2020-05-14

機材入札 その2

 僕がパイロットになる前は、大手エアラインに入るには長い下積みを余儀なくされ、大手航空会社に履歴書を見てもらえるようになるには飛行時間が7,000時間くらいはあるのが当たり前という時代だったそうです(北米の話です)。 ところがここ数年は2,000時間もあれば大手に引き抜かれるというようなバブリーな時代になっていました。 以前はワイドボディ機のFOに昇格するには、まずはナローボディ機に乗って経験を積み、ナローの機長として飛んでやっとワイドのFOに上がれるという時代だったそうです。 さらにその前にRP(リリーフパイロット)としての乗務が必要だった人も多いようです。 要約すると、以前の昇進モデルで定番だったのはこんな感じだったようです(必ずしもこうだったというわけではありませんが)↓↓↓

   ①ワイドのRP↓
   ②ナローのFO↓
   ③ナローのCA↓
   ④ワイドのFO↓
   ⑤ワイドのCA 
   ⑥幸せな定年退職

 ①で数年、②に上がって数年、③に上がるころには勤続年数が10年前後だったという話を聞くことが多いように感じます。 

 ところが、僕が知っている限り、最近ではいきなり②か、僕のように④からスタートということもよく起こっていました。 入社1年目でボーイング777(もっとも大型機)のFO④になる、なんていうこともありました。 前代未聞の事態だったそうです。 とはいえ、④から⑤に入社数年目で行くことなんていうのはありません。 そこにはお給料やセニオリティが絡んで来ますから、そう簡単に⑤にはいけません。 ところが、③には比較的簡単にいけるような状況がここ数年起きていました。 入社2年ほどで③に進むパイロットが出て来ました。 これも前代未聞だったそうです。 

 ところが、今回のビッドを見る限り、今までの流れは淡く儚い夢のような日々だったように見受けられます。 

 例えば僕のケース。 今日現在、モントリオールベースで僕のセニオリティ番号で選択できる(「ホールド」できる)のは②です。 ③も機種によってはぎりぎり食い込めるか?という感じです。 ですが、FOリストのなかでもっともジュニアなパイロットになると生活の質がかなり落ちますので躊躇します。 例えるなら、進学校の成績最下位よりも一般校の成績上位のほうが気分が良いのと似ています(笑)。 それでも中には「俺は一番でかい飛行機に乗りたい」とか、「私はとにかく早く出世街道を進むんだ」という人もいるので、ポジションのビッド方法は千差万別です。

 僕は②で進むつもりでいます。 ここで厄介なのが自分よりシニアな人たちの動向です。 シニアな人の中にはCAもFOもホールドできる人がいます。 ところが前述のとおり全体で下のほうのポジションになると毎月のスケジュールや休暇申請の際に回ってくる順番などの面で不利益を被る可能性があるので、ジュニアなCAよりもシニアなFOを選ぶ人も出て来ます。 特に今のような経済低迷期にはそういう選択をする人も出て来て当然だと思います。 

 なんて言っていますが、今回レイオフされたパイロットも数多くいますし、僕は幸いにして、今の所は、仕事を失っていませんから、飛べる可能性があることに感謝してビッドしようと思います。 どの機種に移っても良い点・悪い点が必ずありますから、なるべくポジティブに考えようと思います。 


(つづく)

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