今週月曜日、午前5時過ぎにクルースケジューラーから電話がかかってきました。 クルースケジューラーが全部で何人いるのかわかりませんが、電話をかけてくるときの最初の二言三言はパターンが二つあります。
パターン1: 「おはよう! 今日の調子はどうだい?!」 って聞いてくる。
パターン2: 「朝早くにごめんね〜」と、謝罪から入る。
正解はもちろん後者(笑)。 朝5時過ぎに寝ているところを叩き起こされて、果たして今何時なのかもわからない状態で今日の調子を聞かれても・・・。 困ったもんです。
さて、今回の電話では「We require your service this morning」(今朝、君に働いてもらわないといけないんだよ)と言われました。 こう言われるときは、僕がリザーブパイロットリスト一番下で、僕以外に飛べる人がいないときです。 これがもし僕より下に飛べる人がいる場合には「You could pass」(嫌ならパスしてもいいよ)と言われます。 まぁ、僕は下から2番目のリザーブFOなんで、パスできることはほとんどありませんけど(苦笑)。
今回はメキシコシティーまでの日帰り往復フライトでした。 メキシコに行くのは今回が初めてでした。 これがメキシコで一泊できるのであればよかったのですが、今回は行って帰ってくるだけ。 長い1日となりました。
ルートは上のような感じです。 トロント空港を出発し、アメリカ中東部を北から南に縦断し、テキサス州の南で洋上に出るルートです。 フライト時間は往路が5時間ほど、復路はやや追い風があったので4時間半ほどでした。
会社が作ったマニュアルの中に「Route Briefing Notes」というものがあります。 これを読めば世界中の空港の情報が書かれています。 どういうところが他とは違うかとか、どういうところに気をつけなければいけないのかとか。 メキシコはラテン系のノリで結構お気楽・楽チンだろうな〜と思っていたのですが、意外と細かい違いがたくさんありました。 というわけで、往路は巡航中ずっと勉強していました。
メキシコシティーは標高が高いのが特徴です。 空港は海抜2000メートル以上。 フィート換算で7000フィート以上です。 そのため、いろいろな手順のタイミングがいつもと違い、なかなか新鮮でした。 いつもなら慣れと感覚でできていることも、今回は前もって考えておかないと手順をうっかり忘れてしまいそうになりました(安全面は問題ない内容です)。
アメリカの空域を抜け、メキシコの空域に差し掛かるころにエリア管制官から「メヒコにコンタクトせよ」という指示が出ました。 メヒコ。 メキシコ(Mexico)でなく、メヒコ。 スペイン語ではエックスは無音なんですね。 エキゾチックです。 僕のイメージでは、大きなとんがり帽子をかぶった管制官がマラカスを振りながら仕事をしています。 勝手な妄想です。
メキシコの管制官はアメリカ訛りっぽい英語を喋る人もいますが、多くはとても強いスペイン語訛りの英語を喋ります。 日本の管制官もそうですが、決められたお決まりパターンの英会話以外はあまり得意でない方が多いようです。 そのため、こちらもなるべくゆっくり、クリアに無線交信をするように心がけました。 一度だけ、「え?今なんて言った?」っていう時がありました。 僕だけが聞き取れなかったのかな?とも思いましたが、隣のカナダ人機長も同じリアクションで首を横に振っていました。
メキシコ市は山々に囲まれ、家は小さい建物も多く、田園風景も多くあり、なんだか成田空港へのアプローチを思い出しました。 意外にも日本の風景と似たものがありました。 一度はレイオーバーで訪れてみたいものです。
メキシコシティー空港へは無事に到着。 そそくさと帰る準備をします。 機体点検のために駐機場(ランプ)へ降りて行くと外は真夏! 気温25度! トロントはまだ氷点下以下だというのに。 世界は広いです。 現地の女性セキュリティーの人にランプに降りるためのドアを開ける暗証番号を聞こうと思ったのですが、「私、英語デキマセン〜」という可愛いリアクションが帰ってきました。 ランプで働いているグランドクルーの人も多くは英語ができないもよう。 仕方なく
「オラ〜!(hola)」
というふうにスペイン語に切り替えます。 とりあえず「Hola!」と言って笑っておけばオッケーでした。
「なんだ、この変なアジア人?」
っていう目で何人かには睨まれましたが(苦笑)。
復路の離陸の時間になると、空港上空には夏らしいもくもくとした積乱雲が発生していました。 気象レーダーにはしっかりと雲の姿が映っていました。 幸い、雲を避けるリクエストをする前に管制官に飛ぶルートを指示され、そのルートがちょうど雲を避けるのに最適だったので積乱雲には入らずにすみました。 帰りも特に揺れはなく、スムーズなフライトでトロントまで戻ってきました。
長い1日でしたが楽しい1日でもありました。 翌日には今度はカナダ最東端のセントジョンズ(ニューファンランド・ラブラドール州)までの日帰りフライトをやりました。 あっちこっちいろんなところに
(つづく)
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