2016-05-30

訓練とiPad。

 先月はCRM(Crew Resource Management)の訓練とPPC訓練があり、バタバタとした一ヶ月でした。

 CRM訓練はカルガリーにある格納庫の一室で朝から夕方までの丸一日をかけて行われました。 これは年一回受講することが義務付けられているもので、聞いたところによるとうちの会社は他の会社に比べて特にCRMに力を入れているようで、朝から夕方まで結構みっちりと講義を受けます。 途中でグループディスカッションがあったり、最後のほうでは客室乗務員達も加わって機体のシミュレーターを使った緊急時の脱出手順の訓練があったり、救命胴衣や消火器の使い方の復習をしたりと、いろいろ学べて楽しい講義でした。 
 PPC (Pilot Proficiency Check)は今乗務しているCRJという飛行機を飛ばすための資格で、半年に一度訓練を受けます。 訓練はトロントの施設で三日間にかけて行われました。 訓練の一日目はLOFT(Line Oriented Flight Training)で、普段乗務しているようなルートをフルモーションシミュレーターを使って飛行し、その途中で起こる機体トラブルや緊急事態への対処を訓練しました。 二日目はRecurrent Trainerで、stall (失速)からの回復、ニアミス時の回避、エンジントラブルや火災の場合の手順などの復習をしました。 そして最終日にはフライトテストがあり、これに合格して無事に資格更新となりました。 CRJの資格を初めて取得したのが昨年の12月で、実際に乗務してたった4ヶ月で今回の資格更新訓練を受けました。 これでまた半年間乗務できます。 そしてまた半年後には訓練です。 今後もこういった訓練が、僕がパイロットである限り半年に一度続きます。 学ぶことも多くあり、良い経験になりました。

 普段のフライトでは通称「Jepps(ジェップス)」と呼ばれる航空図を使って飛行しています。 これはJeppesenというアメリカの会社が発行している航空図やアプローチプレートの総称で、世界中のエアラインパイロットが使っています。 今までは電話帳よりも太いバインダー2冊をかばんに入れて持ち歩くことが義務付けられていました(重さ約4.2キロ)。 ところが、今月に入り、ようやくEFB(Electronic Flight Bag)が本格的に導入され、これからはバインダーを持ち歩かなくてもよくなりました。 その代わりにパイロット全員にJepps Appが入ったiPad miniが会社から支給されました(重さ約660グラム)! 

 これで様々なチャートやマニュアルの管理が容易にできるようになりました。 また、通常1ヶ月程度に一度チャートが更新されるのですが、これからはボタンひとつでインターネットから新しいデータをダウンロードして更新することができるのでとても便利です。 GPSセンサーを使って自機の位置もマップ上に表示させることもできるのでsituational awareness向上にも役立ちます。 便利な世の中になりました!


(つづく)

2016-02-27

ニューファンドランド島・セントジョンズ。

 CRJに乗務するようになって、今までのダッシュ8での乗務と大きく違う点の一つが「飛ぶルート」です。 ダッシュ8ではカルガリーを起点にして、アルバータ州内、お隣のブリティッシュコロンビア州、そしてサスカチュワン州に飛ぶことが多かったです。 
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/14/Political_map_of_Canada.png
 (地図:Wikipediaより)

 地図上の左下の緑っぽいところ3州がアルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、サスカチュワン州です。 見ての通りカナダの西側半分っていう感じです。 

 ところがCRJではいっきに東海岸まで乗務ルートが広がります。 マニトバ州のウィニペグ、オンタリオ州のトロント、ケベックのモントリオール、ノバスコシア州のハリファックス、そしてニューファンドランド・ラブラドール州のセントジョンズなどなど、カナダ国内を横断する形でフライトします。 また、アメリカにも飛ぶことが多く、かなり今までの仕事の内容とは違います。

