2008-01-25

ビクトリア465日目:教官としての初フライト。



 昨晩は、夜中になんどか目覚めはしたものの、しっかりと睡眠をとれました。 

 今日は朝からクラブに行きました。 久しぶりのクラブでしたが、そんなに変化もなかったようでした。 みんなに暖かく迎えてもらいました。 帰国の日に関空まで見送りに来てくれた後輩の子と一緒に行った関西空港の展望台にあったパイロットグッズを集めたお土産屋さんでマネージャーやチーフにお土産を買って来てあったので、それを渡したらとても喜んでもらえました。 他の教官達には関空オリジナルのクッキーを買って来たのですが、そのクッキーにプリント(?)されていた飛行機の絵が見本の絵のようにきれいではなく、とても不細工だったのにはかなりがっかりしました(笑)。
 
 今日は特に飛ぶ予定は入れられていなかったので、クラブのオフィス内のキャビネットを開けて、書類などの場所を確認したり、どんな書類があるのかを確認したりしました。 それにしてもいろんな書類があります。 すべてを覚えるのには少し時間がかかりそうです。

 クラブのオフィス内は教官用のデスクというのはほとんどないに等しい状態です(チーフやマネージャーはちゃんと専用のデスクがあります)。 他の「平教官」達が待機したりするのは基本的には立ち話をしながら待つか、空いたデスクや椅子を取り合うような感じです(笑)。 僕は今日はラウンジのソファーで書類に目を通していました。 ちょうどお昼時で、アシスタントチーフは僕の横でランチを食べていました。

 すると、そこに教官のうちの一人と、年配の男性がアシスタントチーフを尋ねてやってきました。 なんだろう?と思って見ていると、どうやらその男性と教官が172Rのチェックアウトフライト前にやるType Test(小テスト)の答えを巡って口論になっているようでした。 さすがは経験豊富なアシスタントチーフ、その年配の男性に上手に、丁寧に説明をしたところ、怒りは一旦収まりました。 その男性はアシスタントチーフに、「あの教官とは飛びたくない! 彼の態度が気に食わない!」と憤慨していました。 そこでアシスタントチーフは、「他の教官で誰か空いている人がいないかを確認してくるから」といってその男性をラウンジに残したままオフィスに戻りました。 

 その男性、なんでも英語を教えるチューターをしていたことがあるということで、僕はちょっと面白いなと思ったので声をかけて話を始めました。 たしかにちょっと気難しい感じはしますが、悪い人ではないようでした。 思ったよりも会話は弾んで、「どこから来たの?」とか、「カナダは長いの?」ということを聞かれました。

 そうこうしていると、屋内アナウンスで、「コイディー、電話です。オフィスまで。」というアナウンスが流れました。 それを聞いたとたん、その後なにが起きるかを瞬時に察しました・・・。 

 ちなみに、僕はクラブでは「コイディー」と呼ばれています。 名字が「小出(こいで)」で、大学で働いていたときはずっと外国人の先生からも「コイデ」と呼ばれていたので、こちらでもファーストネームではなく、ラストネーム(名字)で呼んでもらっています。 僕にはそのほうが自然に聞こえます。 どうもファーストネームや、ファーストネームの省略形で呼ばれるのは苦手なので(笑)。

 電話なんか僕にかけてくる人はいないのにな〜と思いながらオフィスに向かうと、廊下でアシスタントチーフに捕まりました。

 「彼と飛んでこい。

 そう指示されました(笑)。 んまあ、本当は、「飛ぶか?」と聞かれましたが、選択肢はなかったのが正直なところです。

 飛ぶ前にいろいろとその男性についての情報を聞きました。 既に免許を持っていて、結構な飛行経験をお持ちのようです。 172Rのチェックアウトをしにクラブに来たということでした。

 改めて自己紹介をし、まずは問題になっていたType Testと呼ばれるクイズを一緒に見直しました。 たしかに気難しくて、僕の言っていることなどおかまいなしに話し続けたりもしましたが、要点はちゃんと聞いてくれるし、ユーモアもあるし、「な〜んだ、たいしたことないじゃないか」というのが率直な感想でした。

