2018-04-06

パイロット不足についての最近の動向。

2014年の投稿で、僕は「北米ではパイロット不足は起きていない」的なことを書いています。

その投稿はこちら。

パイロットは不足傾向にはあるが、それを補うだけの供給が北米にはある。 なぜなら、日本やヨーロッパとは違い、北米は誰でもパイロットを目指せる制度が確立しているから、という意見を書いたつもりです。 

当時からパイロット不足のニュースはいたるところから聞こえてきていましたが、カナダにいる限り、実際に大きな動きが出てきている感じは当時は受けませんでした。 もっとも、コメントをくださった方のおっしゃるとおり、アメリカでは大きな動きの兆しが出てきていたようではあります。 

アメリカでは、とある航空事故がきっかけで、航空会社の副操縦士として登用されるには飛行時間が最低1500時間必要になりました。 それまでは数百時間で副操縦士になれていた(それはそれでどうかと思いますが)のが、突然1500時間必要というふうに規則が変わったそうです。 こうなると今までのパイロットの供給レベルが保たれなくなり、パイロット不足に拍車がかかったという状況です。 

今でも「誰でもパイロットになれる」という状況には変わりはありません。 日本での訓練費用の5分の1程度でパイロットになれます。 ただ、ライセンス取得後が問題で、飛行時間250時間程度のパイロットがいくらいたってエアラインレベルでのパイロット不足は解消できないのが現状です。 

この結果、アメリカのリージョナル航空会社は躍起になって総飛行時間1500時間以上のパイロットの獲得に乗り出しました。 今までは、酷い会社では1年目のお給料が3万ドル(年収約320万円)以下というところもありました。 


そんなお給料だったらマクドナルドで働いた方が儲かる!


といってパイロットの道を諦める若者も多くいたとか(涙)。 ですが、この状況は今は改善されつつあるようです。 改善どころか、めちゃくちゃバブリーな状態です。

そうこう思っている時、こんなブログ記事を見つけました。


https://pilotjobs.atpflightschool.com/2015/02/09/regional-airlines-are-offering-signing-and-retention-bonuses-to-pilots/

これはアメリカで超短期間でパイロットに必要な資格を取得できることで有名なALL ATPというフライトスクールのリージョナルジェットプログラムコーディネーターの方が書かれているブログです。 このブログ記事の一部を抜粋します。



このようなことが書かれています。  赤線を引いたのが1年目のお給料(ボーナス含む)、青線を引いたのが機長昇格までの期間です。 一番左がリージョナル航空会社の名前、そして文章が多いのが1年目にもらえるボーナス等の内訳です。

ここでいう「ボーナス」は、日本でのそれとは違います。 こちらでは「signing bonus」というものがあり、雇用契約を結んだ際にもらえるお金のことを指します。 ほかにも、「retention bonus」というものもあり、これは会社を辞めずに残ってくれたら払いますよというお金です。 


要するに、お金を目の前にぶらさげてパイロットを集めようという作戦です(笑)。


リージョナルで1年目でこれだけもらえたらかなり潤った生活ができます。 もちろん、パイロットの資格を取るのに何百万円ものお金を先行投資しているわけで、その分の損失を補えばこれだけのお給料とボーナスをもらうのも当然のような気もします。 2年目以降のお給料や昇給度合はここにはかかれていません。 多くのパイロットはリージョナルで飛ぶのはあくまでメインライン・レガシーキャリアと呼ばれる最大手(日本でいうANAやJAL)に行くのが目的なので、リージョナルに長く留まることはないでしょうから、そんなに注目されないのかとも思います。

一方カナダですが、こちらでもリージョナルレベルでのパイロット不足が顕著になってきている模様です。 僕の元教え子(カナダ人、日本人)達の動向も慌ただしくなってきています。 教官時代に担当した生徒の履歴書に僕の名前を使われることも多くなってきていて、ときどき"Tier 3"の航空会社の採用担当者から電話がかかってきます。


Tier 3とは? 
  • Tier 1ー主にメインライン・レガシーキャリアのこと。 カナダであればAir CanadaとWestjet。
  • Tier 2ーTier 1から仕事をもらって地方空港から主なハブ空港への乗り継ぎ便を主に担当するリージョナル航空会社。 カナダではAir Canada系ではJazz, Sky Regional, Air Georgian。Westjet系ではWestjet Encore。
  • Teir 3ーTier 2以外の小規模エアライン。 Pacific Coastal Airline, Central Mountain Air, EVAS, Calm Air等。


航空会社の採用担当者から電話がかかってくると、「〇〇さんはどんな生徒でした? ちょっと話を伺いたいのですが」と言われます。 正直なところ、担当して結構時間が経っているから今更聞かれても・・・と思うこともあります(笑)。 しかし、訓練中にお給料をいただいた手前、決して悪いことはいいません。  

「○○さんは今まで教えた生徒で1、2を争う最高の生徒さんでした」

というのが僕の答えであることが多いのは内緒にしておいてください・・・。

最近はTier 3の会社に入る生徒も結構いますし、そこからリージョナルに移る生徒も最近は多くなりました。 僕がメディバックをやっていた当時の同僚や後輩も今はリージョナルで飛んでいます。 インストラクター時代の同僚のほとんどはライバル会社のメインラインで飛んでいます。

しかし、カナダではアメリカほどの動きはないですし、今のところsigning bonusがもらえるような会社の話は耳にしません。 カナダの航空業界の規模はアメリカのそれとは違います。 航空会社の数も圧倒的に少ないです。 したがって、パイロットライセンスを保持していて、今までずっとエアラインを目指して下積みを続けてきた人の層が相対的にかなり分厚いのだと思います。 ですから、今は採用の動きが慌ただしくなってきてはいますが、いまだに需要よりも供給が多い状態のように見受けられます。 その証拠として、リージョナル航空会社での1年目のお給料はアメリカのリージョナルの半分くらいです。 為替レートを考慮するとそれはもう酷い状態です・・・。 これがアメリカのように供給不足となれば、それこそリージョナルやTier3エアラインもボーナスを出さないとパイロットを引き寄せられない状態に陥ることでしょう。

こんな状況の中、メインライン航空会社(エアカナダ、ウエストジェット)に這い上がりたいのであれば今はリージョナルを経由しないといけないのがカナダの現状ですから、みなさん薄給でもがんばっています。  いつか日本のように、パイロット1年目からパイロットらしいお給料がもらえるようになる時代がくるといいな〜と思っています。

今後、カナダのパイロット採用状況がアメリカを後追いする形になるのか。 目が離せない状態です。 いずれにせよ、パイロットを目指す人にとってはかなりバブリーな状態であることには変わりありません。 


(つづく)

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