2019-02-21

南米へのフライト。

 今月の仕事はとてもシンプル。 コスタリカのサンホゼに2回行き、コロンビアのボゴタに3回行きます。 

 サンホゼは現地滞在が10時間と超短時間のレイオーバーです。 残念ながらホテルと空港以外はなにも見る時間がありません。 それでも1日目は夕方からのフライトで現地到着は午後10時過ぎ、翌朝には現地を出発して午後3時過ぎにトロントに戻ってくるというなかなか効率の良いペアリングです。 僕は嫌いではないです。 

 レイオーバーは長いものでは2日、長いものでは4日とかなんていうのもあります。 長いレイオーバーは楽しそうではあるのですが、現地滞在中はお給料も発生しませんので効率的ではありません。 毎月飛ばなければならない時間が決められているので、レイオーバーが長ければ長いほどその月の拘束日数が増える(=お休みが減る)ことになります。 僕はお休みを最大限長くしたいので、そういう人にとっては長いレイオーバーはあまり意味がありません。 イタリア・ベニスで4日間レイオーバー、アフリカ北部で4日間レイオーバー、またはラスベガスで2日間、なんていうとなかなかエキゾチックで楽しそうに思われるかもしれませんが、その間はホテル住まいですし、ましてや既に行ったことがある都市の場合はあまり長いレイオーバーは楽しくないというのが本音です。 なかには長いレイオーバーに家族や恋人を連れてくる人もいます。 僕はレイオーバーは短くて良いから効率的に仕事をし、代わりにお休みをなるべく長くもらえるようなスケジュールをリクエストすることがほとんどです。

 サンホゼ空港の側には活火山があります。 先日サンホゼからの離陸時には火山からの噴煙が見えました。 火山灰はジェットエンジンの大敵で、噴煙がエンジン内に入るといろんな問題を引き起こします。 この日も火山灰と思われる煙が目視できたため、なるべく上昇角を高めて火山灰に入らないように気をつけました。 

(写真上:サンホゼ空港側にあるピアス火山。)

 先週末はボゴタに行って来ました。 トロントを出発後はほぼまっすぐ南下します。 フロリダ周辺を通過し、バハマとキューバ周辺を通過します。 バハマのフリーポート周辺を通過する頃には日が沈み、綺麗な夕日が見えました。


 ボゴタ空港は南米大陸にあります。 カリブ海を抜け南米大陸に上陸するとコロンビア北部のバランキーヤという市の上を通過します。 ここを超えてしばらくすると標高の高い山々の側をフライトします。 このあたりは赤道に近く、また温かい海水にも近いので頻繁に積乱雲や雷雲が発生します。 しかもこの辺りに差し掛かるころには日もすっかり暮れ、外はほとんど見えません。 雷雲の位置を把握するために気象レーダーを使いますが、レーダーは地上の勾配にも反応してしまうため、レーダー画面に写っているものが果たして山脈なのか、それとも本当に雷雲のリターンなのかがわかりにくいことがよくあります。 満月の夜であれば雲の位置を目視確認できることもありますが、そうでない場合にはなかなか見えません。 間違って雷雲に入ってしまうと乱気流に遭遇することも考えられるのでかなり神経を尖らせてフライトします。 それでもアプローチ中には比較的小さめの雷雲をつっきらざるを得ないこともあります。 ボゴタ空港はなかなかチャレンジングな空港です。

 この日は降下中に一度だけ嵐を避けましたが、それ以外は安定したフライトになりました。 クルーもいい人ばかりで楽しいフライトでした。

 滞在中は日曜日だったので蚤の市が出ていたので見て回りました。 また、初めてホテルから離れた場所にも散歩してきました。 ほんの2時間ほどの散歩でしたが、日が出ていたこともあり、かなり日焼けしました。 紫外線が強いんですね。 それでも初夏のような陽気はとても心地よく、冬の間にこんな気候を楽しめるのはパイロットの醍醐味のように思いました。

(写真上:ホテルからの眺め)



(写真上:音楽を演奏している人も多くいて良い雰囲気。)


(写真上:結構人が多いです。)

(写真上:こういう貨物トラックが南米っぽい。)


(写真上:信号待ちの車の間を物売りが歩き回るのも南米っぽい。)

(写真上:この日のお昼ご飯「バンデハパイサ」。 コロンビアの定番料理だそうです。  アボカドがめちゃくちゃおいしかったです。)

(写真上:トロントへの帰り道に見えた大きな雷雲。)

