2019-08-23

ボルドー6日間ペアリング。

 先週木曜から今日までの計6日間フランス・ボルドーまで仕事で行って来ました。 今年からモントリオール=ボルドーまでのルートが新たにスタートしました。 本来は新型ナローボディー機「ボーイング737MAX」で運航する予定だったこのルート。 ご存知の通り世界規模で運航停止措置となってしまっているため、替わりに767で運航することになっています。 このルートは毎日運航ではないため、僕が担当したペアリングでは日曜日着、木曜日発というスケジュールになっています。 そのため、レイオーバーは4日ほどと、今まで体験したことがない長いものになっています。
 
 レイオーバーは4日間でも、実際に働く勤務時間は20時間未満です。 そのため、考えようによっては効率の悪いペアリングということになります(お給料は原則的に飛んでいる時のみ発生します)。 しかし、我々の場合、契約上の理由で一月に最高で16日勤務というスケジュール組みになっているため、長いレイオーバーのペアリングにあたると実務日数が少なくて済む(=レイオーバーの日数で日数を稼ぐ)という考え方もできます。 そのため、シニア組の中にはなるべく長いレイオーバーのペアリングを希望するパイロットも多くいます。

 僕はというと、なるべく効率のよいペアリングで、なるべく少ない日数で月の仕事を終えたいというのが本音なので、こういった長いペアリングの希望を出すことは皆無です。 しかしながら、なぜか今月はこのボルドー行きが回って来ました。 このペアリングをやりたいという希望を出していたパイロットは結構いるはずなのに、なぜ僕に?というのが正直なところでした。 でも、行かなきゃいけないなら楽しむしかないでしょ?ということで、しっかり観光してきました。

 ボルドー市街地には世界遺産がたくさんあります。
 
カイヨー門。 フランスの王様を讃えるための門だそう。

こちらはベルサイユ風の広場、ブルス広場。 

ミロワール・ドー(水鏡) ここは水が満たされたり霧吹きになったりしています。

ジロンド派記念碑。 円柱の上には「鎖から自らを解き放つ自由の女神」があります。

ボルドーの銘菓「カヌレ・ドゥ・ボルドー」の焼き型。

La Cité du Vin でワインのことを学ぶワークショップに参加しました。

ボルドーではミネラルウォーターもワイン風。

ボルドー空港もワインのデコレーションであふれていて面白いです。

 ボルドー空港にはターミナルが3つあります。 Hall Bがエア・フランス用、BilliがLCC用、それ以外がHall A。 我々はHall Aに駐機しました。

 ボルドーは水の側の街という意味なんだとか。 ガロンヌ川という川にこんな橋が数本かかっています。 

 翌日はレンタカーを借り、大西洋に面したアルカションにあるDune du Pilatという砂丘にいってきました。 ここがヨーロッパ最大の砂丘なんだとか。 高さは常に変動しているそうです。

浜風を使ってパラグライダーを楽しむ人々が遠くに見えます。 

砂丘と砂島。 渡り鳥の休息地になっているそうです。

緑も多く、なかなか面白い風景です。

 レイオーバー最終日は午前中にワイナリーツアーに参加しました。 

 ツアー参加者は計8名。 オーストラリア、アメリカ、デンマークなど、国際色豊かな顔ぶれでした。

 ワインで有名なエリア「サンテミリオン」に行きました。 耕作地にはぶどうしか栽培されていないそうです。

 そろそろ収穫の時期が近いようです。 ボルドーで生産されるワインのほとんどは赤ワインで、ぶどうの種類も主なものは3種類ほどだそう。 

この日訪問したのはシャトー・ド・フェラン。 

 フレンチオークで作られたこの樽は手作りで、一つ800~1500ユーロほどだそう。 2年ほど使うと廃棄されるそうです。

貯蔵庫はこんな感じ。 右奥でワインを継ぎ足す職人さんが働いていました。

 このシャトー、ペンやライターで有名なBICの社長が買い取ったんだそう。 社長さんはBICHさんという苗字だったそうですが、Hがあると英語圏ではあまり良い意味ではないため、BICになったんだそうです。 ワインボトルにもよく見るとBICHという名前が書かれています。

