10年前後だったという話を聞くことが多いように感じます。 

 ところが、僕が知っている限り、最近ではいきなり②か、僕のように④からスタートということもよく起こっていました。 入社1年目でボーイング777(もっとも大型機)のFO④になる、なんていうこともありました。 前代未聞の事態だったそうです。 とはいえ、④から⑤に入社数年目で行くことなんていうのはありません。 そこにはお給料やセニオリティが絡んで来ますから、そう簡単に⑤にはいけません。 ところが、③には比較的簡単にいけるような状況がここ数年起きていました。 入社2年ほどで③に進むパイロットが出て来ました。 これも前代未聞だったそうです。 

 ところが、今回のビッドを見る限り、今までの流れは淡く儚い夢のような日々だったように見受けられます。 

 例えば僕のケース。 今日現在、モントリオールベースで僕のセニオリティ番号で選択できる(「ホールド」できる)のは②です。 ③も機種によってはぎりぎり食い込めるか?という感じです。 ですが、FOリストのなかでもっともジュニアなパイロットになると生活の質がかなり落ちますので躊躇します。 例えるなら、進学校の成績最下位よりも一般校の成績上位のほうが気分が良いのと似ています(笑)。 それでも中には「俺は一番でかい飛行機に乗りたい」とか、「私はとにかく早く出世街道を進むんだ」という人もいるので、ポジションのビッド方法は千差万別です。

 僕は②で進むつもりでいます。 ここで厄介なのが自分よりシニアな人たちの動向です。 シニアな人の中にはCAもFOもホールドできる人がいます。 ところが前述のとおり全体で下のほうのポジションになると毎月のスケジュールや休暇申請の際に回ってくる順番などの面で不利益を被る可能性があるので、ジュニアなCAよりもシニアなFOを選ぶ人も出て来ます。 特に今のような経済低迷期にはそういう選択をする人も出て来て当然だと思います。 

 なんて言っていますが、今回レイオフされたパイロットも数多くいますし、僕は幸いにして、今の所は、仕事を失っていませんから、飛べる可能性があることに感謝してビッドしようと思います。 どの機種に移っても良い点・悪い点が必ずありますから、なるべくポジティブに考えようと思います。 


(つづく)

2020-05-12

機材入札(Equipment Bid) その1

 前回の記事にも書いたとおり、この度の大規模な事業規模縮小により、多くの飛行機が今後の運航プランから外されました。 その結果、乗務する飛行機がなくなったパイロットは他の機種への異動を余儀なくされることになります。

 そもそも、今回のような事業縮小などがなくても、うちの会社の場合は数ヶ月に一度、「機材入札(equipment bid)」というものが実施されます。 2ヶ月ごとに今後の事業拡大プランや景気情勢などを総合的に判断し、パイロットの数を増やすか減らすか、飛行機の数を増やすか減らすか、またはその飛行機をどこの空港所属として配置するかなどを検討します。 ただし、特に変更が必要ない場合や、以前の計画がうまく行っていたりすると人員異動がそもそも必要なくなるので、equipment bidはキャンセル・次回に持ち越しということになることもあります。 うちだけに限らず、他の会社でも似たような仕組みのequipment bidがあります。 僕が以前働いていたリージョナル航空会社の場合だと1年に2回だったと記憶しています。

 ビッドが始まるとまずは会社から向こうしばらくの人材プランを提示され、それに基づいて今後どのくらいのパイロットポジションが必要になるのかが発表されます。 例えば、今日現在4000名のパイロットがいるところ、会社が提示して来たプランではパイロット数を4200名に増やすということになれば、今後200名のパイロットを新規採用するということになります。 これまでは毎回こんな感じで、どんどんパイロットの数は増えて来ました。 これまでは商売大繁盛だったんでしょうね(笑)。 僕が入社したとき、僕は一番下のセニオリティ番号でした。 それが確か3774番。 つまり、僕が入社した時点ではパイロット総数は3774名だったわけです。 それが今回の大規模人員削減直前にはパイロット総数が4900名近くにまで膨れ上がっていました。 ちょっとしたバブルです(笑)。 入社して3年ちょっとですから、1年間に約400名のパイロットが次から次へと採用され、僕の下に入って来たということになります。 定年退職者の増加、事業規模拡大、新機種導入、新fatigue rulesなどなどによりそれだけのパイロットが必要になってきたわけです。 ちなみに、自分よりも先輩のパイロットはシニア(senior)、後輩はジュニア(junior)というふうに呼びます。 例えば、「Are you junior to me?」(君は僕よりも後輩だっけ?)というような感じです。 