 先日、初めてカナダの最東端のセントジョンズに行って来ました。 セントジョンズはニューファンドランド・ラブラドール州にある市です。 ウィキペディアによると、1497年に探検家ジョン・カボットが初めて上陸したそうです。 ここの地層は世界でもっとも古いものの一つとのことで、展望台(下の写真1枚目)にある説明書きにはいろいろ面白いことが書いてありました。 セントジョンズには主な湖が4つあり飲水に困らず、薪燃料として重宝された森林資源も豊富、港は写真のとおり入り組んだ形になっているので戦時中には敵の艦隊の目に触れないように隠れることもできる。 こういう理由で発達していった港町なんだそうです。 ちなみに写真1,2枚目に見えるのは入江ですが、その昔はここも淡水の湖だったそうです。 それが地球の気温があがり、海面が上昇したせいで湖に海水が流れ込み、今のような海水の入江になったんだそうな。 なかなか興味深い街です。

 
 (上:シグナルヒル近くの展望台からのセントジョンズ湾のパノラマ写真)

 (上:セントジョンズ市街地)

 (上:セントジョンズの町並みはこんなカラフルな家々がいっぱい)

 (上:坂の上に建っているタウンハウス)

(上:郵便受けまでカラフルな町並み風)

  同じ港町でも西海岸のビクトリアとはだいぶ趣が違います。 ニューファンドランドに住む人達の話す英語は強い訛りがあり、話をしていても数字以外はなにを言っているのかわからないこともしばしば(笑)。 そういう理由もあって、とてもエキゾチックな街です。 今回初めて行きましたが、町並みは綺麗だし、海もあるし、丘も坂もある。 パブやバーが多くあり、レストランも多い。 なかなか楽しい街です。 タクシーの運転手の話ではアメリカの映画俳優も多く訪れる避暑地だそうで、ラッセル・クロウ、ジュリア・ロバーツがセントジョンズに別荘を所有しているそうです。 

 

(つづく)
 

2016-01-31

Line indoc - CRJ200とCRJ705の違い-

 訓練が終わってから数日間のお休みの後、さっそくline indocが始まりました。 これは、お客さんを乗せて飛ぶフライトを通して実際のオペレーションを学ぶ訓練です。 具体的な時間は忘れましたが、数十時間の飛行時間と、それぞれの機種(CRJ200/CRJ705)でPFとPMの両方を決められた数だけこなした後、最終的にline checkという監査フライトがあり、それに合格すると晴れてCRJの副操縦士として乗務することができるようになります。 

 Line Indocでは「トレーニングキャプテン」という資格を持った機長と飛びます。 皆さんとても経験豊富で、フライトインストラクターの経歴を持った人も多いようです。 第一回目のペアリングは以前僕が泊まっているクラッシュパッドに滞在していたキャプテンで、顔見知りだったこともあり、リラックスして飛ぶことができました。 シミュレーター訓練はほぼすべてCRJ200シミュレーターで訓練していたのは前述の通りですが、実機第一回目のフライトはCRJ705でした。 

 CRJ705はCRJ900シリーズがベースになっている機体です。 全長約36メートルで、以前飛ばしていたダッシュ8よりも約10メートルも長い飛行機です。 胴体は細長く、ボーイングやエアバスといった旅客機に比べると「小さい」と思われがちですが、長さだけを見るとエアバス320(日本のLCCエアラインがよく使っている機種)とほぼ同じで、巡航速度ではCRJのほうが速く、パフォーマンスを見るとCRJのほうが高性能のようです。 シミュレーター訓練が終わっていきなりこれに乗るっていうのはどうなの?と思いながら初めてのペアリングを迎えました(笑)。

 最初の2フライトはPMで、機長の操縦を観察するような感じでした。 訓練で学んだこととは若干違うことが実際のラインオペレーションではあります。 今まで乗務していたダッシュ8は最高巡航高度が25,000フィート(約7600メートル)でしたが、今回のジェット機は最高41,000フィート(約12,500メートル)まで上がることができます。 地上10キロ上空を巡航するってすごいな〜って思います。 しかも、ジェット機のエンジンはパワフルなので、高度30,000フィートを超えてもCRJ705の場合は上昇率が落ちることがあまりなく、ぐいぐいと高度を上げていきます。 CRJ200は少し非力な面があり、高度が上がるにつれて上昇率がだいぶ落ちていきます。 高度38000フィートまで上がるとなると、結構一生懸命です(笑)。 25000フィートを通過するときに機長が、「ほらほら〜、今までダッシュ8では行ったことがない世界に突入するよ〜」って言ってきました(笑)。 特になにも感じませんでしたが、やっぱり38000フィートともなると外の景色が少しだけ違って見えます。 空の青みが強く見えたり、地表の湾曲具合が少しだけ強く見えたり。 アメリカを飛んでいるときには特に他の旅客機が上や下をどんどん通過していきます。 これもダッシュ8では見なかった光景です。