 今回も高山病に軽くかかりましたが、それなりに楽しいレイオーバーとなりました。 なんだか手足が腫れぼったくなります。 あと、ちょっと動いただけで心拍が上がります。 標高2500メートルほどですので、どうしても体が反応してしまいます。 眠る時間になっても標高の影響か心拍数が高いままのこともあり、そうなると体と脳がなかなか落ち着かず、深い眠りにつくのが難しいこともあります。

 昨日はART (Annual Recurrent Training=年一回の講習)もありました。 今日から3連休で、またボゴタに2回行きます。


(つづく)

 

南仏・モナコ。

 1月は22日まで仕事をし、それから2月7日までお休みでした。 この時期は仕事はあまり忙しくはありません。 ヨーロッパ方面へのフライトはほぼゼロで、フライトのほとんどは南米やフロリダ行きばかりです。 個人的にはありがたいな〜と思っています。 理由は「時差がほぼない」からです。 ナローボディに乗務しているパイロットの場合、カナダ・アメリカ・南米周辺しか基本的には飛びませんから、時差もそれほど大きくはありません(中にはナローボディで海外行きをやる場合もあります)。 一方、ワイドボディで海外便を担当すると一気に時差が大きくなります。 また、フライトの時間も真夜中に飛ぶことが多くなり、目的地に到着するのはカナダ時間で早朝ということも多くあります。 そうなると時差ボケ対策や体調管理に気を使うようになります。 そういうことにあまり気を使わなくて良いこの時期は個人的には歓迎です。

 今回の休暇ではパートナーの出張に同行して南仏カンヌ、ニース、そしてモナコに行って来ました。 ジュネーブからEasyjetというLCCで移動しました。 Easyjetは本当に安くて、ヨーロッパ内であれば往復1万円以下なんていうこともよくあります。 どうやって儲けがでるんだろう?と不思議に思うこともありますが、機内持ち込み荷物や預ける荷物に料金を課していますし、フライト当日に近くなるに従ってチケット代も高くなります。 また、機内サービスはほぼゼロで、代わりに比較的リーズナブルな飲み物や食べ物を売っています。 LCCではあってもパイロットのお給料は比較的良いようですし、なかなか魅力的なオペレーションです。

 ニース空港に行く前にはジュネーブで一泊しました。 ジュネーブにはかつて世界一長かったベンチというのが市役所裏にあります。 ジュネーブにはなんども行ったことがありますが、このベンチを見たのは今回が初めてでした。

(写真上:ジュネーブ内にある教会周辺)

(写真上:これがかつて世界一長かったベンチ。写真に入っていない反対側にも伸びています。)

 ジュネーブからのEasyjetはA320型機。 Easyjetおよびヨーロッパの航空会社はやはりエアバス機が圧倒的に多い印象です。 日本のLCCもそうですよね。 同じようなサイズのボーイング737と比べるとランニングコストが安いという話を聞いたことがあります。 ジュネーブからニース空港までは飛行時間にして45分程度。 あっという間です。 

 ジュネーブ空港はスイスにある空港ですが、フランス側のスイスにあるので、空港にはFrench Sectorと呼ばれるフランス側の部分が存在します。 ジュネーブからフランス国内空港に飛ぶ場合にはこのFrench Sectorにある保安検査場を通過します。 スイスはEU加盟国ではありませんが、フランスとなんらかの取り決めがあるようで、フランス⇆スイスの移動ではパスポート検査は原則ありません。 

 ニース空港は海に突き出した埋立地にある空港のようです。 駐機場には多くのプライベートジェット機が停まっていました。 おそらくはヨーロッパや中東アフリカの富豪たちがバカンスに訪れるのだと思います。 富豪が集まるモナコからも近いというのが理由かもしれません。 驚いたことにカナダ空軍のグローブマスターも停まっていました。

 空港を出て、トラムに乗って市街地を目指します。 途中でバスに乗り換える周辺では綺麗な海が見えました。


 ニース駅に到着し、駅内にある荷物預け所にスーツケースを預けました。 日本のようなコインロッカーは海外ではほとんど見かけませんが、手荷物預かり所はあるんですね。 スーツケース2つで15ユーロだったかと思います。 ちょっと割高ですが、荷物をごろごろと引きずって観光をするよりはマシです。

 ニース駅からは快速電車に乗ってモナコに向かいました。 

(写真上:ニース駅)
 
 電車はたしか8ユーロほど。 券売機は英語表示もできるので割と簡単にチケットが買えます。 ニースからモナコまでは時間にして20分ほどだったかと思います。 海沿いに線路が走っています。 

 モナコにつくと、入国審査はありません。 ただし、プラットフォームの出口には入国審査官・警官のような人が立っていて抜き打ち検査をしていました。 止められているのは中東系の人のみ。 差別じゃない?とも思いますがそれはいろいろ大人の事情があるのでしょう・・・。 駅の外に出たときの第一印象は「さすがお金持ちが集まる市だけあり、とても綺麗」でした。 

(写真上:駅構内から見えたモナコ)

 モナコ市内はバスもあるようですが、徒歩で全然問題なく観光できます。 天気もよく、気温も比較的高く、心地よい観光ができました。 

(写真上:モナコといえばF1などでも有名なこのヘアピンカーブでしょう!)

