2019-08-13

アテネ48時間。

 今月は、前回の書き込みの通りフランスに行ったのと、ギリシャ・アテネに2回行き、最後にフランスのボルドーに行きます。 アテネはここ数ヶ月で頻繁に行っています。 今月は珍しく48時間(2泊)のレイオーバーがありました。 

 この日はモントリオールを出発するのが午後9時の予定でしたが、インバウンドの飛行機を出発ゲートまで牽引してくるのにエプロンが混雑していて、結局出発できたのが9時半すぎとなりました。 モントリオール空港は午後の早い時間が国際便の到着ラッシュ、そして夕方の時間が国際便の出発ラッシュとなります。 エア・フランス、カタール、KLMにスイス航空など、ヨーロッパ・中東の主要航空会社が乗り入れています。 モントリオール空港のターミナル構成はトロントほど大規模ではないため、多くの海外航空会社の航空機が結構集められて駐機している印象です。 そのため、海外組が集まっている界隈だけみると、トロントよりもモントリオールのほうが国際色が豊かな気もします。

 今回のギリシャ行きも僕はaugment。 パイロット3名体制でのフライトです。 機長はカナダ人。 副操縦士はフランス人と日本人(僕)。 なんともカナダらしい構成です(笑)。 僕ないろいろな面でフランスとの繋がりに縁があるようです。 以前のリージョナル航空会社でのジェット移行訓練の時のシミュレーターパートナーもフランス人でしたし、今の会社に入社した時のシミュレーターパートナーもフランス人でした。 フランス人は独特でなかなか面白いです。 ちょっと癖が強い人も多いですが、憎めません(笑)。

 この日のフライトはいつもよりも遅い出発時刻だったため、フライトは長く感じました。 Augmentの僕はほぼ100%の確率で最初の休息を取ります。 離陸後、TOC(Top of Climb=巡航高度に到達するタイミング)から休息は始まります。 大抵の場合はTOD(Top of Descent=目的地空港に向けて降下を始めるタイミング)から30〜45分ほど前までの時間をパイロットの頭数で割って休息時間を計算します。 最初の頃は暗算していましたが、今ではcrew restを計算するためのアプリを使ってささっと計算しています。 アテネ行きの場合、行きはだいたい一人2時間半ほど、帰りは3時間ほどの休息を取ります。

 アテネには現地時刻午後2時前(モントリオール時間午前7時前)に到着。 海外便は多くがレッドアイフライトで、夜から朝方までずっと働いています。 これがなかなか辛いこともありますが、パイロット3名体制の場合には休みが取れるため、少しだけ体へのダメージは低く感じます。 到着後、ホテルに向かい、およそ二日間(2泊)のレイオーバーが始まりました。 

 まずはいつも通りの仮眠です。 この日も2時間半ほど仮眠を取りました。 いつも通り、「ここはどこ、私はだ〜れ」状態で携帯のアラームで起床。 そこからシャワーを浴び、夕食に出かける準備をします。 この日はパイロットのみでのお出かけとなりました。

 最初に行った360バーというところ。 屋上で飲食でき、そこからアクロポリスが一望できます。 ここではビールを一杯だけ飲み、景色を楽しんで退散。 

 
次にこんな遺跡を横目で見ながら食事エリアに向かいます。

気温は36度ほど。 野良猫も暑そう。

アテネの野良猫は痩せていますが、いつもいい景色を見ています。

クルーの食事場所はだいたいいつもこのエリア。 プラカという地域で、観光客に人気です。

レストランの多くは屋上にテラスがあり、景色を楽しみながら食事できます。

日が暮れてくるとこんな景色。

夜景も綺麗です。


 プラカで食事を取り、タクシーでホテルに戻り、その日は深夜0時ごろに就寝。

 翌日は11時近くまでゆっくりしてしまいました。 正直なところ、ここ最近アテネに行きまくっているため、主な観光地はほぼ全て見てしまった状態です。 そのため、やることがあまり思いつかなくなってしまっています。 この日もなにをしようかな〜といろいろ考えましたが、あまり良いアイデアが思いつかず、結局ぶらぶらと街を歩くことにしました。 12時過ぎのホテルのシャトルバスでシンタグマ広場まで行き、そこから歩き始めました。

 最初は観光地から外れた地元民が集まるマーケットなどを見て回りました。 そこは前述のプラカなどとはまったく違い、多くの貧しい人々が集まるエリアです。 ギリシャは経済破綻した国として有名ですが、その名残が今でも色濃く残っています。 街は廃れ、清掃もされておらず、どこから来たのかわからないような移民たちが配給を待っている場所もあります。 なんだか寂しい気持ちになります。

 結局3時間ほど歩き回りました。 途中で前回も行った教会前のカフェレストランで遅めの昼食とビールを堪能。 そしてホテルに戻って来ました。 この日も深夜0時頃就寝。 翌日は午前9時過ぎにホテルを出発しました。

 アテネ空港は市街地からちょっと離れていて、バスで30分〜45分ほどの距離です。 空港につくと大抵の場合、客室乗務員たちはカフェやフードコートで食事を買い込みます。 パイロットはすぐにセキュリティ・出国を済ませ、カフェでコーヒーを買うか、免税店でオリーブオイルなどのお土産を買います。 僕はけちなのであまりなにも買いません(笑)。 ときどきコーヒーやワインなどを買いますが、だいたいの場合はホテル側のスーパーで買い物を済ませておく場合が多いです。