 CRJ705もCRJ200も一旦空に上がってしまえばどちらも似たような感じですが、離陸・着陸はかなり違います。

 離陸では、ローテーション(前輪が地面を離れること)が始まってから5〜6秒は主輪(後ろのタイヤ)は地面に着いたままです。 コクピットに座っている僕はどんどん上に上がっていくのが感じられますが、機体の後ろは長いので、まだまだ宙に浮いていない、「ウイリー」をしているような感じです。 ダッシュ8の場合はローテーション後すぐに機体が宙に浮いていたので、この感覚は新鮮でした。 

 着陸では、CRJ200は機体が短く、アプローチ中は機種が下に向いている状態で降りてくるので、どちらかというとダッシュ8と同じような感じでアプローチをします。 ところが、CRJ705の場合は大型旅客機と同じように機種が上をむいた状態で降りてきますので、アプローチ中の外の見え方はだいぶ違います。 また、コクピットが車輪よりもだいぶ高いところにあるので、着陸寸前の「フレア」のタイミングを間違えるとかなりハードなランディングになります(実際、最初の2回くらいのランディングは結構ハードでした・・・)。 

 っといった感じで、CRJ200とCRJ705の飛ばし方は慣れるのに少し時間がかかるように感じました。 他の相違点はまた次回。


(つづく)

2016-01-18

ジェット機訓練 - Phase 3-

 訓練の最後にPPCの実技試験がありました。 これも夜9時スタートです。 前日はいつものように緊張していてあまり良く眠れませんでした。 臆病なんですよね、きっと(笑)。 でも、今までもいつもテスト前はこんな感じで、それでも実際の試験が始まるころには集中力がぐっと上がって、寝不足だということはほとんど感じたことがないので、今回も特に心配はしませんでした。

 シミュレーターセンターに到着してすぐに分かったんですが、我々の前の組の訓練スタートが1時間以上遅れたらしく、結局、我々の試験も1時間半以上遅れてスタートすることになりました。 ショック〜! さっさと終わらせて、さっさとストレスと緊張から開放されたいと思っていたのに、こういうときに限って・・・・。 試験官とのブリーフィングはさっさと終わり、そこからはひたすら前の組がシミュレーターから出てくるのを待ち続けることになりました。 じっとしているのもなんなので、シミュレーターの建物の中をぐるぐる歩き回っていました。 コーヒーもガブガブ飲みました(笑)。 

 結局、予定よりも2時間近く遅れて試験開始となりました。 最初に僕がPilot Flying(PF)、パートナーがPilot Monitoring(PM)で試験開始。 シミュレーターに入って操縦席に座った瞬間に「いよいよ試験か〜」って、なんとも感慨深い気持ちになりました。 でも、そんなこと悠長に考えている暇もなく、急いでFMS(フライトマネジメントシステム)にフライトプランを打ち込み、チェックリストをやってすぐに離陸です。 トロント空港を離陸後、目的地に向かって飛んでいるときにコクピットの警告灯がフラッシュし始めます。 最初のmalfunctionです。 今までの訓練でもこのシナリオはやっているので問題ないですが、こういうときに限って今まで一度も見たことも聞いたこともない問題が発生していました(笑)。 パートナーがQRH(Quick Reference Handbook)を見ながら一つづつトラブルシュートしていきます。 途中で僕も手伝い、二人でなんとか問題を処理しました。 ここで大事を取って緊急事態を宣言し、トロントに戻ることにします。 航空管制官、ディスパッチャーとの無線連絡、客室乗務員への説明、乗客への状況説明を行い、フライトプランを変更し、トロントにむけて引き返しました。 トロントに無事に着陸し、そこでこのエマージェンシーは終了。 

