2020-08-08

過去ログ:2006年11月8日〜2006年11月9日

ビクトリア25日目:スムーズなフライト
2006年11月8日水曜日


 今日も引き続きフライトが出来る天候でした。 朝10時からのフライトだったので、8時頃起床し、朝の散歩をし、朝食を摂ってクラブに向かいました。 いつもなら歩くところですが、今日は天気が良かったので僕の愛車のMTBを使って快適に通学となりました。

 クラブに着き、少しラウンジで時間をつぶしフライト開始です。 まずは今日使うことになったGZSCという飛行機のウォークアラウンドをします。 今日は1人で点検を行うことになりました(んまあ、僕はプライベートパイロットですから、できて当然なんですが・・・)。 ウォークアラウンドのあと、バンクーバーのエリアコントロールセンターに電話をします(1-888-YVR-CODEが番号です)。 電話をしてトランスポンダーコードを入手しました。 トランスポンダーというのはコックピットに備え付けられている装置で、4桁の数字を入れると、その数字に基づいて管制官のレーダーの画面に現在地や高度などが表示されるというシステムのことです。 通常はタワーにコンタクトすると、「Squawk ####」と言われ、トランスポンダーコードをその場で割り当てられるのですが、ビクトリアの空域はバンクーバーのエリアコントロールがトランスポンダーコードを割り当ててエリア内のフライトをコントロールしているようです。 初めて電話しましたが、ものすごく簡単でした。 コードを入手したあとはブリーフィング(1分くらい)をして、そのあと早速GZSCに向かいました。

 コックピットに入る寸前に、「オイルはどれだけあった?」とインストラクターに聞かれ、「あああああああああああ!」っとなりました。 なぜかというと、オイルの量をウォークアラウンドの時に確認しなかったからです。 大失敗です(汗)。 言い訳をすると、ウォークアラウンドのやり方や順番がスクールによって違います。 他にもチェック項目の内容や手順はスクールによって大きくことなります。 その違いに圧倒されていて、とても重要なチェック項目を忘れてしまいました。 明日からは気をつけます(反省)。 失敗は成功のもとです(笑)。

 昨日と同じように、クリアランス、グランド、タワーという順番で無線コンタクトをし、滑走路27からテイクオフです。 昨日とはまったく違って、今日の風はとても弱かったです。 そのため、離陸後の上昇もとてもスムーズに行きました。 カウチンデパーチャー(カウチンを通って出発)を許可されたので、昨日と同じカウチンのエリアにまっすぐ向かいます。 高度は2500フィート。 空港を離陸するとすぐに海を越えます。 今日は海にあたる日差しの照り返しが心地よかったです。 訓練空域に到着し、スパイラルダイブからのリカバリーをやりました。 スパイラルダイブは、角度のきついターンをしているときにさらに角度をきつくして降下をしていくとどんどん速度が早くなってスパイラル(らせん)状に降下していくことを指します。 そのまま放っておくと機体が耐えられる速度よりも速度が早くなって、最悪の場合は空中分解してしまう、とても危険な状態です。 スパイラルダイブからのリカバリー(復帰)は、1)エンジンパワーをアイドルにし、2)翼を水平に戻し、3)ゆっくりかつ迅速に機体のノーズを上に上げてやってダイブから抜け出します。 これらをなるべく早く行わないといけません。 ダイブに入れるためにインストラクターがコントロールをとり、右にターンしようとした瞬間に黒いほかの機体が視界に入りました。 思わず、「あそこ!」っと声を出してインストラクターに知らせ、その方向へのターンをキャンセルすることに。 あ〜危なかった、って感じです。 その後もその飛行機は我々の周りに居座っていました。 どうやら訓練をしていたようです(途中でストールの訓練をして落ちて行きそうになるのが見えました)。 なんとかトラフィック(他の飛行機)がいなくなったところでいよいよスパイラルダイブに挑戦です。 1回目にリカバリーをやったときは、なんとなくシャイになってしまい、回復に少し時間がかかってしまいました。 「もっと速く!」とインストラクターにいわれ、2回目にはだいぶ良くなりました。 その後上昇してしばらくすると、インストラクターが「はい、エンジンフェイリヤー(エンジン故障)。」といってパワーを引っこ抜きます。 前触れがいっさいないまま不時着の練習開始です(笑)。 とりあえず飛行機を60ノットほどで滑空できるような姿勢にします(セスナ152はエンジンが壊れても60ノットでグライダーのように滑空できます)。 それが終わったらどこに降りるかを決めるために、視界に入ってくる着陸できそうなフィールドを探します。 ちょうど左下のほうに青青とした芝生のフィールドが見えましたので、そこに着陸することをシミュレートします。 風向きを確認し、最後のターンをしていよいよ着陸というところでオーバーシュート(着陸を取りやめて再上昇)をします。 一気にパワーを100%に入れて再度上昇します。 不時着の練習とはいえ、実際に降りることはできませんので、フィールドに到達できたことを確認して上昇します。 いきなりの不時着訓練にしてはちゃんと出来たと思います(笑)。 本当は無線で「メーデーコール」をしたり、「コーズチェック」という、なぜエンジンが止まったか(cause)を確認する手順などもあるのですが、今日はとりあえずは飛行機を降ろすところに集中して訓練しました。 その後、precautionary landingというテクニックをしました。 precautionary landingは和訳すると「予防的着陸」とでもなるでしょうか。 これは、天候が突然悪くなったり、または燃料が残り少なかったりしてなるべく早くどこかに着陸しなければいけなくなった場合に使うテクニックで、まずどこに降りるかを決め、そこをなるべく低い高度で飛行してフィールドを目視確認します。 フィールドの長さが十分か、路面は着陸に適しているか、風向きはどうかなどを確認し、安全であることが確認できたら着陸するというものです。 これは少し手こずりました。 高度やエンジンの回転数のセッティングを覚えていなかったので、あまりうまくいきませんでした。 これは復習が必要です(反省)。 以上が終わったら高度2000ftに戻し、空港に戻ります。 空港に戻るときにはビクトリアタワーにコンタクトしなければなりません。 実際に無線で話をする前に練習をして、それからボタンを押して無線コール開始です。
 