“パイロットにとってもっとも重要な数字はVスピードではない。 セニオリティナンバーだ。”


なんていう人もいるとか(笑)。

 今回の人員削減・機種数削減により、かなり大規模な人員異動が起きる見込みです。 今まで乗務していた機種がなくなるパイロットは他機種に変更になりますし、今まで機長だった人も機長のポジションが減ったことで機長のランクを保持できず、いやが応でも副操縦士に降格となる人も多くいます。 少数ですが、現在のベースの空港でのポジションを確保できず、他空港ベースに異動となる人も出てくるようで、そういう人たちは引っ越し、またはコミュート(通勤)を余儀なくされます。 機種毎、ポジション毎にお給料のベースとなる時給(hourly rate)が変わりますので、今後の月収・年収も変わります。 とにかくいろんなことに大きな影響を及ぼすのが今回のequipment bidです。 そんなビッドは10日間ほど開催され、その間はネットの専用Webページで自分の希望を出すことができます。 例えば、

 希望1:YUL 777 FO (モントリオールの777副操縦士)
 希望2:YYZ 320 CA (トロントの320機長)
 希望3:YVR 787 FO (バンクーバーの787副操縦士)

のような感じです。 結果が出るまであと数日。 ハラハラドキドキです。 ビッドするときに検討する項目についてはまた次回。

 今回のコロナが「神の見えざる手」であるというような考え方があるようですが、航空業界に及ぼされた影響もそれに似ているのかもしれません。 つまり、ここ数年間はあまりにも航空業界の景気が良すぎて、航空会社は事業規模を広げすぎた、っと。 株価や物価などと同じで、一度高くなりすぎたものはどこかで知らないうちに価格を低く戻そうという力がかかり、自然と本来あるべきバランスを取り戻す、というものです。 それが正しいかどうかは僕にはわかりませんが、今の現状を見ると強ち間違いでもない考え方だなとも思えます。


(つづく)

2020-05-10

余剰航空機のゆくえ。

 コロナの影響が出始めてから、多くの航空会社は減便や欠航をはじめました。 英語では「grounded」という表現をしますが、文字通り、地上(グラウンド)に飛行機を駐機しておくことを指します。 きっとみなさんも新聞やネットで多くの飛行機が空港の誘導路や閉鎖された滑走路にずら〜っと駐機されている姿を見かけたことがあるのではないでしょうか。
 
 とはいえ、航空会社が所有する航空機の数は膨大です。 我が社で300機弱(でした)。 アメリカの大手ともなると1000機に限りなく近い数の航空機を運航しています。 それほど大量の飛行機がgroundedとなると、どこに駐機するのか。 気になりませんか。

 我が社の場合、大規模欠航が始まってからも飛行機が飛ぶことがありましたが、それの多くは駐機スペースがある空港への片道フライトでした。 行き先は様々ですが、多くはアメリカのアリゾナやカンザスシティなどの駐機場だったようです。 いろんな条件があるとは思うのですが、気候が良く、乾燥しているところが多いのが普通で、アリゾナなどはまさにそれにぴったりな場所です。 長期間ドアを閉めたまま、エンジンを切ったままにしておくとなると、湿気がある場所では機械にとっては悪環境となります。 また、駐機代(1機あたり一月20~30万円という情報も)も関係してくるので、大都市部というよりは、やや離れた場所にあるところを選ぶようです。 詳しくはわかりませんが、今回のように大量の航空機を駐機する必要が出る場合に結成される斡旋企業なんかが存在するんでしょうね。 誰かが損失を被れば誰かが甘い蜜を吸うという感じでしょうか。 

 SNSを見ていたら興味深い記事を発見しました。


 とある写真家がヘリコプターに乗り込み、2週間かけてアメリカ中の空港に駐機された航空機の写真を撮り回ったという記事です。

 ここで僕が乗務した飛行機の写真も発見!


