2019-07-15

2度目のリズボンとフェリーフライト。

 今月最初の週にポルトガルの首都リズボンに行ってきました。 リズボンに行くのは今回で2回目です。 前回はレイオーバーがあまり長くなかったことと、ウォーキングツアーに参加してしまったために自分で行きたかった観光地を全て巡ることができなかったという名残惜しいペアリングだったので、今回こそは全部周ってやろうと意気込んで行ってきました。

 今回のペアリングはレイオーバーが長く、47時間ほどありました。 水曜日の夜9時ごろにモントリオールを離陸。 リズボン空港に到着したのは現地時刻の午前9時前でした。 ポルトガルはヨーロッパの最西端ということもあり、また、比較的南部に位置する国でもあります。 いつものヨーロッパへのフライトであればカナダのガンダー(Gander)の管制空域からイギリスのシャンウィック(Shanwick)へとフライトしますが、ポルトガルに行く場合にはガンダーの次はシャンウィックの南側にあるサンタマリア(Santa Maria)の空域へと入って行きます。 特に手順的にはなにも変わりないのですが、ちょっとしたことがいつもと違って新鮮です。

 当日は僕が操縦担当(Pilot-Flying)。 海洋上で積乱雲が発生していましたが、幸い我々の巡航高度のほうが雲よりも高かったため、特に問題なく順調にクルーズできました。 アプローチは決められたアライバルルートを飛ぶのではなく、途中からレーダーベクターで飛ぶ方角、高度、スピードを指示され、その通りに飛んで最終アプローチに入りました。 雲が低く、空港が見えたのは着地点から6キロほど手前のところにきてからでした。 ところどころ丘陵地帯があり、どことなくポルトガルっぽく見えました。 このところ訓練やアーグメントで飛んでいたことが多かったので自分で着陸するのは久しぶりになりましたが、体はしっかりと感覚を覚えていました。

 ホテルまではバスで5分ほど。 ホテル到着後はいつも通り仮眠をとりました。 仮眠後は近くのスーパーまで行ってちょっと買い出し。 午後6時前には一緒に飛んだ機長と共にダウンタウンに出かけました。

 今回一緒に仕事をした機長はなかなかのワイン通らしく、「ちょっと行きたいワイン屋があるから、寄ってもいい?」と言われてワイン屋さんへ向かいました。 ガイドブックにも載っている有名店らしく、知識豊富な店員さんに進められて機長はワインを2本購入。 今回のレイオーバーは長いのでカナダに持ち帰ることができる免税範囲ではワイン2本までオッケー。 聞いたことのないぶどうで作られたワインを購入されていました。 お値段2本で1万円ほど。 なかなかの値段だな〜と思っていたら、「同じワインがカナダで買うと倍以上する」とのこと。 なるほど、お値打ちです(笑)。

 ポルトガルで有名なポートワインの試飲をさせてもらえました。 今まであまり興味がなかったのですが、ここで飲んだこの2本は本当に美味しかった。 次回リズボンに来ることがあれば買ってもいいなと思いました。



ワイン屋の次は、こんな通りを抜けて階段にあるバーへ。

ここでビールを1杯のみ、次のレストランに行きました。

 裏通りにあるレストランで魚の盛り合わせとワインを注文。 二人では食べきれないほどのイワシ、マグロ、鮭、イカ、などなどを満喫しました。 味付けはシンブルに。 とにかく素材が新鮮、そして炭グリルで焼いてあるのでなんとも言えない香ばしい味がしました。 現地の人はそれにオリーブオイルをかけて食べるとのこと。 店員さんに言われた通りに試してみたら美味でした。 機長チョイスのワインも美味で、楽しい晩御飯になりました。


レストランからの帰り道の眺め

 翌日はレイオーバー二日目。 この日は単独行動で観光に出かけました。 スマホにダウンロードしておいたオーディオガイドを使って街の名所を巡りました。 

これはコメルシオ広場。 コメルシオとは商業という意味。 昔、貿易で栄えた場所。

こちらは日本人観光客にも人気のサン・ロケ教会。 

 その昔、日本からの天正遣欧少年使節がポルトガルを訪れたときにここの教会を宿舎としていたのだとか。 1500年代後半のことだそうです。 子供の頃に歴史で学んだ記憶があります。 この教会、外から見るといたって普通な教会ですが、中はなかなかすごいです。 バチカンから運ばれてきたチャペルなども見応え十分。 床には番号が打たれた木板が置かれていて、昔はここに亡くなった信者の亡骸を葬っていたのだとか。 


