2022-09-05

やっと勘が戻ってきた。

 9月に入り、モントリオールは早くも秋のような天気の日が多くなってきました。今朝は曇り空で気温13度。とはいえ、日中は湿度も高く、気温も25度ほどまで上がります。雷がなることも数日に1回はありますし、まだまだ夏っぽさも残ってはいますが、ここから秋、そして冬への移り変わりはとても早いはずです。

 さて、先月10日に路線審査でプンタカーナに行ってきました。一緒に飛んだのはフランス人の女性機長。偶然にも妻の生まれた市の近くで生まれ育ったのことで会話のネタには困りませんでした。プンタカーナまではWATRS(West Atlantic Route System)と呼ばれる空域を通ることがあります。ここを通るには決まった手順が存在し、主に無線での位置報告や緊急時のルート逸脱方法などを知っておく必要があります。洋上はレーダーがないため航空管制官に我々の位置がリアルタイムで伝わらないため、既定の位置(ウェイポイント)を通過した時刻、速度、次の位置報告地点通過予定時刻などをHF無線を使って報告します。ボーイング767に乗務していた頃はCPDLCというシステムが備わっていたため、主に衛星電話を経由してコンピューターが自動で位置報告をしてくれていたので楽でしたが、僕が今乗務しているエアバス320シリーズはCPDLCや衛星電話装置がない機体が多いため、従来の方法でHF無線を使って位置報告をします。

(アメリカ東海岸沖に設定されているWATRS空域 ICAOウェブサイトより)

 実を言うとこのルートをエアバス機で通過するのは今回が2回目?だったので、前日までに手順をしっかり復習しておきました。 そのおかげで特に困ることはありませんでした。洋上は天気が良いことが多いのですが、今の時期は嵐や超巨大積乱雲が発生することが多いです。そのため、今回も何度も雲を避けるために進路変更を余儀なくされました。WATRSを飛んでいるときは天気を避ける手順も通常のフライトとは違う手順があるので、そういった手順を見直すための良い機会になりました。プンタカーナでは実に5ヶ月ぶりになる実機での着陸をしましたが、スムーズに決まって機長さんにお褒めの言葉をいただけました。細かい数字とかは簡単に忘れちゃいますが、体に染み付いた離陸・着陸の感覚というのはそう簡単にはなくならないものです。

 プンタカーナでは外で写真の一枚でも撮ろうかと思っていたのですが、久しぶりのラインフライトということもあって心の余裕がほとんどなく、写真は一枚も撮れませんでした(笑)。そうこうしているうちに復路便のお客さんたちの搭乗が始まり、そそくさとプンタカーナを後にしました。帰りは機長の操縦で、巡航中にいくつか質問をされたり、それまでの手順で気がついた点などを指摘してもらいました。今後のフライトに役立つ情報ばかりでした。WATRS空域を抜け、アメリカ・ニューヨークのあたりに差し掛かったところで早々にラインチェックは合格、「(パイロットの仕事に)おかえりなさい」という言葉をかけてもらい今回の路線審査は終了となりました。いや〜、よかった、よかった。

 路線審査が終わってからはリザーブと言うことで呼び出しがかかると飛びに行くということを8月いっぱいやりました。リザーブ日の半分くらいは呼び出しがかかり、赤毛のアンで日本人観光客に人気のプリンスエドワード島に行ったり、僕がパイロットライセンスを取ったビクトリアに行ったり、アメリカのマイアミに行ったりしました。飛ぶ回数が増えるに連れて以前の勘が戻ってくるのがよくわかりますし、フライト中の心の落ち着き度、そして周りの状況を全体的に判断できる余裕が生まれてくるのがわかります。

 9月に入り、リザーブではなく最初から予定が組まれたブロックホルダーという立場に戻りました。リザーブだと1ヶ月18日勤務ですが、ブロックだと16日勤務です。今月は月末に休暇がありますので、実質勤務日は12日です。行き先もお休みも希望通りに通って最高の月になるはずです。今回またビクトリアに行くペアリングがあるので、昔の仲間に連絡を取ってみようと思っています。自分が訓練した空港に自分の操縦するジェット機で舞い戻ると言うのはとても感慨深いものがあります。

 今日の写真は先日フロリダはオーランドからの帰り道に通過したニューヨーク・マンハッタン周辺の夜景です。



(つづく)



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