 サンテミリオンの街並み。 こじんまりしていて綺麗です。 日本人観光客にも人気のようで、何組かの日本人観光客とすれ違いました。 ご苦労様です。

4日のレイオーバーが終了し、今日モントリオールに戻って来ました。 帰りは僕の操縦。 ボルドーはフランスで5番目に大きい空港だそうですが、比較的こじんまりした空港でした。 ゲート2から出発。 ヨーロッパの空港のあるあるですが、ゲート番号は外(駐機場側)と内(乗客のいるターミナル側)で違う場合があります。 今日は出発ゲートは2と表示されていましたが、実際の駐機スポットはA5でした。

お隣はA220(旧ボンバルディアCシリーズ)のローンチカスタマーであるAir BalticのA220。

 滑走路05を北東に向けて離陸。 離陸後右旋回し、フランス南部方面、スペイン方面に舵を取りました。 ガロンヌ川の東側に沿って上昇しました。 途中、ボルドーの街並みが見えて来ました。 


 その後、スペインの北部を海岸線に沿って西に飛び、そのまま大西洋を横断しました。 いつもはイギリスからカナダに抜けますが、今回はスペインからアメリカ側に抜けたルートを飛びました。 行きは7時間ほどでしたが、帰りは8時間近くかかりました。 意外と長かった! 無事にモントリオールに着陸し、これで今月の仕事は終了です。

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今回の質問と回答はこちら。

英語の学習方法

今の時代、英語を学ぶ方法はそこら中にあふれていると思います。 テレビ英会話、ラジオ英会話、ネット学習、アプリ、etc。 なんでも構いません。 自分に合うものを見つけて少しずつ努力してください。 ちなみに僕はNHKのラジオ英会話(初級から上級まで)を主に使って勉強し、大学時代にはアメリカに1年間留学しました。 海外で活躍する日本人パイロットの中には何らかの形で海外で暮らしたり勉強した経験を持つ人も多いように見受けられます。

今、僕はモントリオールに住んでいて、常にフランス語が周りから聞こえてくる環境です。 街中で見る標識や、職場で聞く言葉などに興味を持って耳を傾けると、それほど努力していなくても結構言葉がわかるようになってきます(これは自分でもちょっと驚いています)。 例えば、今回のボルドー滞在の際も、ホテルでのチェックインの時に聞かれた質問などはなんとなく理解できるようになっていました。 ここ数ヶ月はオンラインのMANGO LANGUAGESというプログラムを使って時間があるときにちょくちょく勉強しているのですが、それで学んだフレーズが街中やフランス滞在中にそのまま聞こえて来たりすることがあります。 一度聞いたことがあるフレーズは脳が覚えているものです。 言語学習の秘訣はずばり「繰り返し」。 単語カードなどを作ってひたすら繰り返したり、英語のドラマや映画を繰り返し観るのもよいと思います。 僕は洋楽の歌詞を丸覚えしたり、真似して歌ってみたりもしました(笑)。 残念ながら英語学習法に近道はないと思います。 少しずつ前に進むしかないと思います。 いろいろ試してみてください。


(つづく)

2019-08-13

アテネ48時間。

 今月は、前回の書き込みの通りフランスに行ったのと、ギリシャ・アテネに2回行き、最後にフランスのボルドーに行きます。 アテネはここ数ヶ月で頻繁に行っています。 今月は珍しく48時間(2泊)のレイオーバーがありました。 

 この日はモントリオールを出発するのが午後9時の予定でしたが、インバウンドの飛行機を出発ゲートまで牽引してくるのにエプロンが混雑していて、結局出発できたのが9時半すぎとなりました。 モントリオール空港は午後の早い時間が国際便の到着ラッシュ、そして夕方の時間が国際便の出発ラッシュとなります。 エア・フランス、カタール、KLMにスイス航空など、ヨーロッパ・中東の主要航空会社が乗り入れています。 モントリオール空港のターミナル構成はトロントほど大規模ではないため、多くの海外航空会社の航空機が結構集められて駐機している印象です。 そのため、海外組が集まっている界隈だけみると、トロントよりもモントリオールのほうが国際色が豊かな気もします。

 今回のギリシャ行きも僕はaugment。 パイロット3名体制でのフライトです。 機長はカナダ人。 副操縦士はフランス人と日本人(僕)。 なんともカナダらしい構成です(笑)。 僕ないろいろな面でフランスとの繋がりに縁があるようです。 以前のリージョナル航空会社でのジェット移行訓練の時のシミュレーターパートナーもフランス人でしたし、今の会社に入社した時のシミュレーターパートナーもフランス人でした。 フランス人は独特でなかなか面白いです。 ちょっと癖が強い人も多いですが、憎めません(笑)。