「Victoria Tower, Cessna 152 GZSC, over Somenos Lake at 2000, inbound for landing with information Mike」(ビクトリアタワー、セスナ152はサモナス湖の上空2000フィートを通過中、着陸のためにビクトリアに向かっています。 ATISはMを聞きました)
 
とコールをすると、「ZSC, Victoria Tower, radar identified, I want you to fly over the field and join downwind 27, wind XXX at #」とかなんとかということを言われました(全部は覚えていません・・・)。 つまり、「ZSC、こちらビクトリアタワー、レーダーで現在地を確認しました。 空港の真上を通過して、滑走路27のダウンウィンド(後日説明します)に入ってください」という指示です。 少しだけややこしい指示でしたが、今日はしっかり全部理解できました。 

 無事に空港上空を通過し、滑走路27に向けて下降を開始します。 今日は風があまり強くないので、とくにあおられることもなく方向を保つのが簡単でした。 海に出たところでターンをし、高度をどんどん落とし、滑走路27に入ります。 滑走路の表面から1メーターくらいのところでレベルオフ(機首を地面と水平に戻すこと)します。 すると、「地上効果(Ground Effect)」と呼ばれる風の抵抗がない状態に入り、とてもスムーズにふわーっと数秒飛ぶことができます。 (余談ですが、鳥たちが水面すれすれを飛行したりするのはグランドエフェクトの恩恵を受けて少しでも楽に飛びたいからだと思います) その後どんどんスピードが落ち、それに伴って高度が落ちます。 地面にタイヤが触る直前くらいに操縦桿を引いて機首を少しあげてフレアします。 「キュキュー」という音を立ててタイヤが地面にタッチし、無事着陸です。 昨日もきれいでしたが、今日は僕一人の力できれいに着陸させることができました。 サスカトゥーンではこんなにきれいに着陸できたことがなかったんじゃないかと思います(笑)。

 フライトを終え、今日の反省点をまとめました。 これからは毎日反省点をまとめて行こうと思っています。 なにせ1時間のフライトで1万円以上のコストがかかっていますから、できるだけ多くのことを身につけれるように頑張ろうと思います。

 今日の写真はクラブの受付横のガラスに書かれたNew Membersの紹介です。 VFCは新しいメンバーが増えるとこうやって名前をガラスに書いてウエルカムしてくれるそうです。 暖かい感じがしていいですよね。 サスカトゥーンではこういうことはいっさいありませんでしたから(笑)

 ずっと飛んでいなかったのに突然連日のフライトで、いろんなことを処理しなければならないのでとても疲れます。 このリズムに早く慣れたいところです。 明日も11時からフライトですが、天気は崩れる方向に進んでいるようですから、どうなるかわかりません。 あと2日くらい飛ぶと恐らくソロに行っておいでと言われるようです。 んまあ、繰り返しますが、僕はプライベートパイロットですから、1人で飛べなきゃおかしいんですけどね・・・(笑)。
 