 良く見ると767以外にも787も駐機されているようですね。 これはミズーリ州のカンザス・シティ空港だそうです。 

 
 こちらはアリゾナのピナル・エアパーク空港。 主にエアバス機が多いようです。(写真:@brianlosito インスタグラムより)
 
 これらの飛行機の中には、今後再び乗客を乗せて飛ぶことは2度とない機体も含まれているので、なんとも寂しい気持ちになります。 

 航空会社が運航する飛行機には主に「リース」と「所有」という違う形態が存在しています。 このうち、リースの場合はリース会社が所有する飛行機を航空会社が借りて運航しているわけで、そういう飛行機はリース会社に返却されると思います。 一方、「所有」している機体は航空機製造会社(ボーイング、エアバス等)を通して売却したり、他社に売却したり、いろいろな形で処分されるそうです。 こうやって飛行機は生涯いろんな会社を渡り歩いたりするわけです。 古い機体の場合は次の運航会社が決まらず、ボーンヤードと呼ばれる飛行機の墓場に送られ、使えそうな部品だけを抜き取られ、残ったものはスクラップされるそうです。 そして、そういう機体の胴体からキーチェーンを作る会社なんていうのも存在します↓↓↓
2018年に退役したエアカナダの767(登録番号C-FCAG)の胴体部を使って作られたキーチェーン(Aviationtagより)

 こうやってマニアの方や実際に操縦したパイロットに形を変えてでも覚えていてもらえるだけ、飛行機にとってはましなのかもしれませんね・・・。 いや〜、それでもやっぱり寂しい。

 なんか暗いニュースばっかりで疲れますね(苦笑)。



(つづく)

 


 

2020-05-08

さようなら767。

 先日、我が社の四半期決算報告がありました。 これまでイケイケで業績を伸ばしてきた我が社。 27期連続業績アップという記録を更新中でしたが、今期はそれがストップする結果となりました。 

 そんな状況ですから、今は完全にセーブモードでの経営になっています。 決算報告のプレスリリースにも含まれているとおり、向こう数年間の機材プランも見直され、新たなプランが発表されました。 コロナが一旦収束してもすぐには旅客数回復は見込めず、今後しばらくは便数も就航路線数も少なくして運航していく予定ということです(2019年の水準に戻るには2~3年はかかる見込み)。 その計画に基づき、次の3機種、計79機が即刻、または近いうちに退役させ、運航規模を一気に縮小することになりました。 退役するのは、


エンブラエル190 (即刻退役)


エアバス319







ボーイング767 ((((;゚Д゚)))))))







(写真はすべてこちらから引用)


 ということで、僕がこれまで3年ほど乗務してきたボーイング767はカナダの旅客航空会社シーンから姿を消すこととなりました。 約3年、飛行時間約1,800時間で767とは突然の別れとなりました。 昨年末まではまさかこんな日がこんなに突然やってくるとは思ってもみませんでしたが、これが現実です。 

 僕にとっては初めてのワイドボディ機(機内に通路が2本ある大型機)。 母国に自分の操縦で帰国したのはこの飛行機が初めて。 大西洋を横断してヨーロッパに行ったのもこの飛行機が初めて。 赤道を超えて南半球に行ったのもこの飛行機が初めて。 パイロット3名での運航をしたのもこの飛行機が初めて。 本当になにもかもが初めてで、とても良い経験をさせてもらえました。 

 767は、787や777と比べるとデザインは古く、燃費もよくありません。 運航速度もやや遅いですし、離陸最大重量も低め。 とはいえ、業界では「work horse(馬車馬のような働き者)」と呼ばれることも多く、多くの人々に親しまれてきました。 飛行機ファンにもいまだに根強い人気をほこります。 機首あたりを見るとどことなく昔の新幹線ひかりのような雰囲気を垣間見ることもでき、懐かしさを感じます。 GEまたはPWのエンジンはとてもパワフルで、最大積載量での離陸であってもまったく非力には感じませんでした。 さすがに重いと上昇率は落ちますが、通常のフライトではとにかくパワフルで、35,000フィート以上であってもぐいぐい上昇することができました。 とはいえ、コクピット内は古い計器類と新しいEFIS類が混在し、航空機業界が歩んできた時代の流れを感じました。 システムは信頼のおけるもので、弱い点があるという印象は受けませんでしたし、フライト中に大きな問題が起きることは一度もありませんでした。 自動操縦中に時たま意味不明なことをしでかしたり、コマンド通りの動きをしない時もありましたが、それもすべて慣れてくると予想がつき、エラーはパイロットがカバーするという感じで、「持ちつ持たれつ」な関係での操縦は楽しくもありました。 風30ノット以上、ガストが50ノット近くある嵐のなかのランディングでも安定性は抜群でした。 