 この日のフライトはいつもよりも遅い出発時刻だったため、フライトは長く感じました。 Augmentの僕はほぼ100%の確率で最初の休息を取ります。 離陸後、TOC(Top of Climb=巡航高度に到達するタイミング)から休息は始まります。 大抵の場合はTOD(Top of Descent=目的地空港に向けて降下を始めるタイミング)から30〜45分ほど前までの時間をパイロットの頭数で割って休息時間を計算します。 最初の頃は暗算していましたが、今ではcrew restを計算するためのアプリを使ってささっと計算しています。 アテネ行きの場合、行きはだいたい一人2時間半ほど、帰りは3時間ほどの休息を取ります。

 アテネには現地時刻午後2時前(モントリオール時間午前7時前)に到着。 海外便は多くがレッドアイフライトで、夜から朝方までずっと働いています。 これがなかなか辛いこともありますが、パイロット3名体制の場合には休みが取れるため、少しだけ体へのダメージは低く感じます。 到着後、ホテルに向かい、およそ二日間(2泊)のレイオーバーが始まりました。 

 まずはいつも通りの仮眠です。 この日も2時間半ほど仮眠を取りました。 いつも通り、「ここはどこ、私はだ〜れ」状態で携帯のアラームで起床。 そこからシャワーを浴び、夕食に出かける準備をします。 この日はパイロットのみでのお出かけとなりました。

 最初に行った360バーというところ。 屋上で飲食でき、そこからアクロポリスが一望できます。 ここではビールを一杯だけ飲み、景色を楽しんで退散。 

 
次にこんな遺跡を横目で見ながら食事エリアに向かいます。

気温は36度ほど。 野良猫も暑そう。

アテネの野良猫は痩せていますが、いつもいい景色を見ています。

クルーの食事場所はだいたいいつもこのエリア。 プラカという地域で、観光客に人気です。

レストランの多くは屋上にテラスがあり、景色を楽しみながら食事できます。

日が暮れてくるとこんな景色。

夜景も綺麗です。


 プラカで食事を取り、タクシーでホテルに戻り、その日は深夜0時ごろに就寝。

 翌日は11時近くまでゆっくりしてしまいました。 正直なところ、ここ最近アテネに行きまくっているため、主な観光地はほぼ全て見てしまった状態です。 そのため、やることがあまり思いつかなくなってしまっています。 この日もなにをしようかな〜といろいろ考えましたが、あまり良いアイデアが思いつかず、結局ぶらぶらと街を歩くことにしました。 12時過ぎのホテルのシャトルバスでシンタグマ広場まで行き、そこから歩き始めました。

 最初は観光地から外れた地元民が集まるマーケットなどを見て回りました。 そこは前述のプラカなどとはまったく違い、多くの貧しい人々が集まるエリアです。 ギリシャは経済破綻した国として有名ですが、その名残が今でも色濃く残っています。 街は廃れ、清掃もされておらず、どこから来たのかわからないような移民たちが配給を待っている場所もあります。 なんだか寂しい気持ちになります。

 結局3時間ほど歩き回りました。 途中で前回も行った教会前のカフェレストランで遅めの昼食とビールを堪能。 そしてホテルに戻って来ました。 この日も深夜0時頃就寝。 翌日は午前9時過ぎにホテルを出発しました。

 アテネ空港は市街地からちょっと離れていて、バスで30分〜45分ほどの距離です。 空港につくと大抵の場合、客室乗務員たちはカフェやフードコートで食事を買い込みます。 パイロットはすぐにセキュリティ・出国を済ませ、カフェでコーヒーを買うか、免税店でオリーブオイルなどのお土産を買います。 僕はけちなのであまりなにも買いません(笑)。 ときどきコーヒーやワインなどを買いますが、だいたいの場合はホテル側のスーパーで買い物を済ませておく場合が多いです。

 この日はギリシャを北東に向けて離陸。 離陸重量は170トン越えのなかなかの重量です。 気温が高いこともあり、飛行機エンジンのパフォーマンスは低めなので、離陸に距離と時間を要します。 離陸後、航空管制の指示で北のほうに進路をとります。 そこからはアルバニアやブルガリアなどの国々の上空を通過しますが、ほんの数分で一つの国を飛び越えてしまうこともあるため、今いったいどこの国の上にいるのかをいちいち把握していることは極めて少ないです(笑)。