(写真上:高級なカジノが多くあります。)

(写真上:高層マンションが多く建ち並びます。)

(写真上:マリーナには多くの高級クルーザーが。)


(写真上:丘の上には王家の宮殿があり、周りは旧市街地が広がっています。)

(写真上:白い砂浜がとても美しい。)

 モナコには数時間の滞在で、そのあとニース駅に戻り、荷物をピックアップしました。 そして今度は西のカンヌに向かいました。 電車で30分ほどです。 今回も電車は海沿いをひた走りました。 

 カンヌには3泊しました。 カンヌといえば国際映画祭が有名です。 それ以外は南仏のリゾート地という感じで、時間がゆったりと流れる雰囲気です。 セレブリティが多く訪れるせいもあり、海岸沿いには有名高級ブティックが並んでいます。 それ以外はこじんまりとした街という印象でした。






(写真上:黒澤明監督の手形)

(写真上:こちらが国際映画祭の会場)

 ここでも日中は気温が結構上がって、ジュネーブやトロントとは大違い。 冬の厳しい寒さを抜け出してこういうところでバカンスというのも悪くはないと思います。

(写真上:ニース空港) 


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 南仏に行く前にはフランス国内でウインタースポーツに興じました。 今回初めてソリ、スノーシュー、そしてクロスカントリースキーに挑戦しました。 




 スキーもやる予定だったのですが、ニースからジュネーブに戻ってくると天候があまりよくなく、大雪の予報が出ていたため、予定を繰り上げてカナダに戻って来ました。 また来月フランスに行く時にスキーに挑戦したいと思っています。



(つづく)

 

2019-02-11

C1/Dビザ。

 今年に入り、1月初旬に風邪をひきました。 どうやら僕の周りにも体調が優れない人が多くいるみたいで。 まずは喉の痛みに始まり、鼻づまり、鼻水、咳と、風邪のフルコースのような感じでした。 幸いインフルエンザとかではなかったみたいですが、風邪をひき始めてから1ヶ月ほどたちましたが、未だに乾いた咳が出ます。 以前にもこんなことがあって、そのときも咳が完全に治るまでに1ヶ月以上かかった記憶があります。 今の時期は仕事で南に行くことが多く、体がバカになるんだと思います。 「数時間前までは極寒だったのに、今は真夏なのね〜」と、体の体温調整機能やら免疫力が狂うのではないかと思います。 こればっかりは気をつけていてもなかなか・・・。 

(写真上:コスタリカは晴天、気温25度ほど)

(写真上:一方、トロントは吹雪、極寒)

(写真上:途中で通過するキューバ周辺の海は綺麗です。)

 実は1月中旬には一旦体調が治りかけたんです。 ところが、ちょうどその頃、アメリカのクルービザの更新のためにトロント市内のアメリカ領事館に面接を受けに行かなければならないことがありました。 しかもあいにくその日に限って大寒波。 気温はマイナス20度近く、体感温度はマイナス30度ほど。 分厚いダウンジャケットを着て出かけたのですが、それでも面接時間直前までは建物内に入れてくれないというアメリカ流のおもてなしのおかげで完全に体の芯まで冷え切りまして、しかもその日は面接が朝8時、そして午後3時過ぎにはパスポートを受け取りに再度領事館に出向く必要があり、また体が冷える羽目に。 これで完全に風邪が長引きました。 仕事だったら病欠していたと思いますが、ビザ面接となるとそうもいきません。

 このビザはC1/Dビザと呼ばれるもので、いわゆるクルービザです。 僕は日本国籍で日本のパスポートを所持しています。 日本のパスポートを使ってアメリカに飛行機や船の乗務員として入国・通過する場合にはこういったビザが必要になる場合があるそうです。 そのため、以前のリージョナル航空会社に採用されたときにバンクーバーにあるアメリカ領事館でC1/Dビザを取得しました。 それが今年の3月末で失効するため、その延長手続きを昨年末から始めていました。 

