2018-06-24

初ギリシャ・アテネへ。(前編)

 以前にも何度も書いたかと思いますが、多くの航空会社では病欠が出たり、悪天候や機材故障の影響で人員不足になる場合に備え、リザーブまたはスタンバイといったパイロットがどのベースにも常に数名待機しているものです。 そういうパイロットは仕事に呼ばれることもあれば、呼ばれないこともあります。 「呼ばれなければ働かなくていいんでしょ?」と思われるかもしれませんが、自宅待機中には遠くには行けず、常に携帯電話とにらめっこしているような感じになります。 当然お酒も口にすることはできません。 リザーブやスタンバイが気にならない人もいますが、大抵のパイロットはリザーブを毛嫌いしている印象です。 っと、今まで1年以上リザーブだった僕が言うのだから間違いありません(笑)

 幸いなことに、現在僕が務める会社にはリザーブという制度がありません。 その代わり、万が一欠員が出て人が足りなくなった場合には「ドラフト」という制度を使って人員を補充します。 この「ドラフト」というのは、仕事が休みのパイロットにクルースケジューラーが電話をかけ、「いつもよりも多くお給料を支払いますから、飛んでくれませんか?」と持ちかける制度のことです。 パイロットの中には休日を返上してでもお金を稼ぎたいという人が必ずいます。 また、予定がキャンセルになってなにもすることがないから、せっかくだからお小遣い稼ぎをしようかというような感じでドラフトを受け入れる人もいるようです。 この制度があるおかげで、働き次第では結構なお給料を稼ぐことができるため、メインラインからこちらのLCC部門に移動して来る人もいます。

 先日、1日にクルースケジューラーから3回もドラフト要求の電話がかかってきました。 どうやら誰かが病欠扱いでおやすみしたようです。 最初の電話はスペイン・バルセロナ行きのペアリング。 これはレイオーバーが短かったので断りました。 数時間後、今度は留守電にイギリス・マンチェスター行きのペアリングのドラフトに関するメッセージが入っていました。 電話を掛け直すと、これはレイオーバーが48時間もあるとのこと。 マンチェスターには行ったことがなかったので、観光がてらいってくるか〜と思ってクルースケジューラーに電話をかけたところ、「ごめ〜ん、そのペアリング、もう他のパイロットにあげちゃった」とのこと。 な〜んだ、と思って電話を切ろうと思ったら、「ドラフトリストに名前載っけとく?」と言われたので、「んじゃあ、お願いします」と言うと、すぐその場で「ちょっと待ってね」と保留にされました。 なんだろうと思って待っていると、「じゃあ、ギリシャ・アテネのペアリングがあるけど、どう?」と提案されました。 このペアリング、働く時間数(クレジット)が3日で20.5時間となかなか効率のよいペアリングです。 しかも、ドラフトなので、この倍以上のお給料がもらえるとのこと・・・。 クルースケジューラーのお姉さんは一気に商売根性を見せはじめ、「これだけのお小遣いがあれば結構いろいろ買えちゃったりするでしょ〜? ほら、父の日も近いし、なにかと出費もかさむでしょ? これはやったほうが得でしょ〜?」とセールストークが炸裂。 「んじゃあ・・・やります」と答える結果に(笑)。

 というわけで、初めて行ってきました、ギリシャのアテネ! トロントから大西洋を東へ横断してイギリス上空を飛び、そこから緩やかに南東に向かって降りて行くルートです。 飛行時間は9時間ちょっと。 出発が午後4時頃というなんともありがたいペアリング。 ギリシャ到着時刻はトロント時間の午前1時。 これなら僕の時差や夜勤に弱いひ弱な体も耐えられます(笑)。

 
ルートは上のような感じです。

 ヨーロッパを横断したのは今回が初めてでした。 これまたちょっと感動的なフライトになりました。 今まで行ったことがある都市の側や上空を、ヨーロッパのパイロット達が飛び回っている同じ空域を飛んでアテネに向かう。 なんだかドラマチックに思えてしまいます。 と、同時に、「ヨーロッパを飛ぶのって、北米を飛ぶのとそんなに変わらないもんだな〜」とも実感。 不思議な感覚です。