アルバニア周辺の山々。 標高が高い山々が多く存在します。

 この日も僕が最初の3時間ほどの休息を取るために操縦室を後にしました。 ビジネスクラスの一席をクルーレストシートとして使用しているので、そちらに移動。 軽食を取り、アイマスク・耳栓をしてしばらくの仮眠を取るのがいつものパターンです。 以前はなかなか寝ることができませんでしたが、今はだいたい1時間以上は毎回寝れるようになりました。 休息が終わる10分ほど前に操縦席に戻り、操縦しているパイロットたちからフライトの進行状況のブリーフィングを受けます。 その後、休息を取るパイロットと席を交代。 今回は機長が次に休息に行く順番だったため、僕が機長席(左席)へ。

 しばらくするとOceanic Airspaceに入り、大西洋横断が始まります。 今回はスコットランド周辺からアイスランドの南沖を通過し、グリーンランドの南端上空を通るコースです。 この日の機材にはエンジン火災を監視するシステムのうちの一つが故障していた(もう一つは正常に機能)ため、最寄りの代替空港から120分以内の距離を飛ぶETOPS120ルールでの運航となりました。 だからと言って特に普段と違ったことはあまりないんですけども。 通常はETOPS180ルールで飛ぶことがほとんどです。

 この日のルートはNAT Cというルートで、多くの飛行機が同じルートを飛んでいるようでした。 我々はマッハ0.80という速度で巡航していました。 多くの飛行機(777, 787,350等)はもっと速い速度で巡航することが多いため、我々767は大抵の場合は大西洋上でもっとも遅い飛行機となる場合が多いです。 だいたいの場合、マッハ0.78から0.83くらいの間で巡航することが多いです。 この日はユナイテッドの787と見られる飛行機に途中で抜かれました。

 
 
 最近はGPSを使ってナビゲーションをすることがほとんどで、あまりにも精度が高いため、他の飛行機との位置が全く同じで、高度だけ違うということがよくあります。 安全面に考慮して、意図的にルートから少しだけ外れる航法が認められています。 許可されたルートから右に1マイル、または2マイル外れてオフセット飛行する航法をSLOP(Strategic Lateral Offset Procedure =スロップ)と呼びます。 この日は右に1マイルSLOPしていたのですが、どうやらユナイテッドの飛行機も右に1マイルSLOPしていたようで、我々の真上を通過して行きました。 距離は1000フィート上空だったので、300メートルほどですね。 この後、右手下の方をカタール航空の350と見られる飛行機が通過していました。

 モントリオールには定刻より早く到着。 自宅に戻って来たのは午後3時過ぎでした。 日曜日だったため道路も混んでおらず、空港駐車場から自宅までスムーズに移動できました。 モントリオールのハイウェイは結構渋滞するんですよ・・・。 

 これで今月のアテネペアリングは終了。 次回は5日後にフランス・ボルドーに行きます。 これがまた長いレイオーバーで、なんと4泊!! ワイナリーツアーなどをやらざるを得なくなると思います(笑)。

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今回のよくある質問はこちら。


ビザ・永住権について

 カナダでエアラインパイロットになるには永住権がほぼ100%必要です。 これが取れるかどうかは個人の状況によって変わります。 学歴、職歴、英語(またはフランス語)能力、カナダに親族がいるか、などなど、いろんな要素が含まれます。 カナダ移民局のウェブサイトに詳しい情報がありますので、それをご自分で確認してください。 

 永住権の取り方には多くの方法があります。 僕が申請した頃と今では申請カテゴリーの種類も大きく様変わりしました。 最新の情報はカナダ移民局のウェブサイトで調べてください。 

 実際のところ、永住権が取れるかどうかはある意味ギャンブルでもあります。 極端なことを言えば、お金さえだせば誰でもパイロットライセンスは取得できます。 ただ、永住権が取れないことにはそのパイロットライセンスを行使することはできません。 永住権を取るための要素を確認し、取れそうだなということが確認できてから訓練を開始するのがスマートかもしれません。

 よく僕にメールで「永住権を取るのは難しいですか?」と質問してくる方がいらっしゃいますが、僕にはわかりません。 それは上述のとおり、申請者の状況によって取れるかどうかは大きく変わってくるからです。 また、僕は移民のプロではありませんから、専門的知識は持ち合わせておりません。 どうしても不安がある場合、お金を払っても良いのであれば移民弁護士やカウンセラーに相談するという方法もあります。

