2013-03-16

楽より苦。

 皆さんも一度は聞いたことがあるであろう「オートパイロット」。 僕が飛ばしている飛行機Beech King Air 200にもこのオートパイロットが装備されています。 こいつは本当に優秀で、上昇、下降、高度維持、スピード維持、方角維持など、本当にいろんなことをかなり正確にやってくれます。 ただ、時々ですが、予想もしないことをやってくれたりもします。 例えば、高度を維持してほしいときに高度が少しずれたままになったり、押したはずのボタンがうまく作動していなかったり、突然オートパイロットが解除されたり。 多くはパイロットエラーなのかもしれませんが、それでもしっかりとモニターする必要があります。

 とはいえ、オートパイロットがあると楽であることには変わりありません。 楽です(笑)。 巡航高度に達した後はたいていオートパイロットに操縦してもらいます。 飛行機の操縦をしたことがない人にとってみると、「パイロットが楽してる」とか、「怠惰だ」といわれるかもしれません。 楽してるのは確かにそうですが、オートパイロットのおかげでかなり仕事の量が減り、他の仕事に集中することができます。 例えば、計器飛行でアプローチをするときには必ず機長と副操縦士がブリーフィングをするんですが、そのブリーフィングにしっかり意識を注ぐことができます。 特に天気が悪い日なんかは万が一空港に下りれない場合のmissed approachの手順の確認や、無線周波数のセットなど、本当に忙しいこともあり、そういうときにはオートパイロットが操縦を手伝ってくれると仕事の量が減り、その結果フライトが安全に行えます。 

 北米ではDiscovery Channelで「Mayday」というテレビ番組があります。 飛行機好きなら必ず観たことがある番組です。 これを見ると、航空事故の多くはヒューマンエラー(人為的過誤や失敗)によるものが多いことがわかります。 そういうのを避けるためにパイロットは一人よりは二人、エンジンはひとつより2つ、飛行機はなるべく高性能なもの、そしてオートパイロットがあればワークロードが多くても意識を安全運航にむけることができるので尚良いということになるわけです。

 っと、こう書くとオートパイロットさまさまなわけですが、そうでもないこともあります。 それは感が鈍ること。 オートパイロットを使ってのフライトでは、離陸のときに数分間と、着陸のときの数分間、地上にいるときのタクシーの間くらいだけをマニュアルで操縦すればあとはオートパイロットがやってくれます。 これではいわゆる「スティック&ラダー(操縦桿と方向舵)」のスキルが鈍ります。 現に、僕のスキルは鈍っています(苦笑)。 そりゃそうですよね。 車の運転でもスポーツでも、しばらくしない期間があるとちょっと感覚が鈍ったり、間違いをしちゃったりするじゃないですか。 なので、最近はなるべく手で操縦(hand-fly)することにしています。 

 昨晩は午後10時過ぎに出動命令があり、エドモントンまで行きました。 患者さんを下ろし、午前3時過ぎに帰ってきました。 帰りのレッグが僕が操縦するレッグで、昨日は離陸から巡航、着陸まですべてマニュアル操縦し、オートパイロットはONにしませんでした。 いやいや、キングエア、オートパイロットだと簡単に操縦できますが、手動だとちょっと大変です。 安定している機体なのでふらふらになることはないですが、なにせ時速500キロ近い速度で飛んでいるのでちょっとした機体の姿勢の変化で大きな変化が生じてしまいます。 機首をほんのちょ〜〜〜っと上げるだけでも一気に上昇率があがったり。 なかなか大変ですが、それが楽しかったりもしますし、やっぱり操縦の基本なのでしっかりとした技術を保持したいと思っています。 これからもっと手で飛ばす時間を増やそうと思います。 横に座っている機長にとってはきっとハラハラものでしょうけど(笑)。

 最後に残念なお知らせ。 先月、とある某航空会社の面接に呼ばれてトロントまでいきましたが、昨日、お断りの連絡がありました。 こちらではPFO(Please f*ck Offの略)レターと呼ばれるものがメールで届きました。 がっかりですが、今回の経験を通していろんなことを学ぶことができましたし、なにしろ国内最大手の航空会社の面接にいけたということが少し自信にもつながったような気がします。 何事もスムーズにいけばいいですが、そうは行かないのが人生ですね(特に僕の場合は・・・苦笑)。 遠回りしてでも最終的にゴールにたどり着けば、その過程はきっと意味があるものだと思います。 そのゴールにたどり着くまで挑戦は続きます。 


写真上:Fort Chipewyan空港で患者さんを待っているところ。
写真下:ビクトリアからカルガリーまでのフライトで見えるカナディアンロッキー。



(つづく)

5 件のコメント:

sweet さんのコメント...

はじめまして。
フォートマクマレーについて調べていましたら、たどり着きました。ケロウナBCに住んでいるハイジと言います。
実はこの度、主人がフォートマクマレーのRamp service に移動になるかも知れず、どうしようかと迷っています。
生活の上でビクトリアと比べたらやはり住み難いですか?
ケロウナはもうリゾートで観光地なので他とは比べ物にならない位住みやすい街なのです。
一体どんなに寒くてどんな忙しい街なんだろう・・・と思うと不安で一杯です。
地域についての何か感想を頂けないでしょうか?
よろしくお願いします。

Youhavecontrol@gmail.com さんのコメント...

ハイジさん

はじめまして。 コメントありがとうございました。 僕の意見は偏っているので参考になるかどうかわかりませんが、僕にとってはフォートマクマレーはあまり住みやすくはありません。 寒さは今年の冬の場合だと最低気温がマイナス30度ちょっとまで下がりました。 ただ、BCの冬とは違って湿度が低いので数字で見るほど寒くはないかも知れませんが、さすがにマイナス25度以下まで下がると「痛い」寒さです。 気温がマイナス5度くらいまで上がってくると、BCでのプラス5度くらいには感じます。 街はオイル産業で出稼ぎに来ている人が多いようで、いろんな国籍の人がいます。 基本的には「男の街」って感じで、もしかしたら女性にとっては住みやすくはないかも知れませんが、これはあくまで僕の勝手な印象です。 ご主人のお仕事はきっと良いお金になるお仕事なんだと思いますので、期間限定で来られるのであれば良いかもしれませんが、生活の質を求めてくる場所では決してありません。 もっと具体的に質問があればyouhavecontrol @ gmail. com までメールしてください。 

sweet さんのコメント...

即答、ありがとうございました。
想像していた通りです・・・とても参考になりました。
気候はさておき、何か映画のシーンでも目に浮かぶ感じです。
また何か質問させていただく時は、gmailの方にメールさせて頂きますね。
ブログはこれからちょくちょく覗かせて頂きますね。
パイロットとして益々のご活躍を楽しみにしています。

penguin116118 さんのコメント...

最近日本のバラエティ番組でも、過去に実際にあった航空パニックや事故の話しがよく放送されています。たまにオートパイロットが焦点になるものもあります。オートパイロットが突然解除されてパニックになって墜落とか・・・。
カナダの航空業界の事情は全く分かりませんが、Youhavecontrolさんにはこれからもまだまだチャンスが訪れると思います。
これからもブログ拝見させていただき、応援させていただきます。
私もいつかパイロットのライセンスを取りたいと思います。

Youhavecontrol@gmail.com さんのコメント...

Penguin116118さん

メッセージありがとうございました。 そうなんですか、日本でもテレビで取り上げられているんですか。 もしかしたらボーイング787のことで世間の目が航空機関連に向いているからかもしれません。 パイロットライセンス、取れるといいですね! いつもブログを観ていただきありがとうございます。