 近いうちに次に乗務する機種が発表になります。 決まったらまたこちらで報告します。 機種決定後、トレーニングの予定が発表になり、また2ヶ月ほどの訓練が始まって新しい飛行機についての勉強が始まります。 この業界、これだけ世界情勢に影響を受けやすく、常に勉強をしつづけなければいけません。 かなりMな世界です(笑)。

 最後に767の写真をご覧ください。 

メインラインに所属していたころに乗務した767


1年目は補欠パイロットだったので、普段行かない場所に行きました。 これはカリブ海のバルバドスにチャーターフライトで行った時。

LAで壊れ、修理した767をピックアップしにも行きました。

オーバーヘッドパネルは737よりはモダン化されていますが、それでも古い印象を受けるスイッチ類が多くあります。 ときどきカバーがぽろっと取れることもあります(笑)

LCC部門に移ってからはウイングレットがついた767に乗ることも増えました。 ウイングレットがあるとぐっと印象がかわります。


カリブ海の国に行くと雰囲気がガラリとかわり、気持ちだけバケーション気分を体験できました。


夏はヨーロッパ、冬は中南米というパターンもよかったです。


多くの乗客のみなさんを安全に目的地まで送り届けることに喜びを感じました。


LCC部門の客室乗務員は若い子が多く、とても新鮮でした。


この曲線美。 独特のスタイルを持つ767は美しい飛行機でした。




 さようなら、767! ありがとう、767!





(つづく)

2020-05-06

今後の空の旅(エアカナダの場合)。

 世界各国がまた経済を少しずつ回復させていこうとする中、航空会社各社も運航再開のために必要となる新たな取り組みを表明しはじめました。 今日はまず一番身近なエアカナダのケースをチェックしてみます。 

 なお、以下のスクリーンショットや情報はすべてエアカナダオフィシャルホームページおよびSNSからの情報です。 

 「Air Canada CleanCare+」と呼ばれる取り組みの要旨は次の通り:
   (和訳) 
  • アメリカ大陸で初となるフライト前の検温実施を義務化
  • エコノミークラス内で通常よりも余分に乗客間のスペースを確保(少なくとも6/30まで)
  • 消毒液を含むパーソナルケアキットの配布
  • 静電スプレーを使ったより重点的な客室清掃手順
  • 客室乗務員と乗客の接触を減らすための新たなサービス提供方式
  • マスク(乗客)や個人防護具(職員)の利用の義務化



 となっています。 CEOのCalin Rovinescu氏のプレスリリースによれば、血中酸素濃度計などが今後入手可能な状況になればそういった装置を使った検査方法も導入するつもりとのことです。 


 それではエアカナダのフライトに搭乗する場合、具体的にはどのような手順を踏むことになるのかを見てみます。

 
 まずはチェックインの際。 

  1. はじめに非接触式検温されます。
  2. チェックイン機は定期的に消毒されます。
  3. 乗客全員が顔を覆うもの(マスクやスカーフ等)を着用します。
  4. 消毒液が空港のいたるところに配置されています。
  5. チェックインカウンターも徹底消毒されます。
  6. 職員もマスクをしています。 中には手袋などの個人防護具を着用するものもいます。
  7. 健康状態に関する質問をします。
 
 いよいよカナダでもアジアでよく見られる検温が始まるんですね。 なんだか物々しい雰囲気になってきましたが、これも安全のため。 でも、解熱剤を飲んでいる人とかはこれではひっかからないかもしれないんですよね・・・。 マスク着用が嫌いな北米人がどれだけマスクに耐えれるのかが見ものです(苦笑)。
 

