2020-04-24

コロナが教えてくれたこと。

 今回の新型コロナウイルスの影響を受けていろいろ学ぶことや発見・再確認するべきことも多かったように思います。

 まず思ったのは「予定は未定」ということ。 これは航空業界ではよく聞くあるあるですが、基本的に「航空業界のあしたは誰にもわからない」ということです。 例えば、「〇〇航空は新型機をXX機購入する予定」「▲▲航空はルート拡大のためにパイロットを数百名採用する」などなどという噂があっても、実際には起きないなんてことも日常茶飯事です。 パイロット業界はとても狭くて噂好きな人が多いので、根も葉も無い噂が飛び交うことがよくあります。 その中から真実を見抜くのはなかなか難しいものです。 僕はあまり噂には左右されないように半信半疑で聞くようにしています。 真偽を見抜く力も必要な能力だと思います。

 「航空業界のもろさ」はいままでもいろんな事象が起きるたびに露呈されてきましたが、今回の新型コロナウイルスの影響は計り知れません。 多くの新聞や雑誌の記事を読むと、今のまま経済の停滞が進めば5月末までに経営破綻する航空会社が多く出て来ると予想されています。 実際に、オーストラリアのバージンオーストラリア航空が先日倒産しましたし、イギリスのFlybeも既に倒産。 イタリアのアリタリア航空も政府が完全国有化することになったようですし、その他にもほぼ毎日のように倒産の話が舞い込んで来ている状況です。 航空会社はそもそも薄利なうえ固定費が高い業種で、収入源である航空券販売が滞ると一気に経営が傾くことになりかねないそうです。  そんな業界で働くことの危機感はこれからも肝に命じておく必要があると思っています。
 
 次に、「蓄えの大切さ」。 パイロットは自分の会社を含め、他社のお給料体制までだいたいわかります。 数年先に自分の年収がいくらくらいになるかがわかると高い買い物をする人もいます。 ベッドルームがいくつもある大きな家とか、高級外車・バイクやクルーザーにヨットとか。 実際に機長クラスになると別荘を持っている人がとても多いですし、ヨットに興味があって所有している人も多いです。 機長クラスのお給料があればそれらは購入維持できますが、今回のように万が一レイオフされてしまったり、副操縦士に降格する(つまり減給)ことになったとしたらどうでしょう。 それらはただの負債になりかねなく、売却や借金を強いられる可能性もあります。 巷でよく聞く、「数ヶ月分の生活費は現金で持っておく」というのは本当に大事です。 あるのとないのでは精神的余裕に大きな差が出ます。

 次は「趣味を持つことの大切さ」です。 パイロットに限らず、なにか仕事以外に没頭できることがあるのはいいですね。 気晴らしになりますし、また、その趣味が仕事に思いもよらぬ良い影響をもたらすこともありえます。 先日テレビでパラリンピックのカヌー代表の女性が取り上げられていました。 彼女は外出・練習自粛中はジグソーパズルに取り組まれているそうです。 「カヌー選手がジグソーパズル?」と思いましたが、話を聞くと、ジグソーパズルに取り組むと集中力が上がり、それが彼女の競技にも良い影響をもたらすそうです。 まったく関係なさそうなことが実はどこかで繋がっているのですね。 僕は今年から写真を撮ることを趣味としてはじめました。 いざはじめてみると奥が深く、学ぶことがたくさんあります。 おかげさまで自宅待機中もさほど暇をしていません。 

 「仕事のありがたみ」はきっとみなさん感じていることだと思います。 仕事なんかしなくて済むならしたくないという人もいると思いますが、いざ仕事をしないとなるとポカンと人生に穴が開いたような感覚になります。 僕の場合、仕事で海外に行くのが当たり前だと思っていましたし、そのおかげで自宅に帰って来たときはより一層ホッとしてリラックスできていました。 休日返上で仕事をすると自由時間が減る反面、対価としてお給料を上乗せしてもらえました。 仕事をしていればこそ生活にメリハリがつくものだと再確認しています。

 「将来の道筋」が今回の件でまたもや計画変更を余儀なくされるのは間違いありません。 僕がパイロットとして働き出したときと比べると、ここ数年はすべてが急上昇、絶好調でした。 そのため、最近ではリージョナルだと1年、メインラインでも2年ちょっとで機長昇格が可能となってきました。 昔はワイドボディ機の副操縦士になるのにも長い時間がかかるのが当たり前でしたが、僕は1年目からワイドボディ乗務をさせてもらうことができました。 それが新しい常識、New Normalになりつつありましたが、それが今回一気に様変わりするのはほぼ間違いないと思います。 少なくとも当面は人員削減、運航規模縮小となる可能性が高いように思えますので、その間はパイロット採用も一旦停止となるでしょうし、パイロットの移動、昇格なども動きが減ると思います。 僕は今後2〜3年のうちに機長昇格に挑戦しようと漠然と思っていたのですが、それもきっと僕のタイミングで選べるのではなく、「いつになったら昇格できるタイミングが回って来るか」と環境に運命を委ねる形に変わってしまったと思っています。 

 

(つづく)

 

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