 たしかに永住権を取れる確証はありませんが、なにがなんでもカナダでパイロットになる!という強い意思を持ってカナダに渡ってくる方々のほとんどは遅かれ早かれ永住権は取れている印象です。 しっかりやることをやれば取ることは不可能ではないと思います。 カナダはそもそも移民の国です。アメリカのグリーンカードやヨーロッパの永住権と比べればカナダの永住権は比較的取りやすいと考えられます。 取れると信じてがむしゃらに突進するような勇気や楽観性もある程度必要なのかもしれません。 それがどうしても怖い、不安でたまらないという方はそもそも海外でパイロットを目指すことはやめておいたほうが無難かと思われます。 パイロットになれる保証や永住権が取れる保証がないと一歩を踏み出せないようであれば、航空業界のような「明日はどうなっているかわからない」業界に進むこと自体難しいと思います。 


(つづく)


2019-08-08

休暇&仕事でフランス。

 10日ほど休みがあったのでフランスで過ごしました。 今年のフランスも酷暑ですが、僕がいつも滞在するところは山間部なので夕方には少しだけ涼しくなるのが救いです。 この時期はダウンヒルマウンテンバイクで賑わいます。 ハイキングにも絶好の季節で最高です。 フランスの山岳地帯は日本のそれとはまた違った趣があり、とても楽しいです。 


もろハイジの世界(笑)


こんなところをMTBで走ったら楽しそう。

スイス国境はすぐそこ。


 世界的に有名な自転車レースであるツールドフランスの今年の第20ステージは山岳地帯でのヒルクライムレースでした。 ツールドフランスの最終ステージ(第21ステージ)は必ずパリ・シャンゼリゼ通りでゴールすることになっているのですが、出発地点とルートは毎年変わります。 今年はブリュッセルをスタートし、約3週間かけてフランスを一周しました。 最終ステージは競争をせず、どちらかというとパレード走行のような走り方をしてレースの終了と優勝者の健闘を讃えるという暗黙の了解があるため、最終ステージの一つ前のステージでその年のツールドフランスの優勝者が実質的に決定することになっています。 今年は以前冬季オリンピックが行われたことでも有名なアルベールビルが第20ステージのスタート地点に選ばれました。 アルベールビルは車で1時間半ほどの場所だったため、レース観戦に行ってきました。 
今年の優勝者のコロンビア人の選手。 自転車レースはプロとの距離がとにかく近いのが魅力です。

脚めちゃ細。 ファンクラブを見つけて駆けつけていました。

 フランスからカナダに戻ってきてもツールドフランス熱が治らなかったため、仕事開始までの回復日にサイクリングに行ってきました。 行き先は今住んでいるところからジャック・カルティエ橋を超えてすぐのところにあるジョン・ドラポー公園という公園がある小さな島です。 ここはF1モントリオールグランプリのレース会場にもなっているため、サーキットが存在します。 しかも、そこを自転車で走れるんです。 F1サーキットを走れるなんてなかなかないと思うので、ここは僕のお気に入りサイクリングコースになりました。 

こんなところを自転車で走れます。 入場無料。 車でも時速30キロ制限で走れるようです。

 休みが終わり、仕事が始まりました。 今月最初のフライトはこれまたフランスのニース・マルセイユまでのペアリングでした。 よく考えたら、仕事でフランスに飛ぶのは今回が初めてでした。 

 ニースはフランス南部の海岸線にある都市です。 今年の春に旅行で訪れたところです。 近くには映画祭で有名なカンヌや、富豪たちが住むことで有名なモナコがあります。 

 ニース空港までは約7時間半。 一緒に行った機長とはトロント時代に一度働いたことがあり、顔なじみでした。 夕方7時前に離陸し、ニースに到着したのは現地時刻の午前8時過ぎ。 海沿いにあるニース空港には滑走路が平行して2本あり、陸地側の滑走路が着陸用、海側の滑走路が離陸用となっています。 騒音対策のためだそうです(通常離陸時のほうが飛行機はうるさい)。 

ニースで観たのはこれくらい(笑)

 入国後はそそくさと待機していた大型バスに乗り込みます。 そしてそこから滞在先ホテルがあるマルセイユ近郊のエクサンプロバンス(Aix-en-Provence)という街までの陸路移動です。 これが長い。 2時間近くもバスに揺られることになりました。 これだけ長い陸路デッドヘットがあるペアリングはこれが初めて。 滅多にないので新鮮ではありますが、フライトで疲れた体にはこたえます。 案の定、ほとんどのクルーはバスで寝てしまいます。 僕も1時間ほど仮眠を取りました。 そしてエクサンプロバンスに到着。 なかなか綺麗な街ではないですか!

