2014-07-03

クラッシュパッド。

 僕のベースはカルガリー国際空港(CYYC)です。 エアラインパイロットは皆、どこかのベース空港に所属していて、そこから仕事(ペアリング)を開始し、どこかへ飛んでいきます。 カナダの航空会社のベース空港の多くはバンクーバー、カルガリー、トロント、モントリオールといったところだと思います。 当然ながら、自宅とは全然違う都市のベース空港に配属になることもあります。 例えば、僕のトレーニングパートナーだったフランス系カナダ人のパイロットは、ケベック(東海岸)出身なのに、西海岸寄りのカルガリーベースに配属になりました。 大手航空会社のいいところは、自宅がある都市に比較的近いベース空港への配属を希望することができるところです。 そうでない航空会社の場合はベース空港が限られていて、その都市への引っ越しを余儀なくされることもあります。  僕の友人の独身パイロットの場合には「引っ越しはむしろ楽しみ♪」なんていう強者もいますが、家族やお子さんがいるパイロットにとっては引っ越しは楽ではないと思います。

 僕は引っ越しはせず、ビクトリアからカルガリーに通うコミューター(通勤組)です。 ビクトリアには1ヶ月に数回、計10日ほど帰ることができます。 この点は以前のmedevacの仕事の時とそんなに変わらないので、それほど苦にはなりません。 カルガリーにいる間はなるべく生活費を抑えたいので、アパートを借りたりはせず、クラッシュパッド(crashpad)に滞在しています。

 クラッシュパッドというのは、“ベッドに倒れこむ(crashする)”ためだけの滞在先のことです。 詳しくはわかりませんが、きっとエアライン業界独特の仕組みじゃないでしょうか。 クラッシュパッドは一軒家のベッドルームに相当な数のシングルベッドを入れて、多くのパイロットで家をシェアするという形態が多いようです。 よくあるのはひとつのベッドルームに二段ベッドを2つ入れ、そんな部屋が2〜3部屋くらいあって、計8〜12人のパイロットが一度に滞在できるようになっているみたいです。 もちろん、トイレ・バス、キッチンなどはすべて共有です。 そんなかんじなので、家賃はアパートを借りるよりもかなり格安です。 

 僕のクラッシュパッドは空港から10分ほどのところにあり、近くにスーパーやカフェ、酒屋などの生活に必要なものがすべて揃った、立地条件のとても良い閑静な住宅街にある一軒家です。 下がその写真です。

 クラッシュパッド外観

 キッチン・ダイニング・リビングルーム

 ベッドルーム

 このクラッシュパッドのオーナーは僕が働く航空会社の機長さんです。 とてもいい人で、line indoc中に一緒にフライトしたキャプテンです。 さすが自身もパイロットということもあって、クラッシュパッドはパイロットがステイする間になるべくストレスがたまらないような工夫がされていて、一般的なクラッシュパッドに比べたら質が高く、とても快適です。 二段ベッドは上(または下)にいる人に気を使うことになるだろうから、っていうことで、ここのクラッシュパッドの場合にはシングルベッドを採用し、ベッドの間にはクローゼットを置いて簡易的な壁になっていて、ある程度のプライバシーが保てるようになっています。 ベッド・マットレスもすべて新品で、各自ベッドが充てがわれているので、他の人とベッドをシェアするということはありません。 衛生的です。

 このクラッシュパッドには8人のパイロットが滞在しています。 「8人と暮らす」と聞くと「え〜っ、まじで〜!?」って感じですが、クラッシュパッドを利用する人は皆、通勤組なので、ほとんどの場合はペアリングでどこかの都市のホテルに滞在しているか、もしくは自宅に帰っています。 ペアリングが早朝出発の場合で前日にカルガリー入りしないといけないときや、ペアリング終了後に自宅に戻るための最終フライトに乗り損なった場合などに仮眠を取るためにクラッシュパッドを利用します。 なので、8人全員がここに滞在するということはほぼ100%ないみたいです。 実際、僕が今まで他の人と鉢合わせたのは数日しかなく、最高でも僕以外にもう一人のパイロットがいる(一軒家にパイロットが計2名のみ)っていうくらいです。 なので想像以上に超快適です(笑)。 

 そして驚きのお家賃は・・・・$250/月! カルガリーで部屋を間借りしようとしても最低でも600ドルくらいはかかるみたいなので、この家賃は格安です。 これで通勤の費用も抑えられます。 

 それにしてもカルガリーは新興都市なので、住宅がどれもおんなじに見えます。 英語でクッキーカッターハウス(cookie cutter house=クッキー型で切り抜かれたみたいにどれもおんなじに見える家々)という表現がありますが、まさにそんな感じです。 やっぱりビクトリアみたいに歴史がある都市のほうが散歩中のお宅ウォッチングは楽しいです。 


カルガリーらしい住宅街、そしてピックアップトラック(笑)



(つづく)

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

エドモントン在住者です。別の分野で活躍していらっしゃる日本人の方のブログは新鮮で面白いのでいつも楽しみに読ませて頂いています。

Youhavecontrol@gmail.com さんのコメント...

Abe Yujiさん

読んでいただいてありがとうございます。 そちらはどのような職種ですか?