 次は搭乗時の手順です。

  1. 乗客全員が顔を覆うもの(マスクやスカーフ等)を着用します。
  2. ゲートカウンターは定期的に清掃されます。
  3. 職員もマスクをしています。 中には手袋などの個人防護具を着用するものもいます。
  4. 念のため、搭乗直前に健康状態に関する質問をされる場合があります。


 搭乗手続きはスマホなどを使って済ませることをお勧めします。 なるべく他人が触るものに触れる機会を少なくするのがポイントでしょう。 搭乗前の質問は正直あまり意味がないように思います。 「体調どうですか?」「しんどいです」なんて答える人はいませんよね(笑)。


 機内に入ったあとの手順はこうです。

  1. シートベルトとバックルは徹底的に消毒されています。
  2. 座席の肘掛も拭き掃除消毒をします。
  3. 機内の窓やシェードも消毒します。
  4. ライトのスイッチや空気孔も消毒します。
  5. 5/15から6/30までの間、エコノミークラスでは隔席を使用不可にします。
  6. 夜間に天井エリアも消毒します。
  7. 同じく夜間の地上時間中に荷物棚の中も消毒します。
  8. 機内空調はHEPAフィルターによって99%の空気中の粒子を取り除きますのでご安心を。
  9. 機内でも顔を覆うものを着用願います。
  10. 荷物棚の取っ手も消毒します。
  11. 乗務員もマスクをしていますし、個人防護具を装用する場合もあります。
  12. 通常のトイレ清掃の際にも消毒剤をします。

 これはすごい! ここまで徹底するとはなかなかだと思います。 機内に静電スプレーを噴霧させて一気に消毒なんていうシステムがあるとしたら、その会社の株価は今後うなぎのぼりだと思います。


 最後に座席周りについて。

  1. 搭乗前に座席テーブルを消毒します。
  2. 水はボトルに入ったものを、食事も包装されたものを提供します。
  3. ヘッドレストカバーは徹底清掃します。
  4. 機内エンターテイメントエリア(スクリーン等)の表面を消毒します。
  5. 消毒方法として新たに静電スプレー消毒を導入します。
  6. 新たに消毒液や消毒ナプキンが入った使い捨てケアキットを導入します。
  7. 夜間に機内の横壁も消毒します。
 消毒液などを配布するのは良いですね。 また、プレスリリース詳細を読むと、新しいケアキットはプラスチック袋に入れられており、機内で出るゴミはその袋をゴミ袋として利用して回収するとのこと。 これはグッドアイデア! まあ、お行儀の悪い乗客がこれを守ってくれるのかはまた別の話ですが(苦笑)。


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 ということで、かなりの新しい手順が導入されるようです。 ちなみにですが、顔を覆うものについては今はマスク等をしないと保安検査場を通過することすらできません。 これはカナダ運輸局の指導によるものだそうです。

 これだけ新しい手順が増えると現場ではあたふたとするスタッフ等も出てくると思いますし、戸惑う乗客も出てくるのが自然でしょう。 そこは寛容な気持ちで対応してもらえればと思います。 また、今回のことできになるのはコスト面。 これだけのことをやろうと思えば会社としての経費はかなり増えるはず。 物品を確保したり流通させるのも時間・労力・コストがかかるはずです。 これがチケット代にも反映されるのでしょうかね?


 他社の取り組みもチェックしてみようと思います。


(つづく)



2020-05-04

ここが変だよモントリオール人。

 日本ではGW真っ最中ですね。 テレビではひたすら外出自粛の報道ばかり。 そして、それでも川に釣りに行って流されたり登山禁止の山に入って遭難したりしてレスキュー隊が出動する事態になっていると聞きます。 諸外国のように「外出禁止」ではなく、「外出自粛」と効力の弱いお願いであっても外出する人の数が激減したことによって「日本人の民意の高さを見よ!」という人もいる一方、こういう身勝手な行動で迷惑をかける人がいるのもこれまた事実です。 

 こちらカナダはモントリオールも日本と同じように緊急事態宣言発令中で、外出自粛が求められています。 それでもご近所に出かけたり買い物にいく分には制限はありません。 

 僕は毎日運動と気分転換をかねて自宅周辺を1時間ほど散歩するようにしています。 車を使うことはめっきり減りました(不要不急の外出を避けているため)。 3月中旬に満タンにした車のガソリンは今も満タン表示のままです。 