 ヨーロッパの航空管制は英語のアクセントが強く、なかなかわかりにくいエリアもありました。 やはり英国周辺が一番わかりやすく、そこからフランスやドイツ、旧ユーゴスラビアあたりまで来るとなに言ってるかほとんどわからないところもちらほら(笑)。 ギリシャの航空管制は比較的はっきりと話してくれたおかげでよく理解できたのでよかったです。 こちらも前回のリマ同様、決まったパターンの英語以外のことはなかなか理解してくれません。 日本の航空ファンや、元海外組のパイロットが日本の航空管制官の英語力不足を批判するようなことをよく聞きますが、実は他の国もおんなじようなレベルだったりすることもあります。 これは仕方ありません。 航空産業に従事するすべての人間にネイティブレベルの英語を求めること自体、無理があるように思います。 当然努力はするべきとは思いますが、語学というのは得手不得手があるものですし・・・。


 ギリシャ・アテネ空港は滑走路が並行に二本あり、今回は西から東へのアプローチで南側の滑走路に着陸しました。 空港周辺には大きな積乱雲が発生していましたが、幸いアプローチには問題なく、いつものカナダやアメリカでのアプローチと全く同じことをして、普通に着陸。 世界中どこに行ってもやることはあまり変わりません

 空港からホテルがある市街地までは車で40分ほど。 さすがギリシャという感じで結構乾いた感じの地形が続きます。 岩がゴツゴツとした山肌が見えたり。 そういうところから採掘した石で有名な建物が建てられたのだろうと想像しながらホテルに向かいました。 さすがに9時間強のフライトでの疲れが出てうとうとしているうちにホテルに到着しました。 

 ホテルにチェックイン後、数時間の仮眠をします。 これもいつもの海外フライトのときと同じルーティーン。 もう儀式のようなもんです(笑)。 数時間眠った後、ここはどこ、私はだ〜れ?状態のところを、たとえもっと眠っていたいと身体が欲していても、無理やりベッドから出てシャワーをあびて眠気覚ましをします。 そして外に繰り出します。 ヨーロッパ方面へのフライトの場合はいつもこんな感じです。 こんなことを繰り返しているんだから、健康には決して良くないと思います。 でも、不思議なものでこういうリズムにも体が少しずつ慣れて来ている実感がここ最近はあります。

 まず向かったのはアクロポリス神殿。 世界史の授業で習ったやつです(笑)。 詳しいことは覚えていませんが、ミーハーな僕は心ウキウキ。 ホテルから歩いて15分くらいの距離なので、途中で街並みを見ながら神殿に向かいました。 

 


 ここであいにくの雷雨。 仕方なく、軽食もかねて角にあった喫茶店に入りました。 

 
 喫茶店ではお水とサンドイッチを購入。 店員のお姉ちゃんに「どこから来たの?」と聞かれ、カナダから来ましたというとなぜか好反応(笑)。 「あなたが僕が今回初めて会話したギリシャ人ですよ」というと、なぜかとても嬉しそうな表情をしてくれました。 ギリシャ人はやさしい印象を受けました。 

 雨が上がったので再びアクロポリスに向かって歩き出します。 ものの5分ほどで到着。 チケットブースで20ユーロのチケットを購入し、いよいよ神殿のある高台へ。

 

 丘を登り始めると右手に劇場の跡が見えて来ます。 ここは今でも劇や芝居をするのに使われているんだそうです。

 
 
 さらに進むといよいよ教科書で習ったような建築物が見えて来ます。

ご覧の通り、周りには雷雲がわんさか。

思ったより混雑していませんでした。


 これがパルテノン神殿です。 あいにく修繕中のようで、足場が組まれていたりしました。 それでもその大きさには圧倒されます。 柱の太さが上下と真ん中では違うとか、そういうのを世界史で習った気がします。 周りには他にもニケ(ナイキ)の神殿やら、いろんな建物があります。


動画で雰囲気をお楽しみください。


ギリシャの旗の色が周りの景色に映えます。

散策中も何度か雷雨が発生し、雨宿りを余儀なくされました。 

 アクロポリスの後にもいくつか行きたいところがあったのですが、あいにくの天候だったのでホテルに引き上げました。 その後、一緒に飛んでいたクルーと近くのバーレストランに行き晩御飯を食べました。 本場のグリークサラダや、ギリシャのお酒「ウーゾ」を楽しみました。 


 
 (後半へ続く)

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