 なお、今日の書き込みからコメントを書き込んでもらえるようにしてみました。 まだ試験的運用ですので、途中でキャンセルするかもしれませんのであしからず。 どんどんコメントを残してください。 
 
 ではまた明日! 突然ブログの内容が専門的になってごめんなさい(笑)。
 
(つづく)

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ビクトリア26日目:ちょっとへこみ気味。
2006年11月9日木曜日


 今日も引き続き天気が良かったのでフライトに出かけました。 昨日よりは少し遅い午前11時からのフライトです。 クラブについて飛行機のリストにサインをしてディスパッチャー(クラブ所有機の予約や運行予定を管理する人)からJourney Log(飛行機を誰が使用したか、いつ点検を受けたかなどが書いてあるログブック)やCertificate of Airworthiness(対空証明書)などが入っているフォルダと飛行機の鍵を受け取ります。 今日は昨日の教訓を元に、しっかりウォークアラウンドをしました。 オイルの量なんかは2回も確認しちゃったりして(笑)。 燃料がやや少ないかと思いましたが、ロングレンジ(長距離用)の燃料タンクを付けているセスナ152なので特に問題がないということで出発することになりました。

 昨日と同じくlocal westと呼んでいる空域に向かいます。 離陸はShawnigan Lake Departureと言われたらしいのですが、あまりよく聞き取れませんでした。 今日は初めて滑走路09を使いました。 27は西に向かって走っている滑走路で、09は同じ滑走路のまったく逆側から東に向かって走っている滑走路です。 09を離陸し、左に旋回してそのまま西の空域に向かいます。

 今日はhoodを試すことになりました。 フードというのはこんなやつ(クリック)のことで、外の視界を遮って目の前の計器のみを頼りに空を飛ぶ「計器飛行」と呼ばれる訓練に使う道具のことです。 インストラクターからフードを渡され、コントロールを引き継ぎます。 ヘディング(方角)を言われ、その方角と高度を保つように計器を見ながらコントロールします。 外が見えないので、計器を信じるしかないのですがそれが結構大変です。 ヘディングを保とうとすると高度がはずれ、高度を直している間にヘディングが狂う、そんな感じです(笑)。 しばらくすると大分落ち着きました。 今日はそれほど揺れがなく、計器飛行はしやすいコンディションでした。

 フードのあとは昨日の続きでForced Landingの練習です。 今日もあまりうまくできませんでした(汗)。 本来は60ノットでグライドさせるべきなのですが、どうしても70ノット周辺で落ち着いてしまいます。 本能が「遅いスピード=失速」という計算をしてしまうようで、ちょっと躊躇してしまいます。 明日以降はばっちり60ノットにしてやります! あとはフィールドの選び方(なるべく平らで固い表面のフィールド、周りの障害物がないところ、など)や、フィールドへの進入方法を見直さなければ行けません。 ここでネックになるのがこれまた前回の訓練と今回の訓練のやり方の違いです。 前回はフィールドを見つけたらその上で360度旋回して着陸するという方法を学びましたが、今回はフィールドを見つけたらその周りを四角く飛ぶ(サーキット)方法で着陸しろと言われます。 やり方が違うので本当に戸惑いますし、新しい方法では全然やったことがないので当然うまくは行きません。 どちらでもいいんじゃないかなとは思うんですが・・・ とりあえずは新しい方法を勉強して、ソロに行くときにでも練習しようと思います。 

 その後、precautionary landingもやりましたが、これまたやり方が違う!(怒)。 前回はフィールドの周りをまず1周飛んで、それから高度を落としてフィールドを良く確認し、そして着陸という方法だったのですが、今回は最初の1周がなく、とりあえず低く飛んで確認して着陸するように言われました。 Flight Training Manualには僕が習った方が書いてあるのに・・・ なにはともあれ、その他にもフィールドの選び方をすっかり忘れていたり、高度を落とすときのスピードやフラップの角度、エンジン回転数(これも教官によって違う数字を言いますが)などを忘れているので、もう一度しっかりリビューしたいと思います。