 昨日は土曜日。 近くのLe Parc La Fontaineという公園に行って来ました。 ここまで歩いて15分くらい。 比較的大きな公園なので時々行くんです。 大きな木々が生えていますし、池もあるので最近の趣味の写真撮影にも良いスポットです。 ここに昨日行って来ましたが、いかなければよかったと後悔しています。

 まずは昨日のフォンテイン公園の様子をどうぞ↓↓↓




 あれ? 緊急事態宣言解除されたっけ? コロナウイルスってもう過ぎ去ったっけ? と思わざるを得ない光景でした。 

 写真を撮ったところはまだ人が少ないほうで、他の箇所は人でいっぱいで、子供連れやカップルも大勢。 お酒を飲んだり、サッカーをしたり、ペタンク(グランドボーリング)をしたり、とやりたい放題。

 モントリオールを含むケベック州はカナダ国内でもっともコロナウイルス感染者が多い地域となっています。 そのため、今でも多くのビジネスは休業を強いられていますし、失業者も多くなっています。 それでも外出自粛要請が出て1ヶ月以上が経つと人々の忍耐もどんどん薄れて来るのだと思います。

 今、フェイスブックなどで日本にいる外国人の投稿をみると、「見てよ、日本人は花見をしている!」とか、「パチンコ屋の前に大勢の人が集まってる!信じられない!」という批判が増えて来ています。 たしかにわかります。 自分は自粛しているのに周りにそうでない人がいると気分がよくないですよね。 特に日本にいる外国人で、外国のニュースをよくフォローしている人はそう思うはずです。 でもね、僕に言わせれば外国(少なくともカナダや北米)はどんぐりの背比べですよ、っと昨日のフォンテイン公園の光景を見て思わざるを得ませんでした。

 写真を見てもらえればわかりますが、マスクをしている人はほぼいません。 ソーシャルディスタンスは守られているようなところもありますが、そうでないところがほとんど。 屋外だから大丈夫と思っているんでしょうか。 そして、自転車好きなモントリオーラー。 公園に来るのも多くの人が自転車ですが、自転車レーンを見ていると1人の真後ろにまた1人、そしてまたそのすぐ後ろに他の人っという具合でまったく距離が保たれていません。 もしコロナに感染している人が先頭にいたら、その後ろの方々はその人が吐き出した息やツバに乗っかったウイルスをそのまま吸い込んでいるかもしれません。 そんなことも理解できないなんて、言葉は悪いですが、あなた方はあんぽんたんですか?と言いたくもなります。

 とどのつまり、どこにでも常識をもたない人はいるのだと思います。 そしてそういう人たちがいるから自粛要請が長引く、そしてそういう人たちはますます我慢できなくなって外に出て集まって三密状態・・・という悪循環スパイラルに陥っています。

 僕は今後は週末に公園に立ち寄るのは避けようと思います。 


(つづく)

2020-05-02

パイロット解雇とパイロット職の未来。

 数日前にこんなニュースが入って来ました↓↓↓
英航空大手1万2000人解雇へ 新型コロナで業績悪化(https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000182845.html

 そしてこれが昨日のニュース↓↓↓
BA、パイロット1130人解雇へ 乗務員大幅削減も検討 (http://www.asahi.com/business/reuters/CRBKBN22D44G.html

 このように世界中で大手・中堅・小規模を問わず航空会社の多くがパイロットの解雇を始めています。 僕の会社も例外ではありません。 この場合の解雇は一時的レイオフで、仕事量が増えてくればまたリコール(呼び戻し)されるというものだと思いますので、一般企業での人員整理で首切りされるというのとは少しニュアンスが違うかとも思います。

 航空会社がパイロットの首を切るというのはかなりの状況です。 これまでの業界の流れや自社のレイオフの順番などをみていると、だいたい次のような順番で事が進んでいるように見受けられます。


  1. 早期退職希望者を募集
  2. バケーション・LCC部門の客室乗務員を解雇
  3. 新入社員(トレーニング中)を解雇
  4. 客室乗務員を解雇
  5. 事務職員・地上職員を解雇
  6. パイロットを解雇