 飛行機はもとの正常な状態に戻り再度離陸。 今回は離陸の直前でエンジン停止。 飛行機の離陸のときには「V1, Vr, V2」といったいわゆる「Vスピード」というものがあります。 離陸のための滑走を開始し、V1のスピードに到達すると、そこからは仮にエンジンが一つ停止しても離陸を中止するのに必要な滑走路の距離が残っていないので、離陸を続行し、空中で問題処理して着陸することになります。 訓練でのエンジン停止はこのV1スピードに到達した直後(もっとも安全飛行にとってクリティカルなタイミング)に起こることが多いので、パイロットには通称「V1カット」という名称で親しまれています(笑)。 

 V1カットの後、離陸を続行し、ランディングギアを格納し、故障したエンジンをシャットダウンし、問題のないほうのエンジンのみで飛行を続けます。 CRJはエンジンが一つしか動いていなくても素晴らしいパフォーマンスを発揮します。 ジェット機はやっぱり凄いです。 クルーズ中ならエンジン一つでも軽く250ノット(時速約460キロ)ほど出るそうです。 

 なにはともあれ、単発でのアプローチ、エンジン火災、その他もろもろのエマージェンシーをクリアし着陸。 そこで僕のPFとしてのフライトは終了。 途中でいくつか凡ミスをやってしまったのですが、それら以外はだいたいうまくいった手応えがありました。

 10分ほどの休憩後、今度は僕がPM、パートナーがPFで再度離陸。 内容は違うものの、シナリオは僕のときと似た感じで、エンジン火災、その他の緊急事態の対応、単発でのIFRアプローチなどをやり、午前3時過ぎに無事テスト終了。 二人共合格できました。

 試験後のディブリーフィングでは試験中に間違っていたことを指摘されました。 いくつか細かいところでミスがありましたが、致命的なものではなく、注意程度の内容でした。 その他はよくできたね〜とお褒めの言葉をもらい、ライセンスにサインをしてもらい、無事にCRJ操縦資格を取得できました。

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 試験後は2日ほど休みがあり、今度はCRJ-705 Difference Courseがありました。 前半の訓練ではCRJ-200(50人乗り)のシミュレーターを使っていましたが、僕が働く会社には75人乗りのCRJ-900(僕の会社では75人乗りに座席配列されているため、CRJ-705という名称で呼ばれています)もあるので、今度はこちらの飛ばし方を3日間に渡って習いました。 名前の通り、主には「違い」を学び、シミュレーターで訓練を二日間行いました。






(下の機体がCRJ-900/705)



 CRJ-705は長さで言えばエアバス320(日本で言えばピーチ、スターフライヤー、全日空などが運航しています)とほぼ同じで、胴体が長い飛行機です。 そのため、いろんな面で飛ばしているときの感覚や、コクピットからの外の景色の見え方が違います。 それらの違いを知らないで飛ばすとエライことになるため、こういうトレーニングをやるわけです。 こんなにも違いが多い飛行機なのに、一つのPPCで両方飛ばせるのってどうなんだろう?っていうのが正直なところです(笑)。

 CRJ-705はCRJ-200とシステムは似ていますが、オートメーション化がさらに進んでいるので、パイロットがやらなければならないチェック項目などが自動でされていたりして、かなり進化したモダンな飛行機という印象です。 実際に飛ばしてみるとCRJ-200よりはだいぶ安定していて、操縦桿でのインプットに対する反応がワンテンポ遅い感覚を受けます。 




(格納庫で見たCRJ-705)


 Difference courseが終わり、カルガリー経由でビクトリアに戻り、長かった1ヶ月半以上に渡って行われた訓練がようやく終わりました。 5日間の休暇の後、今度はLine indocが始まりました。 

 Line indocではお客さんを乗せて実際の運航をしながら訓練を続けます。 シミュレーター訓練はやはり実際の飛行とは違うことが多いので、今までシミュレーターで習ったことを実際の日々の飛行に当てはめ、実際のオペレーションに慣れていくというのが目的です。 これはトレーニングキャプテンと飛びます。 Line indocが終わると今度はLine Checkという試験があります。 これは先日合格しまして、今は晴れてCRJ副操縦士として乗務しています。 Line indoc、Line Checkについてはまた次回。


(つづく)

 

2015-12-21

ジェット機訓練 - Phase 2-

 Phase 1が終わった後、10日間のお休みがもらえたのでビクトリアの自宅まで帰ってきました。 2週間ちょっと自宅を開けていたので、いろいろとやらなければいけないことがあって、最初は毎日バタバタとしていました。 僕はなるべくONとOFFをはっきりさせたほうが学習能力が上がると思っているので、ビクトリアに戻ってきてからしばらくは訓練のことはあえてなにも考えず、マニュアル等もまったく開きませんでした。 そして、訓練に戻らなければならない数日前からまた復習を始めました。 

 




 うちの猫・パンダも僕の勉強のお手伝いをしてくれました(笑)。 主にIPTで学んだことを復習し、緊急時の対応手順の暗記をしたりしました。 

 緊急時、例えばエンジン火災が起きたりした場合の初期対応(drill)はすべて暗記項目(memory item)になっています。 項目の数は6つほどですが、内容、手順、付随するコールなどを暗記しなければいけません。 Dash8に比べると内容は簡略化されているように感じましたが、理屈は同じような感じです。 ジェット機であれプロペラ機であれ、対応はよく似ていますので、覚えるのはさほど難しくはありませんでした。 ジェット機とターボプロップ機の違いについてはまた後日別に書こうと思います。

 10日間の休みの後、またトロントに戻りました。 今回もまた3週間ほどの滞在でした。 Phase 2はフルモーションシミュレーターでの訓練でした。 いよいよ実機と同じコクピットでの訓練なので否応なしに気分が盛り上がります。 ただ問題が一つ。 それは訓練の時間帯です。 僕と僕のトレーニングパートナーの訓練時間枠がなんと午後9時から午前3時でした(涙)。 これがず〜っと続きました。 最初の数日はしんどかったです。 ですが、それからはだいぶ体も慣れました。 だいたい毎日、

  •  起床は午後1時か2時(笑)
  •  朝食後、他所のホテルにあるスタバまで散歩し、そこでコーヒーを飲みながら勉強
  •  午後6時頃にランチ(夕食?)
  •  午後8時半に訓練へ
  •  翌日午前3時頃訓練終了、夜食(夕食?)
  •  午前4時頃にホテルのフィットネスルームにて運動
  •  午前5時から6時頃就寝

 っていうスケジュールでした。 無茶苦茶ですよね(苦笑)。 でも、シミュレーターは使える枠が限られているし、シミュレーターを使うのは僕らだけではなく、新入社員パイロットの訓練や、既にラインで飛んでいるパイロットの資格延長のためにも使われるので、1日20時間近くフル稼働しているんです。 それなので我々の訓練は夜のスロットに充てがわれたみたいです。 こればっかりは仕方ありません。 朝4時頃にウェイトを上げたり、トレッドミルで走っているのはなんとも不思議な感じがしました。 世界は眠っているのに僕だけ起きているような感じがして、それはそれで奇妙で面白かったです。



 (写真:シミュレーター施設の受付に会ったレゴ人形とシミュレーターの模型)



(つづく)

 


2015-12-13

ジェット機訓練 - Phase 1-


 今回の訓練は大きく分けて3つのフェーズに分かれていました。 内容はだいたいこんな感じです:


フェーズ1: IPTを使った訓練
フェーズ2:フルモーションシミュレーターを使った訓練とPPC
フェーズ3:フルモーションシミュレーターを使ったCRJ-705のdifference course

フェーズ1の「IPT」というのは「Instrument Procedure Trainer」と呼ばれるもので、下の写真のような装置です。





 以前のDash-8の訓練でも同様の装置を使って訓練をしました。 これはいわば「シミュレーターのシミュレーター」というもので、フルモーションシミュレーターに行く前に基本動作などを学ぶための装置です。 後ろには教官が操作するPCがあり、そこでいろいろな状況を創りだしたり、飛行条件を変えたり、故障を(意図的に)引き起こしたりします。 

 画面はタッチスクリーンで、それ以外にはFMS (Flight Management System)やスラストレバーやオートフライトコントロールのスイッチ類などがあり、それらは実機と同じ物です。 

 これを使ってやる訓練はまずは「Flow」を学ぶことから始まります。 「Flow」というのはチェックリストの暗記項目のことで、離陸前のチェックリストや離陸後のチェックリストなど、チェックリストの項目のほとんどは丸暗記しなければいけません。 数が結構あるので暗記するのには時間がかかりますが、名前が暗示するとおり、チェックする項目はある程度の流れ(flow)が決まっています。 例えば、
(写真はhttp://www.proprofs.com/より拝借)

 この写真はCRJではありませんが、この写真に示してあるように、まずは①、そして②,そして③,そして④,というふうに流れがあって、その流れに沿って必要項目をチェックしていくわけです。 ですから、右から左に飛んで、さらに右に戻って、また左に戻ってというような効率の悪いフローはないと思います。 だいたいは「一筆書き」のように一つの線でつなぐことができるような流れが決まっていて、それを覚えるわけです。 説明が下手で申し訳ないですが、だいたいの雰囲気はわかってもらえたかと思います。 フローは頭で覚えても実際には出来ないことが多いので、こういう装置を使い、実際にフローを体でやってみて、体の筋肉に動きを覚えこませることが重要になってきます。 (マッスルメモリーってやつですね)

 フローを覚えるために、僕は訓練の1ヶ月くらい前からマニュアルに書いてあるフロー項目を暗記カードに書き出して少しずつ覚え始めました。 先輩パイロットから、「フローを暗記してから訓練に挑めばだいぶ楽だよ」っていうのをよく聞いていたので、そのとおりフローの大半は暗記してから訓練を始めました。 確かにフローを覚えてさえおけば他の訓練項目に集中できるので、効率のよい訓練が出来たと思います。 それにしても、IPT訓練中にフローをど忘れしたときに出る冷や汗はとても気持ちが悪いものです(笑)。 

 このIPT訓練を9セッションやりました。 途中で数日間の休みが入ったり、他にも座学の日があったりしたので、フェーズ1は期間にして2週間強でした。 フェーズ1が終わってからしばらく休暇がもらえましたので、自宅があるビクトリアに戻りました。


(つづく)

2015-12-10

ジェット機パイロットになりました。

 どうもお久しぶりです。 ちゃんと生きています(笑)。 

 前回の投稿からかなり時間が空いたのには理由がありまして、実は最近になって今まで乗っていたターボプロップ機「Dash-8」乗務から、ジェット機「CRJ」乗務に異動になりまして、そのための訓練を受けていました(今もまだ訓練中ですが)。 この訓練が長くて、10月末に始まり、11月中は10日ほどの休みを除いてあとはずっと訓練、そして12月も中旬まで訓練というスケジュールでした。 昨日、CRJのPilot Proficiency Check (PPC)に合格しまして、僕にとっては初めてとなるジェット機の操縦資格を取得しました。 訓練内容などについてはまた後日別の投稿で書こうかと思います。

 CRJという飛行機は「Canadair Regional Jet」という名前の頭文字を取ってつけられた名前で、「シーアールジェー」と一般的に呼ばれます。 略して「RJ」と呼ぶ人もいます。 この飛行機、カナダ・ボンバルディア社が製造している小型ジェット機で、日本でもJ-AIRとIBEXなどが飛ばしています。 僕が働く会社ではCRJ200という型と、CRJ705という型の2種類を運航していて、僕はそのどちらにも乗務することになります。

 (写真上:J-AIRのCRJ-200 ウィキペディアより引用)

 CRJ-200は50人乗りの小型リージョナルジェット機です。 もともとはボンバルディアが製造している「Challenger」という飛行機をベースに胴体を引き伸ばして作られた飛行機なんだそうです。 この「チャレンジャー」は世界各国の裕福なセレブ達のプライベートジェット機として人気の小型ジェット機です。 

(写真上:一般的なCRJ-200のコクピット内 同じくウィキペディアより)

 CRJのコクピットは通称「グラスコクピット」と呼ばれるもので、従来の計器類をほぼすべてCRTスクリーンなどで置き換えたデザインになっています。 真ん中の2画面がEICAS(アイキャス)Displayという画面で、そこに主にはエンジン計器類や着陸装置、フラップの位置情報、または乗務員への警告メッセージなどが表示されます。 各操縦席の前にはPFD, MFDと呼ばれる画面が計2つあり、それらで飛行機の位置や姿勢の情報などを表示できるようになっています。 今まで乗っていたDash-8は古風な飛行機(笑)だったので針で表示されるタイプの計器がたくさんありましたが、今回のCRJはだいぶモダンな感じがします。
 
 
(写真上:CRJ-900 またまたウィキペディアより)

 CRJ-705は、CRJ-900という飛行機の座席数を75席に減らし(契約上の理由によるもの)、Jクラス(ビジネスクラス)を設定した配列になっている飛行機です。 CRJ-200に比べると胴体が長く、とても凛々しい「飛行機らしい」見た目になっています(個人的な見解ですが)。

 日本ではあまりCRJに乗る機会はないと思いますが、北米ではとてもポピュラーな飛行機です。 ヨーロッパでもCRJを運航している会社(リージョナルエアライン系)が多いそうです。 
 
 だいたいのお客さんはCRJ(またはDash-8もそうでしたが)を初めて見ると「んやだ〜、ちいさ〜い(苦笑)」という声を上げます。 確かに日本でよく見るボーイング737やエアバス320などと比べたら小さいです。 ですが、CRJは実際はスポーツカーみたいな高性能をもった飛行機なのです。

 巡航高度、巡航速度などを見ると他の中型〜大型旅客機に匹敵する、もしくは上回る性能を発揮します。 実際、以前にエアバスのコクピットのジャンプシートに乗っけてもらった時、その上2000フィートを僕の会社のCRJ-705がすいすい〜っと追い抜いていったことがあります。 その最高速度、約マッハ0.82~0.85となっていますから、限りなく音速に近い速度で巡航することができます。 こりゃすごい!(笑) 
 
 ジェット機の飛行経験があると将来に役に立つということで今回ジェット機乗務への異動をリクエストしました。 今まで飛ばしていたDash-8にもようやく慣れ、毎日のフライトが普通にこなせるようになって楽しくなっていたところで今回の異動。 またゼロからのやり直しです。 さすがにこの会社で2年弱働いてきたので運航の基礎はわかっています。 ですから、今回の訓練は初めてDash-8の訓練を受けた時よりはスムーズにいったという感じがしましたが、やはり新しいことを学ぶにはかなりのエネルギーが必要になるということを再確認しました。 脳がとても疲れました(笑)。 しばらくは訓練は遠慮したい気持ちです。
 
 あと数日で訓練プログラムもすべて修了します。 そしたらようやく自宅に帰れます。 自宅で4日ほどゆっくりしたあと、line-indoc(実際のフライトを通して行うOJTのようなもの)が始まります。 これをクリアして、最終的にline checkをパスすると晴れて一人前の副操縦士として認められることになります。 CRJだと飛ぶルートも、速度も、目的地も違うので、これも学び直さなければいけません。 しかも、JFKやWashington DCといったアメリカの忙しい空港にも行くこともあります。 そう考えると結構緊張します。 Line indocでは最初はカナダ国内、それからアメリカのヒューストン(テキサス州)まで飛んでいきます。 ヒューストンは片道4時間近くのフライトです。 今までは最高でも2時間くらいしか飛ばなかったので、そういうところも慣れていかなければいけません。 
 
 なにはともあれ、ジェット機のパイロットになれたというのはとてもうれしいです。 今までDash-8を飛ばせたことにも感謝しています。 飛ばしていて楽しい飛行機でしたし、一緒に飛んだ機長達もいい人が多くて良い経験をいっぱいできました。 これからはジェットなのでだいぶ環境が変わりますが、きっと楽しいことが待ち受けていると信じて、頑張っていこうと思います。
 
 以上、ご報告でした。
 
 
(つづく)