 本来、C1/Dビザの延長には本来、面接は必要ありません。 オンラインで必要事項を記入し、ビザ申請代金を支払うと郵送の手続きの説明書きが送られてきます。 本来であればそれにしたがってパスポートと必要書類を郵送すると領事館からビザが貼られたパスポートが返送されてくる仕組みです。(または自分でピックアップする場所を指示することもできます。) ただし、僕の場合は仕事でパスポートを常時携帯することが義務付けられていますし、パスポートが送り返されてくるまでにかかる時間が明確でないとパスポートを手放すことはできません。 それらの理由を大使館、領事館、ビザ面接担当部署の人などにメールや電話で伝え、いろんなところをたらい回しにされた挙句、「じゃあ、面接の予約をして、担当審査官に直接言って」と言われ、面接に行くことになった運びです。

 面接当日は前述の通り、極寒の中、領事館の外で30分ほど待たされ、その後セキュリティーチェックを受けて建物内に入りました。 ちなみに携帯電話を所持することは禁止されています。 いまどき携帯を持って入っちゃダメってどういうことよ?と思いましたが、ちゃんと下調べの段階でわかっていたので自宅に携帯を置いてきて、財布と書類のみをもって参上しました。 建物内でも20分ほど待ちました。 その後、最初に書類を受け取る係の人のところに案内されました。 そこのおばちゃんが面白く、僕がパイロットだと知ると、「○○空港にも行くでしょ? 乗ったことあるわよ〜」と話が弾みました(笑)。 その後、また10分ほど待ち、ようやく面接官のもとに。 書類とパスポートを渡し、パスポートを手放すことができないことを説明。 すると後ろにいる偉いさんみたいな人とごちょごちょと話をして戻ってこられ、「じゃあ、なんとか今日の午後3時までに発行できるように全力を尽くすから、この紙をもって3時以降にまた領事館に来てくださいね」と言われました。 あれ? そんなに簡単にできるの? え? 僕の申請追加書類一切渡してませんけど? いいんです? という感じであっという間に面接終了(笑)。 一旦自宅に戻り、3時過ぎに領事館に戻ると、ちゃんと10年間有効のC1/Dビザがついたパスポートが待っていました。 しかも、観光などでも使えるB1ビザまで無料でサービス(笑)。 これで仕事に支障をきたすことなくすみます。 長いプロセスでしたが、よかった、よかった!

 僕はアメリカ・カナダに入国する際にはNEXUSというカードを使っています。 これを使うと一般旅行客と比べて圧倒的に早く入国審査を通過できます。 通常はクルー専用レーンを使えば旅行客よりも早く通過できるのですが、NEXUSの場合はそれよりも早い場合が多いです。 特にトロントの場合は特別申請するものがない場合、機械でNEXUSカードを読み取り、画面を4回ほどタッチすれば終了で、印刷されたレシートを持って審査官がいるゲートをほぼ素通りで通過できます。 いちいち審査官からの質問に答えることも必要ないので、長いフライトのあとで早く家に帰りたいときなどにはこのカードのありがたみを感じます。 このNEXUSの申請にも面接が必要で、50ドルの手数料がかかります。 そのため、面倒臭がってNEXUSを持たないパイロットも多くいますが、一度このカードの便利さを知るとこれなしでは旅行したくないほどです。 入国審査で長い列に並ばされ、その挙句態度の悪い入国審査官にいろいろ聞かれることはなにかとストレスがたまりますからね。

 NEXUSには僕の住所などの個人情報の他に、アメリカのビザやカナダでの滞在資格の情報なども含まれています。 そのため、情報に変更があった場合にはそれらを逐一更新するためにわざわざNEXUSの事務局に出向く必要があります。 幸い、トロント空港内にその事務局があります。 C1/Dビザの更新が終了したのちこのオフィスに出向いてみると、下のような張り紙がありました:


 日本でも報道されていたと思いますが、アメリカ政府の予算の問題で一部政府関連省庁がシャットダウンしていた影響をもろに受け、NEXUSオフィスまで一時閉鎖されていたのです(涙)。 しかも、面接の予約をしていた申請者たちは全部面接がキャンセルになったそうです。 かわいそう・・・涙。  結局、情報更新はできなかったのですが、しばらくはアメリカ行きの仕事もなかったので問題ありませんでした。 そして、おととい、休日出勤でフロリダ行きの仕事があったので、その際にアメリカ入国審査官に今回のことを告げたら、その場で親切にも情報のアップデートをやってくれました。 親切な人でラッキーでした。 

 こんな感じで今年の1月は過ぎて行きました。 1月は22日までが仕事で、そのあとはおやすみだったためフランスに行っていました。 今回は南仏ニース、カンヌ、そしてモナコにも行って来ました。 次回のブログでそのことについて書きます。


(つづく)