 少し順序が前後したところもありますが、おおまかな流れはこういう感じでした。 パイロットの解雇は最後の砦という感じ。 

 パイロットを解雇するということはエアラインとしての運航を完全に諦める、お手上げ状態ということです。 客室乗務員や事務職員はこういうことをいうのは嫌ですが、現実問題として取り替えが可能なリソースです。 欠員が出ても、募集をかけて採用し、1~2ヶ月の訓練を受けさせればとりあえずはすぐに飛べる・勤務できるようになります(経験値は度外視)。 つまり、数ヶ月でリプレイスできるということです。 一方、パイロットはそういうわけにはいきません。 1人の人間をパイロットに育て上げるには莫大な時間と労力、そしてお金がかかります。 この点において、こちらでは「パイロットは医者や弁護士と同じ社会的立場である」と主張する人もいるほどです(個人的にはそこまではどうかな?と思わざるを得ないところもありますが・・・)。 こういう理由もあり、客室乗務員・地上係員の方々と比べるとどちらかというとちやほやされる、ということになってしまいます。

 繰り返しますが、これが職種の貴賎について話しているのではありません。 オペレーションの立場から見た事実論です。

 コロナ禍における不景気、また各国の国境封鎖によって今は全体で10%以下のフライト便数しか運航していませんので、大手を含む多くの航空会社が、エアラインにとってはもっとも大事な人材である、パイロットの解雇に手をつけ始めているのが現実です。 

 さて、こうなると世界中にパイロットが溢れるわけで、今までは有名エアラインで働いていたパイロットがすごく規模の小さい会社で薄給で働くなんていうことも出て来ると思います。 悲しいかな、これが現実です。 

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 僕が最後にフライトをしてから1ヶ月以上が経ちました。 今回の自宅待機はいろいろと考えさせられるところがあります。 悪い事や不安も当然ありますが、良いこともあるように思います。

 今考えているのは人生は流動的であって、動きを止める事はできないし、してはならないということです。 ネットなどを見ていても顕著だと思いますが、今までしていた仕事とは少し志向が変わったことを仕事にする人も増えて来ています。 お笑い芸人がYouTubeデビューするとか、高級レストランがテイクアウトを始めるとか、学校の授業がすべてオンライン授業に取って代わるとか。 良い悪いは別として、こういうことができている人は「流れに乗っている人」であり、「流れに逆らっていない人」だと思うようになってきました。 世の中は常に動き、変わりつつあるわけですから、仕事の種類ややり方もこの流れによって変わっていくのが当たり前なんですね。 なのに、流れに逆らおうとすると収入が減ったり、いずれは倒産したり失業したり、新しい波に取って代わられて忘れ去られていくということになります。 

 僕の職業で考えてみると、パイロットという職業は近い将来なくなるか、形態が大きく変わるはずです。 今は2名で運航している旅客機もちょっと前までは3名で運航していたんですよね。 それが1人がコンピューターに取って代わられました。 いずれはパイロットは1人になってもう1人分の仕事がコンピューター制御になったり、全操縦がリモート操作になったりしていくはずです。 AR、VR、5Gなどのテクノロジーがますます進んでいくわけですから、こうなる流れは当然だと思います。 

 いずれリモート操作で飛行機を操縦する新しいパイロットの仕事が確立されはじめたら、僕はすぐにそちらに移ろうと考え始めました。 自宅、またはコントロールセンターのようなところで旅客機をリモート操縦するという仕事がいずれできるはずです。 リモートであればウイルスを怖がる必要はない。 時差に悩まされることもない。 機種ごとのライセンスの違いもない。 操縦の途中で他のオペレーターと入れ替えるのも簡単。 こう考えるといい事がとても多いです。 悪い事といえば信号を傍受されてハイジャックされるとか、コンピューターの誤作動によって事故に繋がるとかという点。 あとは乗客が暴れ出したりした場合や、乗客が倒れたり急病になった場合の対処法でしょうか。 他にもきっとリスクはあると思いますが、解決策はきっと見つかると思います。 

 今回の経験を元に、今後は時代の流れに取り残されないで生きていけるようになりたいものです。


(つづく) 

2020-05-01

コロナ禍のモントリオール。

  僕が住むモントリオールはさすがカナダ!という感じで4月に入ってもがちらつく日もありましたが、ここ4,5日は春らしい気候になってきました。 現在もコロナの影響で街はかなり静まり返っていますが、日本とはだいぶ雰囲気が違うように思います。