 クイズに1時間以上かけ、ウォークアラウンドやウェイトアンドバランスの計算、離陸前の準備などにも1時間近くかけました。 なんせかなりお年の方だったのでなにをするにも時間がかかりますし、探究心が強いみたいで、いろんなことについて質問をしてこられました。 そういうのにつき合っていたら、クイズの見直しを始めてから離陸までに2時間半ほどかかりました(普通の訓練フライトなら、2時間ですべてが終了することが殆どです)。

 チェックアウトフライトそのものはいたってスムーズで、スティープターンやスローフライト、サーキットなどを一通りやりましたが、ほぼ安全に飛ばせていました。 無線なんかはボーイング747の機長みたいにかっこよくしゃべっていました(笑)。 いくつか直さなければいけないこともあったのはあったのですが、ちゃんと指摘をすると直せていたし、PPLレベルの基準には適合していたと判断できたので、1.3時間ほどのフライトでチェックアウトを終了しました。

 クラブに戻ると、チーフやマネージャーが、「大丈夫だったか?」と聞いてくるので、「特に問題なかったです」と報告しました。 結局のところ、パイロットとしては普通の腕前でした。 強いて言えば性格面で最初に飛ぶ予定だった教官とうまく行かなかったのが原因だったのではないかと僕には思われました。 

 フライト後のディブリーフィングをしていると、「君はどのくらいここ(VFC)で教えているんだ?」と聞かれました。 さすがに、「今日が教官としての第一日目です」というのも申し訳なく思ってしまったので、「かなり最近です」と答えました。 結局はそれからも追求され、「実はあなたが僕の最初の生徒です」と言わざるを得ない雰囲気になってしまったのですが、「本当?」と驚いていました。 彼は僕のことを「公平な教官だ」と褒めてくれました。 素直にうれしかったです。 でも、多分それは僕がその男性の話に嫌な顔せずにつき合ったからだと思います。 この男性とはまた今度、今度はセスナ152のチェックアウトフライトをやることになりました。  

 なんでもそうですが、感情が入ると人間関係はおろか、いろんなことがスムーズに行かないことが多々あります。 逆に、人間関係をうまく築くと、スムーズにいかなさそうなことが案外スムーズに行くことがあるものです。 今日の体験でそれを学びました。 人は誰でも「それは間違っている」とストレートに言われると嫌な気持ちになるものです。 そこで、「あなたの考え方はわかったけど、正解はそうではない」とワンクッションいれて間違いを指摘すると、指摘される側も嫌な気がしません。 「褒めて育てる」。 それがパイロットトレーニングの根本だと僕は思いますし、僕はチーフにそう教えるように教えてもらいました。 チーフの教え方は正しいと今日の体験を通して再確認しました。 

 なにはともあれ、初めての生徒に、時差ぼけのまま、昼食も摂らずに、4時間以上もかけてレッスンをしたらふらふらになりました。 今は眠気と格闘の真っ最中です。

 教官としての初フライトがうまくいったのでかなり安心しました。 明日からちょこちょこと飛ぶことが増えてくるような感じなので、この調子で頑張っていきたいと思います。


 今日の写真はエアカナダのボーイング767のエコノミークラスにあったパーソナルモニターです。 タッチスクリーンになっていて、映画をはじめ、ドラマ、ニュース、音楽などを楽しむことができます。 唯一機に食わなかったのは、飛行機の現在地を示すマップの機能が切られていたこと。 映画なんかよりもマップのほうが僕にとっては大事なのになぁ〜と一人で愚痴っていました(笑)。

 全然関係ないのですが、やっぱりiPod Touchが欲しいなぁと思う今日この頃です(笑)。

 それではまた明日。


(つづく)

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

買いましょう。
明日、僕は2人目の生徒となるわけですね。
お手柔らかにお願いします。

Youhavecontrol@gmail.com さんのコメント...

ryukichiくん

そうやな〜って、生徒が一人や二人のレベルではそんな贅沢はできません! 

って、よく考えたら、りゅうきちクンがこっちに前にいたときからず〜っとこれが欲しいって言ってたよね・・・。

こちらこそ、明日はお手柔らかに。 楽しく飛びましょ。