 この日はギリシャを北東に向けて離陸。 離陸重量は170トン越えのなかなかの重量です。 気温が高いこともあり、飛行機エンジンのパフォーマンスは低めなので、離陸に距離と時間を要します。 離陸後、航空管制の指示で北のほうに進路をとります。 そこからはアルバニアやブルガリアなどの国々の上空を通過しますが、ほんの数分で一つの国を飛び越えてしまうこともあるため、今いったいどこの国の上にいるのかをいちいち把握していることは極めて少ないです(笑)。

アルバニア周辺の山々。 標高が高い山々が多く存在します。

 この日も僕が最初の3時間ほどの休息を取るために操縦室を後にしました。 ビジネスクラスの一席をクルーレストシートとして使用しているので、そちらに移動。 軽食を取り、アイマスク・耳栓をしてしばらくの仮眠を取るのがいつものパターンです。 以前はなかなか寝ることができませんでしたが、今はだいたい1時間以上は毎回寝れるようになりました。 休息が終わる10分ほど前に操縦席に戻り、操縦しているパイロットたちからフライトの進行状況のブリーフィングを受けます。 その後、休息を取るパイロットと席を交代。 今回は機長が次に休息に行く順番だったため、僕が機長席(左席)へ。

 しばらくするとOceanic Airspaceに入り、大西洋横断が始まります。 今回はスコットランド周辺からアイスランドの南沖を通過し、グリーンランドの南端上空を通るコースです。 この日の機材にはエンジン火災を監視するシステムのうちの一つが故障していた(もう一つは正常に機能)ため、最寄りの代替空港から120分以内の距離を飛ぶETOPS120ルールでの運航となりました。 だからと言って特に普段と違ったことはあまりないんですけども。 通常はETOPS180ルールで飛ぶことがほとんどです。

 この日のルートはNAT Cというルートで、多くの飛行機が同じルートを飛んでいるようでした。 我々はマッハ0.80という速度で巡航していました。 多くの飛行機(777, 787,350等)はもっと速い速度で巡航することが多いため、我々767は大抵の場合は大西洋上でもっとも遅い飛行機となる場合が多いです。 だいたいの場合、マッハ0.78から0.83くらいの間で巡航することが多いです。 この日はユナイテッドの787と見られる飛行機に途中で抜かれました。

 
 
 最近はGPSを使ってナビゲーションをすることがほとんどで、あまりにも精度が高いため、他の飛行機との位置が全く同じで、高度だけ違うということがよくあります。 安全面に考慮して、意図的にルートから少しだけ外れる航法が認められています。 許可されたルートから右に1マイル、または2マイル外れてオフセット飛行する航法をSLOP(Strategic Lateral Offset Procedure =スロップ)と呼びます。 この日は右に1マイルSLOPしていたのですが、どうやらユナイテッドの飛行機も右に1マイルSLOPしていたようで、我々の真上を通過して行きました。 距離は1000フィート上空だったので、300メートルほどですね。 この後、右手下の方をカタール航空の350と見られる飛行機が通過していました。

 モントリオールには定刻より早く到着。 自宅に戻って来たのは午後3時過ぎでした。 日曜日だったため道路も混んでおらず、空港駐車場から自宅までスムーズに移動できました。 モントリオールのハイウェイは結構渋滞するんですよ・・・。 

 これで今月のアテネペアリングは終了。 次回は5日後にフランス・ボルドーに行きます。 これがまた長いレイオーバーで、なんと4泊!! ワイナリーツアーなどをやらざるを得なくなると思います(笑)。

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今回のよくある質問はこちら。


ビザ・永住権について

 カナダでエアラインパイロットになるには永住権がほぼ100%必要です。 これが取れるかどうかは個人の状況によって変わります。 学歴、職歴、英語(またはフランス語)能力、カナダに親族がいるか、などなど、いろんな要素が含まれます。 カナダ移民局のウェブサイトに詳しい情報がありますので、それをご自分で確認してください。 

 永住権の取り方には多くの方法があります。 僕が申請した頃と今では申請カテゴリーの種類も大きく様変わりしました。 最新の情報はカナダ移民局のウェブサイトで調べてください。 

 実際のところ、永住権が取れるかどうかはある意味ギャンブルでもあります。 極端なことを言えば、お金さえだせば誰でもパイロットライセンスは取得できます。 ただ、永住権が取れないことにはそのパイロットライセンスを行使することはできません。 永住権を取るための要素を確認し、取れそうだなということが確認できてから訓練を開始するのがスマートかもしれません。

 よく僕にメールで「永住権を取るのは難しいですか?」と質問してくる方がいらっしゃいますが、僕にはわかりません。 それは上述のとおり、申請者の状況によって取れるかどうかは大きく変わってくるからです。 また、僕は移民のプロではありませんから、専門的知識は持ち合わせておりません。 どうしても不安がある場合、お金を払っても良いのであれば移民弁護士やカウンセラーに相談するという方法もあります。

 たしかに永住権を取れる確証はありませんが、なにがなんでもカナダでパイロットになる!という強い意思を持ってカナダに渡ってくる方々のほとんどは遅かれ早かれ永住権は取れている印象です。 しっかりやることをやれば取ることは不可能ではないと思います。 カナダはそもそも移民の国です。アメリカのグリーンカードやヨーロッパの永住権と比べればカナダの永住権は比較的取りやすいと考えられます。 取れると信じてがむしゃらに突進するような勇気や楽観性もある程度必要なのかもしれません。 それがどうしても怖い、不安でたまらないという方はそもそも海外でパイロットを目指すことはやめておいたほうが無難かと思われます。 パイロットになれる保証や永住権が取れる保証がないと一歩を踏み出せないようであれば、航空業界のような「明日はどうなっているかわからない」業界に進むこと自体難しいと思います。 


(つづく)


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