 こちらは日本の外出自粛要請とほぼ同じですが、失業者や閉店を余儀なくされている商店などに対する経済的援助のスピードが段違いです。 そのため、日本のパチンコ店のように営業自粛要請があっても営業を続けるということはありません。 また、そのような商店には高額な罰金が課せられます。 モントリオール市はカナダの中でもコロナ感染率が高い都市なため、市が独自の緊急事態宣言を発令中で、5人以上の集まりは禁止です。 そんな中でもルールを守らない輩はいるもので、そういう者には警察が違反切符を切って罰金を課しています。 友人を呼んで自宅パーティーをしていた人たちに1人10万円以上の罰金が課せられたとか、不必要な外出(アイスクリーム屋にアイスを買いに出かけた)で罰金を受けた、なんて話も聞きます。 

 一方、外出は「なるべく自宅界隈を出ないように、買い物はご近所で」という曖昧な外出自粛要請のままになっています。 そのため、外出しても警察に咎められることはありません。 同じ住所に住む者同士であれば2メートルの距離をあける必要もありません。 逆に、他人同士であっても2メートル開いていれば外出は禁止されてはいません。 そのため、散歩に行くと普段ほどではないものの、一定数の人が通りを歩いていますし、観光スポットでも小規模ではありますが人混みを見かけます。 カナダ人でもマスクをする人が増えてはきましたが、それでもしない人のほうが大多数を占めている印象です。 そもそも北米には日本のようにマスクをする習慣がありません。 そのため、顔をマスクで塞がれることにかなりの違和感があるものと推測できますし、世間の目を気にする人もいるのかもしれません。 実際、コロナ禍の前まではカナダでマスクをしていたのはアジアからの旅行者のみという感じでした。 

 僕の日常の一大イベントはスーパーに行くことくらいでしょうか(笑)。 小池知事の指導にしたがっているわけではありませんが、買い物には3日に1回程度で行っています。 以前書いた通り、スーパーに入ると手を洗わされるのは今も同じですが、以前よりもちょっとテキトウになって来ている感があります。 一方、入店制限は今も続いていて、入り口には行列ができます↓↓↓

ちゃんと2メートルほどの距離を開けて並んでいます。

 スーパーは今でも品揃えは豊富でなにも困っていません。 以前書いたとおり小麦粉の品薄が続いていましたが、最近ではそれもだいぶ解消されているようで、陳列棚に並んでいる姿を見かけることが多くなってきました。 ただ、小麦粉の需要はかなり高まっているため、小麦粉業者の包装袋のストックが激減しているそうです。 そのため、いつもとは違うパッケージで販売していることもあります。 下がその一例です↓↓↓

「一時的に包装をドレスダウンしていますが、中身はおんなじです」とのこと。


 ちなみに、ケベック州全体でのコロナ感染者数は約27,000名、死者数は約1,800名、入院者数は約1,700名となっています(4月29日現在)。

 モントリオールには日本総領事館があるため、そちらから毎日コロナ情報がメールで送られて来ます。 首相の会見内容、ケベック州知事の会見内容などが詳細にかかれていてとても役立っています。 

 そんなモントリオール、近いうちに託児所や小学校を再開するそうです。 一定数のお店なども再開が許されるそうです。 少しずつ経済を回して行く政策が打ち出されて来ていて、不安がある一方、またこれで経済が上向きになっていくのではというささやかな期待感も生まれて来ています。 ただし、ケベック州知事は「もしパンデミックの波が再来すれば、直ちにすべてを再シャットダウンする用意がある」とも言っています。 しばらくは手探り状態が続くでしょう。 

 テレビを見ていると、アメリカではコロナウイルスに効果的な新薬が臨床検査に入り近いうちに認可するという話がありました。 また、PCRに代わる唾液検査方法が確立されるという話もありました。 これらが普及しはじめれば、また経済が回り始め、ロックダウンなどをしなくてもよい日がくるのではないかと思います。 

 航空業界ではドイツの大手航空会社が破産の危機に瀕しているという話も耳にするようになってきましたし、そろそろ経済活動を再開しないといよいよヤバいことになるような気がしてなりません。


(つづく)