 その後はいよいよスピンです。 スピンは簡単にいえば「きりもみ」状態で、真っ逆さまに落ちて行くという感じです。 ぐるぐる回りながら落ちて行く飛行機をコントロールします。 プライベートパイロットの訓練で一番怖いのはスピンじゃないかと思います。 地面が真っ正面に見えますから。 1回目はインストラクターがお手本を見せてくれました。 正直、かなり怖かったです(笑)。 というのも、サスカトゥーンではスピンは1回しかしたことがなかったからです。 たしか、訓練ではスピンをデモンストレートする必要はあっても、リカバリーをやる必要はなかったんじゃないかと思います(もしかしたら僕の勘違いかもしれません)。 ですので、1回目のスピンはどんなものだったのかを覚えていなかったので怖かったです。 でも、そのあと3回くらい自分でスピンに入れてそこからのリカバリーをやりました。 慣れると楽しいもんです(笑)。 下手なジェットコースターよりも10倍くらいはスリルがあります。 でも、リカバリーの方法を完全にマスターしていませんので、本当はパワーを抜くところを間違ってフルパワーに入れてしまい、インストラクターが「POWER OFFFFFFFFFFFFFF!」と叫んでました(汗)。 今までこれといって大きなミスはしたことはありませんでしたが、今日は完全にやってしまいました。 反省して次回につなげようと思います。 パワーはスロットルを引っ張るとアイドル、押し込むとフルパワーになります。 どっちがどっちなのか、まだ体が自然と反応できるほどは慣れていないことが証明されました(笑)。 失敗は成功のもとです!

 スピンの後はまたフードをやりながら空港に戻りました。 着陸は今日もきれいに決まりました。 風が弱かったのが理由だと思いますが、インストラクターにもきれいなランディングだったと褒めてもらいました。
 
 明日はサーキットをやります。 サーキットというのは上の写真のような感じで滑走路(写真はprecautionary landingに関する自分用のメモなので書いてあるメモ書きは信用しないでください! 写真では緑の部分がフィールド、または滑走路にあたります)の周りを四角く回ることを指します。 高度は通常1000ft(AGL=地上からの高度。Above Ground Level)で飛びます。 離陸したら500ftまではまっすぐ飛び、それから通常左に90度ターンをします。 飛ぶパターンのそれぞれの「辺」には名前がついています(crosswind, downwind, base, finalなど)。 詳しくはまた後日説明します(これを何回言っているでしょう・・・ごめんなさい)。 サーキットで着陸の練習とフラップの使い方、スピードのコントロールなどを復習しようと思います。 でも明日は天候が気になるところです(また数日雨が降る予報が出ています)。
 
 ではまた!
 
(つづく)
 
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【編集後記】

 自分の文章を読んでいて、「ほんとかよっ!?」と自分でツッコミをいれてしまうところが多く出て来て恥ずかしいです。既にお気付きの通り、僕は最初のほうから小さいミスを連発していたみたいですが、「失敗は成功のもの」と自分を鼓舞していたようです。このポジティブな精神は今の僕も見習いたいくらいのものです。ここ数日の書き込みでは「僕は着陸のプロ」みたいな書き方をしていますが、果たしてそんなにうまかったっけ?って必死に思い返していますがなかなか思い出せません。めちゃくちゃ下手ということはなかったはずですが、4年もフライトしていなかったのに最初の数回目から綺麗に着陸できたとはどうも思えないのです。

 一部、教官の教え方に毒づいたところがあるのが見苦しいですが、実際に教官の教え方に納得がいかないということはありますし、実際にありました。飛行機を飛ばす方法は一つだけではないので、それぞれ教官によって教え方が違うというのはよくあることです。原因は教官の経験値が大きく関わって来ているのではないかと今になって思います。僕も新米教官だった頃はいかに生徒さんが「僕の飛ばし方・教則本通りの飛ばし方」で飛ばせるようになるように教えるかに固執していたように思います。これが教官としての経験を積んでいくといろいろな人とフライトしたり、同僚・先輩教官との話の中で学んだことなども自分の教授スタイルに織り交ぜる余裕がでてきますので、極端な話、「安全で訓練目標が達成されていればオッケー」というふうになりました。ただし、日本人である僕は細かいところに目がいってしまうことも多々ありまして、ストライクゾーンがだだっ広いカナダ人教官とは教えるスタイルが大きくことなっていたこともあるはずです。今だったら違う教え方をするだろうなと思うことが日頃のフライトを通してよくあります。またいずれ、もしも教官として復帰することがあるとしたら、次は前よりももうちょっとうまく教えれるのかも?と思うことがよくあります。


(つづく)

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