 いつも通り仮眠を取り、それから散歩に出かけました。 街にはいたるところに面白い噴水があります。 なかでもコケが生い茂った噴水がいくつもあり、観ていて飽きませんでした。 


イルカ4頭の彫刻がある噴水

 画家のセザンヌが生まれた街としても有名だそうです。 こんな金属プレートが歩道のそこら中に埋められています。


もちろん教会があります。 ここはなかなかよかった。 

アップルストアがあったり、こんなモダンなオブジェもあったりして、面白い街でした。


 夜には機長とFAさんと一緒に街角のバーでビールを楽しみ、その後レストランに移動して食事を取りました。 結構歩いて疲れたおかげでその夜はよく眠れました。

 翌日、バスでマルセイユ空港に向かいました。 15分ほどの乗車で空港に到着。 セキュリティー検査が厳しく、100ml以上の液体はすべてスキャナで検査されます。 僕は100ml以上の液体は持っていなかったのですんなり通過しましたが、機長を含め、多くのFAさんたちがワインを購入したようで、そのワインをすべてスキャンするのにかなりの時間がかかりました(笑)。 その後、歩いてエプロン脇に出て、我々の飛行機まで歩きました。 外を歩いて飛行機に向かうっていうのはあまりないので新鮮でした。 写真も撮れて満足(笑)。

なかなか男前です。

 出発準備もスムーズに行き、ほとんど待ち時間もなくプッシュバック。 西に向けて離陸しました。 帰りの操縦は僕の担当。 離陸後しばらくするとアヴィニョンという都市の上を通過しました。 そして右手にはアルプス山脈が。 フランスのリヨンや、よくいくジュネーブまではほんのちょっとの距離です。 ヨーロッパは本当に狭いなぁと毎回感じます。
アヴィニョン上空

雪をかぶったアルプスの山脈が見えます。

青い○で示されたLFLLがリヨン、LSGGがジュネーブです。 

 これでニース・マルセイユペアリングは終了です。 翌日にはギリシャ・アテネまで行ってきました。 昨日カナダに戻って来て、今日は1日モントリオールでお休みでした。 明日からまたアテネに行きます。 今回はレイオーバーが長く2日の滞在。 暑いから博物館巡りでもしようかなと考えています。

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今回から、メールで問い合わせをよくもらう内容について毎回一つずつ回答していこうと思います。

今回のお題は、

フライトスクールの探し方

 よく聞かれるのは、「どこで訓練を受けましたか?」とか、「オススメのスクールがあったら教えてください」という質問です。

 僕はブリティッシュコロンビア州のビクトリアにあるVictoria Flying Clubで訓練を受けました。 いろんな面でよかったなと思っています。 ですが、僕が知っている日本人エアラインパイロットのうち、ビクトリアで訓練を受けたのはほんの数名です。 カナダにやってくる日本人の多くはバンクーバー近郊のバウンダリーベイ、ピットメドウズ、ラングリー、アボツフォードといったところにあるスクールで訓練を受けています。 その事実から鑑みると、スクール選びにこだわりすぎる必要はないように思います。 日本から近い西海岸は気候の点など(冬があまり厳しくないし、雪もほとんど降らない)からもオススメしますが、特にこのスクールでなきゃだめ!というオススメはありません(VFCは母校なのでひいき目で見ることがあるのは否めませんが)。 そもそも、いくつものスクールで訓練を受け比べるなんてことは誰もしないと思いますので、オススメのしようがないのです。 強いていえば、卒業生にエアラインパイロットが多いところとか、経験者が教官のスクールはいいと思います。 あとは機材とか、訓練費用とか、生活環境とかを総合的に判断して選べば良いと思います。 実際にスクールに足を運んで自分の目で見て確かめるのも大切だと思います。 今はネット社会だからなんでも口コミで選ぼうとすると思いますが、最終的に頼れるのは自分の勘です。


(つづく)