 街中を2時間強歩き回り、お昼ご飯は景色の良いレストランのテラスでタコをいただきました。 途中、猫が現れて隣の椅子の下に座ってリラックスしていました。 おこぼれを狙っていたようには見えませんでした。 

 天気もよく、今回のレイオーバーでは予定していた観光地をほぼ全て巡ることができて満足でした。 翌日は午前10時前にリズボン空港を離陸。 モントリオールに到着したのは正午前でした。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 着陸の1時間ちょっと前にコクピット内でチャイムがなり、プリンターからメッセージがプリントアウトされました。 内容を読むとクルースケジューラーからのメッセージ。 

 「モントリオールに着陸後、トロントまで飛行機をフェリーしてもらいたいんだけど、興味はないですか? ドラフトです。」

 とのこと。 なんらかの理由で飛行機を1機、トロントまで移動させないといけない模様。 お客さんも客室乗務員も載せず、空っぽの飛行機をフェリーフライトするというものでした。 正直、前日はあまりよく眠れなかったので、モントリオールに到着したらさっさと家に帰って自宅のベッドで眠れることを楽しみにしていました(笑)。 でも、機長がいろいろ交渉した結果、このフライト(1時間ほどの短いフライトです)をすれば、この日のリズボンを含めた丸々1日のお給料が倍以上になるとのこと・・・。 金に目がくらむのがパイロットの悪い習慣です(笑)。 モントリオール着陸後、すぐに会社の人にピックアップしてもらい、車で空港内を移動して会社の格納庫まで行きました。 すぐにチェックリストをはじめ、離陸の準備をしてそそくさとトロントに向けて離陸しました。 

 普段は燃料や貨物をたくさん搭載し、お客さんも満席に近い状態でフライトすることがほとんどです。 離陸重量は軽くても150トンほど。 重い時には180トンほどにもなります。 ですが、この日のフェリーフライトでは離陸時の重量が110トンちょっと。 これだけ軽いと大型機であってもスポーツカーのような性能を発揮します。 離陸に要する距離も時間もめちゃくちゃ短く、テイクオフのエンジン出力にセットしてほんの数秒で離陸時の速度(Vr)のコールがかかります。 離陸後は上昇角度が30度近くにもなり、それでも上昇率は6000ft/min以上で上昇します。 グイグイ昇る、という表現がぴったりくる感じでした。 離陸直後の高度5000ftまではあっという間です。 こんな感じで飛べるのはあまりないので、離陸は僕にやらせてもらいました。 しばらくはオートパイロットを入れるのはもったいない(笑)ので、手動操縦で楽しませてもらいました。 こういう楽しい飛ばし方ができるのはエアラインにきてからではあまりないので貴重な体験です。

 トロントに到着してようやく仕事が終了。 ここからモントリオールまでデッドヘッドし、これで今回のリズボンペアリングが終了となりました。

 ここでちょっとした問題発生。 本当は今日からバンクーバーまでの二日間の仕事があったのですが、昨日の夕方にクルースケジューラーから電話がかかってきました。

 「明日のバンクーバーだけど、リズボンから帰ってきてからやったドラフトの影響で、このままだと直近1ヶ月間のフライト時間が120時間を超えちゃうから、明日からバンクーバーに行くと規則違反になっちゃいますよ〜」

 とのこと。 そういえば、ここしばらく忙しく働いていて、しかも効率の良いペアリングが多かったことやドラフトをいくつかやったこともあり、普段よりも飛行時間が多くなりすぎていました。 ということで、今日からのバンクーバー行きは残念ながら外されました。 そのため、急遽お休みとなりました。

 今月は明々後日から再びギリシャ・アテネに行き、それで今月の仕事は終了です。 しばらく休みがあるので楽しみです。


(つづく)


0 件のコメント: